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■夏の日の想い出・キャンプの想い出(3)
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「でも噂通りの包丁さばき。ジャガイモの皮むきも上手だったね」
「ふだん家ではピーラー使うんだけどね。包丁でも行けるよ。姉ちゃんが後片付けするとしばしばピーラーを自分でも思い出せない所に入れちゃうんだよね。すぐに見つからないと仕方ないから包丁で皮剥くから」
「そうか、うちで交替で御飯作ってると言ってたね」
「うん。ボクが小学3年生の時から3人での交替制になった。最初はカレーとかおでんとか、割とシンプルなのしか作れなかったけど、レパートリーは増えたね。ジャガイモの皮むきとか、お刺身切ったりとかは小学1年生の頃からよくしてたから、それ以前に料理の基本はたたき込まれていた感じかな」
「でも上にお姉さんもいるのに、弟にも料理を教えるって面白いね」
「というより、ボク自身が料理したがってたから。小学1年の時、玉子焼きがなかなかうまく出来なくて、悔しくて毎日作ってたからね。それでこの子には色々教えてあげようと思ったんだって、お母ちゃん言ってた」
「いいお嫁さんになれるようにかな」と政子。
「それ、しょっちゅう言われるんだよねー。うちでも。いいお嫁さんになれるよとか、お嫁さんに行きたくなったら女の子になっちゃってもいいからねとか」
「唐本君って、男の子の友だち作らないよね」
「うん。ボクって幼稚園の時から友だちは女の子ばかり。男の子の友だちって出来たことない。でも小学校の4年生の頃は転校したこともあって最初なかなか女の子たちとも話しにくくて」
「ああ、その時期ってそもそも男女の意識が出てくるもんね」
「うん。あの時期がいちばん孤独だったよ。次第に話せる女の子はできていったけど。その後、中学になると陸上部に入ったから、その陸上部で一緒になった女の子たちとも友だちになれたしね」
「やっぱり女の子なのか!」
「男の子とはあまり話さないの?」
「うーん。話が合わないんだよね。何だか」
「男子が下ネタ言ってると、唐本君ってなんか下向いてたりするよね」
「下ネタ苦手〜」
「オナニーするの?」と突然政子。
「えーっと・・・」
「あまりしないんでしょ?」
「うん、まあ。たぶん他の男の子よりは頻度低いと思う」
「ふーん。することはあるんだ」
「一応健全な男子高校生のつもりではいるけど」
「健全な女子高校生ってことはないよね」
「あはは・・・・」
「ねえ。女装したりしないの?」と圭子。
「そんなのしないよー」
「なんか私、唐本君に女装させてみたくなった」と理桜。
「というかさあ、そもそも唐本君が今穿いてるズボン、レディースだし」と政子。
「お姉ちゃんが着れなくなったのをもらったんだよ。ボク、メンズのズボンがサイズ合わないんだ」
「それウェストいくつ?」
「64だよ。ボク、ウェストは64でヒップは94だから、学生ズボンは79のを買って自分でタック入れてウェスト64に改造して穿いてるんだ」
「64って、私より細いじゃん」と理桜。
「ね、スカート穿いたこと無いの?」とカオル。
「無いよ」
「穿かせてみたいね」と圭子。
「えーっと」
「唐本君、足の毛剃ってたね。スカート穿くのかなとか思った」
「うーん」
「御飯、終わってから、女子のバンガローに来ない?女の子の服着せてあげるから」と政子。「着たことないなら一度着てみてごらんよ。どうもさ。唐本君、私の服が合いそうな気がするのよね」
「ああ、体型近いよね。政子もかなり細いもん」
「うん、着せてみたい、着せてみたい」
「じゃ、決まりね。御飯が終わった後、唐本君は自分の荷物を持って女子のパンガローに来ること」と圭子。
「なんで荷物まで持っていくのさ?」とボク。
「荷物チェックするに決まってるじゃんねー」と理桜。
「えー?」
「実は女の子の服を隠し持ってないかのチェックよね」とカオル。
「あはは・・・・」
夕飯のカレーは美味しい美味しいと好評であった。御飯は予め1升、追加で5合炊いたのだが、全部無くなり、カレーもきれいになくなった。御飯の後、肝試しをやろうということになる。最初に脅かし役を男子6人でくじ引きしたら花見先輩と石川先輩が当たった。政子が花見先輩に頑張ってねーと手を振っている。花見先輩は政子と一緒に歩きたかったようで、名残惜しそうな顔をしてコースの方へ行った。
「じゃ、唐本君、私と一緒に行こうね」と政子はボクの手を取った。
「ああ、また嫉妬されそう」
「いいの。いいの」
