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■受験生に****は不要!!・転(4)

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春紀のバイトは無難に終了した。心配はしていなかったが学校関係者に見とがめられたりすることもなかったようであった。補講の方も快調に授業内容を春紀は吸収していた。美夏も一緒にレベルを上げていた。
 
やがて夏休みが終わり、2学期が始まる。補講の最後に行われた実力テストでは春紀は500点満点の492点で受講者中1位だった。しかし同じ問題を美夏にさせたら、美夏は496点をマークした。「美夏、ひょっとして東大にも通るかもよ。ボクと一緒に受けない?」「でも二人とも一緒に進学すると結婚が先延ばしになっちゃう。私はやっぱり4年後に受験するよ」美夏は少し複雑な感情が混じるのを抑えながら答えた。
 
2学期が始まって3日目、春紀は担任の酒井先生から進路相談室に来るよう呼び出しを受けた。今頃何か相談をしなければならないような心当たりは無い。何だろうか。まさかバイトのことがばれた?春紀は少しビクビクしながら、職員室の向いにある進路相談室に入った。
 
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酒井先生は何か難しそうな顔をしていた。
「済まないね。こんな所に呼び出して」
と先生は話を切りだしにくそうにしている。
「ものすごく唐突なことを訊くんだけど」
「はい」
「君って、男の子だってことはないよね」
 
春紀はバイトの件ではなかっので、ほっとして、ついでに吹き出してしまった。しかしその反応が先生には良い方向に映ったようだった。
 
「えー、冗談がきついですよ、先生。ボクが女の子に見えますか?ボクはこの通り男の子ですよ」
 
そう春紀は楽しそうに言うと、その場でくるっと回ってみせた。今日は短いフレアスカートを履いている。それが浮いて長い足が顕わになり、ほとんど下着が見えかかった。酒井先生は慌てて目を下に落とした。
 
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「あ、いや変なこと聞いて済まなかった」
 
思わぬ反射をしてしまったことを隠すかのように腕を足の上で組み、春紀に帰っていいと告げた。春紀が出ていくと先生はブツブツとつぶやいた。
 
「あんな(可愛い)子が男なわけ、ないじゃないか。急に成績が上がってきているから、そのあおりで順位が下がった誰かから嫌がらせを受けたんだな。可哀想に」
 
そう言って彼は机の引き出しの中に置いていた便箋を取り出すと部屋に備え付けのシュレッダーに掛けてしまった。その便箋に太い油性マジックで「2年8組の鶴田春紀は男です。調べて下さい」という文章が書かれていたことを春紀は知る由も無かった。
 

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春紀の成績は2学期・3学期も安定したまま少しずつ上昇して行った。10月の中間試験は8位。実力試験以外の定期試験で初めて出た1桁代だった。担任は今のままなら本当に理3に通るだろう。頑張れと春紀に言った。
 
春紀は嬉しくなってその日帰ってからそれを美夏に言った。すると美夏は難しい顔をして、春紀に問い直した。
 
「まさか、春紀、本当に東大の理3を受けるの?」
「うん、今のままなら受けてもいいなと思ってる」
「ちょっと待ってよ。だったら、私は春紀が卒業するまで6年も待たないといけないの?」
「え?6年て何?ボク留年したりしないよ。ちゃんと4年で卒業できるって」
 
「春紀、本当に自分がしようとしていること分かってるの?理3って何するところか知ってる?」
「え、理科系の第三類だろう」
「だから、何になるコースよ?」
「知らない」
「知らないで受けるつもりだったの。春紀一体、何考えてるのよ」
 
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美夏は本当に怒った。今までは春紀の常識の無さを微笑ましくも思っていた。でもその時突然美夏の限界点を越えてしまった。
 
「御免。美夏」
春紀もさすがにこれはまずい事態だということに気づいた。
「ボク本当に理科3類って何する所か知らなかった。お願い教えて」
 
美夏は呆れながらも、今こんなに感情を爆発させてはいけないと思い直しながら、できるだけ冷静に返事をした。
 
「あのね、理3というのはお医者さんになるコースだよ。どこの大学でも、お医者さんコースというのは修業年限が6年なの」
「そうだったのか。ごめんボク知らなかった。ボク美夏をそんなに待たせたりしないよ。4年で卒業できる所に変える」
 
春紀は真剣な顔で美夏に言った。美夏はそれ以上その場にいると自分がとんでもないことを言ってしまいそうな気がして、自分の部屋に駆け込むと鍵を掛けてしまった。春紀が何度かノックをしたが無視した。

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翌日。その日春紀は何だか授業が終わってからすぐ帰るのがおっくうな気がして、視聴覚室で資料ビデオを見て、それから帰った。いつもはすぐ帰るので校庭にクラブの人達がまだ出ていないのだが、その日はもう各クラブが練習を始めていた。
 
