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■桜色の日々・小4編(1)

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(c)Eriko Kawaguchi 2011-12-31
 
それは小学1年くらいの時だったと思う。どこかバスに乗ってお出かけするというので、私は桜色のシャツを着て黒いタイツを穿かされ、ベージュのショートパンツ(この当時はまだベージュという言葉を知らず白っぽい短パンと思っていた)を穿かされたが、タイツにもショートパンツにも前の穴が無かった。
「これじゃ、おしっこできないよ」と母に言ったが、「タイツもズポンも下げてすればいいのよ」と言われた。
 
この時着た桜色のシャツが、ボタンの付き方がふつう着ているのと逆でボタンを留めにくかったのを覚えている。髪もブラシできれいに整えられ、桜の花の形の髪飾りを付けてもらったのが何だか可愛くて嬉しかった。
 
その日は兄2人と父はおらず、私と母2人だけのお出かけだったが、長距離バスに乗って、結構遠くまで行った。泊まりではなかったが、何か妙に印象に残っている。
 
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母のお友達?とお昼を食べた気がするのだが、トイレに行こうと思って席を立ちお店の人に場所を訊いて言われた所に行くと、小便器が無くて個室がずらっと並んだトイレだった。何か変わったトイレだなと思い、個室に入りズボンとタイツを下げて座っておしっこをした。
 
そこがもしかして女子トイレだったのではないかと思い至ったのは、小学3〜4年生になってからである。
 
この時のことを後になって母に訊いたことがあるが、母はそういうのは記憶がないという。でもあんな可愛い格好をしてお出かけしたのはあの時だけなので、私にはとてもいい思い出である。バスに乗り合わせたおばあちゃんから「可愛いね」と言ってもらったのも子供心に嬉しかった。
 
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小学3年生のクリスマスイブに私は夢を見た。ただ「夢」とは思うのだが、どこまでが夢でどこまでが現実なのか、よく分からない夢でもある。その日は父は出張中で母と兄弟3人でのクリスマスイブだったが、母から兄弟3人に大中小の箱のプレゼントをもらった。
 
天尚(あまお)兄がもらった大きな箱には顕微鏡が入っていて、兄は物凄く喜んでいた。風史(かざみ)兄がもらった中くらいの箱にはゲーム機とドラクエのソフトが入っていた。そして私がもらった小さな箱にはサンタ人形が入っていたが、その時、そのサンタ人形がなぜか物凄く嬉しかった記憶がある。(ところが後で聞いてみると、母は私にサンタ人形などを贈ったことは無かったはずでお菓子だったと思うと言うのである)
 
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その晩、サンタ人形を枕元に置いて寝ていたのだが、夜中そのサンタ人形が大きくなってふつうの人間のサイズになった。そしてその人形はこんなことを言った。
「君がいちばん望んでいるものを届けに来た」
「何がもらえるんですか?」
「君、女の子になりたいでしょ?」
私はドキッとした。そんなことは確かに時々考えていた。
 
「だから君を女の子にしてあげる。ズボンとパンツを脱いで」
私はドキドキしながら布団の中でズボンとブリーフを脱いだ。サンタは私の布団をめくると
「こういうのが付いてると女の子になれないからね。取ってあげるね」
と言って、私のおちんちんとたまたまをつかむと、ぎゅっと引っ張って身体から取ってしまった。
私がお股を見ると、もうおちんちんとたまたまは無くなって、代わりに割れ目ちゃんができていた。
 
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「これでもう君は女の子だよ」
「でも・・・・突然女の子になっちゃったら、お母さんから叱られちゃう」
「おやおや、それは困るね。じゃ、君が女の子になっちゃったことがバレないように、偽物のおちんちんを付けてあげるよ」
 
そういうとサンタは私のお股に何かをぐいっと押しつけた。すると以前と同じような感じで、そこにはおちんちんが付いていた。
 
「そのおちんちんは偽物だから。付いてないのと同じ。君は女の子だからね」
「はい」
「その偽物のおちんちんは、たぶん君が20歳頃になった時に、無くなるよ」
と言うとサンタはどこかに去って行った。
 
朝起きた時、サンタ人形は枕元に無かった。私は自分のお股を触ってみたがおちんちんは付いていた。
 
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でも自分としてもこの後のおちんちんというのは「偽物」かも知れないという気がしていた。このおちんちんはあまり大きくなることがなく、自分でいじっても硬くはなるものの長さは10cmくらいまでにしかならず、また、実際問題として、自分であまりそれを大きくしたりすることもあまり無かった。
 
ずっと後になってこの夢のことを親友の清花に言ったら、きっと思春期の性意識の目覚めだったんじゃないの?と言われた。「晴音はきっと元々自分は女の子だという意識を持っていたんだよ。それをその時、明確に自己認識したんじゃないかな」などと彼女は言っていた。
 

