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■女子大生たちの天体観測(4)

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1時間ほど泳いでから、プール水浴していた感じの雨宮先生と一緒にプールを出る。正直日食観察の間、暑いので身体がかなりほてっていたのをプールで鎮められた感があった。水着は体育館内のトイレで洗って絞り、水着用のビニール製バッグに入れておいた。後で洗濯機・乾燥機に掛ける必要がある。
 
夕食を運動公園内に設置された屋台村で取り、仮眠した後、(7月23日)早朝3:30にバスに乗り込んで名瀬港へ移動する。そして5:50発のフェリーに乗り込んだ。
 
この船は鹿児島から名瀬(奄美)まではノンストップであるが、沖縄まで行くのには、途中、徳之島・沖永良部島・与論島と停泊していく。沖縄本島でも那覇港に着く前に本部港に寄る。
 
千里はほぼ寝ていたのだが、与論島では周囲の女性客で「凄くきれい。見て見て」などと言っていた人がいたので、つられてデッキに出て見ると、物凄く美しくて感動した。こんな美しい景色が日本にあったのかと千里は驚いた。
 
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18:40。定刻にクイーンコーラル8は那覇港に着く。船を降りた後、3人はタクシーで波上宮に行った。
 
「神社って本当は午前中にお参りすべきものかも知れないけど、ここは夕日が美しいのよ」
と雨宮先生が言う。
 
この日の日没は19:21である。
 
「ちょっと高速道路が邪魔ですね」
「まあ無いものと思えば」
「そう思うことにしました」
「おちんちんが付いていても、無いものと思っておけば女の意識で居られるのと同じ」
「その例え、私や雨宮先生は分かるけど、上島さんは分からないと思います」
 
と千里が言うと上島さんも苦笑している。
 

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千里たちが波上宮で夕日を見ていたら、千里の腰のあたりをトントンとする子が居る。見ると6-7歳くらいの感じの女の子で、白い小袖に緋袴を穿いている。髪が長い。
 
「君、神社の子?」
と千里が訊くと
 
「これお母様から渡された」
と言って何やら鈴を3つ渡された。
 
「ありがとう。お母さんはどこにいるの?」
「あっち」
と言って女の子が指すのは神社の本殿である。
 
ハッとして再度女の子を見ようとしたが、そこには誰も居なかった。
 

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「どうかした?」
と雨宮先生から尋ねられたが、千里は微笑んで
「ちょっとここの神様とおしゃべりしていただけです」
と答えた。
 
波上宮にお参りした後は、取り敢えず、この日泊まる那覇市内のホテルに移動する。荷物を置いてからあらためて食事に出た。雨宮先生の案内なので、何となく怪しげな町並みに入って行く。
 
「モーリー、女の子連れてること忘れるなよ」
などと上島さんが言う。
 
「あんた男装させとけば良かった」
「やはりその手のお店に行くおつもりでしたか」
 
結局入ったのは、ごく庶民的な飯屋さんという感じである。雨宮先生たちはビール(オリオンビール)を頼んでいたが、千里は水だけ飲んでいた。ゴーヤチャンプルーを頼んだのだが、物凄く美味しかった。ボリュームがあって、最近よく食べている千里もさすがに食べきれなかったので、半分は雨宮先生に手伝ってもらった。
 
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なお、奄美で使用した水着や、その他着替えなどをホテルのコインランドリーで洗濯・乾燥させておいた。これは千里が雨宮先生や上島さんの分もやってあげた。
 

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翌日7月24日。千葉。
 
千葉市内ではあるが、とっても辺境な場所に立つ校舎でこの日も夏期講座が行われていた。千里はこの日は2回目の講師である。
 
初日に生徒に随分気に入られてしまい、何だか女生徒の中には背広を着た千里の胸に触ってみて、確かにおっぱいがあることを確認するような子までいた。その日の最初の授業。千里が来る前に、1人の男子生徒が黒板消しをドアの隙間にはさんでいた。
 
古典的な悪戯だが、すたれない悪戯でもある。
 
やがて《千里》が入ってくる。
 
ドアを開ける。黒板消しが落ちる。
 
教室内で忍び笑いの声が聞こえる。
 
ところが黒板消しは《千里》の身体を「通過」して床に落ちてしまった。
 
一瞬、教室内がシーンとなる。
 
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《千里》は
「あれ?こんな所に黒板消しが落ちてる。どうしたのかな?」
などと言って、それを拾い上げると、黒板の所に戻し。
 
