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■春進(3)
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青葉邸。
「KARION(カリオン)って“4つの鐘”という意味でしたね」
と朱美が言う。
「そうです」
「教会とかにあるドミソドが出る鐘ですね」
「このユニットで一番長いのが美空さんですよね」
「はい。元々“メテオーナ”というユニットがあったんです。でも何人か辞めて人が少なくなってしまったんで、蘭子と和泉でやっていた“千代紙”と合体してできたのがKARIONですね」
「そのあたりで、ゴールデンシックスとかチェリーツインとかとも絡んでるんだよね」
と丸山アイが言う。
「あのあたりは複雑すぎて全貌を正確に把握している人は居ないよね」
と千里が言う。
「たぶん私の見解と小風の見解と八雲の見解は違う」
と美空が言うと小風が頷いている。
「ちょっとテレビでは言えないような事件もあったしね」
「プライバシーに関わるから言えないと思う」
と千里。
「私は『この子たちと一緒にやって』と言われて4人で活動しはじめた後しか分からない」
と和泉。
「私も一時期離れてたからね」
と蘭子。
「蘭子が抜けるというから代わりにラムって子を入れたら、外国行っちゃうし」
「あれがCDプレスに出す前日だったからね」
「和泉ちゃんが偶然にも東京に居たから、それから九州に行っていた小風と北海道に行っていた美空を東京に呼び戻して、あと『あんたがやるしかない』って言って蘭子も連行してきて物凄い短時間に何とか音源をまとめた」
「あれは映画にでもできるかのようなドラマティックな1日だったね」
「それでバタバタとデビューしたんだけど、そのデビュー記者会見の席になぜか偶然醍醐さんが居たのよね」
「大会に出るのに偶然東京に来てたんだよ」
と千里。
「そういう話が千里には多すぎる」
とアイが言う。
千里は
「あんた記念撮影してと言われたけど、私は絶望的にカメラが下手なんで、友だちに頼んだ」
と言った。そしてKARIONの4人(当時高1)が並んだ写真と、初期の頃幻のサインと呼ばれたKARIONの“4分割サイン”が入ったデビューシングルを見せる。カメラはそのどちらも接写して視聴者に伝えた。
「懐かしい写真だ」
と蘭子。
「そのデビューシングル、私たちでさえ持ってないのに」
と和泉。
「現在この世に3枚だけ存在するよ」
と千里は言ったが
「私も3枚存在すると思う」
と丸山アイが追認した。
「私と早紀ちゃんの意見が一致するというのは珍しい」
「記念にセックスしてもいいよ」
「綾香ちゃんに嫉妬されるからやめとく」
ピアノ室の歌唱では最新アルバム『シンフォニー』から『チャイム』を蘭子自身のピアノ伴奏で歌った。
取材終了後の千里と丸山アイの会話
「アクアの件ありがと」
「あの場面で眠っちゃうというのは、アクアは大した子だよ」
「早紀ちゃんが自分を殺すわけ無い、からかってるだけだと判断したんだろうね」
「それでも普通寝られる?」
「だから彼はスターなのさ」
4月8日(月)、吉川日和(入瀬コルネ)は、朝の運動の後、女子寮の部屋で御飯を食べると制服(もちろん女子制服)を着て妹と一緒に地下の駐車場に降りた。C学園行きのワゴン車に乗る。
何か北陸組が多くここにはいっている。麻生ルミナ、紺青セイラ、それに自分と妹。
「礼音ちゃんはここじゃないのね」
「誘ったんだけどね」
「女子寮怖いと言ってまだ男子寮にいるのよ」
「怖いって何が?」
「まあだいたい分かる」
「でも性転換は終わってるよね」
「そのあたりが良く分からない」
やがて学校に着くと佐々木マネージャーと一緒に職員室に行き、担任の先生と一緒に高等部3年の教室に行った。
先生から「富山県から転校してきた吉川日和(ひな)さんです」と紹介された。
日和は自分の名前が色々な読み方をされるのには慣れっこなので、まあいいかと思った。しかしお陰で日和はこの学校では「ひなちゃん」と呼ばれることになった。
「何か中学生が高等部のフロアに迷い込んでると思った。転校生だったのか」