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そしてそれは小学4年生の2学期のことであった。この年、私たちのクラスは学芸会で「白雪姫」をすることになった。出演する役は、白雪姫・王様・お后様・狩人・鏡・七人の小人・王子様である。基本的には白雪姫・お后様が女の子、王様・狩人・鏡が男の子の役だが、王子様については白雪姫とのキスシーンがあるということから女子を割り当てる方向で考えることになった。小人は男の子4人・女の子3人という配役で、合計男子7人・女子6人ということになる。
 
この配役をクラス会で決めていったのだが、まず白雪姫についてはクラスで一二を争う美人のカオリが多数の推薦で決まり。本人もやる気十分であった。王子様役は女子で成績トップの令子が推されて本人も了承した。
 
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令子とは私は小1の時から仲が良かったが、いつも凛々しい令子と、いつも女の子っぽい私の組み合わせは、小学1〜2年の頃は「男女逆転カップル」だね、などとよく友人たちから、からかわれたものである。実際彼女がタキシードを着て、私がウエディングドレスを着て結婚式を挙げるシーンなどというのを結構想像した。もっとも恋愛的な意味で彼女を好きになったことはなく、彼女とはずっと友だち感覚であり、その関係は中学高校になっても続き、30代になった今でも、彼女とはよくメールのやりとりをしている。
 
王様役は体格の良い高岡君が自分で名乗りを上げた。狩人役は最初立候補者がいなかったのだが「じゃ、僕がしようかな」と司会をしていた学級委員の荻野君が言い出して、みんなの拍手で決まる。鏡役には低音の声が特徴的な伊藤君が「やってみようかな」と言って拍手される。そして主要な役で最後まで決まらなかったのが、お后様の役であった。
 
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基本的には女子の役なのだが「あんたやったら?」などと言われた子が「嫌だ」
と拒否したりして、全く決まらないのである。あまりにも決まらないので白雪姫役に決まっていたカオリが「私がやろうか?誰か白雪姫を代わってよ」などと言い出したが、みんな「西本さんが白雪姫しないと締まらない」と言って反対する。司会役の荻野君がかなり困っていたようであった。
 
実は当時私は荻野君のことが好きだった。男の子同士になってしまうから告白とかはできなかったけど。そこで好きな荻野君が困っているのを見て、私は黙っていられなくなった。
「すみません。僕がお后様しましょうか?」
と言うと、あちこちから「あぁ!」という声が上がった。
 
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「本来女子の役だけど、吉岡さんなら行けるよね」と数人が言う。
司会の荻野君がホッとしたような顔をしていた。
「お后様の衣装と、リンゴ売りのおばあさんの衣装と2種類、どちらも女物の服を着ることになるけど、いい?」と訊く。
「ええ、全然問題無いです」と私は答えた。
 
そのあと小人役の7人については荻野君が「もう僕から指名しちゃいます」といって指名する。指名された人たちは「まあ小人ならいいか」と言って受けてくれて、配役が決まった。
 
2学期最初の学級会でこれが決まり、出演することになった13人で毎日放課後練習をした。台本は先生が用意してくれていて、先生がいろいろ指導をしてくれた。
 
むろん練習は衣装など着けずに普段着でしていた。衣装については、PTAの方に相談して、そういうのを作るのが得意な人が3人で分担して作ってくれることになり、出演者のサイズが測られ、そのサイズでお願いすることになった。
 
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私は「鏡よ鏡、この世で一番美しいのは誰?」という有名なセリフを自分の高い声を使ってわざと機械的な雰囲気で話し、おばあさんの扮装の方では逆に低い声でお年寄りっぽい雰囲気を出して「名演技だ!」などと褒められた。
 
9月の下旬には衣装が出来てきたので、付けてみて練習をした。私は堂々と女物の服が着れるので、ワクワクした。最初にリンゴ売りのおばあさんの服を身につけてみる。地味な服で着心地はいまいちだけど、私はスカートだというだけでけっこう気分が良かった。
 
次にお城でのお后様の衣装。悪役なので、少し毒々しいくらいに真っ赤な服になっている。白雪姫の白い衣装と対照的である。白雪姫の衣装が、裾のふわっと広がった服なので、こちらは逆にタイトスカート風である。
 
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「吉岡君、おばあさんの方は何とかなるかと思ってたけど、お城でのお后様の衣装の方も、なんか違和感無いね」などと担任の先生が感心していたが、王子役の令子や、小人その2役で私と1-2年でも同じクラスだったみちるなどが「当然ですよ」などと言って笑っていた。
 
私がその服で歩きながら演技していたら、小人その4役の好美が
「スカートなんて穿き慣れてないと思うのに、よく転ばないね」
と感心したふうに言ったが、隣にいたみちるが
「たぶん穿き慣れてるから平気なんだよ」
などと言って笑っている。私はポリポリと頭を掻いた。
 
