【女子中学生・ミニスカストーリー】(5)

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2004年8月22日(日).
 
留萌S中の合唱同好会は合唱コンクールの地区予選に初めて参加した。
 
同好会が発足したのが昨年10月8日で、1月に合唱連盟への加入が認められ、4月から正会員になった。そしてこの手の大会に参加するのはこれが初めてである。一行は1年生10名・2年生7名(ピアニストのセナを含む)の女子17名。金賞や銀賞の審査対象になる人数には届かないものの、参加校6校の先頭で課題曲の『信じる』(谷川俊太郎作詞・松下耕作曲)と自由曲の『瞳をとじて』(平井堅作詞作曲)を歌った。
 
「今年は先頭で歌ったけど、来年は最後に歌いたいなあ」
「最後に歌うのは前年優勝校だから、来年優勝したら再来年はラストで歌えるね」
「私たちは卒業しちゃうけど、1年生が頑張ってね」
などと言った。そもそも金賞の審査対象になるには、最低24人以上必要なので来年1年生を12-13名確保したいなあと穂花たちは思っていた(最大は35名。ただし課題曲と自由曲で15人までメンバーを入れ替えられるので50人までは全員参加できる)。
 

8月25日(水).
 
公世は朝から、昨日ジャスコで買った真新しいワイシャツ(?)とズボンを身につけて学校に出掛ける。衣裳ケースの上に女子夏服のセーラー・ブラウスとスカートが載っているが、ぼく男の子だからこんなの着ないよーと思う。
 
昨夜、記念写真だけでもと言われて姉に着せられて写真撮られたけど。スカートとか穿きたくない。袴と似たようなものじゃんとは言われたけど。
 
それでまずワイシャツを着ようとした時、なんかボタンが凄く留めにくい気がした。なんでこのワイシャツ、こんなにボタンが留めにくいんだろうと思う。ボタンの前に布があるからかな?とも思った。
 
このワイシャツ?にはボタンの前に“前立て”の布が付いていて、ボタンが隠れるようになっている。なんかおしゃれだなあと思った。
 
(フライフロント Fly Front というタイプである。ドレスシャツ・ドレスブラウス!によくある仕様である。ボタンが隠れるということはボタンが右前か左前かもパッと見には分からない!)
 
何とかボタンを留めて、ズボンを穿こうと手に取ったらスカートだった!姉か母が昨日買ってきたズボンを重ねて置いてる所の上にスカートを重ねていたようだ。
 
全くもう!
 
それでスカートは、よけて、ズボンを穿く。このズボンがほんとにピタリとフィットする感じで気持ちいい。昨日穿いた古いズボンは下半身の筋肉が付いたせいか、きつかった。何cmだったんだっけ?と思って昨日穿いたのを見るとW73cmである。あれ〜?今日穿いてるズボンは W66cm なのに。こちらのほうがウェストが小さい??メーカーによる違いかな?と思った。
 
それで公世は気持ち良く学校に出掛けた。
 
姉は「セーラー服じゃないの?」などと言っていたが!
 

2時間目の休み時間、公世はトイレに行き、小便器の前でファスナーを下げ、排泄用の器官を取り出そうとした。
 
が。
 
通せない!?
 
う。
 
どうする?
 
0.3秒迷って、公世はファスナーを上げると、個室に飛び込む。
 
「工藤さんどうしたの?」
とクラスメイトの小沢君が言う。
 
「いや、急に大もしたくなって」
と公世は言っておいたが、取り敢えず、ズボンを下げ、ボクサーパンツを下げて小用は済ませることができた。トイレットペーパーで先端を拭き(←女子的習慣が身に付いてしまっている)、水を流す。パンツを穿き、ズボンも穿いたが
 
なんで、ちんちん出せないの〜〜!?
 
と疑問を感じた(自分が女子用スラックスを穿いていることに未だに気付いていない)
 
結局、この後しばらく、公世は毎回個室を使うようになり、男子生徒の間で
 
「やはり工藤さんO−+手術したのでは?」
(↑伏せ字になってない!)
 
