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■受験生に****は不要!!・結(3)

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ボクも美夏もセンター試験の願書を提出した。いよいよ始まる。美夏はやはりK大学薬学部と東大理2を受けることにした。ボクは散々迷ったあげく、前期日程で東大文1、後期日程で近くの県の国立S大学の理学部の物理学科を受けることにし、私大は受けないことにした。
 
美夏が「まだ自分の進路を決めてないのか?」と笑った。でもボクはまじめな顔で答えた。「法学部に行く場合は、司法試験に通らないと話にならないから。それなら東大に一発で通る程度の力が無いとダメと自分に課すことにしたんだよ。とにかく在学中に司法試験にパスして卒業と同時に司法修習生にならなくちゃ」
 
2学期の中間試験・期末試験は、ほとんど普通の実力試験と変わらない内容だった。しかしボクはどちらも2位だった。西川さんも頑張って5位くらいの所まで上がってきていた。彼女も志望校には確実に入れそうな感じだ。
 
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ボクが中学時代の同級生と一緒の下宿で一緒に勉強しているというのを聞いて、西川さんが時々そこに顔を出してもいいかと聞いてきたので、美夏にも確認した上で、土曜日には3人で勉強会をすることにした。西川さんも塾があまり好きじゃないらしく行っていない。「自分のテンポで勉強しないと、頭に入らないのよねぇ」と言っていた。
 
この「勉強会」の初日、西川さんはボクらを見て、すぐにその関係を見抜いてしまった。
「春紀の恋人ってこの人だったのね。道理で男の影が全然なかった訳だわ。でも素敵」
彼女は明らかに面白がっていた。
「お二人は、えっと春紀の方がネコちゃん?」
 
ボクと美夏は顔を見合わせた。実は早苗にもそう言われたのだ。どうして?ボクは女言葉もまともに使えてないのに。
 
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「私達どっちがどっちて意識してない感じで、どちらもリバなのかもね」
と美夏が答えた。
「へえー。あ、でも私恋人同士の時間をお邪魔してしまってる?」
と少し心配そうに訊く。
 
「そんなこと無いわよ。私も玲子とお友達になれて嬉しいし」
と美夏がフォローする。
「ほとんど、一緒に暮らしているみたいなもんだから全然大丈夫だよ」
ボクは
「高校卒業したら結婚するんだ」
と付け加えた。
「きゃー、凄い。結婚式には呼んでよね」
と西川さんは言った。
「うん。ぜひ。来てくれる友達少ないかも知れないし」
とボクは返事した。
 
しかしその言葉は後で美夏に咎められた。
「ということは春紀としては結婚式の段階では少なくとも女の子のままなのね」
美夏は決して怒っていない。ボクは半ば言い訳がましく返事をした。
「女の子でいるのにすっかり慣れてしまって。何だか快適だから、もうしばらくは、このままでいたいんだ。御免、わがまま言って」
「でもそのままじゃ子供作れないよ」
「うーん」
 
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最近はボクの性に関する知識もかなりしっかりしてきた。美夏には本当にたくさん教えてもらった。美夏によれば、この年でそんなこと知らない方がおかしい、ということだった。
 

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11月の連休を利用して、ボクと美夏は短期間の帰省をして桜木クリニックを訪れた。本来は休診日だが電話すると、どうせ入院患者さんもいるし出てきているからいつでもいいよと言われた。訪問のひとつの目的は実際問題として、保存してあるボクの男性器はどのくらいまで冷凍保存しておけるのかということを聞くこと、もうひとつは、それをくっつけることなく子供を作ることは不可能かというのを確認しておくことだった。
 
桜木先生はボクの話をニヤニヤしながら聞いていた。
「多分、あんたは男に戻る気は無くなると思ってたよ」
ボクは反論する。
「戻る気、無いことは無いです。ただ、まだしばらくは今のままの身体でいたいだけです」と言う。
 
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「保存期間はね、アメリカにいた時の経験で7年弱保存した後、再接合したことがある。個人差があると思うけど5年は大丈夫と思うな。それ以上長い場合にどうなるかは、何とも言えない」
「ダメという訳じゃないんですね」
「保証しかねるこということだけ。理屈上は何年たっても可能だろうけど」
「だけど、そのアメリカの症例ってどういう人達なんですか?」
 
「女の子になりたい男の子だよ。でも自分が本当に女になれるか不安な人達。それをテスト的に女の子にしてあげるわけ。これやってたのはうちの大学だけなんだけど。春紀くんにはヴァギナプラスティーは適用してないけど、向こうでは希望する人には共同研究機関の民間医療会社が開発した人工膣壁素材を利用した膣形成もしていた。事前に自分で勝手にホルモンやってる人多いでしょう?すると男性器が萎縮していて膣の素材に使うのに足りないこと多かったのよ。だからそれは使わずに、でも捨てるのはもったいないから冷凍保存しておこうか、というのが最初の出発点だったんだよね。向こうは日本と違って、場所はたくさんあるから。だけどあの人工素材は伸縮性も良くて愛液も出るし何より萎縮する可能性がないから好評だよ。基本的にはまだ試験開発中で他には出さないんだけど、私は嘱託契約が残っているから、個人的に取り寄せ可能なんだよね。春紀くんが希望すれば付けてあげようと思ってたんだけど天然のをもらえたからね」
 
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「ということは、先生。もしかしてほとんどの人は接合せずそのままですか?」
 
