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■女装太閤記・激闘編(1)

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(C)Eriko Kawaguchi 2014-01-04
 
永禄11年(1568年)、織田信長は上洛を強行し、幕府の将軍として足利義昭を擁立した。この時、秀吉は京都守護を命じられるが、この時、一緒に京都守護に命じられたのが公家方から推挙されて織田家臣として組み入れられた明智光秀であった。彼と会った時、秀吉は思わず光秀に言った。
 
「十兵衛殿、お懐かしゅうございます」
「そなたとどこかでお会いしたろうか・・・・」
 
すると秀吉は席を立ち、少し経ってネネがやってくる。
 
「ヒロ殿!」
 
それは光秀にとっては20年近く前に出雲で会った少女であった。
 
「木下藤吉郎秀吉の妻、ネネにございます」
「おお、藤吉郎殿の奥方になっておられたのか!」
 
するとネネはいきなり明智光秀に抱きついた。
「ちょっと、ちょっと何をなさる?」
 
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「僕だよ。分かんない?」
「へ!?」
「藤吉郎とネネは同一人物。十兵衛お兄ちゃんだけに教える秘密ね」
 
光秀は口をパクパクさせて、何を言っていいか分からない感じであった。
 

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この京都守護をしていた時期、家臣団にしばしば混乱が生じていた。
 
ある日、石田三成が庭に立っていた人物に声を掛ける。
「殿、又左衞門様(前田利家)から、美味しそうな枇杷を頂きました。みんなで食べましょう」
 
「ん?」
と言って振り返った人物を良く見ると、秀吉と思っていたのに光秀だ!
 
「失礼しました! てっきりうちの殿と勘違いを」
「枇杷か。良かったら、少し分けてくれ」
「ははぁ! ただいまお持ちします」
「藤吉郎殿は書庫で何やら調べ物していたぞ」
「ありがとうございます」
 
ある時は斎藤利三(春日局の父)が執務室に入ってきて
「殿、関白殿(二条晴良)より維摩経義疏の写本をお持ちでないかと問合せがあったのですが」
 
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すると執務していた人物は顔を上げると、
「そういう書物とかの話は十兵衛殿にしてくれ」
と言った。斎藤はてっきり自分の主君である光秀と思ったのだが、実際には執務していたのは秀吉であった。
 
「失礼しました!」
「そうそう。昨日十兵衛殿から頂いた猪は美味かった。みんな感謝していたと伝えておいてくれ」
「はい、かしこまりました!」
 

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そういう訳で、しばしば光秀と秀吉を間違える家臣が続出したのである。
 
丹羽長秀なども
「確かに藤吉郎殿と十兵衛殿は雰囲気が似ているなあ」
などと言う。
 
「まあ僕の方が若いけどね」
と秀吉。光秀は秀吉より9つ年上である。
 
「年齢はよく見ないと分からん。髪の少ない方が十兵衛殿で、多い方が藤吉郎殿だな」
などと中川重政。
 
「でも昔、出雲で会った時も兄と妹のようだと言われたんだよ」
と秀吉は言う。
 
「妹!?」
「当時の藤吉郎殿はおなごのように可愛い顔をしていたのだよ」
と光秀。
 
「ほほぉ」
「実際、僕は主として刀鍛冶の人たちの御飯を作ったり掃除をしたりといった仕事をしていたから、下働きの女中という感じだったんだけどね」
と秀吉。
 
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「そういう少女時代の藤吉郎殿というのを見てみたかったですな」
と長秀。
 
「刀鍛冶ですか。十兵衛殿も御実家は確か刀鍛冶の家でしたね?」
と重政。
 
「うん。若狭の方なんだけどね。それで鉄砲の製造に関わることになって、それで早い時期から鉄砲に親しんでいたんだよ」
と光秀は答える。
 
そんなことを言いながら、光秀は秀吉を複雑な視線で眺めていた。
 

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この信長上洛の少し前、信長は北近江の浅井長政と同盟(結果的に浅井の盟友である朝倉ともつながることになる)し、妹のお市を長政に嫁入りさせていた。この時、ネネの友人の娘で、よく一緒に領内の見廻りなどもしていたミチが、お市様付きの腰元として一緒に浅井家に赴いた。
 
