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■女装太閤記・激闘編(3)

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「サル(秀吉)、キンカン頭(光秀)、権六(柴田勝家)、いよいよ武田とやるぞ。今度は負けんぞ」
 
と信長は楽しそうに言った。
 
「ただ武田の騎馬隊は手強いです。信玄殿が亡くなられて息子の代になり弱体化したとは言われますが、侮れません」
 
「それについてはサルとキンカンが対策を考えたらしい」
と信長。
 
「はい、殿様。鉄砲を撃って撃って撃ちまくりましょう」
と秀吉は言う。
 
「ふむ。楽しそうだな」と信長。
 
「鉄砲は確かに有効な手段だ。しかし鉄砲を撃った後が問題だ。一撃で向こうを全滅させられたらいいが、鉄砲は一度撃つと、その後筒を掃除して、再び弾を込め、火縄に火を点け、それが燃えて発射されるまでに物凄い時間が掛かる。その間に敵に攻め込まれたら無力だ」
と勝家は当時考えられていた鉄砲の欠点を言う。
 
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「その問題については、私は十兵衛殿と20年前に話し合ったのですよ」
と秀吉は言った。
 
「20年前??」
「若い頃、藤吉郎殿は出雲で刀鍛冶の弟子をしておりまして、そこに私が当時本当に珍しかった鉄砲を持って寄ったのです。その時、藤吉郎殿や、他の鍛冶のお弟子さんたちと随分議論しまして」
と光秀は言う。
 
「まあ、取り敢えずみんな饅頭を食おう」
と言って、秀吉は一同に饅頭を配る。
 
「うちのが作ったものです」
「おお。ネネ殿は昔から菓子作りが上手であったな」
と信長が言う。
 
信長は笑顔でネネ手作りの饅頭を食べている。柴田勝家も
「おお、ちょうど腹が減ってきたと思っていた」
と言って、取って食べるが、光秀はじっと秀吉の顔を見詰めている。
 
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「どうなされた、十兵衛殿。まるでおなごでも見詰めるように私を見て?」
と秀吉が訊く。
 
「あ、いや、そなた、おなごでは無いよな?」
と光秀。
 
「私が女に見えるか? 十兵衛殿、書物の読み過ぎで目が悪くなられたか?」
と秀吉。
 
「済まん。気のせいだ」と光秀。
「お主、酔っているのではあるまいな?」と勝家。
 
「私が女だったら、十兵衛殿の側室になってやってもよいぞ」
「いや、私は側室は置かないことにしているから」
 
当時の明智光秀の妻は細川ガラシャなどの母である煕子(ひろこ)である。光秀と煕子の仲はひじょうに睦まじく、彼女の存命中、光秀は側室を置かなかった。
 
「藤吉郎が女で、十兵衛と結婚したら、頭が禿げたサルが生まれるかも知れん」
などと勝家が軽口を叩く。
 
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「それも面白そうだがな」
と言う信長は既に3個目の饅頭を食べている所である。
 
「まあ、そういう訳で、鉄砲の弾を詰め替えて次の弾を撃つまでの時間が、ちょうどこの饅頭を1個食べるくらいの時間なのです」
と秀吉は言った。
 
「ほほお。それで饅頭だったのか」
と信長。
 
「それで結局どうするのだ?」
と勝家。
 
「鉄砲撃ちを5人ずつ組にします。縦に並べて1人ずつ撃たせる。1人が撃ったら後ろに下がり、筒の掃除と弾詰めをする。その間に次の者が撃つ。撃ったら列の後ろに回って、掃除をする」
 
「なるほど!」
「鉄砲をたくさん用意しましょう。こうすれば、どんどん撃てるので相手はたとえ馬に乗っていても、こちらまで来る途中で誰かの弾に撃たれます」
 
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「面白い。お前たちに任せるぞ。鉄砲も火薬も買えるだけ買え」
と信長は機嫌が良さそうな顔で言った。
 

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そうして武田軍と織田徳川連合軍は天正3年(1575年)5月、現在は愛知県新城市に入っている長篠城の近辺で、相まみえた。「長篠の戦い」である。
 
初め長篠城に入っている奥平貞昌が頑張って武田軍の猛攻に耐えるが多勢に無勢である。奥平の家臣の鳥居強右衛門が城を密かに抜け出し、助けを求めに織田軍のいるはずの所まで走る。そして数日中に織田徳川本隊が到着するというのを伝えられ、城にその報せを持って帰ろうとした。
 
ところが鳥居は城の近くで武田軍に捕まってしまう。武田側は鳥居に「援軍は来ない」と言え、そうすれば命は助けると言う。鳥居はそれに従う振りをして、土壇場で大きな声で「援軍はすぐに来るぞ」と叫び、武田は鳥居を磔にした。しかしこれで長篠城の守備兵は志気が高まり、その後、実際に織田徳川連合軍が来るまでの4日間、耐えきるのである。
 
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そして両軍は長篠城の近く、設楽原で5月21日激突する。
 
ここで武田の騎馬隊に対して、織田は数人ずつまとめた鉄砲隊による、世に言う「三段撃ち」の攻撃を見せ、次々と飛んでくる銃弾に馬も武将も倒れて、騎馬隊は壊滅してしまう。
 
武田勝頼は甲斐に引き上げ、その後家臣の離反が相次ぎ、弱体化していくことになる。
 

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天正5年、信長の小姓に新たに1人の少年が加わった。森勝蔵長可の弟、森蘭丸成利である。
 
