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中間試験は自分なりにうまくできた気がした。ただ時間が足りない感じで半分くらいの問題しか解くことができなかった。結果は学年325人中で254位。入試の状態からすると大きな進歩だ。成績表はひとりずつ個室で手渡されたが、解いた問題の正答率が高いことを褒められた。
中間試験が終わって間もない頃、ボクはまた新しい体験をした。廊下を級友と歩いていた時、曲がり角から突然男の子が飛び出して来て、ボクに白い封筒に入った手紙を差し出した。「えっと」とボクが戸惑っていると「読んで下さい、ということよ」と級友が言う。ボクは訳が分からずに受け取って封を開けると、中には白い便箋があり、太い油性マジックを使いゴツい下手な字で「好きです。付き合ってください」と書かれていた。ラブレター!ボクはやっと分かったけど、これは受けられない。「御免。ボクもう付き合っている人がいるから」
男の子はショックを受けたようで、すごすごと引き上げていった。撃沈したな、などという別の男の子の声がしていた。
しかし男の子からラブレター貰うなんて。ちょっとドキドキする体験だ。そういえば中学時代、自分でラブレター書いたことはないけど、クラスの男の子が告白しようとしているのをみんなで応援したことなどはあった。あんな感じなのかな。「へー、鶴田さん、付き合っている人いるんだ」と一緒にいた級友が驚いたように言う。「うん。ほとんど婚約しているというか。でも、高校卒業するまでは封印中」あまりその点は突っ込まれたくない問題だ。「すごーい。もうHした?」「うん、まぁ」そのあたりもあまり突っ込まれたくない問題だ。「すごい!勇気あるんだね」ボクは曖昧に微笑んでおいた。しかしボクに付き合っている人がいる、ということにしておけば、男の子との面倒なことにもできるだけ巻き込まれずに済みそうだ。こういう噂が広まるのは問題ない。
家に帰ったら、母が来ていた。「あなた、ゴールデンウィークも帰ってこなかったから様子を見に来てみたのよ」と言う。「うん、宿題がどっさりあったし」
「うん、勉強しているのはいいことだわ」「美夏がすごく勉強の仕方の要領、教えるのうまくて、それで中学時代にもよく分かっていなかったことが少しずつ分かるようになってきたんだ。中間試験も、時間が足りなくて全部は解けなかったけど、解けた問題はほとんど正解だったんだよ」「すごい、本当によく勉強してるね」「うん、集中してできてるよ。そう、そもそも最近ものすごく集中できるんだ。そのことが一番大きい感じ」母は満足そうだった。
「それにしても、あなた随分女の子っぽくなったんじゃない?」伯母さんが口をはさむ「そうそう。私も男の子だということを、時々忘れてしまいますよ。美夏ちゃんと一緒にお化粧なんか練習しているみたい」「美夏ちゃん、大事にするのよ」「うん、大事にしてるよ」
伯母が台所に立っている間に、母はボクのそばによってきて胸にさわった。「かなり、こちらも成長してるわね」「うん」ボクはちょっと俯いて返事した。
「大丈夫。ユミからも聞いてるし。あ、薬の代金は払っておいたから。でも、私も汚らしい息子より、可愛い娘のほうがいいわ。このままずっと女の子のままで、いてくれてもいいわよ」「美夏と結婚したいから、3年後には戻るよ」
「仕方ないわね.....あぁ、美夏ちゃん、いっそあなたが女の子のままで結婚してくれないかしら」「そんな無茶な」
結局、母はボク用にといって、可愛らしいワンピースやスカートを数着置いていった。「確かに、こういう服を着れるというのはいいことだけど」とボクはその服を手にとって思った。男に戻るとこんな服も身につけられないし、お化粧とかもできないんだろうな。ボクは初めて、女の子の良さというものを考えていた。
