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■夏の日の想い出・キャンプの想い出(1)

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(c)Eriko Kawaguchi 2011-12-21
 
ボクが◆◆高校を受験したのは、ひとつには町のタピオカドリンクのお店でお茶を飲んでいた時に近くの席にいた女の子たちのたちの会話で◆◆高校という名前が出て来て、ああそういう学校もあったなと思ったことと、もうひとつは高3の時に失恋した相手が※※高校に行くふうだったので、そこと違う高校にしてお互いに顔を合わせたりしなくてもいいようにしたかったからだった。あの失恋はボクにそんなことをさせるほど大きなものだった。
 
無事その◆◆高校に合格して、オリエンテーションの一貫でクラブ活動の紹介があった時、書道部の人がステージ上に数人の部員で大きな紙を広げ、そこに筆で「熱烈歓迎」という文字を書いたのを見て、ボクはちょっと興味を感じた。ボクは芸術の授業で音楽を選択したので、どこかで書道もしたい気分だったので、部室になっている化学教室に行き、入部手続きをした。『1年5組唐本冬彦』と書くと、そばにいた女の子が
「珍しい苗字ね。からもと?とうもと?」と訊く。
 
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その子は例のタピオカドリンクのお店にいた子だった。ああ、この子も無事合格したんだなと思う。
「『からもと』だよ。そちらは、なかた?なかだ?まさこさんだったっけ?」
とボクは彼女の名札を見て、それからタピオカドリンクのお店で聞いていた名前を思い出しながら言う。
 
「あれ?私の名前知ってるんだ。苗字は『なかた』。どこかで会ったことあったっけ?」
「うん。ちょっとね。詩を書くんでしょ?」
「うん。詩は好き。あ、そうそう念のため最初に言っておくけど、私恋人がいるから」
と言って、ボクの次に入部手続きをし『1年3組中田政子』と書いた。
 
「あ、こちらも恋愛要素抜きで話せるほうが気楽。ボク小学校でも中学校でも女の子の友だちしかできなかったから、高校でもそんな感じになりそう」
「ふーん。なんか面白そうな人。じゃ、とりあえず握手」
と言ってボクと政子は握手をした。
 
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政子は「恋人がいる」と言ったが、その相手が3年生で同じ書道部の花見さんであることはすぐ分かった。ふたりはよく話していたし、いつも隣同士の席にいた。しかしその一方で政子はボクともよく話をしていた。
 
「でも唐本君、あまり男の子っぽくないね」
「そうかな」
「女の子っぽいとか言われたことない?」
「別に無いけど」
ボクはこの高校では、同じ中学から来た子がほとんどいないのをいいことに、最初のころ、かなり猫をかぶっていたのだが、政子には本質を見透かされている気がした。
 
この時期、ボクは自分でも言っていたように男の子の友だちは全くできなかった。最初の頃、同じクラスの男子からいろいろ声を掛けられたりしたが、ボクは彼らとは全然話が合わないし、彼らがしばしば夢中になっているアイドルの歌はボクにとっては聞くに堪えない調子っぱずれの騒音としか思えなかった。それに彼らの放つ強烈な下ネタについていけないので、自然と距離を置くようになっていった。この時期、同じクラスの子で、何となく言葉を交わしたりすることがあったのは、当時は苗字で「渡海さん」「秋山さん」と呼んでいた仁恵と紀美香くらいであった。(ボクが男子のクラスメイトと仲良くなるのは2年生の時に同じクラスになった佐野君が最初である)
 
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ボクたち書道部が使っている化学教室には、しばしば科学部の人たちも入ってきていた。科学部は物理教室を本拠にしているのだが、その日する実験によっては化学教室のほうもけっこう使うのである。琴絵との出会いは強烈だった。
 
その日科学部の人たちが書道部の方と少し離れた場所で薬品を使った実験をしていたのだが、「うっ」という低いうめき声を上げた子がいた。ドドドっと水道の所に走って来て、口の中をすすいでいる。
 
「どうしたの?」とちょうど近くにいたボクは声を掛けた。
「びっくりしたー。硫酸をメスピペットで吸い上げてて、うっかり口の中まで入っちゃった」
「大丈夫?」
硫酸と聞いてボクはびっくりして訊く。
「あ、平気平気。洗えば問題無い」
 
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それから彼女とは何となく時々言葉を交わすようになったし、書道部も科学部も混ざっての雑談がひたすら続いていくようなこともしばしばあった。当時は彼女のことも苗字で「山城さん」と呼んでいた。ただ彼女とはこの時期はまだ「知り合い」に近い感覚で、「友だち」感覚になっていくのは、2年生になって同じクラスになってからである。
 

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書道部の活動はのんびりしたものであった。
 
顧問の先生ものんびりしていたが、部長さんものんびりしていた。特に何か大きな大会に参加しようとかいうこともなく、部活の時間帯にも大半はおしゃべりをしていて、書きたい人は半紙に毛筆で何やら適当に書いている、というきわめて適当な活動をしていた。生徒会からの部費支給なども「特に何も使わないし」
などといって辞退していたほどである。
 
