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■受験生に****は不要!!・結(1)

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(C)Eriko Kawaguchi 2002.03.19
 
エレベータのドアが開いて、そこにいた人物を見て美夏はぎょっとした。前島も「え?」という声を出した。
 
「わーい、美夏じゃん、こんな所で何してるのぉ?」
思いっきり大きな明るい声で叫んだボクは美夏の首に抱きついた。美夏が思わず、よろける。ボクはその美夏の身体を支えながら
「美夏、愛してるよぉ!」
と言って強引に美夏の唇にディープキスをした。美夏の心臓の鼓動が速くなったのをボクはしっかりと確認した。
 
そして、続いてボクは今気づいたような振りをして前島の方を向き
「あ!前島さん、ボク前島さんのことも大好き!」
といって二人の間に身体を割り込ませて美夏と引き離した上で、こちらは頬に口づけする。ちなみにボクは真っ赤なルージュを自分の唇に塗っていた。そしてサービスで前島さんのワイシャツの襟にも口紅を付けておいた。
「春紀ちゃん、きみ、酔っているのかい?」
前島はマジでそう訊いた。
 
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ボクは
「いやーん!酔ってなんかいないよぉ。でもまだ飲み足りないなぁ。ねぇ、美夏一緒に飲みに行こ」
と美夏の腕を全身の力を込めて引っ張る。ボクは、この行動をしている最中ずっとエレベータのドアが閉まるまでの時間をちゃんと計算していた。これはドアが開いた瞬間に二人の姿が見えた時にとっさに思いついたことだった。その時にボタンは既に1階が押してある。美夏を強引にゴンドラの中に引き込んで二人ともそのまま倒れてしまった所でドアがしまった。
 
あっという顔をしている前島に、ドアの閉まり際ボクはこう言ってあげるのを忘れなかった。
「前島さん、3階のティールームで早苗さんが待ってるって」
と。
 

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ゴンドラの中。ボクが美夏を立たせてあげると、美夏は平手で思いっきりボクの頬を殴った。ボクが実際酔ってないようだと分かると連続で殴った。ボクは殴られるに任せておいたが、美夏の殴り方は本当に遠慮なしだった。多分ボクの頬はヒリヒリしていたと思うのだが、ボクはそんなことに関心はなかったから、痛みの記憶は無い。でも美夏のほうはその内手が痛くなったのか、手に持っていたハンドバッグで殴り始めた。数えてはいなかったけど、それで20回以上は殴った。その内ハンドバッグのひもが取れてしまった。
 
しかし殴り終えると、美夏はそのままボクの胸にしがみついて泣き始めた。ボクは気が変わった。さっき早苗さんに言われて念のためフロントで手配していたものを行使することにした。
 
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エレベータはまだ30階付近を降下中だ。18階のボタンを押す。
 
「何があるの?」
「美夏のお化粧が涙で崩れてしまった時のために、お化粧直しできる部屋を用意しておいた」
とボクは正直に言った。
「そこで、私を春紀の物にしてくれる?」
「いいよ」
 
その夜、ボクと美夏は本当の意味で結ばれた。ボクたちの間には入れた入れてないなどという関係は成立し得ないけど、そういうものと関係なしに、ボクはそう思った。

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翌朝までには、ボクたちの間には何もわだかまりはなくなっていた。一睡もしなかったけどお互いに疲れは全然感じなかった。ボクは美夏が落ち着いてきた段階で伯母さんに電話して、美夏を無事確保していることを伝えて安心させた。
 
「私、早苗に悪いことしたよね」
 
ボクがどうしてここに現れることになったかの経緯を聞いて美夏はそう言った。早苗は前島の携帯の発信履歴にこのホテルの番号が入っているのを見ていたのだった。ほぼ毎日こっそりチェックしていたらしい。そんなことしていいの?と早苗に聞いたら、大抵の子やってるよ、と言っていた。「大抵」というのがどの程度の人数なのかは知らないが。
 
「知らない番号だったから掛けてみたらこのホテルが出て、おお凄い!と思っていたのに誘われる様子がない。そして今日休んでいる、というので、これは怪しい....と思ったんだって」
「なるほどね。でも携帯の履歴のチェックってうちのクラスメイトでも彼氏いる子はやってるみたいよ」
「変な世の中だなぁ」
「だけど私も春紀も携帯持ってないもんね」
「使わないもん。美夏とはほとんど一緒に暮らしてるようなもんだし」
「そうか、だから欲しいと思わないのか」
「早苗さんたちも、縁があれば、ちゃんと仲直りするよきっと。美夏が気にすることないって」
「そうだよね」
 