元々この子たちの父・森可成も結構な美男子であった。そして兄の勝蔵も美少年であったが、森蘭丸の美少年度は群を抜いていた。
 
「そなた本当に男か?」
とマジで信長は尋ねた。
 
「はい、男でございます」
と森蘭丸は声変わり前のボーイソプラノで答える。
 
「サル、本当に付いているかどうか確かめろ」
などと信長が言うので、やれやれと思いながらも秀吉は森蘭丸の傍に寄り、「すまん」と声を掛け、股ぐらを触る。蘭丸はびっくりしている。
 
「殿、確かに付いております」
「棒も玉もあるか?」
「はい、確かに棒も玉もあります」
 
「そうか。でもまあ、そなたほど美形であれば、男でも女でも構わんな」
と信長は楽しそうに言う。兄の長可は頭を抱え込みたい気分であった。
 
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数日後、森蘭丸が信長に呼ばれて怪訝な顔をして安土城の廊下を歩いていたら、中年の女性に声を掛けられる。
 
「森様、ちょっとこちらにいらしてください」
「そなたは?」
 
「羽柴藤吉郎秀吉の妻、ネネと申します」
「おお! 藤吉郎殿の。父も兄もたいへんお世話になっていたようで」
 
「ちょっと北の方様(信長の妻・帰蝶)から頼まれたのです。ちょっとこちらへ」
「はい?」
 
森蘭丸がその部屋に入っていくと、数人の腰元が待機している。そして腰元達は
「森様、失礼致します」
と声を掛けると、数人がかりで森蘭丸の身体を捕まえた。
 
「何をする?」
「この方が殿の覚えが良いので」
「ちょっと待て〜〜! お前ら何をするのだ!?」
 
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森蘭丸は多少抵抗したが、多人数で押さえられると相手が女であってもかなわない。そして15分後。
 
「何なんだ?この服は?」
と森蘭丸は言っている。
 
まるでどこかのお姫様のような美しい小袖を着て、髪も武家の娘風に結われている。更にお白粉を塗られ、唇に紅まで塗られている。
 
「そういう格好の方が殿様の好みなのですよ。さあ、殿様の所へいらしてください」
「この格好でか?」
と森蘭丸は情け無さそうな声で言う。
 
「はい。美しいですよ」
 

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それで腰元が2人付き添い、信長の居室まで行った。
 
「失礼します」
と言って声を掛け、廊下に正座して襖を開け、中に入って襖を閉める。腰元2名は廊下で待機する。
 
「殿、たいへん遅くなりました」
と声を掛けると、信長は
 
「誰?お前」
と言う。
 
「あのぉ、森蘭丸成利で御座います」
「お前、やはり女だったの?」
 
「いえ、男ですけど、さきほど腰元たちに捕まってこのような格好にされてしまいまして」
 
「あははは。それは帰蝶の悪戯だな。まあよい、お前、本当に可愛いではないか。こちらに寄れ」
 
「はい、あのぉ、ご用件は何で御座いましょうか?」
「よいではないか、よいではないか」
 
と言って信長は美少女姿の森蘭丸を傍に寄せ、愛で始めた。外に居る腰元たちは信長と蘭丸が「結ばれる」かどうかを確認して信長の正室・濃姫(帰蝶)に報告しなければならないので、襖に耳を近づけて中の様子を伺っていた。
 
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天正10年(1582年)3月11日、天目山の戦いで武田勝頼が死して信玄が築いた強固な王国は瓦解した(心頭滅却すれば火もまた涼し)。
 
5月、信長はこの武田討伐の労をねぎらうため、徳川家康と穴山信君(信玄の甥で武田家の事実上の後継者)を安土城に招き、15日から17日までもてなした。明智光秀がその饗応役に任じられたが、この時信長は妙に不機嫌で、光秀を困惑させた。些細なことで光秀を怒鳴りつけ、饗応役を解任した。
 
しかしそこに中国で毛利勢と戦っている秀吉から援軍の願いが来ると、信長は数時間前に光秀を怒鳴りつけたことを忘れたかのように彼を呼び寄せ秀吉を助けるために中国に向かうよう指示した。この程度は信長としては、いつものことである。(秀吉からの援軍の要請があったので、それに向かわせるために饗応役を外したという説もある)
 
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光秀は25日、いったん丹波亀山城に入り、1万3000人の大軍を編成する。信長自身も追って中国へ向かおうとし、少数の伴を連れて5月29日、京都・本能寺に入った。一方の徳川家康と穴山信君は奈良見物をした後、堺に行っていた。商業都市・堺の見物という名目だが、恐らくは軍事物資の商談でもしていたのだろうか。
 
そして6月2日早朝。信長は馬のいななきや破裂音で目を覚ます。最初は喧嘩か何かかとも思ったものの、どうも襲撃されているようだというのを認識する。
 
「これは謀反か?如何なる者の企てぞ?」
と信長は叫ぶ。この時、信長が真っ先に疑ったのは、京都に来ていた長男の信忠であったという。
 
しかし森蘭丸が走り込んで来て告げる。
「明智が者と見え申し候」
 
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すると信長は
「是非に及ばず」
と言って、自らも最初は弓を取って戦い、矢が尽きると槍を取って戦った。
 
傍に仕えている女たちに「お前たちは逃げろ」と言い、自らは屋敷の奥に籠もり切腹して果てた。享年四十九。
 
桶狭間の決戦の前『人間(じんかん)五十年、下天の内を比ぶれば夢幻の如くなり』
と謡い舞った信長はその下天の1日にあたる50年を生きることなく、この世を去ってしまった。
 
森蘭丸やその2人の弟ほか、本能寺の信長の男性従者はほぼ全て討ち死にし、生き延びたのは黒人の従者・ヤスケのみである。
 
そして信長の遺体は発見されなかった。
 

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■女装太閤記・激闘編(3)

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