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■女装太閤記(4)

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そして、藤吉郎が「10日」と約束した日の前日。その晩はうまい具合に雨であった。視界が効かない上に、川の流量も多い。その闇に乗じて蜂須賀小六の部隊が長良川の上流で組み立てていた「城の部品」が、筏に乗せられて次々と川を下ってきた。藤吉郎配下の足軽や職人が総出でそれを陸揚げし、大急ぎで組み立てていく。現代でいえば、ユニット工法である。
 
この作業のために特に職人たちは前日いっぱいゆっくりと休ませていた。
 
朝。小雨がまだ降る中、日が昇ると、美濃の守護兵たちの目前にきれいに城ができあがっていた。驚愕した美濃兵たちが矢を射るが、城ができあがっていると、そのくらい平気である。むしろ城側からもどんどん弓矢を射て、美濃兵を退散させた。
 
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こうして信長は美濃攻略のための重要な拠点を確保することができた。
 
美濃兵たちが去った後、藤吉郎の妻ネネが笑顔で、頑張ってくれた織田の足軽や職人、そして蜂須賀の部下たちをねぎらい、お茶やおにぎりを配っていた。その中には旧知のヤヤの顔もあり、ネネ(ヒロ)はヤヤと抱き合って、久しぶりの再会を喜んでいた。
 
「へー、あんた信長の家臣の奥さんになったのか」
とヤヤは言っていた。
 
「うふふ」
「あんた自身が信長の家臣になっても良かったと思うけど」
「私は夫と二人三脚でやってるんだよ」
「ああ、そういうのもいいかもね」
「信長様は凄い人だよ。きっとその内天下を取る」
「そうかも知れないね。こんなとんでもない作戦を思いつくなんて」
とヤヤは本当に感心しているように言った。
 
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墨俣築城を足がかりとして信長は6年掛けて美濃を攻略し、稲葉山城に本拠地を移し、ここを岐阜と改称した。斎藤氏の旧臣たちはちりぢりになったが、墨俣築城をきっかけに藤吉郎の盟友として、実質的に信長に仕えるようになっていた蜂須賀小六が、斎藤の旧臣の中で、竹中半兵衛は戦略家として非常に役に立つ人物なので、ぜひ織田家に仕えさせたいと上申した。
 
それで信長は、それほど言うのであれば、お主が勧誘して来いと言ったのだが、小六は、その手の工作は藤吉郎殿が上手などと言うので、信長はそれでは藤吉郎が竹中半兵衛を勧誘して来いと言った。藤吉郎はやれやれと思いながら、半兵衛の隠棲する岩手村(関ヶ原の近く)まで出かけて行った。
 
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半兵衛は反骨の人である。斎藤龍興に仕えていた頃、龍興があまりに気が抜けた生活を送っていたため、友人16人で話し合い、稲葉山城を1日で攻略して龍興を追い出してしまったことがある。稲葉山城でクーデター!?が起きたという報せに尾張の信長から使者が来て、ぜひ仲良くしたいと言ったが、半兵衛たちはそれは黙殺して斎藤龍興に城を返還した。
 
信長が蜂須賀小六の上申に応じて半兵衛の勧誘をすることにしたのも、背景として「あの時の十六人衆の一人か」という思いがあったためでもあった。
 
藤吉郎が半兵衛の許を訪れ、土産の品なども渡した上で、信長公がぜひ半兵衛殿の力を借りたいと言っているということを言うと、半兵衛もあの事件の時に真っ先に自分たちに連絡してきた(斎藤龍興の使者より早かった)ことを思い出し、信長公は確かに凄い人だと言う。しかし自分は斎藤の家臣だった身だからと言って、辞退した。
 
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しかし簡単に諦める藤吉郎ではない。翌日もまた半兵衛の許を訪れて信長公が考えている「新しい国家像」というのを説いた。今の戦乱の世にあって本気で天下を統一することを考えていること、更にはその先のことまで考えていることに半兵衛は感心したが、自分はもう気力を失ったからと言って辞退する。
 