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「美夏さ、やっぱりボクと一緒に大学受けようよ。4年経てばその間にテンションの維持が大変だし、記憶力はやっぱり今ほどは働かなくなるよ」
「でも、結婚はどうするの」
 
「ボク、大学に行きながらもずっとバイトするよ。美夏もしてよ。二人のバイト代を足せば、質素な生活すれば、きっとやっていける。だから、結婚は高校卒業したらすぐ。それは動かさない」
 
「そうね。何とかなるかもね」
美夏は少し明るい顔になって答えた。
「でもさ春紀、卒業したら男の子に戻るの?」
「女の子のままになっちゃった場合は、結婚してくれない?」
 
「ううん。それでも構わないよ。昨夜みたいにたっぷり私を満足させてくれるのだったら、おちんちん付いてなくても気にしない」
 
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ボクはちょっと照れた。実は昨夜は偶然にもメッシュイン(美夏が持っている教本?での呼び名)ができてしまった。正常位から一段階潜って密着度の高い、いわゆるトリバディの状態から更にもう一歩踏み込んだ感じ。美夏は一瞬何か入れられたと思ったらしい。「道具使ってるの?嫌よ」と美夏は思わず言ったが、ボクが何も使ってないといい美夏も手で触って確認すると、それをもっとやれとリクエストされた。
 
ボクは昨晩の夢中になってしていた時のことを思い出しながら答えた。
「実は自分でも男の子に戻れるかどうか自信が無いんだ。でもボクは美夏ひとすじだよ」
「私も春紀ひとすじ」
 
美夏が、ボクと前島さんの相合い傘を見て、前島さんがボクを誘い、ボクがそれに安易に応じたんじゃないかと誤解したことを話した。ボクは自分が男同士だから構わないだろうと発想していたことを正直に話した。
「でも自分が外見上女の子だったことを忘れていた。ごめんね」
と謝る。
 
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「その直後に、前島さんが私をお茶に誘ったからさ、前島さんって早苗がいるのに、春紀をさそって、その直後に私まで誘って、て怒りが爆発しちゃったのよ。だからホテルの部屋まで誘って、その上で恥かかせてやろうと思って」
「きっと、それ美夏が前島さんのことを少し好きなんだよ」
 
「え?そんなことないよ。私の男嫌い知ってる癖に」
「いやそうだって。だからそれは美夏の嫉妬」
「嫉妬?誰に?」
ボクは笑いながら解説した。
 
「美夏は前島さんのこと少し好きだから、前島さんの恋人の早苗さんにちょっと嫉妬しているんだ。だから前島さんを見ると、その感情が出てきていらつくんだよ。それでボクと前島さんが一緒の傘に入っているの見て、早苗さんがいるから自分は前島さんに好きと言わずにいるのに、更に他の女の子を誘うなんて、という思いと、美夏ひとすじの筈のボクが前島さんに好意持っているんだろうかという思いと、ふたつの嫉妬が同時に起きたんだな。それで更に前島さんが自分を誘って4つめの嫉妬が発生して、もうコントロール不能になっちゃったんだよ、美夏って」
 
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なるほど、そう解説されてみるとそうなのかも知れないと美夏は思った。そして「御免ね」と言って、ボクに優しいキスをしてくれた。
 

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ボクたちの関係は、それを契機に今までわずかにあった危うさのようなものが消えてしまい、ものすごく安定して、お互いに全てを信じ合える関係になった。ひょっとしたらもう結婚しちゃったようなものかなという気もした。
 
ボクの成績は順調だった。11月の実力試験では3位。そして12月の期末試験は5位。2月の期末試験は4位だった。春休みを経てボクらはいよいよ3年生になった。
 
ボクもおちんちんを取られてしまってから2年以上経過したことになる。美夏は女性ホルモンが充分支配的になれば、女の子としての性欲が出てきて悶々とするかも知れないよ、と言っていたが、ボクと美夏は週に一度、ボクらにとってのHをしている。それだけで充分満足していて、一人でしたいと思うことはなかった。美夏はHで満足していても、一人でもやっていた方がHの時もっと気持ちよくなれるよ、と言っていたが実はハマってしまうのが怖くて、手を出していなかった。でも逆に言うと、それで我慢できる程度の性欲に留まっているということかも知れない。
 
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