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■偽娘竹取物語(1)

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(C)Eriko Kawaguchi 2016-04-08
 
今は昔、竹取の翁(おきな)という者があった。野山に入って竹を取っては、様々なことに使っていた。名を讃岐造(さぬきのみやつこ)と言った。造は長年、顔は大したことないものの気立ての優しい耶穂という女と連れ添っていた。ふたりの仲はとても良かったものの、どうしても子供が授からない。子宝恵綬に御利益があるという月読神社に二十三夜参りなどもしたものの子は得られなかった。
 
翁がもう子供はできなかったなあと諦めていた、52-53歳の頃(*1)、いつものように野山に入って竹を取ろうとした時、よく通っている所で、竹の中に根元の所が光っている竹を見る。何だろうと思って近づいて見ると、竹の筒の中が光っている。そこには上等な赤い衣に包まれた10cmほどの大きさの美しい容姿の赤ちゃんが居た。
 
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「ここは私がいつも朝夕見ている場所だ。こんな所に居たというのはきっと私の子供になるべき人なのだろう」
と翁は言うと、てのひらに乗せて家に連れ帰った。そして妻の耶穂に預けて育てさせた。
 
翁と媼は「もう子供は得られないと思っていたのに子を授けて下さったのは、やはりずっとお参りしていた月読神社の御利益(ごりやく)なのだろう」と言い、月ごとにお参りを欠かさなかった。
 

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この子は竹の中から見つけたので「竹子」という名を付けて育てたが、本当に美しい子であった。子供はすくすくと育った。
 
竹子は優しい性格で、その優しさを周囲に及ぼす力を持っていた。近所の子供たちが争いごとをしていても、竹子が近寄って「喧嘩はやめようよ」と言うとなぜか争う気持ちが減り、仲直りするのであった。
 
またこの子はいつも笑顔でいることが多く、この子が部屋の中にいるだけで、その部屋全体が明るく感じられるという不思議な子であった。
 
この子を見つけた後、竹取の翁が竹を取っていると、しばしば竹の中に黄金が入っている竹を見つけることが重なった。そこで翁はどんどんお金持ちになっていった。家も立派な物に建て替え、使用人も数人使うほどになった。
 
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竹子が9歳の時のことである。
 
それは雨上がりの日であった。その日も翁と媼に連れられて月読神社にお参りに行っていたのだが、竹子は神社の参道の近く、崖のそばに見たこともないような白い美しい花が咲いているのを見た。
 
竹子は優しい性格なので花を安易に手折(たお)ったりしないのだが、近くで見てみようと思いそのそばまで寄る。
 
母の耶穂が「危ないよ」と声を掛けたのだが、その前に竹子は足をすべらせ、崖から落ちそうになった。
 
耶穂が悲鳴をあげる。竹子は崖の近くにあった木の根をつかみ、かろうじて落下はしなかったものの、自力であがることはできず、木の根を掴む手の力が尽きたらいつ落ちてもおかしくない状態である。
 
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そこに12-13歳くらいの身なりの良い少年が走り寄った。竹子が右手で木の根をつかんでいたので、空いている左手を自分の両手でしっかりとつかむ。そして
 
「誰か手伝え」
と大きな声で言った。
 
すると少年の従者らしい屈強な男性が2人そばに寄り、竹子の両手を1本ずつつかんで、「それ!」と掛け声を掛けて引っぱり、竹子を上に引き上げた。
 

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「どちら様でしょうか。娘を助けてくださってありがとうございます」
 
と翁と媼は地面に頭を付けて少年と従者に感謝した。
 
「いや、名乗るほどの者ではない。しかし娘、美しいな」
「ありがとうございます」
「お互いもう少しおとなであったら、すぐにも求婚したい所だ」
 
などと少年は笑顔で言って、従者たちとともに去って行った。
 
助けてもらった竹子はその少年の後ろ姿をぼーっとした様子で見送った。
 

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竹子はやがて15歳(*2)になるので、成人式をさせることにする。
 
昔は女は数え年の十五歳、今で言うと中学2年生で笄年(けいねん)である。
 
髪上げをして髪に笄(こうがい)を付け、女子の礼服である裳(も)を着せて、3日連続の宴を催したが、本人は帳(とばり)の内側に入れて、安易に人に顔は見せないようにする。しかしその声の美しさや、姫が吹く竹の横笛の音色の素敵さが、集まってくれた多数の人々に本人の美しさも連想させた。
 