「何だかねぇ、戦いから身を引いてしまったら、チンコも立たなくなってしまったよ」
「まだお若いのに。きっと美人を見たら立ちますよ」
「あはは、俺はもう女遊びする気力も無いから」
 
その日、遅くまで話し込んだので、藤吉郎は半兵衛に泊めてもらうことになった。
 

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夜中、半兵衛は人の気配に目を覚ます。
「藤吉郎殿か?」
 
すっと襖が開く。女がひとり廊下に座っていた。
「誰じゃ?」
「木下藤吉郎の妻、ネネと申します。失礼」
 
と言うと、ネネは半兵衛の布団に近づき、中に潜り込むと、着物の裾を開いて褌を解いてしまう。
「何をする?」
「立たぬなら、立たせてみせよう、ホトに棒」
「何だそれは?」
「気持ち良くして差し上げます」
 
と言うと、ネネは半兵衛の股間にあるだらしくなく垂れ下がった突起物を口に咥えた。
「あ・・・・」
半兵衛はあまりの気持ち良さに言葉を失った。
 
ネネが半兵衛の突起物を舐めると、それは最初はほとんど無反応だったのが、次第に熱を浴びて熱く、そして少しだけ太くなった。ただ硬くはならない。
 
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「そなた・・・夫から命じられてこんなことを?」
「私の勝手でございます。夫は知らぬこと」
「そうなのか・・・・」
 
かなり長時間ネネはそれを舐め続けた。そしてそれはついに硬くなってきた。
「こんな感覚は・・・久しぶりだ」
ネネは舐めながら、袋の中に入っている玉も優しく弄る。
 
「あ・・・ダメだ・・・これは・・・・」
やがて半兵衛の蛇口から大量の物凄く濃い液体が放出された。ネネはそれを全部飲んでしまう。そして竿から口を離すと、付着する液を更に舐めてきれいにする。
 
「半兵衛様。ちゃんと男の機能は活きているではありませんか? 信長様の所に行けば、きっと男としてもう一花咲かせられますよ」
 
「・・・・お主・・・」
「信長様は本当に凄いお方です」
「ネネ殿と言ったか? お主の方が信長殿より凄いかも知れん」
「私は戦国に生きるただの女です」
 
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「決めた。私は木下藤吉郎殿に仕える。それでも織田家中だから良いであろう?」
「そうですね・・・」
 

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そういう訳で、木下藤吉郎は竹中半兵衛を岐阜城へ連れて行った。半兵衛が織田信長より木下藤吉郎に仕えたいと言っていることを言うと、信長は笑って「それで構わん」と言ったので、半兵衛は藤吉郎の家臣となった。
 
この時期、藤吉郎にとって重要な部下が数人加わった。
 
ある年の夏、ネネは数人の部下の妻と一緒に領内の見回りをしていた。男たちが忙しいので、女たちが結構この手の仕事を引き受けていた。
 
その時、ひとりの同行者が急にうずくまる。
「どうしたの?」
「お腹が急に痛くなって」
「あらら、どこかで少し休めないかしら?」
「この先に寺がありますから、そこで休ませてもらいましょう」
 
女性5人で寺に入り、体調を崩した者がいるので休ませてほしいと言うと住職は快く受け入れてくれて、座敷で休ませてくれた。
「お茶でも持たせましょう」
と言い、近くに居た若い僧に命じる。
 
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僧はすぐに一行にお茶を持ってきてくれた。
 
割とぬるめのお茶が湯飲みいっぱいに注がれている。ネネたちは喉が渇いていたので、一気にそのお茶を飲んでしまった。
「美味しかった!」
 
「お代わりをお持ちしましょうか?」
と若い僧が言うので
「お願いしまーす」
と頼む。
 
それで僧が持ってきてくれたお茶は、さっきより少し熱めのお茶で、量もさっきより少なめだった。他の女たちはまた「美味しい、美味しい」と言って飲み干していたが、ネネはこの僧にちょっと興味を持った。
 