一応ボクは習字の道具を持って部室に行くのだが、政子や他の女子部員と一緒にひたすらおしゃべりをしていた。
「あ、今日は何も書かなかったね」
と言って17時頃解散して帰宅する、などというパターンも多かった。しばしばそのおしゃべりの輪に、科学部の琴絵たちも加わっていた。
 
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そんなのんびりした部なのに、この年は部員が3学年合わせて20人ほどいたが、毎日出てくるのは、部長の谷繁さん、花見さん、政子、私、それに2年の静香さんの5人くらいで、それに1年の圭子・理桜も週に3回くらい出てくる感じであった、この7人の場合、なんとなく、谷繁さんと花見さん、私と政子と静香さん、圭子と理桜、という感じで会話の輪は3つに別れることが多かった。時々花見さんが政子に声を掛けるが、会話はあまり続かない雰囲気だった。
 
入学当初は政子は花見さんにピタリとくっついていることが多かったのだが、5月頃以降はそれほどでもない感じになっていた。ボクは少し心配して
「花見先輩のそばにいなくてもいいの?」と訊いたりしたが
「ああ大丈夫。日曜日にデートとかしてるから」と言う。
 
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当の花見さんは、ボクが政子とよく話しているので、なんとなく嫉妬に似た視線をこちらに送ってくることがよくあったが、気にしないことにしていた。
 

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ボクは中学3年の頃、半ば成り行きで男子生徒として振る舞い続けるのか、それとも自分の性格をカムアウトして女子生徒として通学したいと主張するかというのを悩んでいたのだけど、高校では取り敢えずは普通の男子生徒の振りをしていた。しかし高校では中学の時以上に男女の生徒の扱われ方に差があり、それがこの時期ボクにはけっこうストレスになっていた。
 
高校に入ってすぐにボクは応援団のリーダーに指名されてしまった。ボクは中学の時陸上部にいたし、運動部の経験者なら行けるのではと担任の先生に思われてしまった感もあった。しかしボクにそんなものが務まる訳がなかった。
 
応援団の練習に1日だけ参加したものの、その純然たる「男の世界」はボクの頭をクラクラとさせた。そこで担任の先生の所に行き、御免なさい、ボクには無理ですと言って、やめさせてもらった。「チアガールならやってもいいですけど」とボクが付け加えると、先生は冗談だと思って、笑っていた。
 
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体育の時間、ボクは男子のほうでラグビーとか野球とかをしていたが、遠くで女子たちがダンスをしていた。当時はボクはそれをただ憧れのように見ているだけだった。1年生の間は男子だけに格闘技が課されていて、ボクは柔道を選択していたが、ボクは腕力とかほとんど無いのでひたすら他の子に投げられ押さえられていた。ただ、途中から他の男子たちが明らかにボクに寝技や押さえ込み技を掛けるのを避けるようになってきたのを感じていた。そこでボクは1学期の後半あたりからはひたすら投げられていた。
 
体育の授業では、1学期の末頃に水泳の授業があった。ボクはこれを全部見学させてもらった。まだまだこの時期は自分の性別意識が大きく揺れている時期ではあったけど、自分は男ではないという気持ちが少しずつ強くなってきていた。それで男子用の水泳パンツを穿き、おちんちんの形もハッキリ見えるような状態を他人の視線に晒すのは、とても耐えられない気分だった。
 
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この時期、ボクはまだ男子トイレを使っていたが、基本的に個室しか使っていなかった。自分は女だという意識が強いので、女の子には存在しない器官を利用して小便器でおしっこをするというのは、許せないことであった。この時期、下着は女物を着けていることもあれば男物を着けている日もあったけど、男物の下着を使っていても、ブリーフの前開きは決して使用しなかった。ボクはしばしばその前開きを糸で縫って閉じていた。
 

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どうにも辛い気持ちになった時は、ボクは中学の時の陸上部の先輩である絵里花の家に行って、女装させてもらって数時間を過ごすこともあった。
 
「そうだ。インターハイ出場、おめでとうございます」
「ありがとう。でもまだ出るだけだからね。そこで上位に食い込めるかだよね」
「でも都大会では高校新記録で優勝でしょう。もうこのまま日本一ですよ」
「うん。でも実際のレースでは駆け引きがあるからね。それがうまい子が出てくるのがインターハイだもん」
「絵里花さんなら行けるって」
 
「だけど冬子、雰囲気がずっと変わらないね」
「え?そう?」
「去勢してないよね?」
「してません。女性ホルモンとかも飲んでません。あの時以外は」
とボクは少し微笑みながら言う。
 
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「あの時か。。。。あれ冬子に謝らないといけないの」
「もしかしてあれ3錠とも偽薬だった?」と笑顔でボク。
 