成人名については三室戸斎部の秋田という人を呼んで付けさせた。秋田は「若竹(なよたけ)の赫夜(かぐや)姫(*3)」と名付けた。若竹とはまだ硬化していない柔らかい竹のこと、赫(カク/あかあか)とは明るく火が燃えている様で、この子がいることで夜も明るくなることを表している。
 
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美しい姫がいるらしいと聞き、竹取の翁の家の周囲には、尊きも卑しきも多数の男が出没するようになる。彼らは一目姫の顔を見よう、一声姫の声を聞こうと待ち構えているものの、なかなか姫の顔を見ることはできない。文を贈る者もあるが、かぐや姫は一切お返事を書かない。
 
壁に穴を開けて覗き見しようとする者、木に登って覗こうとする者もある。夜中に、あるいは壁を乗り越えて、あるいは地面に穴を掘ってまで侵入しようとする者まで出る始末で、翁は姫の部屋の外に武術の心得のある女房を置いて警戒せざるを得なくなる。
 
使用人に言伝を頼もうとする者もいるが、使用人たちは一切お断りするように言われているので、どうにもならない。
 
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しかし難攻不落な女ほど男は燃えるものである。姫が自分を好きになるようにと祈祷したり、高価な贈り物をしようとする者もあるが、祈祷しても状況は変わらず、贈り物の類いも一切姫は受け取らなかった。
 

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「竹や、今日もこれだけ文を頂いたのだけど」
と母の耶穂は言って、20通くらいの文が入った籠をかぐやの前に出した。
 
「だって私、男の人と結婚できないもん」
とかぐやは困ったように言った。
 
「そうだよね〜。どうしたものかねぇ」
と耶穂も困ったように言った。
 
「私が本当の女の子だったら良かったのにね」
 
「いや、お前は充分女の子だよ。でも男の子として育てられたかった?」
「ううん。私は男の子として育てられいても、いつか自分で女の子として生きる道を選んだと思う」
 

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竹子は拾われた時、とても美しく華やかな衣に包まれていたので、翁はてっきり女の子と思い込んでしまった。しかし世話をするように言われた耶穂はその子におむつを付けようとして戸惑った。その子には女の子には余計な物が付いていたのである。しかし翁が「美人に育つかなあ」などと言っているので、耶穂はとても竹子の性別のことを言えず、女の子のように育てた。
 
そして実際に竹子は性格的に女の子であった。それは成長するにつれ明確になっていった。耶穂が何度か竹子の前に男の服と女の服を並べ、着たい方を着せてあげると言ったが、いつも竹子は女の服を選んだ。そして竹子は女らしい遊びを好んだ。まだ自由に外に出していた5〜6歳の頃、竹子はいつも近所の女の子たちと一緒に遊んでいた。
 
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竹子が10歳になった時、耶穂はあらためて訊いた。
 
「お前は女になりたいのか?それとも男に戻りたいと思うか?」
 
竹子は答えた。
「私は女になりたいです。男にはなりたくありません」
 
「お前、女になるのであれば、やがてはどなたかの妻にならなければなりませんよ」
と耶穂に言われた時、竹子は1年ほど前、月読神社にお参りしていた時に崖から落ちそうになったのを助けてくれた男の子のことがふと思い出された。
 
「私、誰かの奥さんにしてもらえたらいいなあ」
 
「そうだね。この広い世の中にはお前のようなものでも良いと言ってくださる殿方もあるかも知れない」
 
耶穂は、女の子になりたがっている竹子が男っぽく育って行かないようにするため、竹子の「男の素」を取ることにした。それで帰化人でその手の作業の経験がある医者を密かに呼び、充分な報酬を提示して決して誰にも言わぬことと言って竹子の服の裙をめくり、股間を露出させる。
 
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「これは・・・・」
とさすがに医者が驚く。
 
「両方の玉を取ってください」
と耶穂は依頼する。
 
「姫様、それでよいのですか?」
と医師は本人にも確認する。
 
「はい、お願いします」
と竹子は答える。
 
それで医者はその部分をよくよく水で洗った上で、更に酒を吹きかけると、竹子の玉袋を小刀で小さく切開し、中から玉を1個ずつ絞り出すようにして取り出しては、2個とも身体から切り離した。この間竹子は激痛に耐えていた。医師は切開した跡に新しい麻布(*4)を当て、傷が治るまで時々新しい麻布に交換するよう告げて立ち去った。
 