練習は順調に進み、いよいよ10月の学芸会本番になった。
 

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その日の朝の学級朝礼で担任の先生が難しい顔をして入ってきた。起立・礼・着席とやった後「実は困ったことになった」と言い出す。
 
「今日の学芸会で白雪姫役をすることになっていた西本(カオリ)さんが凄い熱を出して。風邪のようだということで、今日はとても出て来られないらしい」
「えー!?」という声があちこちから上がる。
 
「そこで申し訳ないけど緊急に誰か今日の白雪姫の役を代わって欲しい」
「だって、セリフが覚えられませんよ」
「うん。それで一緒に出る予定だった子で誰か白雪姫のセリフが入っている人はいない?」
みんな顔を見合わせている。
 
「我妻(令子)さん、どう?僕は頼めるの君しかいないと思ったんだけど」と先生。
「無理です。私、最後の方にちょっと出るだけだから、全然まじめにみんなの練習を聞いてなかったし」
 
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「先生、もっと前の方から出てる子でないと無理ですよ」と学級委員の荻野君。
「そうなると、小人役の平野さんか、雪下さんか、畑中さんか・・・・」
「無理です。私たちほとんどセリフないから、台本自体あまりまともに見てないです」
と平野さん。
 
その時、令子が私に向かって「ハルちゃん、セリフ入ってない?」と訊いた。
「・・・・覚えてると思う」
「ハルちゃん、やりなよ、白雪姫。他にできる人いないよ」
 
「え?でも男の子が?」と先生が言ったが、みちるも
「吉岡さんなら大丈夫ですよ。半分女の子みたいなもんだもん」と言う。
 
そこで緊急に白雪姫のセリフのあるところを会話形式でやってみる。
 
荻野君が演じる狩人との会話は、私自身が荻野君のことを好きなので熱心に見ていたのでスムーズに会話が出来た。小人との会話も何となく覚えていたので、2ヶ所訂正されただけで、ほぼ間違いなく言えた。そしてリンゴ売りのおばあさんとの会話はもちろん全部言える。ここの部分、リンゴ売りのおばあさん役は、小人その1役の木村君がやってくれた。
 
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「完璧だね。これなら本番までの間に2回くらい練習したら行けますよ」と荻野君。
 
「ハルちゃん、声を出す時に無理に高い声出さなくていいよ」と令子。
「高すぎて不自然になってる。お后様はそれでもいいんだけど、白雪姫はもっと自然な声が良い」
「でも男の子っぽくなっちゃうかなと思って、ってこのくらいのトーン?」
「うんうん。そのくらいの方がかえって女の子っぽく聞こえるよ」
「ほんと?じゃこのくらいのトーンでしゃべってみよう」
 
「でも白雪姫の衣装が着れる?カオリ、かなり細いよ」
「でも吉岡さんもかなり細いよね」
「着てみます」と言い、衣装を持って衝立の陰に行き着換える。可愛い衣装だ。真っ白なドレス。裾がふわっと広がっている。身につけてみるとウェストはむしろ少し余るくらいの感じだった。タイトスカートのお后様の衣装でも結構ワクワクしたが、こんな可愛い衣装はまた素敵だ。不思議な気分になる。
 
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出て行くと全員無言である。
 
「えっと・・・・みんなどうしたの?」
「いや、吉岡さん、なんでそんなに可愛くなっちゃうのよ?」とみちる。
「ハルちゃんが女の子の服着れるのは知ってたし、というか小学1年の頃に私の家に遊びに来た時によく着せ替え人形にしちゃってたしね。でもこんなに可愛くなるとは思わなかったよ」と令子。
 
担任の先生も驚いて声が出ないようだったが、我に返ったように
「よし、これで全体の通し練習してみよう」と言う。
 
結局、お后様役は、お城の所を(小人その2役だった)みちる、リンゴ売りのおばあさん役を小人その1役の木村君がすることになり、ふたりは必死でセリフを覚えていた。小人その1とその2は小人その3,4の子が横滑りし、3,4にはこのお芝居に出る予定の無かった子を2人徴用してやってもらうことになった。(小人3〜7は単独のセリフは無く、小人全員で言うセリフのみである)
 
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私が着る予定だったお后様の衣装を着ようとしたみちるが
「これ細すぎる。私ウェストが入らない」などと言う。
家庭科の金野先生にお願いして緊急にウェストの調整をしてもらうことにした。
 
リンゴ売りのおばあさんの衣装は当然男の子の木村君には入らない。これはウエストサイズが違いすぎて救いようがないので、先生が緊急に自宅の奥さんに電話しておばあさんっぽい衣装を調達して急いで持って来てもらうことにした。
 

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桜色の日々・小4編(1)

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