広告:まりあ†ほりっく 第3巻 [DVD]
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■春和(4)

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「私、たぶんずっと前から彪志のこと好きだったんだと思う。でもこないだの寝台特急の中で初めてちゃんと彪志に向き合って、自分の気持ちをちゃんと言うことができて、それで多分自分で作っていた彪志の心との間の壁を取っちゃったんじゃないかな」
「壁が無くなったから無断侵入してきたのか」
 
「ごめんねー。変な癖あって」
「昨夜の夢の中でセックスしたんだけど・・・・公園の散歩の後お城に入ってそこに天蓋付きの寝室があって、ふわふわベッドがあって」
「気持ち良かったね」
「夢の中ではふつうに女の子の場所に入れちゃった。避妊はしたけど」
「夢の中の私だから理想型なの。だからちゃんと女の子の器官が付いてるのね。私もちょっとびっくりしたけど、彪志とホントにひとつになれた気がした」
「避妊しなかったら、夢の中の青葉を妊娠させちゃったりするんだろうか」
「赤ちゃん出来ちゃう可能性はあるかも」
「・・・なんかいいこと聞いた」
「え?」
 
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その時「夕飯だよ〜」という声が下の階からした。ふたりは会話を中断して降りていく。
 
青葉が18:40の新幹線に乗るということだったので17:00に早めの夕食ということにしてくれていた。夕食はホットプレートを出して焼肉であった。
 
「わあ、美味しそうなお肉」
「なんか普段と値札の数字がかなり違うな」と彪志。
「たまにはね」と笑いながらお母さん。
「すみません、いろいろしてくださって」と青葉。
「あ、青葉、そのくらいでは泣かなくなったね?」と彪志。
「え?」とお母さん。
 
「青葉は、人に優しくしてもらったり、自分のために配慮してもらったりすると感激して泣く癖がある」と彪志。
「うん、ちょっと涙が出かかったよ。でも耐えたよ。ここは泣くんじゃなくて、笑顔にならなくちゃって」と青葉。
「あらあら。でもホントに笑顔で頂きましょうね」とお母さん。
「はい」
 
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その後、ふつうに食べていたが、彪志からまたまた『いつもの癖』を指摘された。
「青葉、焼けすぎて硬くなったお肉とか焦げちゃった野菜とかばかり選んで取ってる」
「えっと・・・」
「もうね、ちゃんと焼け頃のを食べようね」と言って彪志は青葉と自分の皿を交換してしまった。
「あ・・・」
彪志は青葉が自分の皿に取っていた硬くなったお肉を自分の口に放り込んでしまう。「・・・・私、青葉ちゃんの育ち方がだいぶ分かってきた」とお母さん。
「でも、うちでは何も遠慮しないで。自分を犠牲にする発想はよくないよ。焼けすぎたお肉なんて気がついた人が少しずつ食べればいいんだから。それを全部一人で引き受けようとしたらダメ」
 
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「はい。ありがとうございます」と言って青葉は涙を浮かべる。
「あぁあ。だからそこで泣いちゃダメだって」と彪志。
「うん、ありがとう」と青葉は言うがなかなか涙が止まらない。
彪志がポケットからハンカチを出して青葉の涙を拭いた。
「ごめん」
そういう訳でみんなに親切にされる度にまたまた涙が出てくる青葉であった。
 
夕食が終わったあと、お父さんの車で駅まで運んでもらった。彪志は一緒に降りて新幹線のホームまで付き合ってくれた。
 
「今日は何だか嬉しかったり楽しかったりばかりだった」と青葉。
「たくさん泣いてたけど、全部嬉し涙って分かってたから」と彪志。
「御免ね。泣いてばかりで」
「ううん。ふだんどちらかというと強い青葉ばかり俺は見てるから、こういう青葉もまたいいよ」
「えへへ」
「じゃ、また」
「うん。また」
 
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新幹線のドアが閉まり、彪志の姿は視界からあっという間に消えていった。
 
今日のコースは新幹線乗り継ぎで長野まで行き、そこから信越本線の最終列車で直江津に出てから、急行「きたぐに」に乗り継ぐコースである。高岡には深夜の2:35に着く。高岡駅から自宅まで青葉は歩いて帰るつもりでいたのだが(母にはタクシーで帰るからと言っておいた)、青葉の行動パターンは母に見透かされていて、母が駅まで車で迎えに来てくれていた。
 
