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荒野の果てにはあったものは古城であった。ライトアップされている。観光用であろう。このためにきっと空が明るかったんだ。しかし、なんだろう。その左手にはかなり広い墓地が広がっていた。
<img src="../../img/tokeito.png">
近くまで寄ってみると、古城に見えたのはけっこう新しい建物で、わざと古びた雰囲気にしてあるだけと分かった。ここは何かの遊園地であろうか?しかし向こう側の墓地はほんもののように見える。もともと墓地のあったところの一画を買収して、この古城を建てたのであろうか。
墓地の向こう側、そして横手にも川が流れていた。川は墓地のちょっと先で合流している。その合流点の所に大きな時計塔が建っていた。時計塔はほぼ12時を示していた。突然鐘が鳴り響く。今は深夜0時なのだろう。
千秋は目を剥いた。鐘がなるのと同時に時計塔の文字盤が変形しはじめた。鐘の音に合わせて、丸くなったり、四角になったり、杯みたいな形になったり、なんとも不思議な時計である。
するとそばで誰かが「あれは六角時計というんだよ」と言った。
誰?と思ってから千秋は苦笑した。そうだった。私には連れがいたのだ。すっかり忘れていた。何だかちょっとほっとしたような気がした。
「不思議な時計ね。でもこれからどうする?」<br>
「道はここで終わりだからね。川は広くて水量も多い。古城に入るしかないんじゃない?」<br>
「ま、確かにそれしかないわね」
千秋は彼と一緒に古城の入口を見つけ、中に入った。
(1999.7.24 元は1982年頃に見た夢。夢の中で時計塔は五次元的な変形をしていた)