春紀が帰る姿を認めた1年生の男の子が先輩に言った。
「あ、春紀さんですね」
「あぁ、やっぱり可愛いよな。俺あの子のこと好きだよ。彼氏がいるとしても」
「例の彼女が男かもという件はどうなったんですか」
「馬鹿、男なわけないだろう」
「でも女みたいに可愛い男ってのも時々いますよ」
 
彼はしばらく考えていたがやがて口を開いた
「ここだけの話だぞ。俺さ、お前が春紀ちゃんが男かもなんて言うからさ、匿名の手紙出したんだよ、学校に」
「え?」
「鶴田春紀は男です。調べて下さい、ってさ」
「凄い、先輩。で調べられたんですか?春紀さん」
「と、思う。本当だったら前代未聞のことだからさ」
「で、どうだったんです」
「知らない。しかし、春紀ちゃんの様子は全然変わらないし、調べたらやはり女の子だったんだと思う」
 
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「そうか。じゃ、俺の学校の1年上の鶴田春紀とは別人ですか」
「そうだよ。ここに合格したからといって、ここに入学したとは限らないだろう。他の学校に行ったかも知れないじゃんか」
「あ、そうか。きっとそうなんだろうな」
1年生は納得したようだった。
 
春紀が下宿に帰ると、美夏は外出していた。伯母さんに訊くと、ノートが切れたので買いに行ったということだった。春紀はやはり美夏に早く会いたいという気がしてきた。「済みません。ボクも出てきます」と言うと、飛び出して、美夏がいつも行っている文具屋さんに行ってみようと町に出るバスに乗った。
 
しかしその文具屋さんに行っても美夏はつかまらなかった。行き違いになったかな。でもついでにあちらのファンシーショップに行ったかも。美夏が行きそうな店は、何度も一緒に歩いているだけにたくさん心当たりがある。春紀はそういう所を何カ所も回ったが、やはり美夏は見つからなかった。春紀はとうとう諦めて、戻ろうとしたがそこに急に雨が降ってきた。春紀は急いで近くの店ののきさきに飛び込んだが、雨はなかなかやみそうになかった。「参ったな。濡れてもいいからバス停まで走るかな。でもバス停の所は雨をよけられるような場所無いんだよな。バスは20分に1本だし」春紀は本当に困っていた。
 
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「君、傘が無いの?」
誰か大きなこうもり傘を手に持った男の人が声を掛けた。
「あ、君はこないだバイトに来た子だね」
 
春紀は急いで自分の記憶のページをめくって、その人が夏休みにバイト先にいた前島さんという人だということを思い出した。
 
「前島さん、でしたっけ」
「凄い。ほんの数日いただけなのに覚えていてくれたんだ。君は確か春紀ちゃんだろう?」
「あ、はい」
「僕は美人は記憶に残るんだよ」
男性に興味は無いが、こんなこと言われるのは悪い気がしない。
 
「傘無いの?」
「ええ。急に降ってきたんで、どうしようと思ってた所です。でも大丈夫です。バス停まで走っていきますから」
 
春紀はあまり男性と長時間話しているのが辛い気がして逃げ出そうと思い始めていた。
 
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「それじゃ濡れちゃうよ。じゃバス停まで僕の傘に入って行かない?これ広いから。僕は今日暇だから、バスが来るまで一緒にいてあげるよ」
 
ここまで言われてしまうと、断るのも悪い気がした。あまり悪い印象を与えると、仕事仲間である美夏の印象まで悪くなるかも知れない、と余計な所まで気を回してしまった。結局前島の傘に入ってバス停まで行った。基本的には春紀としては男同士のつもりなので、男性の傘に入ることには抵抗がない。しかしこれが女の子としては少し無防備すぎるという所には考えが至らなかった。バス停まで行くと、バスはすぐ来たので、春紀はお礼を言ってバスに乗った。
 
美夏はノートを買いに町に出たものの、いつも行っていた文房具屋さんで気にいったのが見つからず、結局ずいぶんあちこちの店をハシゴしてしまった。結局あまり入ったことのない店で、必ずしも気に入らないノートを少し高い値段で買ってしまい、物足りないものを感じながら帰ろうとした所で雨が降ってきた。美夏は近くの店で500円のビニール傘を買う。そしてバス停の方に向かっていたら、あと50mという感じの所で目的のバスが来てしまった。
 
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「あぁん、もう今から走っても間に合わないや。今日は何だか運が悪いのかな」
美夏はブツブツいいながら、それでもバス停の方に足を進める。その時、バス停の所で相合い傘をしている男女が美夏の目の分解能にひっかかった。女の子の方だけがバスに乗り、バイバイしている。その女の子が春紀だということに気づいて、美夏はその場で呆然と立ち尽くしてしまった。そして、バスが発車したあと、こちらを向いた傘を持った男性の方が前島であることを知ると、かつてないほどの怒りがこみ上げてきた。それはなぜ自分が怒っているのかも分からないような怒りだった。
 