「Hey, Lets's begin today's Lesson. Open your textbook page 7.」
と言ってその日の授業を始めた。
 

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一方24日。那覇。
 
折角沖縄まで来たしということで、この日は首里城を見た後、国際通りを少しのんびりと歩いた上でゆいレールで空港に移動し、空港内で昼食を取った。アグー豚のトンカツを食べたが美味しかった。
 
「そうだ。村山君」
と上島さんが言う。
 
「はい」
 
「日食の時の君の龍笛は素晴らしかった。だから約束通り100万円払うよ」
と言って、上島さんは厚い札束の入った沖縄銀行の封筒を千里に渡した。おそらくどこかのATMなどで降ろしてきたのだろう。
 
「頂きます」
と言って千里は封筒を受け取る。
「受け取りを書きます」
と言って、伝票の用紙を出して金額・日付を記入し、署名捺印して上島さんに渡した。名目は演奏料とした。
 
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「だから名前教えて」
と上島さんは伝票を受け取って言った。
 
「雨宮先生、どこまで言っていいのでしょうか?」
と千里は雨宮先生に訊き直した。
 
「じゃ私が教えておげるよ」
と言って、先生は千里を引き継いで話す。
 
「この子は木ノ下大吉の一部」
「ほほぉ」
「そして東堂千一夜の一部」
「なるほど」
「東郷誠一の一部」
「ふむふむ」
「まあ他にも色々」
 
「ゴーストライターの中の人か」
「年間20曲くらい、そういうので書いてるよね?」
「昨年はそんなものですかね。上島さんはゴーストがお嫌いと聞いたので、あまり名乗りたくなかったのですが」
 
「僕は自分では絶対に使わないけど、ある意味、今の音楽業界では必要悪と思っている」
と上島さんは言う。
 
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「でも年間20曲って、多作だね。年はいくつ?女子大生?」
「大学1年生です。でも上島先生から見たら寡作だと思います」
と千里は言うが
「そんなこと言ったらモーツァルトだって寡作」
と雨宮先生は言う。
 
「そうかもね」
と言って上島先生は笑い
「大学1年生なら、ローズ+リリーのケイちゃんの1つ上か」
と言う。
 
「ケイちゃんは格が違います。とてもかないません。あの子は凄すぎる」
と千里。
 
「うん。ケイは天才。千里は凡才」
と雨宮先生も言う。
 
「ええ。私は凡才の星です」
「うんうん。そんな感じ。ミリオン行くような曲は書けないけど、そこそこの曲はけっこう書く」
「私は便利屋なんです」
と千里は言う。
 
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「この子は器用なんだよ。さすがに名前を出せないけど、様々な作曲家のゴーストをしているけど、本人より本人っぽい曲を書いちゃう」
「それはやはり天才だよ」
 
「コピーの天才ですね」
「なるほど。でも君、自分の名前では書かないの?」
 
千里は微笑んだ。
 
「これ私の名刺です」
と言って、千里は醍醐春海の名刺を出した。
 
「この名前は記憶がある。鈴木聖子さんの曲を書いてるでしょ?」
「いくつか書かせて頂きました」
「他にもいたな・・・・。KARIONに書いてる。カップリング曲とかだけど」
「よくご存じですね」
 
「凄く素朴でストレートな曲を書くと思っていた。多分音楽の専門教育を受けていない人。でもちゃんと独学で最低限のことを勉強している人」
 
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「まあ私はそんなものです。実は私のアドバイザーが音楽大学のピアノ科に居るんですよ」
「へー!」
「実は彼女も何個か醍醐春海の名前で書いています。ですから醍醐春海は本当は私と彼女の共同ペンネームなんです」
と千里は言うが
 
「もっとも9割以上があんただよね」
と雨宮先生。
 
「そんなものだと思います」
 
「だけど君、もう少し専門的な教育受けたら、もっと書けるようになると思うなあ。君も充分ミリオン作曲家になれる素質があると思うよ。音楽の専門学校とかにでも通う気無い?大学生でもダブルスクールすればいい」
と上島さんは言う。
 
「千里、もうひとつの名刺も出しなよ」
「いいんですか?」
「私が許可する」
 
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「この名刺は今まで10枚も配っていないのですが」
と言って、千里は鴨乃清見の名刺を出した。
 
「えーーーーーーーー!???」
と上島さんは絶句した。
 

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午後の飛行機で鹿児島空港に戻った。
 
連絡バスで鹿児島市街地まで行く。雨宮先生と上島さんに天文館通りで待っていてもらっている間に千里が、20日朝から駐めていた車の所に戻る。駐車場の所まで来た頃、蓮菜から電話が掛かって来て、やっと那覇に戻ったということだった。
 