「声も女の子の声に聞こえるし」
「工藤さんの傍に行くと、女の子みたいな甘い香りがする」
などといった噂が広がることになる。
 

その日の昼休み、剣道連盟から岩永先生に連絡があり「工藤さんを放課後でいいですからちょっと連れてきてもらえませんか」と言われる。
 
岩永先生はまた性別問題だろうかと思ったのだが、話を聞いてみると、公世がまだ一級なのに、全国大会で二段の人を多数倒して敢闘賞を取るという優秀な成績をあげたので、臨時の段位審査をしたいということだった。
 
6時間目を沙苗と一緒に休ませてもらい、慌てて“木刀による型の練習”をしてから、岩永先生の車に乗り、沙苗と一緒に指定された勤労体育センターに行った。
 
そして沙苗をパートナーにして規定通りの審査を受ける。
 
まずは切り返しをする。切り返しの大事な点は、きちんとした形で竹刀を振ることと、「面!面!面!面!」と、ちゃんと声を出すことである。
 
その後、掛かり稽古をする。沙苗が元立ちとなり、公世が掛かり手となって、攻めて攻めて攻めまくる。ここでも大事なのは、1本が決まらなくてもいいからちゃんとした攻撃を積極的にすることと、「めーん!」とか「こてー!」とか大きな声を出すことである。
 
ここまでの段階で実技合格をもらうので、木刀による形の稽古をする。引き続き沙苗が元立ちを務める。初段の審査では型の1〜3本目までをやる。
 
1.一本打ちの技(正面・小手・右胴・突き)
2.連続技(小手→面)
3.払い技(払い面(表))
 
これは本当にさっき慌てて練習しただけだったのだが、合格をもらう。(公世はちゃんと寸止めができる)
 
最後に筆記試験!があるが、頭の良い公世は難無く全問正解である。
 
それで公世は初段に認定してもらった。
 
「君は来年7月の通常の段位検定の時は既に1年経過したとみなすから、二段を受験してね」
 
「分かりました!ありがとうございます!」
 
なお、千里と清香は初段を取ってからまだ1年経過してないので、二段になることができない。1月の検定を待つ。(もし全国大会で優勝していたら、特例で二段認定されていたかも)
 

8月26日(木).
 
S中で実力テストが行われた。例によってBは出てこないので、これを受けたのは、国語と社会がRで、英語・数学・理科がYである。Yが数学と理科の実力テストを受けたのは初めて(前回まではBが受けている)だったが、何とか多くの問題を解くことができた。やはり算数ドリルのおかげだろう。
 
今回の勉強会メンツの成績(1年春→夏→冬→2年春→今回)。
 
玖美子1-1-1-1-1 蓮菜2-3-2-3-2 田代3-2-3-2-3 美那22-14-12-10-9 穂花25-16-11-9-8 千里40-26-22-16-14 恵香43-32-28-22-18 沙苗65-41-36-32-31 留実子74-58-47-44-40 セナ78-81-68-69-60
 
玖美子は剣道の大会にも行って来たのに、不動の1位である。田代と蓮菜は1回交替で2位と3位になっている。他は全員成績を上げている。千里は数学と理科が前回より少し悪かったものの社会と国語でカバーして順位は上げたので、10位以内が射程圏に入ってきた。
 

公世は夜中、家の前の道路を通るトラックのガタンという音に目が覚めた。携帯で時刻を見ると2:22である。あ、数字の並びがきれいだと思った。
 
取り敢えずトイレに行ってくる。部屋を出て、廊下を歩いてトイレまで行く。便座に座って、半分眠りながらおしっこをした。
 
あれ?なんかおしっこの出方が“楽”な気がする。何でだろう?と思うが半分眠っていて、頭が働いていないので、深くは考えなかった。ペーパーを取って拭くが、この時結構後ろの方を拭いた気がした。
 
水を流してトイレを出て、自分の部屋に戻る。
 
布団に潜り込んで、熟睡した。
 
明け方見た夢で、公世はセーラー服を着て、玖美子や沙苗たちとおやつを食べていた。
 

8月27日(金).
 
初広はスズカに泊まりがけのデートを提案していた。2人はこの日の午後ポスフールで待ち合わせ、軽く食事をして映画を見た。そしてドライブする。そして21時頃、予約していた、ホテルのゴージャスな部屋にチェックインした。
 
「ここ広いね〜」
と言って、スズカは気に入ったようである。
「ベッドも柔らかーい」
と言って、ベッドのスプリングを味わっているようだ。
 
初広は「渡したいものがある」とスズカに予告しておいた。彼女は今日のデートに来てくれた。それは受け取ってくれるという意味だと初広は解釈していた(←甘い!)
 

