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■夏の日の想い出・受験生の秋(4)

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11月下旬の連休。ボクらは当然もう寝る間も惜しんで受験勉強をしているはずだったのだが、なぜかボクらは沖縄行きの飛行機に乗っていた。
 
それは△△社に届けられた1通の手紙によるものだった。
 
沖縄に住む女子高生が難病と闘っていた。まだ充分な治療法が確立していない病気で、もう2年ほど入院生活を送っているのだが、入院中にたまたま聴いたローズ+リリーの曲に惚れ込み、すっかりファンになってしまったという。ボクの素性に関する週刊誌報道に伴う大騒動では、連日ボクらが嘲笑されたり、マネージャーの須藤さんが責められたりしている姿が、病気に責められている自分に重なり合う気がして、ますます共感を覚えるようになったらしい。夏のベストアルバム販売に伴って、ボクたちがラジオにコメントを寄せ、明るく元気な声を聴いたことで、ケイちゃんとマリちゃんも頑張ってるんだなと思い、それなら自分も頑張らなければと闘病意欲を新たにしたのだという。
 
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そして先日の音楽賞の受賞で、ボクたちの写真が新聞に載ったことから、彼女は、この人たちと一目でいいから会えないのかなと思い、その気持ちを見舞いに来てくれていた友人に言った所、その友人が△△社に手紙を書いてくれたのだということであった。ボクらの現在の窓口になっている★★レコードではなく△△社に手紙を出したのは、そちらの方が手紙の絶対量が少なそうで、見てもらえるかもと思ったということであった。
 
ともかくも、その手紙はいったん★★レコードの秋月さんに渡され、そこからボクたちの所に届けられ、ボクと政子は受験勉強の忙しい時期ではあるものの彼女に会いに行くことを決めた。
 
秋月さんが付き添ってくれて、3人での沖縄行きになった。
「沖縄ではライブをしてなかったよね」と秋月さん。
「そうなんですよね。年明けからの全国ツアーで回る予定になっていたのが、週刊誌報道で吹っ飛んでしまったから。沖縄のファンには申し訳無かったです」
とボク。
 
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「沖縄はさすがに日帰り無理だから、沖縄だけのために土日を潰すことになったからね。土日限定で活動しているユニットには、なかなか辛かったのよ」
と秋月さん。
 
「あの全国ツアーをやり終えた辺りで、さすがに私も親に自分の活動についてカムアウトしなくちゃな、とは思ってたんですよね。どっちみち受験前の1年は活動は無理だから休養させて欲しいという話は須藤さんともしていたし、その1年間で親を説得しようと思ってた」
 
「でも結果的にはもう冬のご両親は、冬の大学入学後の歌手復帰をほとんど認めてくれてるよね」
「どうなのかなあ・・・・私が女の子になっちゃうことについては受け入れてくれている気がするけどね」
「性別問題に比べたら、歌手活動なんて、わりとどうでもいいでしょ」
「うーん。。。」
 
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「まあ、私はふたりの現役復帰について勧誘してはいけないことになってるからその件については何も言えないけど、たくさんのファンが待っていることは確かだよ。今日会いに行く女の子も含めてね」
と秋月さん。
 
「勧誘についてはいろいろおとなの事情があるみたいだけど・・・ファンには申し訳ないけど、私はやっぱり現役復帰はもうしばらく無理だなあ」と政子。
「当時は勢いでやっちゃってたけど、やはり私みたいな歌が下手な子が大勢の人の前でお金取って歌って、CD出してとか、犯罪じゃないかなんて気もして」
「そんなこと言ったら、アイドル歌手の大半が犯罪だよ」とボク。
「歌の稚拙はある意味関係無いと思うよ。心に響くかどうかが大事」と秋月さん。
 
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政子は無言で頷いていた。ただこの時期、政子は色々あって歌手復帰についてかなり消極的になっていた。以前はあと「200年くらいしたら」歌手に復帰してもいいかな、と言っていたのが、一時的に「10万年くらいしたら」と後退してしまっていた。
 
飛行機を降りてからタクシーで病院に行く。
 
病院には手紙をくれた友人を含めて、患者の女子高生の友人の女子が5人来ていた。またこの件に関して★★レコードが報道各社と交渉し、代表取材することになった現地の新聞社の記者とカメラマンが来ていた。病室に何社も来られては迷惑である。
 