「私『高校2年の吉川です』と自己紹介しても『中学2年の吉川さんだって』とか言われてた」
「うん。中学生に見える」
「身長以上に雰囲気が幼いもんね」
日和は多くのガールズたちやテレビ局の人からも“萌花ちゃんの妹”と思われている。
「私おっぱいも小さいし」
「そのうち高校生くらいになったら大きくなるよ」(←既に高校生であることを忘れられている)
でもその日体育でバスケットをしたら、日和はミドルシュートで6点(3ゴール)いれる活躍を見せた。
「ひなちゃんバスケ上手いんだね」
「私富山の高校ではバスケ部だったから」
「さすが」
「ポジションは?」
「ベンチ」
「なるほどー」
「マネージャー志望ではいったんだけど私ドジばかりするからマネージャーくびになって君はここに座ってなさいと言われた」
「何となく分かる」
「でも練習には参加してたからミドルシュートは5回に1回くらいは入るようになった」
「偉い偉い」
「でもランニングシュートしようとするとトラベリング取られるの」
「それも何となく分かる」
4月8日(月)、広中礼音は不本意ながら女子標準服を着てJ高校に登校した。
「きららちゃん、おはよう」
「ちゃんと女子制服で来たね。偉い偉い」
「それなんだけど、あまり芸名では呼ばないで欲しいんだけど」
「あ、そうだよね。本名何だったっけ」
「広中礼音(れのん)」
「じゃレッシーで」
「まあいいよ」
ということで礼音はこの学校では女子たちから「レッシー」と呼ばれることになった。
それで女子標準服で入学式に出席し、ホームルームで自己紹介とかもした。
彼は他の女子と一緒に女子トイレに入り、体育の時間は女子更衣室で体操服に着替えた。
「レッシー結構胸あるね」
「ほんとは全然無い。仕事の時、女性用楽屋で着替えてくださいと言われるから最低限の偽装してるだけ」
「へー、これフェイクなの?フェイクに見えない」
などといって触られる。
「本物みたいに感じる」
「シリコンパッド入れてるからね」
「なるほどー」
「ブラのサイズは?」
「B70だよ」
「私より大きい」
「去年はA着けてたけど、君の身長でAはバランス悪いから最低Bにしなさいって言われてBに交換した。本当は中味無いのに」
「ああ、私もパッド入れてB着けようかなあ」
「いいんじゃない?」
「ただし落っことさないように」
「それ恥ずかしいね」
「お嬢さん、お待ちなさい♪ちょっと落とし物。シリコンで出来た小さな胸パッド♪」
この日の体育では、いきなり持久走をやらされた。礼音は女子と一緒に1000m走ったが1位でゴールした。
「男子と5000mでも1位だったから当然よね」
「うちのタレントは毎日体力に応じて2kmまたは4kmのジョギングが課されているし、ぼくはその他に毎日10kmウォーキングしてるから」
(コルネ・はるこがジョギングできるようになり、ジョギングの代わりに散歩という子は居なくなった)
「仕事忙しそうなのによくやるね」
「どちらかというと仕事忙しいから体力付けておかないともたないかも」
「なるほどー」
「御飯も2800kcalくらい食べてるよ」
「アイドルのカロリーじゃないね」
「うちの事務所はダイエット禁止。春風アルトさんが無理なダイエットして生理不順になって不妊にも苦しんだから」
「へー」
「でも写真集のタイトルの『山がある』って何か意味があるんだっけ?」
「あれぼくも詳しくは知らないけど、昔有名な登山家が『どうして山に登るんですか?』と聞かれて『それはそこに山があるから』と答えたんだって。そこから来てるんだよ」
「へー。格好いい」
「確かマロニーさんとかいう人」
「マロニー?はるさめ?」
「いや何かそんな感じの名前の人(*7)」
(*7) ジョージ・マロリー(George Mallory, 1886-1924)。人類初のチョモランマ(エベレスト)登頂を目指していたが、3度目の挑戦中、頂上近くで消息を絶つ。彼が登頂に成功したのかどうかは不明でいまだに議論がある。遺体は後に発見されたが、彼が遺したカメラには頂上付近の景色は写っていたものの登頂の確実な証拠には足りないとも言われる。原文は Because it's there.