部屋の灯りを消す。
 
ベッドの上に寝転がってしまったスズカに、初広はキスをした。そのまま彼女の上に乗り。優しく愛撫する。
「していいよね?」
「どうぞ」
「服脱がせていい?自分で脱ぐ?」
「脱がせて」
「じゃ脱がせちゃうよ」
「うん」
 
それで初広はスズカの服を要領よく脱がせていく。そして下着も取って裸にしてしまった。豊かな胸の膨らみにキスをする。そして茂みにも指を当てる。
 
彼女は気持ち良さそうにしている。初広は自分も服を脱いだ。
 
あれ?
 
あれれ??
 
あれれれ???
 
「どうしたの?」
とスズカが尋ねる。今にも入れられると思っていたのに、初広はなかなか突入を試みない。装着に手間取ってる??
 
「いや、それが・・・これどうなってんだろう?」
「ん?」
 
スズカは初広の身体に手を触れた。そして驚いたように言った。
 
「嘘!?はーちゃん、性転換手術しちゃったの!?」
 

8月27日(金).
 
沙苗は母とともに札幌に行き、S医大で受診した。
 
「女性化が進行してるね」
と主治医は予想通りという感じで言った。
 
大陰唇はほぼ完全な普通の女性の大陰唇に変化している。左右に分離しかかっていた陰茎の軸は明確に左右に分かれており、陰核の足と小陰唇になっていきそうな感じである。尿道口は陰核(といっていだろう)亀頭から既に2cmほど離れており、恐らくこのまま後方に移動して行って、通常の女性の尿道口の位置まで行くのではと思われた。
 
「痛みとかは無い?」
「全く無いです」
 
ホルモン値も測られたが、もう完全に女子中学生のホルモン値の正常値の範囲に入っていると言われた。
 
次の診察は9月下旬におこなうことにした。沙苗と母はこの日は札幌に泊まる。
 

病院の診察が終わった後、沙苗は母に大通公園まで送ってもらい、そこで降ろしてもらった。母は札幌に出て来たついでに、色々買物をしたいようだが、沙苗はここで「夏休みの宿題」の絵を描こうと思っていたのである。“希望”の像から少し離れた所に陣取り、念のため数枚写真を撮ってから、30分ほどで、画用紙に鉛筆でデッサンを描いた。
 
それでそこを引き上げ、ホテルに戻ってから、新たな画用紙に色鉛筆のセットで、デッサンや写真を見ながら2時間ほど掛けて、彫刻の絵を描き上げた。
 
「これで夏休みの宿題がひとつできた〜!」
 
またこの日はこの後、ホテルで東野圭吾の『秘密』を一気読みし、パソコンで最近評判らしいテキストエディタ"No Editor"を使用して感想文を書いた。
 
それで沙苗は週明けの8月30日(月)にこの絵と、感想文(テキストファイル)を入れたUSBメモリを先生に提出。また音楽の先生の所に行って、リコーダーで『アルルの女のメヌエット』を吹いて、実技提出した(札幌までの車の中でずっと練習していた)。
 
「残りはプリントだ!」
 

スズカは部屋の灯りを点けた、目の前には女の身体になってしまっている初広がいる。胸はAカップくらいの膨らみがあるし、股間には男性を示す象徴は存在せず、女性のような形状になっている。
 
「大陰唇、小陰唇、クリトリス、おしっこの出てくる所、そしてヴァギナらしきもの、全部あるね。いつの間に性転換手術受けたの?」
とスズカは初広の身体に触って確認しながら言う。
 
「そんな手術受けてない」
「だってこれは完全に女の身体だよ」
「そんなはず無いんだ。だって、ぼく、出がけに普通にちんちん使っておしっこしたよ」
「そういえば、食事の後でも男子トイレに入ってたね」
「そうだ。その時も普通に立っておしっこした」
 
「じゃあの後ほんの1〜2時間の間に女の身体に変化しちゃったということ?」
「そうとしか考えられないんだけど、どうしよう?これじゃセックスできない」
 

うーん・・・。男の人って、性別の変化に戸惑うより、セックスできるかというのを先に考えるのか?とスズカは呆れたが、それよりスズカは提案した。
 
「はーちゃんが女の子になっちゃったんだったら、今夜はレスビアンセックスしようよ」
「え〜〜〜〜!?」
「気持ち良くしてあげるから」
「マジ?」
「私に任せて。でも、はーちゃんのバージンもらってもいい?」
「バージンも何もぼくたち既に6回セックスしてるよ」
「じゃもらっちゃっていいね?」
「よく分からないけど任せる」
「じゃ、はーちゃんを私のものにしちゃお」
 
