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■女の子たちのセンター試験(1)

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(C)Eriko Kawaguchi 2015-09-09
 
1月17日(土)。千里はセンター試験を受けに出た。
 
試験は9:30からである。試験会場は市内のH教育大旭川校なので、8時近くまで勉強してから女子制服に着替え、美輪子に出勤のついでに旭川駅まで車で送ってもらい、JRで試験会場に入る。
 
「叔母ちゃん、こないだふと思ったんだけど、私男子制服はどこにやっちゃったっけ?知らないよね?」
「ん?それ、るみちゃんにあげたじゃん」
「へ?」
 
「2年生の頃、一度るみちゃんが遊びに来た時、千里の部屋に男子制服が掛かってるの見て、千里これもう使わないよね、僕にちょうだいなんて言うから、千里、『うん。持ってって』と言ってたじゃん。それ聞いて、私はとうとう千里も男には戻らないことを決めたんだなと思ったよ」
 
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「え〜?そうだったっけ?」
と言ってたら、後ろで《きーちゃん》が『あっ』と言ってる。
 
どうも《きーちゃん》が自分の身代わりを務めてくれていて千里はどこかで何かしていた時に留実子が来て、その時、留実子がお持ち帰りしたのだろう。それをうっかり自分に伝えておくのを忘れていたんだろうなと千里は判断した。
 
「あ、思い出した。そうだったね」
と千里。
「るみちゃん、その場で試着してたけど、男子制服似合うよね」
と美輪子。
 
「うん。あの子、しばしば男装して彼氏とデートしてるから、知らない人からはホモだと思われているみたい」
 
「まあいろんな愛があっていいんじゃないの?」
「そうだよねー」
と言いながらも、千里は自分と貴司の愛も普通の愛とは少し違うかも知れないなと思った。
 
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9:00前に会場に入る。蓮菜・鮎奈・京子・花野子たちと同じ教室であるが、お互い手を振ったりしただけで、おしゃべりしたりはせずに各々集中して最後の要点確認をする。
 
初日の「公民・地理歴史」、まどろっこしい言い方をしているが要するに社会は2科目選択する。千里は政経と世界史を選択した。政経の方が高得点を狙えるので政経を先に回答する。
 
どちらもだいたい満足できるような回答をして、余った時間は机に俯せになって頭を空っぽにし、束の間の休息を取った。
 
お昼は休憩室に指定されている食堂に行きお弁当を食べる。おかずにトンカツが入っている。「勝つように」というおまじないだ。更にキットカットが1つ添えられている「きっと勝つ」というおまじないだ。千里は微笑んだ。
 
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見ていると、おしゃべりしながら食べている子、午前中の試験の分からなかったところなどを聞き合っている子たちもいるが、千里はひとりで心を空っぽにして食べていた。参考書を片手におにぎりを食べている子もいる。あれは勉強しながら食べられるようにおにぎりにしてもらったのだろう。でも千里はお昼は頭をいったん空っぽにした方がいいと思っていたので、ふつうのお弁当にしてもらった。
 

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少し離れた所にいた男の子と目が合った。向こうが手を振るので誰だっけ?と思ってよく見ると夏恋だ! 男装してきたの!?
 
「誰かと思った。なんで男の子なの?」
と千里は《ささやき声》で尋ねる。
 
「千里、声どうしたの?」
「ちょっと喉が痛くて。風邪薬は飲んでるんだけど」
「お大事にね」
「うん」
 
「でもこれ男の子に見える?」
「見える!」
「スカート穿いてるのに」
「あ、ほんとだ。でもスカート穿いてても雰囲気的に男の子」
「まあスカート穿く男の子もいるしね」
「うん、たまにいるよね」
 
「いや制服で受験するつもりがうっかり一昨日クリーニングに出しちゃってまだ返って来てないんだよね。それで適当なの着て来たんだけど、教室でも『あんた受験票の人と違うんじゃないの?』と試験官に言われた」
「ああ・・」
 
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「近くの席に明菜が居て、間違いなく本人ですと証言してくれたんで助かった。バスケット選手なんですよと言ったら結構納得してた。バスケ協会の会員証も見せたし」
 
「あ、あれは結構使えるよね。でも髪も短いし」
「昨日髪切りに行ったら、ちょっと短くされすぎちゃったんだよねー」
 
「夏恋は別に男の子になりたいとかは無いんだよね?」
「お前男じゃないの? チンコ付いてるだろ?とかはよく言われたけど、自分としては女の意識だよ。男だったら良かったのにと思ったことは結構あるけど女の子が普通に思う程度のものでGIDではないと思う」
 
「スポーツ少女にはその程度はふつうに居るよね」
 
「うん。でも、中学高校の6年間、どこに行くのにも制服か体操服・ユニフォームだったから、私服がほとんど無かったのよね」
「ああ、ありがちありがち」
 
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「しかも私、ふつうの女の子の服がサイズ合わないんだよ」
「そっかー! 暢子なんかも大変みたい」
「それでそもそもメンズの服とか、ユニセックスの服ばかりで」
「それでそういう格好になってしまったのか」
 
