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■女の子たちのセンター試験(3)

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やがて開幕する。
 
千里は大勢の前で演奏するということ自体は、市民オーケストラの公演に何度も出ているし、合唱コンクールの助っ人にも出ているので、今更全く平気である。しかしポップスのライブというのは、クラシック系のオーケストラの公演や合唱コンクールとは、まるで違う雰囲気だなと思った。
 
微妙な約束事が違うところもあるが、そのあたりはノリと度胸で何とかしていく。またKARIONはポップスとしては、割とクラシックに近い面もあるようで、ピアノやキーボードを演奏していても気分的に楽だった。
 
ステージに立っていると結構客席のひとりひとりの顔は見えるものである。これは市民オーケストラの公演の時も思っていたのだが、千里は少し場に慣れてくると、客席のあちこちを見ていった。
 
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すると客席の最後部、あそこは本来見切り席なんじゃないかと思う場所に冬子と政子が並んで座っているのに気づく。なるほどー。目立たないようにあの場所に座らせたのかなと千里は思った。
 
演奏は曲によって使用する楽器のラインナップが違うので、持ち替えもあるし、ステージに出て行く演奏者、引っ込む演奏者も曲ごとに発生する。千里もピアノが不要な曲でステージ脇に下がって束の間の休憩をしたりもした。
 
ライブは進んで、あと2曲という所まで来る。ラスト前の曲『サダメ』を千里が電子キーボードで弾いて、千里はステージ脇に下がる。ヴェネツィアン・マスクを付けた蘭子が代わりに出ていきグランドピアノの前に座る。
 
和泉のMCに続いて最後の曲『優視線』を演奏するが、蘭子のピアノは素晴らしかった。さっすが。これがプロの演奏だな、と千里は思った。
 
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演奏を終えて幕が下りる。下がってきた蘭子に千里は思わず声を掛けた。
 
「凄いです! こんな演奏を生で見られて、私幸せです」
と千里は男声のまま蘭子に言った。《ささやき声》ではこの歓声の中では聞こえない。またこの歓声の中では男声を使っても他の子にはあまり聞こえない。
 
「いえいえ。まだ未熟者なので。これからも研鑽します」
と蘭子は答えるが、蘭子は自分のことを男と思ったかも知れないなとは千里は思った。今日の衣装は性別も曖昧である。
 
「頑張ってください。私も大きな目標ができました」
と千里は言う。
 
「そちらも頑張ってください。それじゃ『Crystal Tunes』お願いします」
と蘭子は笑顔で言っている。
「はい」
と千里も返事した。
 
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蘭子はその1曲で下がって客席に戻って行ったので、アンコールではまた千里がキーボードを弾く。ファーストアンコールでは『小人たちの祭』を演奏したが、自分が書いた曲をこういう所で自分で演奏するのは、ちょっと面はゆい感じだ。
 
そしてセカンドアンコールは蘭子にも言われた『Crystal Tunes』である。この曲はグランドピアノに移って弾いたが、こういう静寂なホールで数百人の前でスタインウェイのコンサートグランドを弾くのは、ちょっとした快感だな、と千里は思った。
 

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その日は事務所側で用意してくれている都内のホテルに泊まる。
 
KARIONはライブは満席であったがCDはあまり売れていないようで、メンバーも1人1万円程度のホテルに泊まっていたようであるが、千里たちスタッフは更に安い多分6-7000円程度かなという感じのホテルであった。しかしお正月にオールジャパンを見に来た時に泊まった2人で5800円のホテルよりは随分マシである!
 
取り敢えず部屋にユニットバスではあるがお風呂が付いているのはありがたい。千里は今、大浴場などに行った場合、何かでうっかり声を出してしまったような時に「まさか男?」と思われる危険があるのである。
 
取り敢えずバスタブに身体を横たえてあちこちマッサージなどしていると自分の女体って結構美しいよなと思う。なんか美鳳さんが千里に欲情でもしたかのようなこと言ってたけど、これ結構自分でも惚れちゃうかもと思った。取り敢えずおちんちんは無いし、割れ目ちゃんはあるし、おっぱいはあるし。やっぱり女の子になって良かったなあ。
 
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お風呂からあがった後は、例の「女声を取り戻すための参考音源」をヘッドホンで聴きながら、問題集を開いて過去の□□大学の入試問題を解く。千里は今回のKARIONツアー参加って、意外に集中して勉強できる時間がたくさんできて良かったかもと思い始めていた。
 