6月には実力試験がある。中間試験や期末試験はその時期に授業でやった内容が出るが、実力試験はそれとは無関係に出題され、また全国の姉妹校で一斉に行われてその中でのランキングも発表される。ボクは手応えとしては中間試験と似たような感じだったが、やはり範囲が限定されていないことで、あまりできなかった人が多かったようだ。点数自体は中間試験より少しいいくらいだったが、ランキングは校内で94位、全国では3408人中765位だった。参考合格可能校として国立大学を5ランクに大別した内の4番目のグループが挙げられており、校内のランキングで2桁が出たことも合わせてボクは自信を深めた。
美夏は相変わらず勉強の仕方をよく教えてくれる。美夏としてはボクに教えることで自分の勉強と、また勉強のための刺激にもしている感じだ。「美夏の学校ではどんな雰囲気?」「進学する気のある子自体が少ないみたい。行く気のある子にしても、あまり上の方は狙ってないね。2年になれば進学考えている子をまとめて1クラス編成するみたいだけど1年の間にどれだけテンションを維持するかは課題だぁ」美夏はボクが受けた実力試験の問題も見て、自分で解いてみていた。そして一緒に問題について検討する。おかげでボクは時間が足りなくて解いていなかった問題もよく勉強することができた。
二人のナイトライフ?のほうも順調だった。ボクらは毎週土曜の晩を睦み合う日にしていた。その日だけは美夏がボクの部屋に来て一緒に抱き合って寝る。ボクらはキスし合い、体中を触り合って気持ちいい雰囲気にひたった。やがて美夏は指だけでなくお互いの口で刺激し合うことを提案してきた。大人の人達って、そういうこともするらしい。最初はすごく抵抗感があったけど、されると気持ち良かったから、美夏にもしてあげた。ボクらは色々な体の姿勢も試してみていた。美夏がどこで調達したのか「ビアンの体位」と書かれた写真入りの雑誌の切り抜きを持ってきてボクらはそれにも挑戦した。貝合せというのは優雅な名前の割に疲れるだけであまり面白くなかった。シックスナインというのは気持ち良かったが上に乗っている側が疲れる。ボクらはジャンケンで下になる方を決めた。しかし結局は普通に身体を合わせて指や舌で相手の敏感な部分を刺激し合うのが一番楽しかった。
「ところでビアンて何?」「女の子同士で愛し合うことよ。レスビアンの略で昔はレズと略してたんだけど、差別的に使われることが多くて、最近はビアンと略すのが正しいと言われてるの」「そうか、ボクたち女の子同士だもんね」
「うん。でも春紀、クリトリスがあるわけでもないのに、やはりこの辺感じるんだね」と美夏が面白そうに言う。
そう、美夏の割目の中、上の方に一ヶ所コリコリした感じの部分がある。美夏が人体解剖図の女性生殖器の所の図を見せて、これがクリトリス、日本語では陰核、俗語ではサネというものだと教えてくれた。それが男の子のおちんちんに相当するもので一番感じやすいんだって。確かに美夏のそこを指や舌で刺激してあげると、美夏は本当に気持ち良さそうにしている。ボクにはそんなもの付いていない。割目の中にはおしっこが出てくる部分があるだけだ。でもそのボクでも、女の子のクリトリスのある付近を刺激されると確かに気持ち良かった。ひょっとしたら切り取ったおちんちんの付け根があった付近で神経が集中してるのかも知れないと言われた。ボクは一度一人でその付近を指で刺激してみたけどよく分からなかった。気持ちいいような気もするけど、美夏にされる時ほどじゃない。
土曜の晩のボクたちの熱い時間はいつも2時間くらい続いていたような気がする。いつも最後はボクがいつの間にか眠っていて、朝起きた時には美夏は自分の部屋に戻っていた。だからボクはいまだに美夏の寝顔を見ていない。
ボクのバストは順調に育っていた。5月頃はまだAカップのブラジャーが少し余っていたけど、それが6月の下旬頃には少しきつくなってきた。そろそろBカップ買わなきゃかな、という気がしてきていた。体つき全体も自分の感覚として変わってきた。以前より少し筋肉が落ちて手足が細くなった気がする。それでいてあちこちに脂肪が付いて、全体的に丸みを帯びた身体になってきた。ボクのヌードを毎週見ている美夏も「どんどん女の子らしくなってきて、可愛いよ」と言ってくれた。時々自分が本当は男だということを忘れてしまいそうだ。