「お母ちゃんが私の服着てみる?と言ったから着ようとしたけど無理だった。全部ヘソ出しルックになってしまう」
「この時期にヘソ出しは寒すぎる」
 
「大学に入ったら少し服を買いそろえなければ」
「頑張ってね」
 

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午後からは国語、そのあと英語であった。英語はペーパーテストの後にリスニング問題も行われた。
 
翌18日は、最初の時間帯の理科基礎は受験しないので11:20からの数学1から受けてお昼を食べた後、午後は数学2、理科2と受ける。理科2は2科目選択なので、物理と化学で受けた。
 
理科の2科目目は16:40-17:40の時間帯で受けたが、千里は化学の試験は40分ほどで書き上げ、17時半頃に会場を出た。タクシーで旭川駅に移動し18:00のスーパーカムイ46号に乗って札幌方面に行く。この列車は新千歳行きで札幌から先はエアポート192号と名前を変えるが、この車内で札幌から新千歳に移動中の岐阜F女子高のメンツとお見送りをしている旭川N高校の部員数名をキャッチする。札幌P高校の歌枕・渡辺もいる。
 
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「お疲れ様〜」
「わあ、村山さんもお疲れ様〜」
 
「みんなどうだった?」
「取り敢えず今年のインターハイの北海道代表は札幌P高校と旭川N高校だろうと確信しましたよ」
 
などとF女子高の晴鹿が言っている。この場に旭川L女子高の部員が居ないから言えることという気もする。
 

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実は千里たちがセンター試験を受けていたこの週末、昨年に続いて今年も愛知J学園を北海道に招いて迎撃戦が行われたのである。
 
今回は岐阜F女子高も招いて、岐阜F女子高・愛知J学園・札幌P高校・旭川N高校・旭川L女子高の5チームによるリーグ戦がこの土日に札幌P高校の体育館で行われた。今回「北海道氷雪杯」という名前も付きスポンサーも付いている。各校Aチーム・Bチームを編成し、Aチーム戦の合間にBチーム戦も行った。Aチーム戦は中央に1コート1試合、Bチーム戦は2面取って同時に2試合おこなう。
 
17日800 B(JP.FN) 920 P-N 1040 B(JN.FL) 1200 J-F 1320 L-N 1430 B(JF.PL) 1650 F-P 1710 J-L
18日800 F-L 920 B(JL.PN) 1040 J-N 1200 P-L 1320 B(FP.NL) 1430 F-N 1650 J-P
 
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18日の最後の試合終了後全員で札幌駅近くのホテルに移動して表彰式兼夕食兼打ち上げをしている。
 
バスケット協会からの「強い要望」により愛知J学園と岐阜F女子高が乗る飛行機は(万一事故が起きた時に両校全滅の事態を避けるため)分けてくれということになったので、来る時は
 
16日 J学園 中部1645(ANA)1825新千歳 F女子高 中部1750(ANA)1930新千歳
 
を使用して、帰りは
18日 J学園 新千歳2030(JAL)2205羽田 F女子高 新千歳2055(JAL)2230
 
を使用している。J学園のメンバーにはL女子高の部員が数人、F女子高のメンバーにはN高校の部員が数人、新千歳空港まで付いていき「お見送り」をしている。P高校は会場の片付けなどもあって大変だろうということで見送りは免除なのだが、実際にはJ学園には猪瀬・伊香、F女子高には歌枕・渡辺が付いてきたようである。
 
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無料公開する大会だが録画は禁止とした。しかし観戦した北海道バスケット協会の会長さんが「これはお金を取って見せてもいいゲームだ」などと言っていた。実際大学生やクラブチームの見学者もかなりいた。
 
今年は全校2年生以下のチームで参加したが、J学園の加藤絵理・夢原円、F女子高の鈴木志麻子・神野晴鹿、P高校の渡辺純子・伊香秋子、N高校の絵津子・不二子・ソフィア、L女子高の風谷翠花・黒浜玲麻など、どのチームも1年生が大活躍であった。一応の勝敗表はこのようになった。
 
\J F P N L 勝敗 得失
J -- 74 64 72 68 2-2(4) -3
F 78 -- 55 81 64 3-1(2) +16
P 74 58 -- 83 70 3-1(1) +18
N 69 76 84 -- 65 2-2(3) 0
L 60 54 64 58 -- 0-4(5) -31
 
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N高校は初戦のP高校戦では今回絵津子が渡辺純子に圧勝したことと、結里と智加が競い合うようにスリーを入れたことで1点差で辛勝したものの、J学園戦では揚羽・耶麻都・紅鹿といったセンター陣がJ学園のセンター夢原さんにリバウンドで圧倒的に負けたのが響いて3点差で負けた。またF女子高戦でも留学生センター・アヤさんに全く歯が立たずにこちらは5点差で負けた。インターハイに向けてセンター陣の強化が緊急課題であることが浮き彫りになった。やはり184cmの留実子の穴は簡単に埋められない。
 