そういって、スズカは初広の上に覆い被さった。そして初広はそれから4〜5時間、かつて体験したことのない、めくるめく極上の快感を味わうことになるのである。
 

翌朝(8/28 Sat)、初広はくたくたではあったが、爽快な気分であった。
 
一眠りしたスズカとキスをする。
 
スズカは語った。
 
「私ね。本当は元々レスビアンだったの」
「そうなの?」
「でもはーちゃんは少し女性的だから、もしかしたら愛せるかも知れないと思って、交際を申し込まれた時、同意しちゃった。でもここ数ヶ月お付き合いしていて、やはりはーちゃん男の子だなあと思って。それでこれ以上はもう自分の気持ちを維持できないから、今夜デートしたら、それを最後の記念のデートということにして別れようと思ってたの」
 
「え〜〜〜!?」
 
「でもはーちゃんが女の子になっちゃったのなら、私ずっと、はーちゃんと一緒に居たい」
「・・・・・」
 
「だから結婚して」
「ぼくこのままずっと女の子の身体のままかも知れないけど」
「むしろその方が嬉しい」
「あっそうか」
 
「だから結婚しようよ。可能だったら、法的な性別は変更しないで男のままにしておいてくれない?そしたら、私たち法的にも結婚できるし」
「・・・・」
 
「ぼくはスズカと結婚したい」
「じゃOKね。今度宝石店に付き合ってよ。指輪をプレゼントしたいから」
「ぼくも指輪を用意してたんだけど」
「あ、そうか。じゃそれもらう」
「うん」
 
それで初広は用意していたダイヤの指輪を、スズカの左手薬指に填めてあげた。
 
「じゃ私からの指輪は後日」
「分かった」
 
「結婚式はどうする?やはりふたりともウェディングドレス?あるいは私がタキシード着てもいいけど」
 
「ちょっと待って〜〜〜〜!!」
 

8月28日(土).
 
この日は実に様々な出来事があった(後でタイムラインを提示する)。
 
千里・玖美子・公世・弓枝、清香・柔良の6人は朝8時に駅近くの早朝から開いているカフェに集まり(モーニングを食べる)、留萌まで迎えに来てくれた瑞江が運転するセレナで旭川に出た。10時頃、旭川駅に到着。いったん車を駐車場に駐める。
 
ここで昨日医大での診察のため札幌に行っていて、そちらから母の車で移動してきていた沙苗と落ち合い、また、先輩で旭川在住の女子大生・道田さんとも落ち合った。
 
ここで瑞江はセレナのキーを道田さんに渡し、後をお願いする。道田さんがセレナを運転し、剣道用具の専門店に行く。
 
(瑞江が離脱するのはセレナの定員(8名)問題。瑞江は駅前の駐車場に駐めていた自分のRX-8でいったん帰宅する)
 

千里たちは、実はカーボン竹刀を買おうと話し合っていたのである。
 
先日越智さんに新しい竹刀を買ってもらった時は、お店の人からカーボン竹刀を勧められたものの、竹の竹刀を選択した。これには2つの理由があった。
 
(1) これまで竹の竹刀でやってきて、大会前に急に感覚の違う竹刀には変えたくなかったこと。
 
(2)とても高いものなので、越智さん自身はカーボン竹刀でいいよと言っていたものの、あまり負担を掛けたくなかったこと。
 
それで7人の暗黙の視線交換で竹にした。
 
しかし、全国大会ではカーボン竹刀を使っている選手もかなりおり、そういう人と試合をした時に、相手の竹刀の速度感覚が竹とは全然違う。それで、カーボンの相手にも慣れる必要があることを特に、出場した3人は認識した。
 
それで、自分たちでも取り敢えず1本買ってみて、試してみようという話になったのである。見立て役を道田さんにお願いした。
 
道田さんは個人的には竹とカーボンの両刀遣いである。それで彼女の見立てで全員1本買った。重さはカーボン竹刀の耐久性と自分達の年齢を考えて高校生になっても使えるものにしようということになる。それで全員420g以上のものを選ぶ。が、例によって、公世が
 
「すみません。ぼくは480gの男子規格で」
と言い、
 
「重いのが好きなの?」(*13)
と言われていた!
 