傷が治るのに一週間ほど掛かったし、その間痛みが続いていたものの、この年齢で玉を抜いたことにより、竹子は男のようなごつごつした筋肉質の身体になるのを避けられ、ヒゲやスネ毛が生えたりもせず、柔らかく脂肪質の身体で、声も普通の女のように高い声のまま今に至るのである。
 
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かぐや姫には多数の求婚者が現れては消えたが、やがて5人の求婚者が残り、日々熱心に文をくれた。
 
耶穂はかぐやが本当に困っているようなので、伯母で巫女をしている都女に相談した。すると都女は占いを立てた上で
 
「その5人の求婚者にこういうものを要求しなさい。それを持って来たら結婚すると言うのです」
 
「でも、竹子はさっきも言ったように、実は女ではないのですが・・・」
 
「これを本当に持って来たら、その道具を使って、竹子を真の女に変えることができるのです」
 
「そうなのですか!?」
「やり方はそれぞれ詳しく書いたものを追ってまとめて渡しますから」
 

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それで耶穂は都女が書いた5つの品の一覧を夫に渡し、5人の求婚者に提示してもらった。
 
「姫が申すには、あなた方5人の方々がみな素晴らしい方ばかりで、どなたに嫁いでよいか判断がつかないと申します。それで、今から申す物を最初に持ってきてくださった方に嫁ぎたいと申しております。どれも入手するのがひじょうに大変だと思うのですが」
と翁は言う。
 
「姫のことは何物にも代えがたいほど好きです。多少の困難があっても必ずやそれを手に入れてきましょう」
と5人を代表して、大伴御行(おおとものみゆき)が言った。
 
「それでは、石作皇子(いしつくりのみこ)様には、お釈迦様が母君から頂いて使っていたという仏の御石の鉢を。庫持皇子(くらもちのみこ)様には、東の海に蓬莱という山があり、そこに白銀を根とし黄金を茎とし白い珠を実として立つ木があるので、その一枝を折って持って来てください。最後の(*5)阿倍右大臣様には、中国の奥地にあるという火鼠の皮衣をお願いします。大伴大納言様には龍が首につけているという五色に光る珠を。石上中納言様には、燕が持っているという子安貝をひとつ取って持って来て下さい」
 
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と翁は読み上げる。
 
この姫の依頼品を聞いた5人の貴人たちは内容に絶句し、
 
「要するに2度とうちに来るなという意味か?」
などと言いながら腕を組んだり、首をひねったりしながら帰って行った。
 

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石作皇子は最初はもう諦めた!と思ったものの、しばらくする内にやはり何とかしたいという気持ちが起きる。そこでまずは「石作皇子は仏の御石の鉢を探しに天竺に出発なさった」という報せをかぐや姫の所に届けさせた。
 
そして皇子はその後自分が家に居ないように装うため、最初は隠れていようかと思ったものの、それでは食事などがままならない。そこで女装して、皇子に仕える女房の振りをしてしばらく過ごすことにした。
 
女性用の内衣・上衣を着て下半身には裙(くん:裳の一種)を穿く。髪も双髻に結わせ、ヒゲを良く剃った上でおしろいを塗り、口紅・頬紅を入れ、唇の両端には靨鈿(めんでん)を打ち、額には花模様の花鈿(かでん)も入れた。
 
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石作皇子がそんな格好をしているのを見た父親の麻呂皇子は仰天する。
 
「お前、何やってるのだ?どこぞのなかなか靡かない姫の所に盛んに文をやっているとは聞いたが、もしや振られてもう男を辞める気になったか?」
 
「父上、私はしばらく旅に出ているということにしておいてください」
「それは構わんが、お前、女になりたいのか?」
「男が女になれるものですか?」
 
「普通そんなことは神様か仏様にしかできないが、唐土からの帰化人に一度聞いたことがある。遠い天竺の毘尼精舎という所に伝わる、お釈迦様の生母・摩耶夫人が使っていた鉢で、曼虎故羅という植物をすり下ろし、その汁を飲むと男が女に、女が男に変わるのだそうだ。お前、女になりたいのなら、天竺まで行って、その鉢を取ってくるか?」
 
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「いや、実は姫からその鉢を所望されて、私は今その鉢を取りに天竺まで出かけたことになっているのです」
 
「なぜそなたが懸想している姫は、そんなとんでもないものを所望するのだ?」
 
「要するにまだ結婚したくないということなのでしょうが、私は何とか口説き落とすつもりです」
 
「まあ良いが、そんな格好していて、お前が誰かから文をもらうようになったりしても知らんぞ」
 
と父親は呆れたように言った。
 

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