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■受験生に****は不要!!・承(1)

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(C)Eriko Kawaguchi 2002.03.03
 
美夏が街に出るから一緒に出ようと誘った。ボクは恥ずかしいから嫌だと言ったが、今更何言ってるの、恥ずかしいと思うくらいなら逆に慣れなきゃと言われ、強引に外に出された。
 
「スカートは以前から履いてたんでしょう?」「ううん。こないだ突然女の子の服を着るように言われて、でも外に出たのはこないだ美夏と一緒にF市からここに引っ越してきた時だけだよ」「じゃ、全然練習できてないじゃん。私、てっきり、きっとずっと前から女装はしてたんだろうと思ってたのに。決めた。春紀、毎日これから私と街を歩こう」「えー、だって恥ずかしいのに」「だから、それがだめだって。学校始まったら、ずっとその格好で出歩くかだから」
それはそうなんだけど。
 
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バス停でバスを待つ。近くを歩いている人たちが皆自分を見て変に思ってるんじゃないかとビクビクしていた。やがてバスが来てボクらは乗り込む。前乗りのバスだ。先に料金を入れるバスというのはF市にはなかったから、変な感じ。美夏に言われてなかったら、小銭の準備などしていなかったところだった。
 
バスを降りて商店街を歩く。都会は人が多い。恥ずかしい。ボクはつい俯いてしまったが、美夏に「だめ。ちゃんと前を見て。あのね、あまり注目されるような行動をしないでよ。普通に動いていれば、誰も一人一人のこと気にしないんだから」と注意された。
 
美夏はアクセサリーの店に入った。ボクがもじもじしていると「何してるの」
と中に引き込む。何だか居心地が悪い。でも、こんな店今まで入ったことなかったから、棚に並んでいるものが面白い。ひとつひとつの商品がボクには何なのかよく分からなかった。美夏は「何か」を買っていたが、それが何なのかボクには分からなかった。
 
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次はファンシーショップに連れて行かれた。「春紀も何か買いなよ」と言う。何だか見たことのないキャラクターのノートやレターセットとか、小さな何の用途に使えるのか分からない布製のバッグとかが並んでいる。ボクは何を買っていいのか分からなかったので、適当にカエルのキャラクターの付いているノートとシャープペンシルを買った。「可愛いの選んだじゃん。それ学校で使うといいわよ」と美夏が言った。
 
そして次は.....美夏はランジェリーショップに入っていった。「ねぇ、このブラ可愛いと思わない?」と美夏が言う。ボクは正直、この店の中で目のやり場に困っていた。「こっちと、こっちと、どちらが似合うと思う?」と聞く。そんなこと尋ねられても....ボクはドキドキしながら「こちらかな」とオレンジの単色のものを指さした。「そうね。じゃこれにしよう」と言って「春紀、あまり可愛いショーツ持ってなかったでしょう。数枚買っておけば」と言われた。「え、それって」「うん、自分で選ぶ、選ぶ。もう高校生なんだから下着くらい自分で買えなきゃだめよ」ボクは覚悟を決めて、ショーツの並んでいる所に行った。美夏は可愛いのを買えと言っていた。正直、今部屋のタンスの中に入っているものの中にはイチゴ模様のものとかフリルの付いたのもあるのだがそういうのを履くには抵抗感があって、できるだけシンプルなものを履いていた。美夏がなぜそれを知っているかというと、毎日スカートをめくられてチェックされていたからだ。
 
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美夏に「可愛いの」と言われたので「可愛い」という線で、自分で履く勇気を持てそうなものを選ぼうとした。が値段を見てびっくり。どうしてこんなに高い?結局、ボクは比較的安いものの中で可愛いものを選んでしまった。実際問題としてこれを履く勇気があまりないが、美夏の前で買った以上、履かないと注意を受けそうだ。ふう。
 
ランジェリーショップが終わると「そろそろお腹空いたね」と美夏が言う。たしかにそろそろお昼になる。レストランなどに行くならあまり混まないうちのほうがありがたい。ボクらはデパートの中の食堂街に向かった。が、途中で、美夏は「あ、トイレに行こうっと」と言い出した。「春紀は?」「あ、うん」
実はそろそろ行きたくはなっていたのだが、外でトイレに行くのはちょっと....
 
