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■女子大生たちの天体観測(2)

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「実はね。この少女みたいにしてるのが実は男なのよ」
「えーーー!?」
「年もまるで17-18に見えるけど実は40歳だから」
「それは逆に凄いです!」
 
「そして私は本物の女、そちらのおっさんみたいに見えるのも女。だから、男1人と女3人だったのよ」
と雨宮先生。
 
仲居さんはしばらく考えていた。
 
そしておもむろに笑顔になって言った。
 
「じつは内緒なんですけど、私、男なんです。ですから、やはり男2女2ですね」
と仲居さんが言うと
 
「えーーーーーーーーーーー!???」
と千里も雨宮先生も上島さんも驚いて声をあげた。
 
「あんた、ちんちん付いてるの?」
と雨宮先生は再確認する。
 
「ついてますよ。毎日オナニーしてますから」
などと仲居さん。
 
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この自称男の仲居さん(1万円のチップはしっかりもらった)が楽しくて場が随分盛り上がった。本当は客席にあまり長居する予定ではなかったようだが、30分くらい雨宮先生と『おばちゃんトーク』をしていた。
 
21時前に打ち上げにしたが、会計を雨宮先生がカードで払っているのを見ると10万円越えている。恐ろしいと千里は思った。ほんとに美味しかったし、何だか楽しかったけどね!
 

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千里が車を出す。今度は広島岩国道路を西行し、そのまま山陽自動車道に入り、ひたすら走る。ふたりは寝ている。千里も岩国ICを過ぎたあたりで眠くなってきたので《きーちゃん》に身体を預けて眠った。
 
壇ノ浦で起こしてと言われていたので、夜23時頃、《きーちゃん》が壇ノ浦PAに駐めて、千里に起きるように言う。それで千里自身覚醒し、雨宮先生たちを起こした。
 
「ここは絶対夜景で見るべきだよね」
と言って雨宮先生は関門橋を見上げる。
 
「美しいよね、関門橋の夜景は」
「飛行機の中から見ても夜景が美しいからね」
 
3人でしばらく見とれていたら、上島さんが何かを探すようにする。
 
「しまった。五線紙持って来てない。モーリー持ってる?」
 
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「少女Aは持ってるよね?」
と雨宮先生はこちらに投げてくる。
 
「はい」
と言って取りだして、ボールペンと一緒に上島さんに渡した。
 
「少女A、私にも2〜3枚」
と雨宮先生が言う
 
それで雨宮先生にも五線紙とボールペンを渡す。そして千里自身も五線紙に音符を綴っていった。
 

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五線紙はみんな使うだろうということで、上島さんにも雨宮先生にも30枚くらいずつ渡した。それで車に戻り、九州を南下することになる。
 
しかしこの付近は自動車道の組合せが複雑だ。
 
(九州道)門司IC(関門橋)下関IC(中国道)山口JCT(山陽道)
 
この門司ICで北九州高速にも接続しているので注意が必要だ。また関門橋をはさんで、壇ノ浦(だんのうら)PAと和布刈(めかり)PAがあるが、九州方面に行く時は壇ノ浦PAのみを通り、本州方面に行く時は和布刈PAのみを通る。ここに門司港ICも絡んでややこしいことになっている。
 
また今は関門橋から九州自動車道に直接入れるのだが、昔は関門橋からいったん北九州道路(現北九州高速)を経由して九州自動車道に入るというややこしい接続であった。直結部分の工事が完成して少しは分かりやすくなったし随分速く通れるようになった。
 
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ここは吹田付近・草津〜大山崎付近・亀山付近などと並ぶ、進行に注意の必要なエリアである。
 

壇ノ浦PAで車に戻る時に、上島さんが「あれ?」と声を出す。
 
「どうかしました?」
「少女Aちゃん、若葉なの?」
「はい。3月に免許を取りましたのでまだ4ヶ月経っていません」
 
「嘘!物凄く運転上手いのに!」
 
「まあ少女Aは免許を取ってからは4ヶ月でも、運転歴は40年だから」
と雨宮先生。
 
「少女A、何歳なの?」
「自称18歳です」
「本当は180歳よね」
「あんた1800歳でしょ?と言われたことあります」
 
「モーリーの周囲には年齢や性別のよく分からない人がいる」
と上島さんは首を振りながら言っていた。
 

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千里はふたりに寝ていてくださいと言い車を出す。少ししたらふたりとも実際寝てしまったようなので、今度は《こうちゃん》に身体を預けて自分も眠る。
 