病室に入っていくと、その友人たちが凄い騒ぎよう。患者本人と握手する前に、その友人5人とボクたちは握手することになった。そして、やっと本人と握手。そしてサイン色紙をその場で書いて渡した。
 
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「何だか夢のようです」
「夢じゃないよ。ほれ」と言って政子がボクの耳をつねる。
「痛!」
「ほら、夢じゃなかった」
 
使い古されたギャグだが、それでも彼女は笑ってくれた。
「でもホント、私みたいな普通の女子高生の所に、わざわざ東京から来てくださるなんて。今の時期、受験でも忙しいんでしょう?」
「私たちだって、今は普通の女子高生だしね」と政子。
「そうそう、引退しちゃったからね。普通の女子高生に戻っちゃったね」
とボクが言うと。
「あれ?ケイはローズ+リリー始める前は男子高校生だったと思うけど」
と政子が突っ込む。
「でも今は女子高生だよ」とボク。
「それじゃ『戻った』とは言わないよ」
 
「おふたり面白い!まるでマンザイみたい」と結構彼女には受けている。
「おふたりは引退と言ってるけど、★★レコードとしては『休養中』という見解なんだけどね」と秋月さん。
 
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「引退なんて言わないでまた歌って下さい」と彼女。
「そうだなぁ。。。歌ってもいいかな、また」と政子。
「わーい。楽しみにしてます」
「じゃ、私たちも頑張るから、麻美ちゃんも頑張ってね」とボク。
「はい」
 
ボクたちは病室で30分ほど話していた。そのうちボクたちに手紙を書いてくれた子が言い出した。
「あのお、凄く無理なお願いは承知なんですけど、ここで今おふたりに歌ってもらうことはできないでしょうか?」
 
ボクたちは顔を見合わせた。
「秋月さん、どうでしょ?」
「契約上は問題無いよ。あ、記者さん、申し訳ないですが録音をいったん停めて頂けますか?」
「了解です」といって記者さんがICレコーダを停める。
「じゃ歌います」
 
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ボクは携帯のピアノアプリを使って最初の音を取った。ふたりで『甘い蜜』を歌った。この曲を一般の人の前で歌うのは実は初めてである。1月のツアーで披露するはずが、潰れてしまったので、歌う機会が無かったのである。
 
「わあ、感激!死んでもいいくらい!」
「死んじゃダメ!!ちゃんと病気治そうね」
「はい」
 
その日はせっかく沖縄まで来たんだし、ということで秋月さんに連れられて沖縄のFM局を訪ね、挨拶だけするつもりが・・・・結局番組にも10分間だけ出演して短いインタビューに応じた。また特別プレゼントということでサイン色紙3枚を視聴者プレゼント用に書いた。
 
自分たちも今受験勉強で頑張っているので全国の受験生のみなさんも頑張ってくださいというメッセージを送った。大サービスと称して『涙の影』をボクがピアノを弾きながら1分30秒だけ歌った。
 
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また沖縄に来た理由についても聞かれたので、自分達と同い年の難病の少女の応援であったことだけ述べた。この番組はローカル番組で放送は沖縄県内だけに流れたのだが、大きな反響があり、県内各地から多数の応援メッセージが届けられた。千羽鶴を折って送ってきてくれた人もあった。また同様に病気と闘っている人からのメッセージもあった。これらは後日、放送局でまとめて、麻美さんの所に持って行ってくれた。
 
その晩は那覇市内のホテルに泊まった。ホテルは★★レコードさんが取ってくれていたのだが
「えーっとツインで良かったんだっけ?」と秋月さんは悪戯っぽい表情で訊いた。「はい、それでお願いします」と政子。
「じゃ、これ」と避妊具の小箱6個入りを渡される。
「部長から渡せと言われたから」と秋月さん。
 
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「ありがとうございます。使わないとは思うけど頂いておきます」
夕食を国際通りで秋月さんと一緒に取ったあと、ホテルに戻り、それぞれの部屋に引き上げた。
 
ボクたちはふたりきりになると、すぐに熱く抱き合った。
「シャワー浴びてからにしない?」
という提案で、一緒に!シャワーを浴びてから、ベッドに行き、愛し合った。もっとも愛し合ったといっても、ボクはタックしてるし、ブレストフォームも貼り付けていたので、あくまで女の子同士でできる範囲のことである。ただ、こんなに深く愛し合ったのは、3月に久しぶりにした時以来だった。
 
