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■女の子たちのセンター試験(2)

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『あんたたち、どこに行ってたのよ?』
と千里は、やっと帰って来た《とうちゃん》《せいちゃん》《げんちゃん》《こうちゃん》に言った。
 
『どこって、出羽に治療に』
と《こうちゃん》が言うが
 
『それ、嘘はもうバレてんだけど』
と千里が言うと
『ごめーん』
と《こうちゃん》が答える。
 
『一応、主犯は俺だから。他の3人は俺に付き合わされただけで』
『ふーん。自分で責任を取るのは殊勝である』
『でも、絶対千里のためになることだからさあ』
『まあいいか。んじゃ、私が受験終わるまでは好きにしてていいよ。私もその件に関してはしばらく頭が回らないからさ。どっちみち声を何とかしないとどうにもならないから』
 
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『聞いたけど随分苦労してるみたいだな。でも千里はきっと女の声を取り戻せるよ』
『考えてみたんだけど、私が女の声を取り戻せなかったらタイムパラドックスが発生しちゃうんだよね。だから取り戻せるんだろうけど、どうやって取り戻すかは自分で試行錯誤するしかないからね』
 
『うん。頑張れよ。じゃ俺はもう少し工作を続ける』
『はいはい。ただし相手の女の子を殺したり大怪我させたりしたら1ヶ月メシ抜きだからね』
『1ヶ月も?しょうがないから自粛するよ。さ、青龍、玄武、また行くぞ』
と《こうちゃん》
 
『また行くの〜?』
と《せいちゃん》は明らかに嫌がっている。
 
『今度は可愛い女子中学生とかに変装させてやるからさ』
『嫌だ、もう女装するのは嫌だ!』
と《せいちゃん》は言うが
『俺は悪くないなあ。女子トイレにも女子更衣室にも入れるし。下着姿見放題』
と《げんちゃん》は言っている。
 
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痴漢か??
 
『あんたたち何やってんの?』
 
『俺は行かなくてもいいよな?』
と《とうちゃん》が言っている。
 
『すみません。騰蛇さんはまた何かあった時、よろしくお願いします』
 
ということで結局、《こうちゃん》は《せいちゃん》《げんちゃん》と一緒に再び大阪に向かったようであった。
 

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その日の夕方、千里が美輪子とふたりで晩御飯を食べていたら、家電に電話が掛かってくる。この日、美輪子が代引きで頼んでいた荷物が来ることになっていたので、美輪子はてっきりその在宅確認の電話かと思ったようであった。
 
「はいはい」
と言って取ったが、何かしかめ面をしている。ん?と思って千里が聞いているとどうもセールスの電話のようだ。美輪子が「いえ、要りませんから」と言って切ったのだが、また電話が鳴る。
 
美輪子は迷いつつも取ったのだが、今切ったセールスの電話のようだ。切られてもまた電話してくるなんて、酷いやつだ。それで美輪子は「いい加減にしてください」と言って、再度電話を切った。しかしまた電話が鳴る。
 
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千里は席を立つと、代わりに電話を取った。
「あんた、そう邪険にしないでよ」
などと向こうは言っている。なんか人に物を売る人の態度じゃないなぁ。そこで千里は男声のわざと低い部分を使って言った。
 