この時ネネはミチに言った。
「殿様(信長)は浅井様を盟友として信頼なさって大事な妹君を嫁がせるみたいだけど、私の勘が言っている。絶対一波乱・二波乱ある。ミチは結構武術ができるよね?お市様をしっかり守ってあげて」
 
「うん。武術の心得のある私をお市様に付けるということ自体、上総介様(信長)が今回の婚儀をどう思っているかを表している気がする。気は抜かない。自分の命に代えてもお市様を守るよ」
 
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ミチはそう厳しい表情でネネに言って、小谷城へと向かった。
 

信長は役職を与えるという話を黙殺して、京都は秀吉と光秀に任せ尾張に帰還する(この時弾正忠の官位をもらい、従来自称していた上総介に代わって名乗るようになる)。ところが、その信長が帰還した隙を突いて、美濃国を落とされて亡命していた斎藤龍興が三好三人衆(三好長逸・三好政康・岩成友通)と組んで京都に攻め入ってきた。
 
これを秀吉・光秀の軍と、浅井長政の軍が協力して撃退する。信長も急を聞いて京都に駆け付けるが、信長が来た時には既に戦いは決着していた。秀吉は「浅井も一応は信頼していいのかな?」とこの戦いで思った。
 
信長はこの三好三人衆に協力した高槻城の入江春景を処刑。高槻城には室町幕府の幕臣である和田惟政を入城させた。また信長は伊勢を攻めて北伊勢の神戸家には三男の織田信孝を、南伊勢の北畠には次男の織田信雄を、それぞれ養子として送り込み、この地域を実効支配することになった。
 
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そして永禄13年(1570年)4月20日。再三の上洛命令に従わない福井の朝倉義景に対してとうとう堪忍袋の緒が切れた信長は、朝倉討伐の軍を起こす。信長は浅井と同盟する時に、朝倉とは戦わないという誓いを浅井に対して行っていた。そのためこの討伐戦に浅井は困惑することになる。
 
なお、信長の軍が出発した直後の4月23日、元号は「元亀元年」と改められた。実は元々足利義昭が改元を上奏していたのだが、信長が必要無いと言っていたのである。その信長が京都を出た直後に改元を実行したのは、大いに信長の機嫌をそこねることになる。
 

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その信長の軍が北陸に向けて出発する前日。ネネの元に客があった。
 
「ミチちゃん! どうしたの?」
「お市様より密書を預かって来ました」
「何!?」
 
と言ってネネは「密書」を受け取る。
 
「何これ?」
と言ってネネは当惑する。それは小豆の入った麻袋であった。
 
「この中に何か入っているの?」
と言ってネネは袋を開けようとするが、ミチは言った。
 
「開けずにそのまま信長殿に見せてください」
「へ?」
 
と言ったままネネはしばらく考える。その袋は布を筒状に縫ったものの中に小豆が入れられており、両端を紐で縛ってあった。
 
「なるほど、そういうことか!」
 

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ネネは直ちに信長の所に赴いた。
 
が、近くに居た丹羽長秀に止められる。
 
「藤吉郎殿の奥方でしたでしょうか? 殿様は今、戦の準備で忙しくしておられる。何用ですか?」
 
「お市の方より兄上に是非というお土産を言付かって参りました」
「お市様ですか! それでは仕方無いですね」
と言って通してくれる。
 
しかし信長は極めて不機嫌である。
 
「ネネ殿。私は今ひじょうに忙しいのだ」
と文句を言うし、
「お市からの土産? それは女同士で適当に分けてもらえませんか」
と言う。
 
「とても大事なことなのです」
と言って、ネネは信長にミチを通して渡された小豆の袋を見せる。
信長は顔をしかめる。
 
「これは嫌がらせか? 私が小豆が嫌いなのを知ってるだろうに(*1)」
「その袋を良くご覧ください」
「ん?」
 
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(*1)小豆は信長の好物であったという説と逆に大嫌いだったという説がある。
 