適当に組んでいたら自然とペアができたので、それで順に歩いて行くことにする。谷繁部長と静香先輩のペアを先頭に2分間隔で出発した。ボクと政子は4番目に出発した。
「ね。時々思うんだけど、中田さん、花見先輩の嫉妬を煽ってない?」
「ふふ。その分デートの時優しくしてくれるからいいのよ」
「はいはい。ごちそうさま。でも、花見先輩がこの高校だったから、ここを受けたの?」
「あまり関係無いな。私、中学の時ほとんど友だちいなかったからさ。どうせなら他の子がほとんど行かない学校を受けようと思ったんだよね。それでね、どこにしようかなと思ってた時、何か凄く可愛い女子高生を町で見かけて」
「へー」
「その人がここの制服着てたから、ああここに行きたいって思ったの」
「一目惚れ?中田さん、女の子が好きなの?」
「ああ。私バイだなと思うことあるよ」
「へー。ボクもバイかも」
「ふーん。。。。むしろ唐本君、恋愛対象は男の子なのかと思った」
「うーん。初恋は男の子だけど、中学の時は女の子の恋人いたよ」
「へー、意外」
「でも受検の直前に別れちゃって。彼女と違う高校に行きたかったからここを受けたんだよね。だからうちの中学からここに来たのも3人しかいない」
「ふーん」
ボクはここに決めたきっかけが政子がタピオカドリンクのお店でここの名前を言っていたからだとまではさすがに言わなかった。
「でもその可愛い女の子の先輩とは会えた?」
「それが私と入れ替わりに卒業しちゃったみたいなのよね」
「ありゃあ、残念だったね」
「仕方ないから、誰か可愛い女の子がいないかなと物色してるんだけど」
「花見先輩と付き合ってて、他に女の子の恋人とかも作っていいの?」
「バイの人にはさ。男でも女でもいいから1人恋人を作るタイプと、男女1人ずつ恋人を作るタイプがいると思うの。私は後者だという気がする」
「でもそれ嫉妬されない?」
「されるだろうね」と政子は笑った。
会話をしながら歩いていたら、どうも道を間違えたようである。
「あれ?ここ道じゃないみたい」
「うーん。適当に歩いてたら、道に出るよ」と政子。
そんなことを言いながら歩いていたら、何かにぶつかった。
「きゃっ」と言って政子がボクにしがみついた。
「わっ」と言ってそのボクたちがぶつかった『もの』が段差の下に落ちていく。それで初めてそれが人であったことに気付いた。
「大丈夫ですか?」とボクは下の方に向かって声を掛けた。
その人物が腰をさすりながら立ち上がってこちらに懐中電灯を向ける。こちらも街灯の明かりで向こうの顔を認識した。
「花見先輩!」
「こらぁ、政子そいつから離れろ!」
「妬かない。妬かない。ちゃんと後で物陰でキスしてあげるから」
「だいたい、何でお前ら、そんな所から出て来るんだよ」
「ああ、ちょっと道間違えたみたいです。ごめんなさい」
肝試しの後は各々のバンガローに戻って24時前には寝ようということになる。ボクは女子たちから呼ばれているので行ってくるというのを部長に言っておきたかったのだが、部長と花見さんとでどこかに行ったようで見あたらなかった。そこで石川先輩に伝言してから、行くことにした。
「いいけど、お前最後に帰ってきたら床で寝ることになるぞ」
「はい。大丈夫です。暖かいし」
男子のバンガローはベッドが5つしか無いのに6人寝るので、じゃんけんで負けた人が床に寝ようなどと言っていたのだが、3年生のふたりはどこかに出ているし、1年生の他の2人も何か欲しいものがあると言って、さきほどタクシーを呼んでふたりでコンビニのある所まで行ったようであった。それで今男子のバンガローには石川先輩がひとりで残っていたのである。
着替えなどの入っているスポーツバッグを持ち、1年女子のバンガローを訪れる。
「こんばんはー」
「おし。来たね」
「来たということは、解剖されて、女装させられることに同意したということだよね」
「えー?解剖されるの?」
「まあ、それは勘弁してあげるか」
「荷物見せてもらっていい?」と政子。
「いいよ。男物の服しか入ってないけど」
海水浴で使った水着とTシャツを他のを濡らさないようにビニール袋に入れたもの、着替えのシャツとブリーフ、明日着るためのポロシャツ、それに歯磨きセットとタオル、ティッシュ、レポート用紙と筆記具くらいであった。
実は最初はこっそり女の子の下着つけようかと思い、ショーツとキャミも入れていたのだが、出かける直前に思い直して外したのである。外しておいて良かったと思った。
「つまんないなあ」
「絶対ブラジャーとかスカートとか入っていると思ったのに」
「あはは、そんな趣味は無いよ」