「お前、誰?」
 
すると相手はこちらが男が出たので、ちょっとビビったようである。
 
「あ、いえ、ご主人様でございますか。当方は**プランニングと申しまして。そちら様では、将来の生活設計にご不安とかはございませんでしょうか」
 
相手はなかなか要件を言わずにまどろっこしいトークをする。
 
「何の用事?」
とドスの利いた声で言う。
 
「はい、最近しばしば将来の不安はあるのに銀行の定期預金とかはあまりにも利子が少なくてとおっしゃる方が多くてですね」
 
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相手はあくまで目的を言わない。
 
「名前を名乗りなさい。要らないと言っているのにこれ以上掛けてきたら消費者生活センターに通報するから」
 
「あ、いえ、その・・・」
「じゃ切るよ」
と言って千里は電話を切った。
 
するともう掛かってこなかった。
 
「千里、ありがとう。男の人がいるって便利ね」
「賢二さんと結婚しなよ」
と千里はここの所使っている《ささやき声》に戻して言った。
 
「そうだなあ。あいつも一応男かも知れないし」
「あれは付いてるんでしょ?」
「うん。付いていることは月に数回は確認してる」
 

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芦耶はイライラしていた。
 
これまで「頻繁に目撃していた」貴司の本命恋人っぽかった女子高生の姿をもう1ヶ月近く見ない。貴司にそれとなく訊くと言葉をにごすものの、どうも本格的にそちらとは破綻したのではないかと芦耶は考えていた。
 
それなら自分が本命の座に座れそうなのに、貴司が凄まじく浮気をしている風だからである。
 
ここ1ヶ月ほどの間に貴司の周囲で見かけた女性は10人近い。ずっと見かけていた女子高生とは明らかに違う制服を着た女子高生、19-21歳くらいの大学生か専門学校生という感じの子、25-26歳くらいのOL風の女性、更には和服を着た30代(?)の女性まで見た。しかも自分には仕事があるからとか練習があるからなどと言ってデートの約束を断った上で、そういう子たちと会っているようなのである。
 
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さすがにあの和服の女性は恋人候補ではないかも知れないが、なんか突然こういうのが増えてないか?
 
もしかしたら今まで例の女子高生に使っていたエネルギーが余ってしまって、手当たり次第に手を出しているのかも? だったらそのエネルギーを私にそそいで欲しいのに〜。
 
取り敢えずデート代わりにと思い、2月1日(日)のKARION大阪公演のチケットを2枚押さえた。年末には仕事が入って空振りになってしまったものの日帰り旅行に応じる姿勢を見せてくれたし、一応自分は恋人とみなされているのかなあ、と思う。ライブが終わった後は思い切ってホテルに誘ってみようかなあ、と芦耶は思いをはせ、その先の想像をすることで自分の心のイライラを抑えようとしていた。避妊具も買っちゃおうっと。
 
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貴司は正直迷っていた。
 
現時点では声変わりが来てしまったらしい千里と「恋人」ではいられないと思っている。それで電話してお互い友だちであり続けることは同意した。
 
それで考えてしまったのが芦耶との関係である。
 
そもそも貴司は芦耶と恋人になるつもりでいた。以前から千里は新たに恋人を作ってもいいよと言っていたしと思うのだが、どうも芦耶との関係は誰かに邪魔されている感覚がある。
 
千里が近くに居るのなら千里自身が邪魔しているのだろうと思うのだが、千里がどんなに「浮気を見付ける名人」であっても、北海道に居て大阪の自分の浮気を防ぐのは無理だろうから、ただの偶然なのだろうとも思う。
 
それで結局この数ヶ月、貴司の心の中では千里と芦耶が天秤に掛けられていたのである。ところが千里との恋愛関係がいったん消えてしまった今、芦耶との関係をもっと進めてもいいのか、迷ってしまうのである。
 
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「なんか彼女とホテルに行こうとしたら絶対邪魔が入りそうな気がするなあ」
と貴司は独り言をつぶやいたが、その近くでその貴司の言葉に頷く影があることに貴司は気づかなかった。
 

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1月31日(土)。千里は旭川955(JAL)1140羽田の便で東京に出た。機内ではずっと勉強していたが、こういう所で勉強するのって結構よく頭に入る、というのを千里は自覚した。羽田から京急と地下鉄を使い、赤坂にあるコンサートホールに行く。バックステージパスで裏口から入る。
 
「やっほー、美空ちゃん」
「やっほー、千里さん」
と声を交わしたのだが
 
「千里さん、声どうしたの?」
と美空から言われる。
「うん。ちょっと喉を痛めたみたいで。風邪薬しっかり飲んでるし、みんなには移さないように本番中以外はマスクしてるから」
「OKOK」
 
リーダーの和泉、そして小風にも挨拶する。事務所の社長・畠山さんと三島さんにも挨拶する。三島さんは「お久しぶり〜」と言っていた。なお、この時点で和泉・小風も、畠山さんも千里が醍醐春海であることを知らない。単に雨宮先生から紹介してもらった代理伴奏者ということになっている。
 