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翌日はホテルのサービスの朝食を食べてきた後、チェックアウト時刻ぎりぎりまで勉強をしてから、10:50の《のぞみ》で大阪に移動する。新幹線の中でもずっと松田聖子を聴きながら勉強していた。
 
14時過ぎに会場に入り、今日も15時からリハーサルをする。
 
今日も蘭子は『優視線』のピアノのみを弾くことにするそうである。
 
「彼女歌わないんですか?」
と訊いてみたら
「実は今日までは契約上の問題で歌えないんですよ。楽器演奏のみOK。明日からは歌唱もできるので、今週末のライブからは歌わせるつもりです」
と畠山社長は説明していた。
 

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その日貴司は芦耶から誘われたコンサートに一緒に行くことにした。KARIONという名前を見て最初「カーイオン?」と読んで「カリオンだよ!」と言われる。「ごめーん。女の子アイドルの名前、全然分からなくて」と言ったら「もしかして男の子アイドルが好きだとか?」と芦耶から訊かれる。実は芦耶はずっと自分の身体に手を出さない貴司について、ひょっとしてホモってことはないよね?という疑惑も感じていたのである。
 
しかし貴司は「え?男の子のアイドルとかもいるんだっけ?」と答えたので、その疑惑はいったん保留となる。
 
昼間少し練習に出るということだったので、それが終わる16時頃、練習場の体育館前で待ち合わせ、早めの夕食を兼ねて最近人気らしいお寿司屋さんに行った。
 
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「これちょっと早めのバレンタイン」
と言ってチョコレートの箱を渡す。ゴディバのスペシャル版の大箱で清水の舞台から飛び降りるつもりで14,000円もの投資をして購入したものである。バレンタイン用の特別ラッピングもしてもらっている。
 
「わあ、ありがとう。僕、甘いもの大好きだから」
と言って笑顔で受け取ってくれる。
 
それでお寿司をつまみながらあれこれ話して、17時半頃お寿司屋さんを出てコンサート会場に入った。
 

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19時。
 
KARIONの大阪公演が始まる。
 
千里は今日も蘭子は客席で見ているのかなと思って演奏しながら客席を探してみたものの、今日は蘭子は居ないようであった。自分の出番の時までには来るのであろうが。
 
それでも何気なく客席に視線を泳がせていた時。
 
千里はとんでもないものを見てしまった。
 
貴司が20歳前後の女性と並んで座っていて、どうも雰囲気的に「恋人」っぽいのである。千里は、あんにゃろーと怒りが込み上げてきた。
 
でも考え直してみると、自分は声変わりしてしまったので恋人の座を降りると言った。だったら貴司が誰と付き合おうと自由だ。
 
しかし貴司はこないだの電話で、千里が女声を取り戻すことができたらまたふたりの関係を考え直したいと言った。それなのに、もう恋人を作ってそれをわざわざ私に見せつけるなんて!(別に貴司はこのライブに千里が出演しているとは知らない)
 
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千里は何か自分の論理が破綻しているような気もしたのだが、とにかく不愉快なことは確かである。そしてその不愉快な気分でもやもやしていた時、曲がクライマックスに達する。キーボード・パートに少し難しいくだりがある。そこを気合いを入れて弾く。その間、(アユを含めた)4人の歌声が盛り上がっていく。
 
そしてその上昇のピークに達した時、千里の頭の中で何かがコトッと音を立てたような気がした。
 
どこか外れていたスイッチがきちんと入ったような感覚。別の表現をすると、何か置きっ放しにしていた物を棚の上にちゃんと置いたような感覚であった。
 
千里はその時キーボードを弾きながら自然に声を出していた。
 
「アーアーアー!」
とコーラスの子たちと同じ音を歌う。キーボードは直接PAにつながっており、ピックアップで拾っている訳ではないので、千里が歌っても影響は無いはずと思ってノリで声を出してしまったのだが、それを歌った時千里は
 
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え!?
 
と思った。
 
今自分が出した声がソプラノのような気がしたのである。
 

その先を弾きながらさっきの所を思い出す。さっき弾いた所はミソラ(E5G5A5)だ。音は確かに合っていたと思う。オクターブ下を歌ったのではないはず。この音域はまちがいなくソプラノの上の方の音だ。
 
まさか女声が出た!?
 