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「じゃ一緒に行こう」と言って一緒にトイレのサインのある方向に歩いて行った。そして、入口のところに来て.....ボクの足が止まる。しかし美夏は「なにしてるの。入るんでしょ?」と言う。はぁ。ボクはまた勇気を奮い起こして、美夏と一緒に女子トイレの中に入った。
 
また混んでいたら面倒だなと思ったが、幸い空いていた。美夏が何か嬉しそうな顔をしている。「どうしたの?」「うん。恋人と一緒にトイレに入れるのって何だかお得だなと思って」と言う。確かに男女の恋人ではトイレは別々になってしまう。「それはボクも嬉しいな」「ね、一緒に中まで行こう」「え?」
美夏はボクの手を引っ張って一緒にボックスの中に入ってしまった。
 
「で、どうするの」「春紀、お先にどうぞ」「美夏が見てる所で?」「いいでしょ。私たち恋人なんだから」「うん」ボクは相当恥ずかしかったが、仕方ないので、スカートの中のパンツを降ろし、しゃがんでおしっこをした。トイレットペーパーを取ってあそこを拭く。そして水を流した。
 
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「じゃ、次は美夏の番だよ」「うん」「どうしたの?」「ねえ、先に出てて」
「え?」「だって、おしっこする所見られるの恥ずかしい」「ボクのは見といて?」「春紀、声がやばいやばい」ボクは小声に切り替えて繰り返した。「だって恥ずかしいんだもん。さ、出てて出てて」と美夏はドアを開けてボクを押し出してしまった。
 
ボックスの外はもう列が出来ていた。ボクが出てきたのに、中にもう一人入っていてドアが閉められたので、列の先頭にいた人が変な顔をしている。ボクはその場にはいられないので、いそいで手を洗ってトイレの外に出た。
 
「もう、美夏って」と怒っても仕方ない。
 
ボクはこのあと毎日美夏に「外出の練習」として連れ出され、いろいろと女の子しか近づけないような場所を連れ回された。そして女子トイレに一緒に入るというレッスンが必ず何度か組み込まれていた。もっともボックスの中まで一緒に入ったのは最初の時だけだ。しかし美夏はボクが別に行きたくない時でも必ず一緒に入ろうと言う。どうしてと聞いたら「女の子は一緒に行きたがるものなの」と言われた。
 
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その日は叔母さんは外出中だった。ボクは美夏に眉毛をカットしてもらいアイメイクの練習をしていた。「だけどスカートって便利だね」「何が?」「汗をかいた時にスカート脱がなくてもパンツだけ交換できるし、トイレでもスカート履いたままでいいし」「確かにズボンじゃ、そういう訳には行かないよね」ボクは少しずつ女の子ライフが楽しくなってきていた。
 
「春紀、おっぱい大きくしないの?」美夏が突然聞いた。「えー?何のために」
「だって、高校生にもなって、この程度の胸では」以前美夏に誤って飲まされてしまった薬のお陰で少しだけ胸が張っているような感じがしたのだが、美夏に言わせれば「男みたいに胸が無い」状態らしい。「でもどうやったら大きくなるの?」「手術してシリコンバッグ入れるか、或いは女性ホルモンを使うか」
「うーん、何だかどちらも気が進まないな」
 
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しかし美夏が物凄く乗り気なので、ボクは何とかしなくちゃかなという気になり、おちんちんの切断手術をした母のお友達の桜木先生に電話してみた。すると一度おいでと言われたので、美夏と一緒に電車に乗り出かけていった。ちなみにボクは、自分の母のことを「ママ」というのをやめてしまった。人前では「母」と言い、本人に対しては「母さん」と呼んでいる。自分の心の中に急速に芽生えてきた自立心が「ママ」ということばを使う自分から卒業させてしまった。
 
桜木先生はボクの身体をいろいろ健診していたが、やがて美夏も中に入れて一緒に説明してくれた。
 
「性器の取り外しが3ヶ月間だけのつもりだったので何も処置はしていなかったんだけど、3年間このまま取り外したままにするのなら、結論から言えばホルモンを補充しておかないと良くないわね。性ホルモンには骨の発達を促す作用があるから、それが欠如していると骨折しやすくなったり、将来骨粗鬆症になる場合もあるの」
 