(*13) 竹刀の基準
中学生 男440g以上、女400g以上
高校生 男480g以上、女420g以上
一般 男510g以上、女440g以上
 
長さは中学生114cm以下、高校生117cm以下、一般120cm以下。
 
それでこの日みんなが買ったのは114cm以下と長さは中学生基準を満たしていて、重さは420/480g以上という高校生基準を満たしていて、結果的に中学でも高校でも使用できるものであった。
 

ところで、瑞江は、本来A大神の眷属なのに、ほぼ千里の眷属として使役されている。1年ほど前からは1人暮らしすることになった天子の同居人として、話し相手を務めているのだが、この生活は瑞江にとっても楽しいものとなっていた。そして天子が、目が見えないのに勘だけでこれだけ普通に動けるというのを考えると、孫の千里に高い霊的な能力があっても不思議ではないという気がしてきていた。
 
さてこの日は、朝5時半(天子はだいたい4時半に起きる)に自分のRX-8を運転して天子のアパートを出、旭川駅前の駐車場にその車を駐めた。そして同じ駐車場に駐めてあるセレナ(しょっちゅう運転するのでスペアキーを渡されている)に乗り換えて、朝7時半頃に留萌に到着した。約束のカフェでモーニングを食べながら待っている内に千里たち6人が集まった。それで8時半頃に留萌を出発し、10時頃、旭川駅前に到着する。
 
ここで車を道田さんに引き継ぎ、自分は今朝ここまで乗ってきたRX-8でアパートに帰還した。ところがアパートに戻ってみると、そこにも千里が居て、天子と将棋を指していた。
 
「あ、瑞江さんお帰り〜。早朝からバイトか何か?」
などと千里は言っている。
 
瑞江は「えっと、この千里はRBYの3人の内、どの千里だっけ?」と思ったもののよく分からないのでいいことにした!
 

一方、カーボン竹刀を買った千里(R)たちは、近くのショッピングモールに行き、そこのロッテリアでお昼にした。
 
「へー。町中に練習場が確保できたの?」
と道田さんは言った。
 
「この春までは墨野道場と言っていた所なんですけどね」
「ああ、あそこか!」
「道田さんはご存じでした?」
「うん。全然流行ってなかった道場」
と道田さんは言う。
 
「私は知らなかった」
と玖美子や柔良は言う。
 
「道場主は八段の腕前ではあったけど、優しくなくてさ。きちんと指導する訳でもなく、入門すると叩きのめされて、戦いの中で相手から技を盗めと言われて」
 
「今どきそういう道場には生徒さん付かないだろうなあ」
「一昔どころか一世紀前の指導法だなあ」
「まそれで、墨野さんが今年の春に亡くなって、息子さんが遺産整理でそこも処分して、うちの親戚が手に入れたのよね。45万円で」
 
「何か安い気がする」
「広さは?」
「試合場が1個だけの広さ。駐車場は5-6台駐められる。というか、そこにぼろ家が建ってたのを崩して駐車場にさせてもらった」
「なるほどー」
 
「ここは深川留萌自動車道の留萌IC(この時点では仮称)の工事が始まったらすみやかに立ち退かないといけないんだよ。だから安かった」
 
「ああ、あのあたりか」
 
その話でみんなだいたいの場所を把握した。
 

「それでそこを使わせてもらえることになったんだよ」
 
「あのあたりなら、車がたくさん通る場所だから、鹿や熊は出なさそうだ」
「それは安心かも」
という声が多いが
「鹿肉パーティーも楽しいけど」
という意見の子も居る!
 
「狭いのが難点だけどね」
「まあ市街地ならやむを得ない」
 
「トイレが古いぽっとんトイレだったのを洋式の簡易水洗に改造した」
「簡易?」
「数年以内に立ち退かないといけないから、下水道に接続してもらえない」
「なるほどー。ちょっとだけ水が流せる奴だ」
「そうそう」
 

「そういう訳で、そこで土日に“勝手に”出て来て、“たまたま”誰かと遭遇したら手合わせするということで」
「おお、建前、建前」
 
S中は原則として土日の部活は禁止されているので千里としては“部活ではない”と主張できる個人レベルの練習ができる場所が欲しかった。清香はR中の部活では適切なレベルの練習パートナーが得られず、むしろ他の部員の指導に多大な時間を取られてしまうので、自分と近いレベルの人と密度の濃い練習が出来る環境が欲しかった、ということで2人の利害が一致した。
 
それで、毎週土日に千里と清香がここで練習することにした。ただしお互い、用事がある時は自由に休む。あくまで勝手に出て来て、たまたま遭遇したら手合わせするという建前である。
 