その後2曲弾いたところでライブは休憩に入る。ゲスト・アーティストがカラオケで持ち歌を歌う。そこで千里は女性用控室に置かれているキーボードを使って、さっき出た声がもう一度出るか試してみた。
 
「アーアーアー」
とおそるおそる歌ってみる。これは間違い無くソプラノの声だ。出た!?
 
この声って裏声とは違うと千里は思った。
 
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出す時の感覚が裏声とは明らかに違う回路を経由しているのである。裏声がたとえて言えば喉の最奥部を細く使って水道の先に付けたホースの口を絞って出しているような感覚なのに対して、この時出た声は喉より更に後ろ、首の後ろの筋肉中?付近を通して、ストレス無くスムーズに声を出しているかのような感覚なのである。出す時の感覚はむしろふつうの実声を出す感覚に似ている。喉の負荷はほとんど無い。ただし経路が違う感じだ。
 
それに、裏声はちょっと金属っぽい感じがある。でもこの声はもっと柔らかい声だ。念のため自分の携帯でその声を録音して再生してみたが、ちゃんと女声のソプラノに聞こえる。勘違いではない。
 
千里は今出している声の出し方の感覚を忘れないようにしなければと思った。そのままキーボードを弾きながら音を上げ下げしてみる。
 
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E5からアーアーアーアーと少しずつ音を下げて行く。下の方はG4まで出た。F#4はやや不安定。F4を出そうとすると突然喉の下の方が震えて男声っぽくなるので慌てて止める。そこからまた1音ずつ上げていく。E5は割と楽に出る。どうもC5-G5付近がいちばん出しやすい感じだ。
 
そしてアーアーアーと少しずつ上げていくとA5までは楽に出て、B5は最初やや不安定であったものの、少し時間を掛けて出していると、きれいに出るようになる。いったん下に下がってまた上がっていくとB5、そしてC6まで出たが、C#6は全く出ない。空振りするような感覚になる。しかしC6はちゃんと出ることが確認できた。
 
でもこれ練習していたらもう少し上まで出そうな気がする。
 
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そんなことをしていたら、コーラス隊のソプラノ担当で、今日蘭子のパートを代理歌唱しているアユちゃんが寄ってくる。
 
「村山さん、凄くやわらかくて魅力的な声ですね」
と言う。
 
「実はここ1ヶ月くらい喉の調子がおかしくて、まともな声が出なかったんですよ」
と答えた千里は、自分がちゃんと女声で話していることに気づく。ただしこの声は1月12日まで使っていた声とは結構雰囲気が違う。割とお姉さんっぽい声だ。
 
そして話している時、この声が胸の少し高い部分から出てくる感覚だった。今までの実声が胸の乳首付近の高さから出てきていたとすれば、この声は胸のブラジャー上端から更に2cmくらい上の付近から出てくる感覚なのである。ただ今までの実声よりボリュームが小さい。
 
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「でもさっきの『Snow Squall in Summer』の盛り上がり部分で、私もキーボード弾きながらノリで声を出しちゃったら、ちゃんとした声が出たような気がしたんですよね。それでちょっと今確かめてみたんです」
と千里は続ける。
 
「音域どこまで出ます?」
「今の所G4からC6までみたい。オクターブ半くらい。やはり出る範囲が狭い。まだ本調子じゃないみたい」
 
「いや、その音域が出るなら『優視線』のソプラノ2が歌えるはずです」
「あ、そうかな?」
 
「ほら、これがスコアですけど、『優視線』のソプラノ2はこのF4が最低音でここのC6が最高音なんですよ」
「わあ。でも私F4今日は出ませんよ」
「このF4はA4で代用しても和声上問題無いんです」
「あ、ほんとだ!」
「だからG4まで出せたらこのパートは完璧に歌えるんですよ」
「なるほどー」
 
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「私は逆に上のC6が自信無いんです。確実に出るのはB♭5までで。C6も時々は出るんでリハの時やってみたら、空振りしちゃったんですよ」
「そうおっしゃってましたね!」
 
空振りというのは自分ではその音を出したつもりが実際の声が出てくれない現象で高音域を歌っていると、その時の調子次第で出るはずの音が出ないことがあるのである。
 
「黒木さんに話しますから、『優視線』のソプラノ2は村山さん、歌ってくれません?」
「やります!」
 
と千里は答えた。何よりも今この声の出し方を忘れないうちにたくさんリピートして、脳内に出し方を刻み込みたかったのである。
 

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