「うん。。。。気付いてた?」
「後になって思った。絵里花さんがボクに本物の女性ホルモンを渡す訳がないという気がしてきた。でもあの時はもうこれで男の子辞めちゃったかも、という気持ちがボクを落ち着かせた」
 
「良かった。でも、何もしてない割りにはあまり男性化してないね。むしろ中学の時より女の子っぽさが増している感じ」
「高校に入っても予想通りだけど、友だちは女の子だけです。今比較的親しくいる子が3人くらいかな」
「ふーん」
「それから最近感じてるんだけど、体育で柔道やってて、みんなボクには、寝技掛けたり押さえ込み掛けたりしないんです」
「あはは、それは冬子を押し倒したら変な気分になっちゃうからだよ」
 
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「何かボク・・・女物の下着が微妙に増殖してる。今パンティ5枚、ブラ3枚あるし」
「ふふふ。そのうちそれが4倍、8倍になるよ。学校に着けて行ったりする?」
「まだその勇気はない。でも、ボク水泳の授業は全部休んじゃった。男子の水泳パンツとかの姿を晒すのは耐えられない気分だったのと、ブラの跡が分かっちゃうかもと思って」
「あはは、ブラ跡があればもう男子水着にはなれないね。カムアウトしちゃう時期も近いかな」
 
「まだその辺り気持ちの整理はつかないけど、何となく高校3年間を男子高校生のまま過ごすことは無いんじゃないかという気がしてきてる」
絵里花は頷いていた。
「よし、今度はこっちの服着てみて」
「えー?今日4着目?」
「だって冬子は私の着せ替え人形だからね」
 
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女装するのは別に絵里花さんの家だけではなかったものの、この家ではこうやって着せ替え人形にされるのが快感だった。
 

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高校1年の時の授業でボクにとってオアシス的な存在になったのは家庭科の授業だった。調理実習にしても、被服実習にしても、ボクの腕の見せ所である。
 
「唐本君、包丁の使い方うまーい」
「すごーい、キャベツの千切りが美しい」
「よくそんなに細く切れるねー。スピードもあるし」
「大根のかつら剥きできる?」
「こんな感じ?」
「鮮やか〜」
「だってうちではボクとお姉ちゃんとお母ちゃんと3人で交替で御飯作ってるからね」
「へー。偉いね」
 
「お菓子とかも作る?」
「うん。クッキーとかマドレーヌとか、休みの日に作ったりするよ」
「わあ、凄い」
「中学の時好きな女の子にマドレーヌ焼いてきてあげたりしてた」
「・・・唐本君、それ男女が逆」
 
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被服の方では1学期の最初は手縫いで雑巾を作ったが、ボクがすいすい縫っていると、「縫い目がきれーい」「縫うのが凄い速いね」などと言われる。
 
「手縫いでもミシンでも行けるよ。お姉ちゃんがコレクションしてるお人形に着せるお洋服とか、ボクが請け負って作ってるし」
「えー!?、凄いことしてるね!」
「人間の服はミシン使うけど、人形の服だと小さいから、手縫いの方がやりやすいのよね」
「人間の服って何を作るの?」
「パジャマとか縫ってるよ。家族全員分。今も今年の夏用のパジャマをせっせと縫っているところ」
 
「ね、唐本君、私のお嫁さんに来る気無い?」などと言ったのは仁恵である。
 

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音楽の時間もなかなか楽しかった。ボクは「男の子の声」では下がG#2まで出る。音楽の時間の合唱であれば、バスのパートでも歌える(テノールはもちろん歌える)ので、先生からはバスを歌ってと言われたものの、テノールを歌いたいですと強く主張してテノールに入れてもらった。しかし実際には上がC5くらいまで出るので、この声でバス、テノール、アルトのパートを歌うことができた。更には裏声を使えばソプラノのパートも歌えるので、よくひとりで4パートを順に歌ってみせて「すごーい」と言われていた。
 
「でもアルトのパート歌う時は中性的な声になるね」
「うん。そこら辺はちょっと誤魔化しが」と言ってボクは笑う。
 
「本来ボクの声域はG#2からC5くらいなんだけど、F4くらいから上は自然に中性的な声質になっちゃうのよね。C4くらいからF4くらいまでが中間領域で、声の出し方次第で男性的な声にも中性的な声にもできる。だからC4からC5まではその声で歌えるんだけど、それより下はどうしても男性的な声になっちゃうところを微妙に誤魔化して、あまり男っぽくは聞こえないようにしてる」
 
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(この付近の誤魔化し方がうまくなって「アルトボイス」の声域を確保できるようになるのは2年生の夏以降である)
 
「えー?分からなかった。でも、その中性的な声でふつうにしゃべることできる?」
と仁恵。
「こんな感じでしゃべるの?」
「おぉ!」と仁恵はとても喜んでいた。
 

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