「再接合の希望者は100人に1人もいなかった。うちの大学では毎年500〜600人手術していたけど、私がいた5年間で男に戻ったのは12〜13人。切る方も年間数十例担当していたけど、私は顕微鏡見て神経つなぐのが得意だから、接合の方はほとんど全部私がやった。だけど折角つないであげたのに、その中の半分はまた数年後に再々手術して女の子になっちゃうんだよね、もう面倒くさい。さすがに2度目は再冷凍ができないから普通の性転換手術になっちゃうけど」
桜木先生は楽しそうに言う。外科系のお医者さんって切ったり付けたりというのが本当に好きなんだろう。
 
「子供の件はどうですか?」
と美夏が聞く。
「方法は2通りあるね」
と先生は説明した。
 
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「ひとつは、この性器を別の人に移植しちゃって、その人に射精してもらい、その精液を美夏ちゃんの卵子に人工授精する手。もうひとつは睾丸を解凍して、そこから精子の原細胞を取り出し、それを遺伝子操作の技法で強引に卵子核に結合させる手」
 
「後のは何だか嫌な感じ。で、解凍した睾丸の再冷凍は無理ですよね」
「冷凍食品じゃないけどね、あまり好ましくないことは確か」
「つまりチャンスは2回ということ」
「まあね」
「でも、前のも誰に移植するんですか」
「睾丸を交通事故とかで無くした男の人か、或いは男になりたがっている女の人」
 
「そうか....でもどちらも組織の適合性が良くないといけないですよね」
「適合性の問題言えば、本人である春紀クンに移植するのが一番楽なのよ」
「でも、私も男っぽい体つきの春紀、あまり見たくない気がするし」
「睾丸を付ければ男性ホルモンが付いてくるからね」
「精子だけ作ってくれればいいのに。面倒ですね」
 
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「だけどね」
と桜木先生は楽しそうに付け加えた
「もうひとつ、冷凍精液を使う手もあるよ」
「え?」
「春紀クンのおちんちん切断する直前に精液を採取してるからね。それを使って人工授精する方法もある」
「そんなものがあるんですか?」ボクはびっくりした。
「でも、そんなの取った記憶がない」
「麻酔掛けた後、実際に切断する前に採取したよ。これをクライアントの意志とは無関係に取っておくのもうちの大学の方針だったからね。取っちゃった後に子供が欲しいって言い出す人、結構多いんだもん。もっともきみの場合はママの許可も取ってるよ」
 
先生はカルテを見ながら説明した。
「陰茎刺激で1回射精させた後、前立腺刺激で2度目の射精をさせた。2度目の分には射精後尿道に残っていた精液も、切断した後の陰茎から吸い出して加えている。それでも、2度目の精液は薄いし、量も少ないね。1度目のは4分割、2度目のは2分割して冷凍保存しているから、確率の高いのが4本と確率の落ちるのが2本ある。後者は普通の人工授精やるより、顕微鏡受精した方がいいかもね」
 
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「そんな物があったとは」
美夏は脱力して近くの椅子に腰を下ろして、それも支えきれなくなったようで、結局その場にしゃがみ込んでしまった。ボクは
「ちょっとベッド借ります」
と先生に声を掛けると、美夏を抱き上げてベッドに寝かせた。
 
「あ、大丈夫」
と美夏は返事したが、まだすぐには起きあがれないようだ。
 
「じゃ、春紀はもうおちんちん要らないよね。廃棄してもらおうよ」
「嫌だよ。その内くっつけるんだから」
 
先生は笑いながら答えた。
「廃棄しなくても保存しておいてあげるよ。冷凍保存室の片隅に置いてるだけだから、特別にそのためだけに費用がかかる訳じゃないから。ただあんまり将来になったら本当にくっつくかどうかは分からないからね」
「はい」
 
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ボクはおちんちんを切られた時のことを回想していた。あの時Hな写真を見ながら、おちんちんをいじっていた最中に母にとがめられたから射精する前だった。当時ボクは実際にはオナニーに罪悪感を持っていて3日に1度くらいしかしていなかった。たぶん保存されている1本目の精液は濃いはずだと思った。
 

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//美夏はさっきからそちらの方に感じていた「何か」を確かめたくて仕方が なかった。そこで春紀に助けてもらいながら診察室を出ようとしたとき、 間違えた振りして、奥のドアをさっと開けた。桜木先生が短い声でアッと 言う。美夏は「違った。御免なさい」と言ってすぐ閉め本当の出口の方に 向かった。ドアの向こうの人物も一瞬ギクっとしたようだったが目はあわ せなかったから向こうも大丈夫と思ったろう。それは裸にガウンだけ着て ベッドの上で雑誌を見ていた春紀のママだった。
 
『なるほど、こういう「支払い」をしていたのか』と美夏はやっと春紀の 身体の手術代のことが分かった。同時に、しっかりしてそうな桜木先生が 何故こんなバレたら保険医指定を外されかねない手術をしたのかも納得が いった。恋人に頼まれたらなぁ。しかし、もちろん春紀に言う必要は無い。
 
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『おばさんも大変だよな。ご主人は10年以上海外に出たまま全然帰国無し だって言うし』男の人と浮気しているわけじゃないからいいのかな..... でも、そもそも男が嫌いなのかもね、と美夏は思い至った。だから春紀を 女の子にしちゃったのかも。あ、でも、男が嫌いなのは私も同じかも知れ ない。だから女の子の春紀を恋人として扱えるんだ、きっと。すると前島 さんにむかついたのも、春紀が言うように前島さんが好きだったからじゃ なくて、もともと男が嫌いだったからなのかも........
 
あ、そうか。分かった!!私早苗が好きで、その恋人の前島さんに嫉妬した んだ!!!私きっと女の子が好きなんだ。美夏は何だか愉快になってきた。 その様子を見て肩を抱いてくれている春紀が心配そうに「美夏、大丈夫?」
と訊いた。//
 
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受験生に****は不要!!・結(3)

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