「お疲れ様」
「疲れたぁ」
「すぐ帰るの?」
「飛行機が26日のしか取れなかったんだよ。だから明日は沖縄観光」
「楽しんでね」
「今日はもう寝る!」
「うんうん、それがいい」
 

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車を動かして、天文館通りでふたりをピックアップし、市街地から少し離れた所にある和風レストランに付けた。
 
「少し早いけど晩御飯にしよう」
と言って3人で中に入り、取り敢えずテーブルに座った。
 
薩摩黒豚のトンカツを頼んで食べる。今日は昼も晩もトンカツだ。
 
「アグー豚もいいけど、黒豚もいい」
「どちらも美味しいです」
 
上島さんが地酒とかも頼む?と言ったのだが、雨宮先生は
「今日はアルコール抜きにしようよ」
と言うので、3人でコーヒーを飲んでいる。
 
充分料理を堪能してから、デザートを食べながら会話していた時、雨宮先生が
 
「あ、ごめん。千里。車の中にバッグ忘れて来ちゃった。とってきてくれる?」
と言うので、千里は
「分かりました」
と答えて席を立ち、駐車場の方へ行った。
 
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千里が戻ってくるまで雨宮と上島は色々話している。内容は結構色々と「悪い相談」である。
 
それで少し盛り上がっていた時、やっとテーブルに戻って来て座る人影がある。
 
「あ、村山君、お疲れ様」
と上島は声を掛けたが、テーブルの向かい側に座っている人物を見て、ポカーンという顔になる。
 
「茉莉花!?」
 
それは上島の奥さんの茉莉花(春風アルト)であった。
 
「じゃ私は消えるから、あとはゆっくりとね。車はお盆前までに東京近辺の適当な営業所で返却すればいいから」
と言って、雨宮は席を立った。
 
「でも仕事が・・・・」
「車にはインバーターも付けてるし、あんたのパソコンも持って来てもらって通信環境も確認してもらっておいたから」
 
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「アルトちゃん、車のキーは持ってるよね?」
と雨宮は確認する。
「はい。千里ちゃんと交換しましたから」
と言ってキーを見せる。
 
このレストランで落ち合うことにして春風アルトは鹿児島市内のレンタカー屋さんでプリウスを借りて、ここに乗り付けた。そして千里と車の中身を入れ替えたのである。
 
つまりアルトが借りてきたプリウスに今、千里が用意した旅の道具と雨宮の荷物が載っていて、東京からここまで運転してきたエスティマに、春風アルトと上島の着替えや荷物が載っている状態である。
 
ただしブースターケーブル、毛布、地図、調理器具や食料品・電池などアルトさんに確認してエスティマ側に残したものもある。後日余ったものは東京で返してもらうことにしている。
 
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「雷ちゃん、あまり仕事ばかりしているとアルトさんに振られるよ。たまにはふたりでゆっくりと旅でも楽しむといい。最近あんた楽曲の品質が落ちてたでしょ。一度リフレッシュしなきゃだめ」
と雨宮。
 
「エスティマって中がゆったりしてるわね。セックスする時も楽そう」
などと春風アルトは言う。
 
「旅の資金もあるし」
と言って、春風アルトが見せるのは、沖縄銀行の封筒である。
 
「それは・・・」
と言って上島は絶句する。
 
「じゃね! あ、お勘定は払っておいてね」
と言って雨宮は手を振ってレストランを出た。
 

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玄関の所で立って待っていた千里の案内で駐車場に駐めているプリウスに乗りこむ。
 
「じゃ福岡までドライブを楽しもうか」
 
帰りの飛行機は福岡−羽田を予約しているのである。鹿児島−羽田間は満席で取れなかった。来る時、東京から車で走ってきたのも、日食の直前は、東京−奄美、東京−鹿児島どころか、東京−福岡でさえ取れなかったからである。
 
25日になるとさすがにもう福岡−東京の席は取れた。
 
なお今車に積んでいる荷物は福岡から宅急便で送る予定である。車は福岡で乗り捨てる。
 
「はい。運転します」
と言って千里は車をスタートさせた。
 
「アルトちゃんから100万円の受け取りはもらってるよね?」
「はい。頂いています。名目は預かり金ということで」
 
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「うん。それでいい。私は寝てていいかな?」
「ええ。どうぞ」
 
それで雨宮先生は目を瞑る。千里は車を鹿児島ICに向ける。
 
「でもあんたいつ寝てるの?」
「運転しながら寝てますよ」
「だったらいいね」
 
と言って雨宮先生はプリウスの後部座席で眠ってしまった。
 
 
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女子大生たちの天体観測(4)

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