7月20日。朝6時頃に鹿児島まで来る。最後のSAである桜島SAで駐めて、朝御飯を食べる。そしてその後、九州自動車道を最南端まで走って鹿児島ICで降り、市内の天文館通りまで行く。予め現地の知人に調べてもらっていた数日駐めてもよい駐車場に入れて、その後、身の回りの荷物だけを持って海岸の方へ向かう。
 
「少女A、上島の荷物を持ちなさい」
「はい、上島さん、お持ちします」
 
「いや、女の子に荷物持たせる訳には」
と上島さんは言うが
 
「大丈夫。こいつ男だから」
と雨宮先生は言う。
 
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「忘れてた! でも大丈夫? 体形はふつうに女の子だけど」
「私、バスケットの選手だから大丈夫ですよ」
「インターハイでBEST4まで行ったチームの中心選手だから」
「凄い!」
「スリーポイント女王も取ったもんね」
「ええ」
 
それで上島さんは荷物を千里に預けてくれたが、その後で何だか考えている。
 
「スリーポイント女王って、女子選手の表彰だよね?」
「そうですね。男がスリーポイント女王になることはないかと」
 
「じゃ、君、女子選手として出たの?」
「はい、そうですけど」
「だって男なのに?」
「男の方で出ようとしたら、お前ほんとに男か?といわれて、病院で検査受けさせられたら、女の方に出なさいと言われたので」
 
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上島さんはまた考えている。
 
「それって、既に性転換手術済みだったということ?」
「まさか。高校生が性転換手術なんかできるわけがありません」
「じゃ、君、男なのに女子の試合に出たの?」
「まさか。女でなければ女子の試合には出られません」
 
「分からん!」
と上島さんは素直に音を上げた。
 

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集合場所のドルフィンポート日食館で受付をする。免許証を見せて名簿と照合する方式で、まるで人気コンサートのライブの入場みたいに厳重である。
 
「まあ人気ライブを見に行くんだもんね」
「出演は太陽さんと月さんですね」
 
「だけど1人8万円というライブは物凄いね」
「超ビッグアーティストですね。私の友人は特等席に申し込んだので38万円ですよ。那覇からの往復だから那覇までの交通費・宿泊費を入れると48万円」
 
「おお、凄い! よく見えるんだろうね」
「でも特等席への交通が大変みたいです。島に渡るフェリーも200人定員なのに来る人は500人いるので3日前から入らないといけないらしいです」
 
「それって途中で嫌になっても出られないよね?」
「交通手段は無いですね。どうしても出たければ泳いで出るしかないかと」
「サメの餌になるだけだな」
 
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やがてバスに乗り込み鹿児島港に行く。大きなフェリーに乗り込む。中の席は男女に分けられている。
 
「少女Aありがとね。この後は自分で持つよ」
と上島さんが言うので荷物を返す。
 
それで千里は女性船室、上島さんと雨宮先生は男性船室に行ったものの、男性がたくさん寝ている所に雨宮先生が入って行ったら、ぎょっとされたのではと千里は思った。
 

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フェリーはお昼前11:00に出発し、夜22:00に奄美大島の名瀬港に到着する。千里はその間ひたすら寝ていた。意識は眠らせていても身体はずっと車を運転していたので疲れている。このあたりは散々冬の出羽山を山駆けしたので鍛えてあるので、もつのだが、経験上4−5日の徹夜稼働までは大丈夫のようだと千里は思っていた。
 
18日の朝から20日の昼まで54時間ほど、広島で数時間の仮眠を取った以外は起きていたので、やはり目が覚めた時は身体がだるかった。名瀬港で船を降り、バスで太陽が丘総合運動公園に入った。ここの体育館に簡易ベッドが大量に並べてあり、そこで宿泊するのである。ここも当然男女別である。
 
千里は右の方にある女性エリアに入る。出発前日の17日に送っておいた荷物がベッドの下に置かれていた。中身を確認しておく。
 
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一方、雨宮先生と上島さんは左側の男性エリアに入ったのだが、雨宮先生は「ここ場所が違いますよ」とスタッフから声を掛けられたらしい。
 
夕方。蓮菜から「暇だよぉ」というメールがあったので、30分くらい通話でおしゃべりした。おそらく他の友人にも掛けているのだろうが、これでは持っていった充電用の乾電池が本番前に無くなるのではと千里は心配した。
 

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翌朝、21日。折角奄美に来たから観光しようと言われ、下見を兼ねてタクシーを呼び、島内を巡った。
 
「中心食が通るのはこの奄美より北にあるトカラ諸島な訳だろ? ということはこの島の中でもいちばん北の端に行くのがいちばん条件はいいんじゃないかな」
と上島さんが言う。
 