この土地が売りに出ていることを芳子さん(A大神の眷属)が教えてくれて、千里は、きーちゃんに頼んでここを買ってもらったのである。そしてまともに使えるようにするのに九重たちに頼んで、改造を加えてもらった。
 
傷んでいた床は新しいフローリング(無料で使えるらしい?ミズナラの板)に交換。エアコンも取り付けた。またトイレも和式が1個だったのを簡易水洗の洋式便器を設置した個室2個を設置した。また清香のリクエストに応え、シャワー室も2つ設置した。それで外観は古ぼけた建物だが、中はかなり快適になった。管理人として千里は太陰(いんちゃん)に当面の間、常駐してもらうことにした(8/12に旭川で頼んだ内容)。
 

「一応管理人として、知り合いのおばさんで繭子さんという人に土日はだいたい常駐してもらえることになってる」
「ああ。そこを45万円で買った人?」
「その人のお友達で、子供たちも独立して暇してるということだったから」
「へー」
 
「彼女は指導とかはできないから、誰か剣道の強い人を道場主として雇いたいんだけどね。できたら女性で。そうだ。道田さん、誰か留萌かその近辺の人で適当な人とか知りません?」
と千里が言うと
 
「給料はいくら?」
と道田さんは訊く。
 
「段位にもよりますけど、五段くらいの人なら1日3万円、月に10回で計算して月30万くらいかなあ(*14)。むろん報酬は実際の指導日数計算ではなく固定式で」
「固定式の方が助かると思う。四段なら?」
「相談に応じるということで20万くらいでは?」
 
(*14) 2004年当時、年間の祝日は14個+1である(+1というのは5月4日が、憲法記念日とこどもの日に挟まれることで確実に休日になるから)。ただし、祝日が土曜日に重なると、これより実質少なくなることもある。
 
1年を52週として、年間の休日は52×2+15=119 で12ヶ月平均すると月に9.9日の休日があることになる。実際の休日数は下記である
 
2000 土53日53 祝14(平10土4日0) 国1振0 休計117
2001 土52日52 祝14(平_7土3日4) 国1振4 休計116
2002 土52日52 祝14(平_9土2日3) 国1振3 休計116
2003 土52日52 祝14(平12土1日1) 国1振1 休計117
2004 土52日52 祝14(平13土1日0) 国1振0 休計118
2005 土53日52 祝14(平12土1日1) 国1振1 休計119
 
※2002年は5/4が土曜日,2003年は日曜日で1日損している。
 
※学校の土休は2002年からなので、2001年以前は学校休みがもう少し少ない(1995-2001は第2,4土曜が休み)。会社の週休2日制は1980年代頃に一般化した。
 

「私がやりたい」
「え〜〜〜!?」
 
「道田さん、どこかに就職の予定なのでは?」
「いやそれが剣道とバイトに夢中だったから、なーんにも就職のこと考えてなくて」
「だってもう8月も終わりなのに」
「卒論も書かないといけないし、どうしよう?と思ってた」
 
「じゃ道田さんにお願いしようかな」
 
ということで、4月からは道田さんがここの“道場主”になってくれることになった。また“ある事情”で、太陰も引き続き、2006年3月までは管理人を続けることになる。(ここは2006年度以降はもう少し広い所に移転した上で、如月たちが使うことになる)
 
なお報酬は「経理担当兼任!」「休みの週を作りたい」ということで、平均月8回程度の指導で、経理作業(道田さんは簿記の二級を持っている)の報酬も含めて、22万円+交通費、社会保険付き、ということにした。“天野産業”という会社を設立して、その社員にすることにする。(合宿などでの集中指導の際は、別途計算)
 
天野産業株式会社は、10月くらいに設立を目指すことにする。
 

道田さんもそこを見たいということだったので、ロッテリアでお昼を食べた後、道田さんがセレナをそのまま運転して、留萌に移動することにした。千里はまた瑞江に頼むつもりだったのだが、瑞江に電話して、道田さんが留萌に行くことになったから、取り敢えず留萌への運転は不要と伝えた。
 
「でも後でセレナの回収が必要ですよね」
「それなんだけど、私、今夜また旭川に出てくることになってて」
「え〜〜〜!?」
「それは誰か留萌で人を頼むけど、セレナはそれで旭川に持ってくるから回収は不要だよ」
「分かりました。お気をつけて」
 