このまま、あの男殴ってやろうかと思って大きく肩で息をしながら立ち止まっていると、その前島が美夏の方に近づいてきた。
 
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「あれ、美夏ちゃんじゃない?」
と前島が言った。美夏は何と言ってやろうかと思ったが、言葉がうまく出てこない。
「奇遇だね」
前島はそう声を掛けたが、美夏が何か思い詰めたような顔をしているのを見てこのまま放っておくのは良くないかも知れないと思った。そこで
 
「ね、君。どこかで少しお茶でも飲まない?」
と声を掛ける。その瞬間、美夏の頭の中に良くない考えが浮かんでしまった。
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その日、美夏が下宿に戻ったのは随分遅い時間だった。伯母さんが
「遅くなるんだったら電話くらいしなさい」
と注意するが、美夏は空返事ぎみの返事をして部屋に引きこもってしまった。ボクが美夏の部屋をノックしたが美夏は出てこなかった。
 
翌日、ボクが起きると美夏がもういない。
「あれ、もう美夏ちゃんの補講始まったんでしたっけ」
とボクが訊くが伯母さんも
「よく分からないのよ。あの子今朝は私と一言も口を聞かずにさっさとカバン持って出ていったの。あの子が帰ったら、春紀ちゃん、ちょっと様子みてあげてくれない?」
と心配するように言った。
 
しかしその日も美夏は帰ってくるなり自分の部屋に閉じ籠もり、出てこなかった。ボクは鍵がかかっていないことに気づき、思い切ってドアを開けてみた。すると次の瞬間、枕が飛んできた。
「勝手に女の子の部屋に入るな!」
美夏は凄い形相でそうボクに叫んだ。
 
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土曜日。ボクが帰ると美夏がいない。伯母さんによると学校からは帰って来たがすぐに出かけてしまったという。ボクは本当に美夏を心配した。「心当たりを探してみます」ボクはそういうと、自分が知っている範囲の美夏の友人に次から次へと電話してみた。しかし誰も美夏の居場所を知らなかった。
 
困り果てていた時に急に先日偶然町で会った前島さんのことを思い出した。前島さんの番号は分からないが、あの店の番号は分かる。ボクはそこに掛けてみた。電話に出たのは早苗さんだった。自分が知っている人が出たのでほっとしてボクは自分の名前を名乗り、美夏を見なかったかということと、もし前島さんがいたら、そちらにも訊いてもらえないかと尋ねてみた。
 
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すると早苗さんは何かしばらく考えていたようだったが
「かけ直すから、そこの番号を教えて」
と言う。電話はすぐに掛かってきた。
 

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その頃、美夏は露出度の高い服装と濃いメイクをして、ホテルのスカイラウンジにいた。「きみ未成年だよね」「気にする必要ないわ」妖しげな微笑みを浮かべた美夏はカクテルのグラスに口を付けながら答えた。
 
「正直、君がこんなに積極的な子だとは思わなかったよ」前島はまさに本音でそう言っていた。「あなた程ではないわ」と美夏は言う。
 
前島は思っていた。こないだの雨の日、いきなりキスされたのには驚いた。今時の高校生なんて、こんなに遊び好きなんだろうか。その後は毎晩のデートだ。昨日など別れ際にこの子は自分から抱きついてきた。おもわず車の中でそのまま押し倒してしまったが、こんな場所では嫌だといって、一流ホテルのダブルルームを要求されてしまった。ひょっとして援助交際目的かとも思い、お小遣いをあげようとしたら拒否された。自分が好きでやっているからお金はいらないよと言われた。ただ「経験」がしてみたいのかも知れない。
 
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早苗には少し飽きて来ていた所だった。これを機会に乗りかえてしまうのも面白いかも知れないという気がした。ただ早苗なら1年以内程度に結婚可能だが、この子の場合はまだ結婚するつもりはないだろう。しかし自分ももうしばらく遊んでいてもいいのかも知れない。しかし海水浴で見た時は、自分と早苗が浜辺で愛の営みをしているのにも気づいてない風で、泳いでばかりいた。恋などとはまだ無縁の若い子かと思ったが、案外進んでいるのだろうか。今の子はよく分からない。
 
美夏がカクテルの最後の一滴を飲み干すのを見て前島は切り出した。「じゃ、そろそろ行こうか」美夏はハンドバックを持って立ち上がった。支払いを済ませ美夏の腰のところを抱くようにしてエレベータの方に行く。ボタンを押してから表示を見ると、左側のゴンドラが上がってきている最中だ。これが来るだろう。そう思って、美夏をそちらにエスコートする。
 
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やがて階数表示が最上階50階まで来てドアが開いた。
 
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