それでタクシーの運転手さんに頼んで島の北端まで行ってもらった。
 
奄美大島の中心部・名瀬は島全体を100に分けると北から30くらいの位置にあり、千里たちが宿泊する太陽が丘総合運動公園は、北から10くらいの位置にある。近畿日本ツーリストが推奨している観測場所はその近くの宇宿漁港である。すぐそばに奄美空港もある。
 
上島さんが提案したのはそこから更に北の笠利崎まで行かないか?ということである。北端の灯台そばに小さな駐車場がある。タクシーには待ってもらっていて、そこから灯台の所まで階段を登っていく。
 
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「待って。2人とも歩くの速い」
と上島さんが哀れな声を出している。
 
「雷ちゃん、運動不足」
「少女Aはバスケしているというから分かるけど、モーリーなんでこんなに速く歩けるのさ?」
「私、毎日100km走っているわよ」
「君たちの言葉はどこまで信用して良いのかさっぱり分からない」
 

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千里たちの他にも数組、笠利崎を下見しているグループがあった。
 
「太陽は明日どちらに見えるんだっけ?」
「こちらです」
と言って千里は方位磁針を見ながら言う。
 
「ここまで登らなくてもいいわね。さっきの駐車場の所でいい。あそこからも見えるよね?」
「方角的には問題無いです。でも車があふれて明日は駐車場まで到達できないかも」
「路上駐車多いだろうね。まあその時は歩けばいいし」
「やはり歩くのか」
と上島さんは弱音を吐いている。
 
「どのくらい継続時間が違うのかな?」
と雨宮先生が訊く。
 
「国立天文台のサイトで確認したのですが、宇宿漁港では3:15, 笠利崎では3:54で、39秒長くなるようです」
と千里はメモを見ながら答える。
 
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「40秒違うと、少しは晴れる可能性あるわよね?」
 
今日、天気は曇り。空は厚い雲で覆われている。
 
来た道を降りて、タクシーに戻り、ついでに島の南の方まで行ってもらう。まるでおとぎ話の中の島のようなトビラ島を見た所で上島さんはまた五線紙に色々書き込んでいた。
 
「運転手さん、他に奄美で見所といったらどこですかね?」
「タンギョの滝かなあ」
「ああ、滝があるんですか」
「ええ。落差が120mくらいの」
「120m!? それは凄い。ぜひ見たい」
 
「いや、それが車では近づけないんですよ」
「じゃ歩いて行こう」
「ガイドがいないと無理です。ちょっと訊いてみます」
 
それで運転手さんが問い合わせてくれたら幸いにも、他のグループで滝を見に行こうとしていた人たちがいたということで、同行させてもらうことになった。
 
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「お待たせして済みません」
と言って現地でガイドさんと、見学しに行こうとしていたグループの人に挨拶する。
 
秋月さん・大宅さんという30歳くらいの男性2人組であった。こちらを見ると千里に少し不安げな視線を投げられたが
 
「この子、山歩きは慣れてますから。山の中の村で生まれ育ったんですよ」
などと雨宮先生が言うと、同行を認めてくれた。
 
それで歩いて行くが・・・・
 
例によって上島さんが遅れる。途中でついに雨宮先生が通告する。
 
「雷ちゃん。あんた無理。ここで待ってなさい」
「分かった。そうする。写真のお土産頼む」
と言われて、上島さんのアルファ7デジタルを千里が預かった。雨宮先生はEOSの何だか凄そうなカメラを持っている。
 
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その後、ガイドさんと秋月さん・大宅さん・雨宮先生・千里の5人で山道を進み、岩場を歩き、長靴に履き替えて川の中を歩いて、ようやくその滝に到達する。
 

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「これは凄い」
と雨宮先生が声をあげる。千里も清々しい気持ちで滝を見上げる。汗を掻いてここまで来ただけのことがあった。
 
雨宮先生、そして秋月さん・大宅さんが写真を撮っている。
 
が千里はただ滝を見ている。
 
「あんた写真撮らないの?」
「済みません。私、言ってなかったけど、コンパクトカメラでもまともな写真を撮れたことないです」
 
「あんた機械音痴か!」
「すみませーん」
 
「いいよ。私がそちらのカメラでも撮る」
と言って、雨宮先生が2台のカメラでたくさん写真を撮ってくれた。
 
「私が撮ったから、カメラ持つのはあんた」
「はい。お持ちします」
 
ということで帰りは千里が2つのカメラと三脚を持って帰った。
 
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女子大生たちの天体観測(2)

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