それで瑞江はこの日はこの後、オフとなり、天子とのんびりアパートで過ごすことになる。
 

千里は瑞江に休んでもらうことにしたので、今夜の旭川への再移動は、カノ子あたりに頼もうかと思った。ところがそこに電話が掛かって来たのである。
 
「お疲れ様です。櫃美です」
「お久しぶり〜。元気?」
「はい。おかげさまで。それでですね。今夜、千里さん、留萌から旭川に移動なさいますよね?」
「うん。よく分かったね」
「それでそのドライバーをしてあげてと、さるお方から頼まれたのですが、何時頃お迎えに行きましょうか」
 
「さるお方って、あのお方かな?親切だね〜。じゃさ、17時半くらいに、以前墨野道場と言っていた場所なんだけど」
「貴子さんが買った場所ですよね?」
「そうそう。そこ。そこに来てもらえる?車はそこに駐めてあるセレナを使ってもらいたいんだけど」
「分かりました。では17時半に」
 
ということで千里Rは今夜旭川に舞い戻る足を確保するとともに、セレナの回収もできることになった。そこで瑞江には留萌から旭川へ運転してくれる人が見付かったのでセレナの回収不要というメールをしておいた。
 
しかし、なんかうまく行きすぎてるなと千里Rは思った。でも気にしないことにした!
 
千里は小さい頃から“予定調和”が多いが、それは千里の能力?が起こしている天然のものと、誰かが頑張って調整した結果起きているものとがある。
 

ロッテリアでの食事はまだ続いていた。清香と公世が追加オーダーし更にハンバーガーやリブサンドを食べていた。
 
「解像度?」
 
と清香は“5個目”のハンバーガー(リブサンドを含む)を食べながら、千里(R)に訊いた。
 
「大会で上位の人たちと対戦していて、私たちと優勝候補の人たちって解像度がいちばん違うと思ったんだよ。空間の加増度と時間の解像度」
 
「ほほぉ」
 
「時間の解像度で言えば強い人たちって、竹刀を振り始めてから当たるまでの時間が短い。だから私たちの1.3-1.4倍の速度で目標に到達している」
「あ、それは思った。やはり腕立て伏せとかで腕の筋肉鍛えないといけないよね」
「うん。それはやはり腕立て伏せとか懸垂とかが効くと思う」
 
「よし、道場の隅に鉄棒を設置してもらおう」
「おお、それは良い」
「ついでに、腹筋運動する時に足を引っかけられる高さ10cm程度の鉄棒もあるといいな」
「あ、それ便利だよね。頼んでおく」
 

「空間の解像度というのは?」
 
「私って、面を狙うとき、面のどこかに当たればいいと思ってる。そういうのって結局不正確な攻撃になってる。上位陣の人たちはここに当てるという気持ちで攻撃してる」
 
「でもそれは相手の防御体勢によって目標地点は変わるのでは?」
「それは変わっていいんだよ。大事なことは、当てたい場所に当てること。どこかに当たるといいなあという攻撃は結局どこにも当たらない」
 
「下手な鉄砲数撃っても当たらない、という奴かな」
「そうそう。例の諺は間違ってるよね。バスケットとかでも下手な人のシュートって100発撃っても1本も入らないもん」
「ああ、そういう人居る」
 
それはセナのシュートだなと沙苗は思った。あの子は剣道でも空振りが異様に多い。
 
「でもそれどうやって練習するの?」
「ひとつは素振りの時に竹刀がぶれないように気をつけること」
「それは思ったことある。やはりぶれたらダメだよね?」
「それ何か練習方法無いかなあ」
「真剣で素振りするとかは?」
 
「それ私も思いついたから、個人的に少し練習してる」
「おお、私もやってみたい」
「取り敢えず素振り用に2本、天野道場に用意しといた」
「楽しみだ」
 
玖美子と柔良は「ある成語」が頭に浮かんだもののも口に出さなかった。
 

「あとひとつ考えたんだけど、目標地点にシールでも貼っておいて、そこに当てる練習とかどうかな」
 
「それ面白いかも知れない」
 
それで千里たちはショッピングモール内の100円ショップに寄り、ザケンナーとか。ワニ・サメ・モグラなどのシールを買ったのである。
 
そして道田さんが運転するセレナに乗って、一行は旭川から留萌に移動した。
 
道中はほとんどの子が寝ていたので、気遣いをした沙苗が眠気防止で道田さんとずっとおしゃべりしていた。また缶コーヒーを開けて渡したり、クールミントガムを開封して渡したりなどもした。
 