1時間くらい恍惚の時間を過ごしてから休憩し、裸でくっついたままおしゃべりをしていた。
「今夜までは、冬を男の子と見てあげてもいい。私のバージン受け取ってくれる気があったらタック外して、私の中に入れていいよ」
「ボクは女の子だよ」
 
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「そっか・・・じゃ、私もうこれからは冬を女の子としか思わないからね」
「うん」
「性転換する決断できたの?」
「それはまだできてない。でも大学出るまでにはすると思う」
「まあ、焦る必要は無いけどね」
「うん」
「でも25歳までに手術受けなかったら、私が冬のおちんちん切り落としちゃうから」
「あはは。ありがたいかも」
 
「だけどさ、男の子と女の子の関係なら、入れたかどうかというのが境界線になるけど、女の子同士って、どこが境界線なんだろうね」と政子。
「具体的にどうとか言うの難しいけど、何となく感覚は分かるよね。金沢での夜とか、1月のあの2日間とか、ゴールデンウィークの時とか。この4回くらいじゃないかなあ。越えちゃったのは」
 
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「私たちさ。インサートする場合の避妊のためにいつもコンちゃん枕元に置いてたけど、実際インサートすることないし。今後は女の子同士として一線越える場合も開封しない? 象徴的な意味で」
 
「そうだね。そういうルールにしようか」
「開封しない場合はいつものように『気持ち良くなりすぎたらストップ』のルール」
「OK」
 
ボクたちは一晩一緒にふたりきりで過ごすのが久しぶりだったこともあり、その夜たくさんお話をした。ふたりきりになることは時々あったから、ふだんでも結構話をしているつもりだったのに、その日はやはりこういう場でないと話せないようなことをたくさん、お話しした。ボクたちはやはり時々こういう時間を持とうよ、ということでも同意した。
 
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「でも私、あの子の前でまた歌うと言っちゃったなあ」と政子。
「一緒にやろうよ。おそろいのミニスカ穿いてさ」
「ミニスカは卒業したいなあ」
「だけど今日病室で楽器無しで歌ったけど、マーサまた歌上手くなってるじゃん。長い音符をブレス無しで歌えてたし、音程も正確だったし」
「肺活量は少しは付いたかな。でも音程は冬に合わせてただけだよ」
 
「やはり上手くなったんだよ」
「ダメダメ、私、乗せられないんだから」
「ふふふ」
「でも少し考えてもいいかなあ。また一緒に歌う件は」
「うん」
 
後で政子のお母さんから聞いた話では、この時期、政子は自宅に入れているカラオケシステムの使用頻度が一時減っていたが、この沖縄行きの後でまた毎日歌うようになったということだった。
 
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「お勉強の方も頑張ってるよね、マーサは。ここの所かなり力付けてきてる感じじゃん」
「うん。何とか合格できそうだなという気はしてきてる。一応模試では安全圏の成績出来てるし。ただ本番では何が起きるか分からないし」
「でもボクたち、ローズ+リリーの活動を通して、ハプニングには強くなったよね」
「うん。なった」
 
麻美さんの闘病生活はとても長く続いた。後にボクがローズクォーツで芸能界に復帰した時、沖縄でのライブに彼女を招待したが、その時は体調不良で参加できず、悔しがっているお便りをもらった。更に後にローズ+リリーのライブ活動が復活して沖縄でのライブをした時も彼女を招待した。その時は、かなり病気の治療が進み、車椅子で看護婦さんの付き添いでライブに参加した彼女の元気な姿があった。むろんボクは沖縄を訪れる度に彼女の御見舞いに行った。
 
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何度か青葉を連れて行ってヒーリングをしてもらったこともある。青葉は更に沖縄在住の知り合いのユタにも彼女を診せたが、青葉もそのユタも、この病気に関してはお医者さんの治療の方が効果が高く、ヒーリングや祈祷などの効果はあくまで限定的なものにしかならないとは言っていた。しかし彼女は少しずつ回復していった。あるいは彼女の中に芽生えた「治すぞ」という強い意志がそれを推進していたのかも知れない。
 
ずっと先に彼女が退院して日常生活を送れるようになってからも、しばしばボクと政子は麻美さんに会いに行った。彼女の回復は医者からも奇跡だと言われたということで、世界各地からその病気と闘っているお医者さんが彼女に会いに来たという。ボクたちとボクたちの歌も彼女の回復に少しだけ力になることができたかも知れないという気がしている。
 
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