ヒゲは4月頃は毎日丁寧に抜いていて、自分で抜きにくい所は美夏に抜いてもらっていたのだけど、それがめっきり少なくなってきた。女性ホルモンを取っているからといって直接ヒゲには関係ないらしいけど、やはり何らかの影響はあるのだろう。生えてくる毛自体も細くなってきていて6月末頃には「女の子の産毛の処理と同程度だね」と美夏に言われるほどになっていた。手足の毛はもともと薄かったが、この頃には週に1度程度の処理で構わない程度になってきていた。
7月期末試験。この頃にはボクは授業の内容はほぼ完璧に理解できるようになっていた。授業中に当てられても、だいたい的確な答えができることが多かったし、当てられた人が分からないと言った時にピンチヒッターとして指名されることも科目によっては出てきた。
試験は例によって解いた問題についてはかなりの自信が持てた。中間試験の時は半分くらいしか解く時間が取れなかったけど、今回は8割くらいまで解くことができた。少しずつスピードアップしているようだ。結果は323人中で140位。前回より100位以上も成績をあげていた。だいたい全体の真ん中付近か。このハイレベルの学校の中でこの成績というのは、中学時代のボクからすると考えられないことだった。
やがて終業式を終えて夏休みに入る。夏休みも補講が開かれるので、出る手続きをしたが、始まるまで約2週間ある。ボクは美夏と一緒に帰省した。そして今回は母と一緒に桜木クリニックを訪れた。
「かなり女の子らしい体型になってきたね。順調順調。今はだいたい中学1年程度の女の子らしさだけど、このままホルモンをとり続けていれば、今年中には今の年齢の女の子らしさに追いつけそうだね」
ボクはちょっと複雑な気分だが、母は何だか嬉しそうな顔をしている。
「ブラジャーは今何付けてる?」「Aです」「もうBを付けていいよ。寄せて集めればちゃんとBが埋まるから。多分正しいブラジャーの付け方はあなたのママより美夏ちゃんの方が知ってるだろうから習うといいね」「あ、はい」
「ねぇ、ユミ、この子の喉仏なんだけど」「あぁ、邪魔よね。これだけ女の子らしければ誰も気にしないだろうけど、変に思う人が出てこないうちに取っちゃおうか」え?え?
「先生、それ取ってから後で戻せるんですか?」とボクはおそるおそる聞く。「戻せないけど、別に喉仏なんて要らないでしょ。さ、手術手術」ボクは有無をいわさずベッドに寝せられ、麻酔を打たれた。
手術後、数日間はあまり声を出さないようにと言われた。ボクは退院したあと家でお風呂に入り、あがったところで自分のヌードを大きな鏡に映してみた。
本当に体型がとても女の子らしくなってきている。胸は膨らんでいるし、肩はもともとなで肩のほうだったし。おまたの茂みの中におちんちんは無い。その中で実は自分としては唯一自分が男の子である証と思っていた喉仏も削られてしまった。今のボクを見て、男と疑う人は誰もいないかも知れない。ボクは大きくためいきを付いた。ボクこのままどうなっちゃうんだろうな。
ボクの部屋は母の手によってすっかり女の子らしく改装されていた。可愛いカーテンが引かれ、ベッドカバーなどもピンク系の花柄に変えられている。小型のドレッサーも置かれていた。でも美夏の叔母さん家のボクの部屋も、そちらは美夏の趣味で、似たような状態にされている。ボクはどっかと床に腰を落とすと、いつか無意識にドレッサーの鏡を見ながら、肩まで伸びた髪の毛を手で梳いていた。その自分を発見してハッとした。ボク、本当に男の子に戻れるんだろうか。でも、そんな不安よりも、自分の中にもっと女の子らしい生活を楽しんでみたいという好奇心も強く存在していた。
母は「女の子なら、こういうのも必要よね」などと言って、料理の基本を教えてくれた。家庭科では失敗ばかりして、ボクはもっぱら掻き混ぜたり皿に盛ったりといった作業ばかりしていたが、少し覚えてくると何だか楽しくなってきた。ボクがそう言うと、母はまた嬉しそうな顔をしていた。この頃になって、ボクはやっと母が自分を本当の女の子にしたがっているみたいと分かってきたが、今はそれに乗せられているのもいいかな、という気がした。
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受験生に****は不要!!・承(3)