「お母ちゃん・・・・」
「あんた、絶対歩いて帰ると思ったからね」
「えへへ、バレてたか」
「ホテルに泊まれと言えば野宿し、飛行機で行けと言ったらバスに乗る子だもん」
「お母ちゃんには完全に読まれてるなあ」
「さ、早く帰って寝よ」
「ありがとう。あ、これ向こうのお母さんからもらっちゃった一ノ関のお土産」
「あらあら、申し訳ないねえ」
「夏休みに彪志さん、一度こちらにお母ちゃんに挨拶に来るって言ってた」
「あら。まるで婚約でもしようかって騒ぎだね」
「ほんとね」と青葉は笑って助手席のシートベルトを締めた。
 
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「・・・ずっとずっと先の話だろうけど、もし・・・彪志さんと将来結婚しちゃったら、青葉、岩手に戻っちゃうのかな」
「彪志がその時どこにいるかだよね。取り敢えず彪志は千葉大学狙ってるんだよ」
「あら、じゃ桃香の後輩になるんだ!」
「合格したらだけどね」と青葉は笑って言う。
 
「桃姉は何となく大学出ても千葉か東京あたりに居残りそうだし、彪志もきっとそうかも。若い人はみんな都会に行きたがる」
「青葉は?」
「私はあまり大きな都会には水が合わないなって気がしてるの。高岡とか富山とか金沢くらいの町までがたぶん私には手頃。少なくとも結婚するまでは私ここに居たい」
「そう」
 
「大学出るまであと8年、結婚するとしたらその3年後くらいかな・・・お母ちゃんに負担掛けちゃうけど」
「ううん。私は青葉がいてくれるおかげで毎日が楽しいよ。桃香が千葉に出ていってしまってからは、私も毎日ただひとり分の御飯を作るだけで、仕事の無い日曜日にはただボーっとして過ごしてて、自分でもちょっと老けちゃったかな、とか思ってたけど、青葉が来てくれて、また若返った気がする」
「日香理が、青葉のお母ちゃんって凄く若いね、って言ってたよ」
「そう?」
 
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「日香理、自分のお母さんよりずっと精神的に若い気がするなんて言ってたもん」
「あらあら。日香理ちゃんのお母さんはまだ33くらいだったよね?」
「うん。若くして日香理を産んだんだよね」
「私より一回り下じゃん」
「でもこないだお母ちゃん、日香理とキスマイの話題で盛り上がってたでしょ」
「あはは。私は昔からのジャニーズ・フリークだから。最初に買ったレコードがマッチの『ギンギラギンにさりげなく』だった。SMAPとV6は全シングル持ってるし」
 
「桃姉がジャニーズ嫌いなのは、お母ちゃんの反動かな?」
「多分そう。さんざん聞かされて食傷してるのよ、あの子」
「元々、チャラチャラしたものが嫌いだしね、桃姉。あまり女の子っぽい服も着ないし」
「そうなのよ、あの子、可愛い服とか買ってきても全然着てくれなかった。放置されてたので青葉にはまだ大きすぎる服をだいぶ千里ちゃんにこないだ押しつけたな」
 
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翌週の日曜日17日はコーラス部の県大会であった。県大会ともなるとさすがに実力のある学校ばかりであったが、青葉たちの学校は全体で3番目に歌ったので『凄い』
学校の歌をたくさん聴く前で、びびらずに歌うことができた。
 
自分達が歌い終わった後、うまい学校が続くので「わあ」「まいった」などという声が部員達の間から漏れる。しかし青葉は今日の自分達の歌の出来もかなり良かった気がしていたので、そんなに絶望していなかった。
 
そして果たして、青葉たちの学校は県大会3位になり、みごと中部大会への進出が決まったのであった。隣に座っていた日香理と抱き合って喜ぶ。みんな諦めていたので凄い騒ぎになり、司会の人から注意されるほどであった。
 
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「ようし!こうなったらもう全国大会行くぞ」
「全国大会制覇だ!」
などと威勢のいい声が出始めた。
「じゃ明日から猛練習ね」と寺田先生も笑っている。
 
全国大会まで行けば、椿妃たちと会えるかも知れない。そう思いながら会場の外に出た青葉はロビーの隅で椿妃の携帯に「こちら3位。中部大会進出」とメールした。そのあと、帰りの電車に乗ろうとしていた頃、椿妃から返信があった。「おめでとう。こちら2位。東北大会進出」とあった。こちらからも「おめでとう」と送った。椿妃とは高岡駅で解散したあと電話して話したが、今回はソプラノソロは柚女が歌ったということだった。
 
