広告:まりあ†ほりっく 第1巻 [DVD]
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■女の子たちのティップオフ(4)

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「気持ち良かったぁ」
と永子は第1ピリオドをフル出場して顔を紅潮させている。
 
「永子のおかげで、私も頑張ろうという気になった」
と揚羽。
 
「今日は揚羽がエースなんだから、エースの自覚でチームを引っ張っていってよ」
と千里は言う。
 
「はい。頑張ります。この試合、勝ちましょう」
「よし、行こう」
 
第2ピリオドは、雪子/千里/寿絵/揚羽/麻樹というメンツにする。第1ピリオドあまり差を付けられなかったことで向こうも結構必死になってくるが、こちらも気合いでは負けていない。
 
それで第2ピリオドはN高校がリードを奪い、18対23で、前半合計では38対41と相手に3点差を付ける。
 
第3ピリオドでは、雪子・揚羽をいったん下げて、メグミ・夏恋で行く。スモールフォワードも穂礼が入る。
 
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今夏恋はN高校にとって重要な「Sixth Girl」になっている。メグミは元々巧いので、この交替ではほとんど戦力が落ちない。それどころか夏恋はスリーも結構得意で、撃てたらいつでも撃って良いよと言っておいたらこのピリオド4回のスリーを撃ち2本を入れた。外した2本も麻樹さんが飛び込んで行ってリバウンドを押さえて得点に結び付けた。
 
それで第3ピリオドを終えると、54対65と点差は開いている。
 
そして第4ピリオドでは、また雪子/千里/寿絵/リリカ/揚羽というメンツに戻して順調に得点を重ね、最終的に70対87で勝利した。
 

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整列して挨拶してから、向こうのキャプテンが
 
「あんたたち強〜い。さすがインターハイ3位のチームだね」
と褒めてくれた。
 
「そちら3年生で行き先の決まってない子が居たら、うちで歓迎するけど」
「じゃ伝えておきます」
と千里は笑顔で答えた。
 
「もし男子の中でも有望な子がいたら、性転換したら受け入れると言っておいて」
「ああ、性転換したがってる男子がいますよ」
「まじ? うまい子は歓迎するよ」
「性転換したらお祝いに可愛いスカートあげるよ」
 
そんなやりとりを聞いて、ベンチで立って見ている薫が苦笑いしていた。
 

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そして15時から女子の決勝戦が行われる。相手は札幌のクラブチームであった。これまで何度もオールジャパンに出場している所だ。試合前の練習を見ていて、ここは実業団レベルだと千里は思った。
 
物凄く強い!
 
マッチングの上手い雪子でも、さすがにこのレベルと対峙すると分が悪い。積極的に雪子にプレスを掛け、ボールを奪いに来るので、雪子は最初から激しく消耗している。
 
それで雪子の負担が軽くなるように、千里・寿絵でボール運びやパスの起点の分担をする。サインプレイで、各攻撃機会で誰が起点になるかというのを変更すると、相手もさすがにそれで少し混乱した。
 
それでも向こうはパワーとスピードが凄い。
 
充分体格の良いリリカや揚羽がゴール下の争いで弾き飛ばされる感じである。リバウンドも向こうが8割くらい確保する感じで、完全にゲームの主導権は向こうに行ってしまった。
 
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第1ピリオドを終えた所で24対16と8点差を付けられる。
 

第2ピリオド、夏恋をポイントガードに起用してみる。夏恋は雪子に比べてスピードでは落ちるものの、体格が良いので、向こうの強いプレスにもそんなにめげずに、何とか頑張れる。
 
揚羽も第1ピリオドはリバウンドで完敗だったので気合いを入れ直して出て行っている。それで第1ピリオドほど悲惨なことにはならなくなる。
 
それで第2ピリオドはそれで20対18と、第1ピリオドよりは随分マシな展開になった。前半を終えて44対34と10点差である。
 

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第3ピリオドではポイントガードにメグミを使い、消耗が激しい揚羽も休ませて3年生2人を入れる。メグミ/千里/穂礼/リリカ/麻樹という配置だ。このピリオドでは、相手がさすがに少し疲れて来たこともあり、60対52と点差を縮めることができた。このピリオドだけで見ると16対18である。
 
そして第4ピリオドは、夏恋を今度はスモールフォワードの位置で出す。ポイントガードは雪子に戻す。雪子/千里/夏恋/揚羽/麻樹 というメンツである。
 
すると向こうが疲れているのと、雪子も第1ピリオドでやられまくったのを怒りに換えて気合いを入れているので、このピリオドでは雪子がゲームをうまくコントロールできた。相手がプレスに来ても、さっと抜いてしまう。プレスに行って抜かれるとその分ディフェンスが弱くなるので、その間に揚羽が点を取りに行く。
 
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それで第4ピリオド前半は8対12とこちらがリードする状態で推移する。残り3分となった所で、点数累計は73対70とわずか3点差まで詰め寄る。
 

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こちらが攻め上がる。向こうも最初の頃ほどを雪子を封じられないと認識して、無理なプレスはせずに下がって守っている。そこで左側奥に居る麻樹を見ながら右奥に居る揚羽にパス。
 
この雪子のフェイントには、結構相手は翻弄されていた。それで揚羽がボールを持ってドライブインしていくので、相手ディフェンダーが慌ててそちらに集中する。そこで揚羽はジャンプして空中から千里にパス。千里がスリーポイントラインの外側から撃って3点。73対73ととうとう同点!
 