礼音は一度オーリンに聞いてみた。
「昔さ、性転換させるとそのためのエネルギーとして体重3kg程度のエネルギーを消費するってオーリン言ってた気がするけど、ぼく頻繁に性転換している割りにはそんなに体重減ってない気がするんだけど」
「それはね。一定期間内に2回以上性転換させた場合、“裏体(うらたい)”が具現化してしまうからなんだよ」
「裏?」
「元々人間の身体は男と女の二重体なんだよ。でも裏側にある側は設計図のみがあって物理的な身体を伴っていない。それが頻繁に両方の身体を使うと両方が物理的に存在するようになって性転換は表裏を交換するだけになるから、ほとんどエネルギーを使わなくなる」
「へー。じゃぼくの女の子の身体もどこかに隠れてるのか」
「うん(隠れてるのは男の子の身体だけどね)」
「そうだったのか」
「但し妊娠すると、赤ちゃん保護のため、出産して1年経つまで男には戻せなくなるから気を付けてね」
「分かった」
「男の子とセックスする時は必ずコンドーム使ってもらうように」
「そのあたりがよく分からない」
「しょうがないなあ。これ本当は学校で教えるべきだと思うんだけど」
と言って、オーリンは鉛筆型消しゴムを使って礼音にコンドームの着け方を教えてくれた。
「なんか面白ーい」
「セックスする時はコンドームは男の子が用意するのがマナーだけど、念のため礼音ちゃん1個は持っておきなよ。これナプキン入れにでも入れておくといいよ」
と言ってオーリンはコンドームを1個くれた。
「分かった。ありがとう」
4月8日(月)、椎羅は女子制服を着て母と一緒に学校に行った。校長先生に面会する。
「この子、性の転換手術を受けて女の子になりましたので、学校の登録を女子に変更してほしいのですが」
「ああ、今まで男子として登録されていたんですね」
「はい」
「へー。君女の子にしか見えないのに」
「心理的にも100%女性と言われました。それで、ここまで女らしければ女になったほうがいいよ、と診断されたので、手術して完全な女の子に変えてもらったんです」
「なるほどですね」
母は「この人は医学的に女性である」という医師の診断書も提出した。それで校長は担任予定の先生を呼び伝える。即生徒原簿の性別を修正してくれた。
「名前は変えられますか?」
「いえ、椎羅のままで」
「どちらかというと椎羅というのがそもそも女性的な名前ですね」
先生はクラス委員予定者のリエちゃんを呼んだ。
「ああ、とうとう、やっちゃったのか」
と彼女は言った。
「私も手術終わってあそこ見た時『ああ、とうとうやっちゃった』と思った」
「竹下さんは女子制服で登校するから」
「今までも女子制服だったから何も変わらないね」
「トイレも女子トイレ使ってもらうから」
「今までも女子トイレ使ってたから何も変わりないですね」
「着替えも女子更衣室使ってもらうから」
「今までも女子更衣室使ってたから何も変わりないですね」
「身体測定も他の女子と一緒に受けてもらうから」
「今までも女子と一緒だったから何も変わりないですね」
「結局何も変わらなかったりして」
「変わらないよ。みんなシーラちゃんのことは女の子と思ってたからね」
「ははは」
「時々男子制服着てくる変な子と思ってた」
「男子制服片付けられちゃった」
「じゃ間違ってそれ着て来ることもないね」
その後、椎羅は先生・リエと一緒に教室に行き
「性転換して女になりました。よろしくお願いします」
と挨拶したが
「元から女だったと思う」
「性転換したら男になるはず」
と言われた。
「じゃ今後はいつも女子制服ね」
「男子制服捨てられちゃった」
「賢明だ」
「でも今までもちんちんがあったのかは疑問があった」
「パンティに膨らみが無かったから元々ちんちんは無かった疑いが濃厚」
「喉仏無いし声が女の子だから、付いてたとしても、小学4年生頃までには取っていたはず」
「小学校入学前に切ったという説もあった」
「小学1年生の時から女子水着を着けていたという噂もあった」
「うん。私水着は女子用しか着けたことない」
「七五三とかどうしたんだっけ」
「7歳の時も3歳の時も女の子用の和服着た写真が残ってる」
「とすると2歳頃までにちんちん切ったとしか考えられない」
「それか最初から女の子だったかだね」
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