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「男性ホルモンでも女性ホルモンでも構わないのだけど、これから高校3年間女の子として生活するのなら、女性ホルモンを補充しようか。その方が顔つきなんかも美形になりやすいから、彼女としてもガサつい顔付きになられるよりいいでしょ?」
 
そこで美夏が質問した。「顔つきだけじゃなくて身体つきもですよね?確かに肩のはった、どう見ても男体型で女の子の服着ている人と一緒に歩くのは少し抵抗があるかも。女の子の格好してるんだったら、顔つきや身体付きも女の子らしい方がいいですね。でも、ひとつだけ教えて下さい。3年後、間違いなく春紀の性器はちゃんと、くっつくんですか?」
 
すると先生は即答した「全然大丈夫よ。アメリカの病院にいた時に何度も経験しているから」しかし、その後、先生が小声で「3年後に本人がくっつける気になるならだけど」と言ったのを、美夏は聞いていたが、ボクは聞き逃していた。
 
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ボクはその日は注射で女性ホルモンを打ってもらい、後は毎日飲むようにと、経口のホルモン剤を4ヶ月分処方してもらった。「代金はあとで、あなたのママに請求するから、あなたたちはいいよ。時々状態を確認したいから、次は一学期が終わって7月の下旬くらいに一度いらっしゃい。その前でも近くに来たら寄ってね」と言われた。
 
注射のホルモン剤が強く効いたようで、ボクはその晩にも胸がムズムズするのを感じた。その後学校が始まるまでの一週間、今度は飲み薬の方を飲み続けたが、さすがに一週間では身体に大きな変化は見られない。しかし自分としてはやはり胸が張る感じ、そして少しシコリがあるような感じで、乳首も敏感になっていた。ブラジャー無しでキャミソールなどを着ると乳首がかすれて痛い。
 
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やがて学校が始まる。ボクらは新しいカバンに希望を詰め込んで、入学式に出かけた。ボクは少し上等なブラウスとチェックのプリーツスカート。高校生らしく、ということで美夏が選んでくれた。美夏は可愛いセーラー服タイプの制服だ。
 
この10日くらいの間に女の子の服での生活に強制的に慣れさせられたので、通学路は平気だったが、校門を通ってから急に不安な気持ちになった。しかし開き直るしかない。体育館での式を終えて教室に入る。担任の先生が副担任の先生と共に入ってきて、授業のやり方や届け出の出し方、また校内での行動などについて説明する。それから最初の出欠が取られた。ここは男女混合名簿方式のようだ。
 
ボクの名前が呼ばれた時、ここ数日でだいぶ鍛えられていた女の子らしく聞こえる発声法で「はい」と返事をすると、先生はアレ?という顔をしてボクを見る。そして「あ、すまんすまん。春紀って男の名前にも見えるから間違って男子の方に入れていた。ちゃんと直しとくから」と言って、少し何やら書いていた。これで、ボクはこの学校では女として扱われることが決定した。確かに春紀という名前は女でも何とか通じる。便利な名前だ。
 
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お陰でボクは、男女別の授業でも、保健体育・技術家庭は女子のクラス分けで学ぶことができるようになった。トイレも堂々と女子トイレを使う。これも、美夏にずいぶん強引に練習させられたお陰で、抵抗無く順番待ちしながら他の女の子たちとおしゃべりしたりすることもできるようになっていた。
 
体育の時間の更衣室。さすがに女子更衣室だけは初めての体験だが、できるだけ気にしないようにして、無事さっと着替えをすることができた。進学校なので体育の授業は1年の1学期だけらしい。その程度は誤魔化しきれるだろう。女子としての体育の授業は少し戸惑うことも多かったが、みな違う中学の出身だから多少変なこと言っても奇異には感じられていないように思う。
 
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家庭科は参った。中学時代、被服・調理は全然やっていなかったので、うまくできないことが多かったが、他にも下手な子はたくさんいたので、全然目立たなかった。しかし服を縫う作業などは意外に楽しい。男の子にも教えればいいのに、という感じがした。
 

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受験生に****は不要!!・承(1)

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