向こうが攻めてくる。こちらはゾーンで守っている。何度か強引にドリブルで突破しようとしたものの、堅い守りに阻まれる。ショットクロックの残り数字が少なくなってくる。それでとうとうスリーを撃つ。
 
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外れるも、そこに飛び込んで行った向こうのセンターの人がリバウンドを押さえ、そのまま自分でシュートしてゴール。75対73。
 
こちらが攻め上がる。千里のスリーがあったことを思い出したかのように千里にはいちばん上手い人が付く。それで雪子は夏恋にパスする。すると夏恋はそのままスリーポイントラインの外側からシュートする。
 
夏恋のスリーは必ずしも確率は高くないのだが、これが入る。75対76で逆転!
 

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夏恋が思わずガッツポーズをして揚羽とタッチしていた。その後2点ずつ取って残り1分で77対78。
 
相手が攻めて来る。またこちらはゾーンで守っているので、なかなか突破できない。もうショットクロックが無いというところで相手ポイントガードが自らスリーを撃つ。
 
これがバックボードに当たり、更にリングを2回回ってから、ネットに吸い込まれる。今度は向こうがガッツポーズをしていた。80対78。
 
こちらが攻め上がる。残り時間は36秒。点差を考えて向こうはスリーを警戒し、いちばん強そうな人と次に強そうな人が千里と夏恋に貼り付く。そこで麻樹さんにパスする。麻樹さんが左から、揚羽が右から同時に中に進入して、相手の注意を分散させた上で、結局揚羽がシュートする。
 
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相手のブロックが決まるがそのリバウンドを麻樹さんが必死に押さえて少し離れた所にいた夏恋にトス。夏恋が再度撃ってゴール。80対80。残り26秒!
 
残り時間がとっても微妙なので相手はその時間を使い切る作戦で来る。フロントコートまでは素早くボールをリレーしたものの、そのあとパスを回して時間を稼ぐ。千里や雪子がパスカットを試みるも、そう簡単には取られない。
 
そして残り6秒(ショットクロックは残り4秒)となった所でやっとシュート。これが外れるも、リバウンドを相手センターと揚羽で争い、いったん向こうのセンターが確保。
 
しかしそこで麻樹さんがボールを相手から奪い取る。その直前から千里はもう走り出している。麻樹さんから雪子、雪子から千里へとボールが送られる。千里はスリーポイントラインのかなり近くまで来ていた。しかし千里を使ったカウンターを警戒していた相手フォワードが千里の前にギリギリで回り込む。
 
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残り時間は2秒。
 
ゆっくり対峙する訳にはいかない。もう抜いている時間もない。選択肢は撃つことだけである。シュートのフェイントを入れるが相手は騙されない。更にフェイント・・・・と思わせて千里はやや不自然な体勢からほぼ上半身のバネだけでシュートした。
 
しかし相手は根性で片足だけで踏み切って思いっきり腕を伸ばして千里のシュートをブロックしようとする。
 
指がわずかにかすった。
 
しかし千里は低い弾道で速いボールで撃ったので、軌道はほとんど変わらなかった。
 

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ボールは少しだけずれてバックボードに当たったものの、そのままネットに吸い込まれる。
 
80対83!
 
そして残りは1.2秒。
 
相手選手が天を仰いだ。
 
向こうはタイムを取って、ロングスローインからシュートを狙う作戦に来た。しかも3点差なのでスリーポイントを撃たなければ追いつけない。
 
スリーポイントライン近くに相手選手が並ぶ。そこにN高校のメンバーが張り付く。特に向こうの正シューターの人には千里、サブのシューターの人には揚羽が付いた。
 
相手スモールフォワードの人がスローインしたボールはサブのシューターさんの所に飛んでくる。その人と揚羽の間でキャッチ争い。これを何とか相手シューターさんは確保したものの、麻樹がきれいにブロックを決めた。
 
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残り時間が無いのでシュートタイミングにフェイントを入れる余裕が無く、完璧に麻樹にタイミングを合わせられてしまったのである。
 
そこでブザー。
 
試合終了!
 

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整列する。
 
「83対80で旭川N高校の勝ち」
「ありがとうございました」
 
試合後、向こうの人たちが千里や揚羽とたくさんハグした。雪子に初期段階で無茶苦茶プレスを掛けていた人も雪子と握手した。
 
こうして暢子と留実子を欠くN高校は穂礼と麻樹の応援参加のおかげで全道総合選手権を制し、お正月のオールジャパン出場を決めたのであった。
 

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「いや、君たちは強い。高校生チームが総合を制したのは本当に凄い」
と帰りのバスの中で宇田先生は半ば浮かれたように言っていたが、千里は体力も精神力も使い切って半ば放心状態だった。
 
薫が千里の胸をツンツンする。
 
「あんたが男だったら、それ痴漢行為」
「私は女だから、女の子同士の戯れだよ」
「もう女になったの?」
「私は最初から女だよ」
「薫、ほんとはもうおちんちん無いんでしょ?」
「内緒」
「あんたレズじゃないよね?」
「まさか。ストレートだよ」
 
ふたりの会話を後ろの席で聞いた夏恋が悩むような顔をしていた。
 
 
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