「青葉が歌ったのと同じ、あの音階で歌ったよ、柚女」
「わあ」
「それでさ、柚女、審査員のひとりに後で呼び止められてて」
「うん」
「あなたが歌ったの、昨年川上さんが歌ったのと同じ音階ですよねって」
「うふふ」
「直伝ですって答えてた」
 
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それを聞いて、青葉は何だか楽しい気分だった。
 
その週の火曜日、千里がついに去勢手術を受けた。青葉は桃香から電話で連絡を受けると千里に替わってもらい
「ちー姉、これでほぼ女の子になれたね。おめでとう」
と言った。
「ありがとう。私もなんか手術受けたので凄く意識が変わった気がする」
「ヒーリングするから携帯をつないだままハンズフリーにしておへその上に置いてくれる?」
「うん。あ、青葉。私もう、おちんちんも使わないからさ」
「気の流れを外そうか?」
「お願い」
「もう立たなくなっちゃうけどいい?」
「うん。立たなくしたい」
「了解」
 
青葉が千里の手術の跡を確認しながら乱れたり流れが分断されている気の流れをつないだり、きれいに流れるようにしていく。それがある程度済んだところで、千里の残った性器に通っている気の流れを外して、女の子の股間の形に流れるように強制変更する。
 
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そのまま更に1時間ほどヒーリングを続ける。ヒーリングしながらハンズフリーの携帯を通してふたりとおしゃべりも続けた。
 
「痛みがほとんど取れた。それとおちんちん触っても感覚が遠い」
「ちー姉、もうこれで自分は女の子なんだという意識をしっかり持とうね」
「うん」
「でも、ちー姉の気の流れは元々かなり女の子になっちゃってるなあ。あ、それから気の流れを外したおちんちんは萎縮しやすいから、膣の材料として足りなくなるといけないから時々引っ張って延ばしたりしておいて。私はこれ逆ダイレーションと呼んでるんだけど」
「あ、それは任せて。私が毎晩やるから」と割り込んで来た桃香。
「えー!?」と千里が言っている。
 
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「青葉も去勢したい?」
「えへへ。実は完全去勢済み。先週の検診でチェックしてもらったけど、私の睾丸、全く形を認められないって。わざわざMRIまで撮って確認されたけど、とうとう消滅してしまったみたい。機能停止してから3年たつし、ずっと体内は女性ホルモン優位だったからね。そもそも睾丸には4年近く前から気を通してなかったし」
「わあ、それはおめでとうというべきなのかな」
「言って」
「青葉ももうこれでほとんど女の子だね。おめでとう」
「ありがとう」
 
千里との会話を聞いていた桃香がまた会話に割り込んできて
「なになに?青葉も男の子の根源消失か、おめでとう」と言う。
「ふたり揃って去勢完了なら、来年くらいふたりそろって性転換しない?」
などと煽る。
「ちー姉はできるけど、私は手術してくれる病院が見つからないよ」
 
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「だけどさ青葉。5月頃に病院行った頃は『最初無いのかと思ったけど小さいのがありますね』って言われたんでしょ。凄く短期間で消失しちゃったね。自分でも消失に気付いた?」
「たぶん消失したのは7月11日だと思う。私瞑想していた時に、男の赤ちゃんがバイバイして遠くに行っちゃうビジョンを見たの。その赤ちゃんが男の子の自分のような気がした」
 
「何かあったの?青葉の状況に変化があるような?」と桃香が言った時、千里が「彪志君とのHのせいじゃない?」と言った。
「ああ!」と桃香。
「確かにそうかも」と青葉。
 
そういえば自分の体内に初めて女性ホルモンがシャワーのように大量放出されたのも、ランにキスされた時だったことを青葉は思い出した。
 
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「でも、ひょっとして青葉さ、彪志君と完全なHもしてない?素股じゃなくて」
と千里。
 
「・・・うん。9日の夜に夢の中で私の女の子の器官に彼のを受け入れた。私、夢の中では完全な女の子なんだよね。翌日は本人に会ったしなあ。その日はHしなかったけど」
「それで急速に女性化が進んだんでしょ。例の青葉の夢って、青葉にとっても一緒に夢を見た相手にとっても、もうひとつの現実だもん」
「あ、そうなのか・・・・・」
 
青葉は彪志から夢の中での妊娠の可能性を指摘されたことをふと思い出していた。
 
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