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バンドの人たち、グロッケン奏者とヴァイオリン奏者、コーラス隊の子たちにも挨拶する。譜面が変更になったりしている点が無いか尋ねると黒木さんが自分のスコアと比べながらチェックしてくれた。
 
今日の千里のお仕事は、このコンサートの前半の全てと後半の一部でピアノ又はキーボードを弾くことである。この日、蘭子は後半からしか入ることができないらしい。
 
15時からリハーサルをするが渡されたヴェネツィアンマスクに戸惑う。
 
「これ付けるんですか?」
「そうそう。ちなみに衣装はこれ。今回は全員同じ衣装で、これで顔を隠すから誰が誰だか分からない。年齢性別不明」
 
なるほど。そのみんなが同じ格好をしている所でうまく蘭子を出し入れする訳だ。
 
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蘭子に『優視線』のピアノを弾かせることはどうも最初から決めてあったようである。
 
和泉は本番直前に楽屋に入ってきた蘭子に今日のピアノよろしくね、と言って衣装と譜面を渡すと、蘭子が「今日は観客だから」と言って断る。すると和泉はこんなことを言った。
 
「じゃ『優視線』のピアノだけでも弾いてよ。あの間奏の神プレイの所は今回頼んだピアニストさんも譜面見て『すみません。これは私には弾けません』と言ったから簡易な間奏に差し替えようかとも言ってたんだけどさ。お客さんはCDやPVを聴いてあのプレイを聴きに来てると思う。だからやって欲しい。これはKARION公演を聴きに来たお客さんのためだよ」
 
そんな簡易版の譜面など見てないし、私も『弾けません』とも言っていないのだが(リハーサルでは適当に誤魔化して弾いた)、蘭子に承知させる方便なのだろう。しかし蘭子は黙って和泉の言葉を聞いていた。
 
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「分かった。そういうことなら、やる」
と彼女は答えた。それでまた楽屋から出て行った。
 
どうも彼女は今日はマリを連れてこのライブに来ているようである。彼女はどうもKARIONとローズ+リリーの二股をしていくつもりのようだが、いわば恋人連れで別の恋人に会いに来たようなもので、まるで東京体育館に彼女を連れて来た貴司みたいだなと千里は思った。
 

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結局蘭子は『優視線』だけを弾くことになったので、他の曲は全部お願いしますと言われて千里は了承した。
 
本番前にコーラス隊の子たちと話していた和泉と黒木さんが難しい顔をして千里の所に来た。
 
「済みません、村山さんでしたっけ? あなたソプラノで歌がうまいそうですね」
「あ、はい」
 
「実は今日のライブでは蘭子の歌唱パートは大半をコーラス隊のアユちゃんに歌ってもらうんですけど、彼女、この『優視線』のここのC6音を出す自信が無いというんですよ。出る時もあるけど安定しては出ないらしいんですよね。リハーサルの時はちょっと誤魔化し気味に歌ったということなのですが」
 
「気づかなかったですね」
「まあ和泉ちゃんがその上のE6音を出しているから、音を出さなくてもみんな気づかないといえば気づかないんですけどね」
「蘭子ならD6まで出るので、それ前提で歌唱パートが書かれているんですよ」
「なるほどー」
 
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「それで今ちょっと美空ちゃんと話してたら、村山さんはE6まで出ると聞いたので。それでこの優視線はピアノを蘭子ちゃんが弾くし、この曲だけ蘭子ちゃんのソプラノ2パートを村山さんに歌ってもらえないかと思って」
 
うーん。それは声変わりが発生する前までの話だなあ、と千里は思う。
 
「すみません。普段なら出る所なんですけど、ちょっと今喉を痛めていて」
「あ、確かに何か、かすれ声ですね」
 
「やむを得ない。ここは適当に誤魔化しちゃおうか」
「ですねー。私がその上の音を歌っているからこの音だけ出てなくても、耳の良い人以外には分からないかも」
 
「お役に立てなくてごめんなさい」
「いえいえ」
 

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