「小豆は弾正忠(信長)様です。左側の紐は朝倉、そして右側の紐は・・・・」
 
信長は驚いたような顔をした。
 
「分かった。これを持って来た使者は?」
「お市様を守る密命を託している、私の友人の腰元です。既に近江に戻っています。何かの時は命に代えてもお市様、お茶々様をお守りします」
 
「分かった。しかし私はこの戦いに行かねばならない。もしこのようなことが起きた時は、そなたの夫に任せるぞ」
「はい、お任せください」
 
ネネがそう返事をすると信長は言った。
「時々思うのだが、ネネ殿はサル(秀吉)より切れるようじゃ」
 
「私と藤吉郎は二人三脚でございます」
「うむ」
 
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信長は満足そうであった。
 

そして織田信長・徳川家康の連合軍は福井の朝倉を討伐するため3万人の大軍を進めて行った。秀吉や光秀の手勢も同行して北陸へと進軍していく。その中には、ほんの5年前までは三好三人衆に付いていて13代将軍足利義輝の殺害に加担したものの、その後三人衆と対立して信長方に寝返った松永久秀の手勢もあった。
 
夜。陣中なので簡単な食事の後、みんな寝ようとしていた。そこに女が数人訪問してくる。これは戦場ではとてもよくあることである。雰囲気で組合せが決まりお互いに邪魔しない距離を取って散らばる。出陣前はみんな気合いを入れるため禁欲しているので、久しぶりに抱く女の味は、みな格別である。夜中で相手の顔も年齢も分からないが、勝手に若い美人と想像して楽しむ。
 
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久秀もむさぼるように相手との束の間の時間に燃えた。60歳をすぎて実はもう立たないのだが、相手の女はまだ若いようで積極的にこちらを刺激してくれるし、普通に結合できないようだとみると、あそこを舐めてくれたので感激する。久秀は妻とも側室とも久しく睦み事をしていなかったので、久々の快感に全て尽きてしまうような感覚だった。
 
「おぬしまだ若いな。このような仕事をしているのは夫を亡くしたのか?」
と久秀は女に尋ねた。
 
「夫はおりますが、私の趣味です」
「夫が居るのに、こういうことをしているのか。やれやれ困った女じゃ」
などと久秀は言うが、楽しそうである。
 
「それで弾正さまにお願いがあります」
 
久秀はその言葉で一瞬にして頭がクリアになる。
「貴様何者だ?」
 
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傍にあった脇差しを抜いて女の喉に突きつける。ところがその脇差しを近くにあった火箸で一瞬速く受け止められてしまった。
 
「木下藤吉郎が妻、ネネにございます」
「何!?」
「実は弾正様に内密のお話があって参りました。弾正様の御家中には色々な方がおられると察しましたので」
 
確かに久秀の家臣の中には、久秀が三好三人衆から離れて信長に付いたことに不満を持っている者たちもいる。
 
「そなたそのために、わざわざ御陣女郎に化けてここまで来て、私とこんなことまでしたのか?」
 
久秀は少し呆れて言った。
 
「この地域で活動している御陣女郎の一団の元締めに、私の古い知り合いが居たので協力してもらいました。私は夫のためというより、殿様(信長)のためでしたら何でもします」
 
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「ふむ。確かに織田様は凄いお方よ。だから私も付き従っている。取り敢えず今の所はな。それは藤吉郎殿とて同じだろう?」
 
織田家臣団には、信長個人を崇敬する者より、織田が勝ち馬のようだと判断して付き従っている者の方が多い。
 
「弾正殿は、朽木弥五郎(元綱)殿にツテが御座いますよね?」
「ん?」
「朽木殿に密かにご助力をお願いしたいのです」
 
「今回の朝倉攻めに参加させろというのか?それはちょっと難しいぞ。色々義理がある」
「いえ、ある方を朽木様の領内を通過させたいのです。それに協力して頂けないかと」
 
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