「よし。そういう趣味を覚えてもらおう。これ着てみて」と政子がボクに可愛いフリルのついた伽羅色というのだろうか茶色の明るい感じの色のチュニックと黒い膝丈のプリーツスカートを渡してくれた。
ボクはそれを受け取ると、今着ているニットシャツとサブリナパンツを脱ぎ、チュニックをかぶって、プリーツスカートを穿いた。
「ウェストきつくない?」
「うん。全然問題無い。指少し入るし」
「くそー。私少しダイエットしようかな」と政子。
「政子のダイエットって、御飯を5〜6杯食べるところを3〜4杯に控えるとか?」
と理桜。
「うーん。御飯は私そんなにたべないよ。ステーキを300g食べるところを200gにしておく感じかな」
「だけど、全然違和感無いね、唐本君。いや唐本さんと言うべきかな」と圭子。「冬子ちゃんでいいんじゃない?今夜は」と政子。
「別にいいけど」とボクは笑って言う。
「ちょっとこっち向いてみて」と理桜。
「わあ、可愛い」
「ねえ、ほんとにスカート穿いたこと無かったの?」
「ええ?初めてだよ」
「それにしては似合ってるよね」とカオル。
「なんかもっと本格的に女の子させてみたくなったな。眉少し削ってもいい?」
「え、よく分からないけどいいよ」
「よし」
政子は自分の荷物から化粧ポーチを取り出すと、ハサミを使ってボクの眉を切っていく。更にローションを付けてカミソリで短い毛を削っていった。
「ちょっと顔洗ってきて、そこの洗面台で」
「うん」
ボクは洗面台で顔を洗い、タオルで拭いた。
「わあ、かなり女の子っぽくなった」
「このまま女の子で通るよね」
「うんうん。やっぱり唐本君、というか冬子さんだっけ?男の子でいるのはもったいないよ」
「女の子になりたいとか思ったことないの?」
「別に無いけど」
「女の子だったら良かったのにとか言われたことない?」
「あはは、それはたくさんある。お母ちゃんからもお嫁に行けるねとか言われるしね」
「ああ、夕飯作る時にそんなこと言ってたね」
「やっぱりこれは性転換推奨だよね」
「うんうん」
「ね。女の子下着持ってないの?マジで」
「そんなの持ってないよ」
「じゃ、今夜は私の下着貸してあげるから、付けてみない?」と政子。
「えー!?」
「やっぱりスカートの下に男の子パンツというのは、いただけないよね」と圭子。
政子は自分の荷物の中から、パンティとブラジャーとキャミソールを出して来た。
「冬子私と仲良しだから私の下着付けてもいいよね?」
「ボクは構わないけど、中田さんいいの?」
「今夜は女の子同士だから政子と呼んで。他の子も名前で呼んでいいよ、ね」
他の3人も頷いている。
「じゃ、政子、構わないの?ボクが着ても」
「うん。大丈夫。啓介なんて時々私のパンティ勝手に持ってってるし、そういうのには慣れてるから」
「わっ」
ボクはスカートの中に手を入れてブリーフを脱ぐと、政子から渡されたショーツを穿く。Mサイズだ。ボクは玉を体内に押し込み、棒は下向きにしてショーツをきっちり上まで上げた。
上着をいったん脱ぎ、シャツも脱いでからブラジャーを付ける。ブラのサイズを見るとC70である。余裕で入るはず。ボクは肩紐を通した。
「あ、もしかして脇毛も剃ってるの?」とカオル。
「あ、うん」
「後ろのホックは留めてあげるね」
と政子は言ってボクの後ろにまわり、ホックをはめてくれた。
「おお。ピッタリだ。ホントに冬子って私とサイズが同じだね」
ボクは自分でブラのホックははめるつもりだったのだが、政子がやってくれたので、そうか!ここで自分ではめていたら、ブラ付けたことあるでしょ?と言われるところだったというのに思い至り、心で冷や汗を掻いた。それと、照明があまり明るくないので、ブラ痕は分からなかったようである。
更にキャミソールをかぶって着て、その上にまたチュニックを着た。
「下着を女の子のに替えただけなのに、雰囲気がまた女の子っぽくなったね」
「うんうん。女の子のオーラが出てるよ」
「ね、今夜はこのままここにずっといない?」
「えー?それは叱られるよ」
「だって、冬子は女の子だもん。男の子のパンガローでは寝られないよね」
「えっと」
「それに向こうは1人ベッドが足りないんでしょ?こっちはひとつ余ってるからちょうどいいじゃん」
「ねー。明日もずっとその格好でいない?」
「えー!?」
「うん、それがいい、それがいい」
「あはは」
「本人嫌がってないよね」
「まんざらでもない気分になっていると見た」
「もう女装が癖になる3歩手前くらいだね」
そういう感じで、ボクは結局そのまま女の子の服を着てバンガローのベッドに腰掛け、彼女たちと夜中までおしゃべりすることになったのであった。
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