それで言ってみた。
「お坊さん、申し訳ないけど、お代わり頂けます?」
「はい」
 
と言って、僧は茶碗を下げ、またお茶を持ってきてくれた。
 
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今度は熱いお茶が湯飲みの半分ほどであった。女たちはみんな
「わあ、何だか少し熱いのが飲みたい気がしてたのよねぇ」
などと言って美味しそうに飲んでいる。ネネは微笑んだ。
 
翌日、木下藤吉郎が寺を訪れた。それで昨日、妻たちが世話になったと言って礼を言い、そしてお茶を出してくれた若い僧を自分の部下にくれまいかと申し入れた。
 
「木下藤吉郎様ですか! あの墨俣築城をした?」
「うむ」
「お仕えしたいです。お師匠様のお許しがあれば」
「わしは構わんぞ」
と住職。
 
「ではよろしくお願いします」
「そうだ。名前を聞いていなかった」
「はい。石田佐吉と申します」
 
これが後の石田三成である。
 

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ところでヒロが松下加兵衛のもとで過ごしていた時の友人で、ヤヤは蜂須賀小六配下の武将の妻となっていたが、もうひとりの友人ハルは美濃に移り結婚していた。信長が美濃の支配者となったことで、藤吉郎も岐阜で過ごすようになり、ある時、ちょうどハルが若い娘を連れているのに遭遇した。
 
「ヒロちゃん!」
「ハルさん!」
ふたりは手を取り再会を喜んだ。
 
「こちらは娘さん?」
「うん。実はもう結婚してるんだけどね」
「わあ、凄い」
 
「初めまして、マツと申します」
とハルの娘は挨拶した。
 
「旦那さんはお侍さん?」
「はい。山内伊右衛門と申します」
「どちらにお仕え?」
「それが、あちこちに仕えたものの、今は浪人の身で。とりあえず私の実家に身を寄せているのですが」
「へー」
 
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「ヒロちゃん、あんたは?」
「あ、私、信長様の配下の木下藤吉郎って人の女房」
 
「えーー!? 木下藤吉郎様の?」
「ね、ね、もし良かったら、この人の旦那、召し抱えてもらえるように言ってもらえない? 藤吉郎様はきっといづれ信長様の片腕になるお方だよ」
 
「いいよ。話付けてあげる」
 
それで藤吉郎は伊右衛門(山内一豊)を召し抱えた。
 
藤吉郎にとって、石田三成は「忠実な部下」、山内一豊は「信頼できる部下」
となった。
 

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永禄11年(1568年)、織田信長は上洛を強行し、混乱する京都の室町幕府の将軍として足利義昭を擁立した。この時、藤吉郎は京都守護の役割を命じられるが、この時、一緒に京都守護に命じられたのが京都の公家方から推挙されて織田家臣として組み入れられた明智光秀であった。彼を見て藤吉郎はびっくりして、つい言ってしまった。
 
「十兵衛殿、お懐かしゅうございます」
「そなたとどこかでお会いしたろうか・・・・」
 
「あ、この格好じゃ分からないよなあ。ちょっと待って」
と言って藤吉郎は席を外す。15分ほどした所で、ひとりの女性がやってくる。
 
「あ、あなたは!」
「お久しゅうございます、《兄上様》」
「ヒロ殿! そなたも京都におられたか?」
「木下藤吉郎の妻、ネネにございます」
 
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「おお、藤吉郎殿の奥方になっておられたのか!」
 
するとネネはいきなり明智光秀に抱きついた。
「ちょっと、ちょっと何をなさる?」
と光秀が驚いたように言う。
 
「今夜、お供してあげましょうか?」
「ネネ殿、冗談がきついですよ。夫のある身でそのようなことを言ってはなりません」
 
するとネネは《藤吉郎の声》で
「僕だよ。分かんない?」
と光秀の耳元でささやく。
 
「へ!?」
「藤吉郎とネネは同一人物。十兵衛お兄ちゃんだけに教える秘密ね」
 
光秀は口をパクパクさせて、何を言っていいか分からない感じ。
 
「だ・か・ら、今夜は楽しませてあげるから」
「ちょっと待て。そなた、男なのか?女なのか?」
「さあ、どちらかしら。今夜分かるといいね」
 
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とネネは女の声に戻して、楽しそうに言った。
 
 
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