結局、得失点差を入れて1位P高校、2位F女子高、3位N高校、4位J学園、5位L女子高である。
 

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F女子高の面々は搭乗手続きは早く済ませてあるので、空港に入るとロビーで少しお見送りの子たちとおしゃべりをした。
 
「村山さん、声どうしたんですか?」
とF女子高の晴鹿に訊かれた。
 
「うん。ちょっと喉を痛めたみたいで。聞き取りにくい声でごめんねー」
と言っておく。千里は無声音で話している。いわゆる《ささやき声》だが、ここ数日の練習で、結構な距離でも聞き取れるくらいにボリュームアップしている。
 
「この時期体調崩しやすいですよね。お大事に」
 
「ありがとう。でもえっちゃんと純子ちゃんが丸刈り頭で並んでいるとインパクトあるなあ」
と千里が言うと
 
「丸刈り仲間がまた増えたんですよ」
と絵津子が言う。
 
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「え〜〜?」
「J学園の新キャプテン篠原さんが丸刈りにしちゃいました」
と2人の隣に立っていたF女子高の鈴木志麻子が言う。
 
「なんで?」
「4位になったからと」
 
「女子高の生徒が丸刈りしてたら、校門で警備員さんに男かと思われて咎められたりして」
と不二子。
「ああ、そういう事例はあったらしいです」
と志麻子。
 
「そもそも4位で丸刈りにしたら5位のチームはどうなるのさ?」
「大波さんが悩んでたから、絶対に早まったことはしないように、とみんなで釘を刺しました」
「ああ。大波さんはお嬢様なのに、丸刈りにしたらお母さんがショック死するよ」
 

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岐阜F女子高のメンバーは20:55(JAL548)羽田行きに搭乗するのに20時半頃に手荷物検査場に消えたが(東京で1泊して月曜日の早朝の新幹線で帰還する)、この時実は神野晴鹿はトイレに行くような顔をして離脱し手荷物検査場は通らなかった。
 
そしてN高校の絵津子はこの遠征組の次の21:25(ADO28)の便で羽田に向かったのである。絵津子をお見送りしたのは、千里と不二子・ソフィア、そして晴鹿の4人である。絵津子は他の岐阜F女子高のメンツに30分遅れで彼女らが宿泊しているホテルに入り、翌朝は一緒に岐阜へと向かった。
 

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そして旭川では月曜日早朝から千里の「シューター教室」が再開された。
 
生徒は、前回参加した結里・昭子・智加・ソフィア・晴鹿に加えて、ウィンターカップですっかりスリーに自信を持った久美子、そして4月に新入生で入ってくる予定の宮口花夜(かよ)である。建前的にはN高校の体育館を借りて開いている一般向けバスケット講座に参加しているという形にした。
 
一応「講座の参加条件」として5mの距離から10本シュートを撃って6本以上入れることとしたが、この7人は全員この「入学試験」をクリアした。特に晴鹿と智加は10本全部入れた。智加が全部入れたのを見て1本外してしまった結里が焦っていた。
 
このシューター教室の初日、千里は夏まで使っていた古いバッシュを履いていたのだが、この日の午前中に、年末にオーダーを入れていたN社の新しいバッシュが到着し、お昼休みにウィンターカップの選手15人に配られた。
 
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千里は早速履いてみたが、まだバスケ続けてもいいかな、と思いたくなるほどの素敵なフィット感であった。
 

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なおセンター試験の結果は自己採点した点数を大手予備校などが公開しているシステムで確認した所、千里は志望している千葉のC大学理学部でA判定であったので、安心してC大学に願書を提出した。C大学理学部では社会は1科目だけ使用されるので、千里は前半に回答した政経の点数が使用されることになる。センター試験と無関係な□□大学の方は既に願書は提出済みである。
 
ちなみに願書を提出する時は、C大学の分も□□大学の分も、父に署名してもらった時に鉛筆で性別・男に○をしていたのを消しゴムで消して、ちゃんと女に丸を付け直して提出した(私文書偽造)。千里は高校の学籍簿も女になっているし、センター試験の性別も女になっているので、性別は女で通すしか無いのである。
 
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この1月下旬の時期は、一番大きな山場であったセンター試験が終了し、次の山場となる□□大学医学部入試に向けて、更に勉強をしながら毎朝と放課後にシューター教室をやっていた(放課後の教室には中学生の花夜は参加しない)。
 
学校の授業自体は、この時期出欠も取らないし私立の受験で転戦している子もあることから出席している生徒は半分くらいである。千里も苦手科目は先生に色々聞きたいのもあって出ていたが、そもそも受験科目ではない社会と国語の授業には出ずに図書館で勉強していた。図書館のいい所は声を掛けられることが少ないことである! 千里としては極力他の子と「声」を交わしたくなかったのである。
 
おかげでこの時期に千里に「声変わり」が来たことを知っていたのは蓮菜と鮎奈の2人だけであった。風邪が流行っている時期ということもあり、先生たちの中には気づいた人はいなかったようである。特に宇田先生などには知られてはいけないと千里は考えていた。千里に声変わりが来たということになれば、性別問題で面倒な話が出てくる危険がある。
 
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女の子たちのセンター試験(1)

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