留萌の“天野道場”に到着したのは15時頃である。
 
まずは管理人さんを紹介する。
 
「忌部繭子さんです。彼女も剣道三段くらいの腕はあるよ」
 
「それは凄い」
「忌部です。三段を取ったのは200年くらい前なので、今はかろうじて面と胴の違いが分かるくらいですけど」
「でも経験者だと結構気安いですね」
「まあ私はお茶係ということで」
 
早速練習をするが、千里が提案した“解像度練習”をする。
 
ワニとかザケンナーとかのシールを防具に貼り付け、そこに当てる練習をする。
 
「これは結構厳しい」
「ほんとに正確な攻撃が必要だよね」
「これも基礎練習としてはありかもね」
 
この日、8人は夕方まで、ずっと交替しながら“シールごっこ”(清香命名)をやった。
 
また対戦してない人が道場の隅で、模擬真剣!を振るう練習をした。普通の日本刀は重さ1kg程度で、竹刀の倍の重さがあるのだが、この模擬真剣は大部分がチタンで作られており、結果的に竹刀と同程度の重さである(チタンは鉄の半分程度の比重)。刃の部分はゴムになっていて、万一人に当たっても死なせる確率は低いようにはなっているものの、絶対に人がいる近くではしないように、とメンバー全員に言った。通常は管理人室の鍵の掛かる倉庫に保管しておいてもらう。
 
しかし模擬真剣とはいっても形が日本刀なので、最初は竹刀のようにまっすぐ振れない。
「これはいい練習になる」
と清香は言っていた。
 

一応17時で解散する。公世、沙苗、柔良がお母さんに連絡し、各々迎えに来てもらった。公世の母の車に玖美子も同乗して帰る。柔良の母の車に清香も同乗して帰る。そして沙苗の母の車に道田さんも同乗し、道田さんの実家に寄って彼女を置いてから、沙苗と母は帰宅した。セレナのキーは道田さんが千里に返した。
 
千里は<いんちゃん>に頼んでコンビニでサンドイッチとお茶に缶コーヒー3本とクールミントガムを買ってきてもらった。コーヒーとガムはセレナの助手席に置いておく。これで<いんちゃん>は帰す。
 
“真剣”で1人、素振り練習をしながら千里は待った。
 
17時半、櫃美(星子)が訪ねてくる。
 
「お久〜。ほんとすっかり元気になったね」
「ほんとにありがとうございました」
 
セレナのキーを彼女に渡し、サンドイッチとお茶も渡す。真剣を管理人室の隠し倉庫に入れて、鍵を掛ける。
 
「サンドイッチ食べてから出る?」
「いえ、運転しながら食べますよ」
 
ということで、道場の戸締まりをしてから、櫃美が運転するセレナに乗り、千里Rは旭川に向けて出発した。
 
「コーヒーとガム、助手席に置いといたから適当にね」
「ありがとうございます!」
 
櫃美は名前を「星子」に改めたこともRに伝えた。
「じゃ、“ほしちゃん”でいいかな」
「はいそれで」
 
「疲れておられるでしょう?寝てて下さいね」
と星子が言うので
 
「遠慮無くそうさせてもらう」
と言って、千里Rは2列目にシートベルトをしたまま横になると熟睡した。
 

(8/28) 19時頃、旭川のきーちゃんの家に到着する。
 
「ありがとう」
「あまり無理をなさらないように」
「うん。心遣い感謝」
 
セレナはきーちゃんの家に駐め、キーもきーちゃんに預ける。そして星子はタクシーでどこかに移動したようである。それで千里Rは、きーちゃんの家に入った。
 
「もう夜になっちゃうのに、ごめんねー」
「いや、こちらこそ忙しいのにごめんね」
 
「銅メダルおめでとう」
「ありがとう」
と言って、もらったトロフィー・賞状・メダルを見せる。
 
「でも傍目にも、千里がどんどん強くなってきているのは分かったよ」
「そうかな」
 

きーちゃんが夕食を作ってくれていたので、一緒に頂く。
 
「ところできーちゃん、物は相談だけど」
と千里Rは尋ねた。
 
「何だろう?」
「こういうものって無い?」
と言って、千里はある“システム”が無いか訊く。
 
「持ってるよ。千里が小学生の時に色々“いたづら”した時に、“臓器”の一時保存に使った」
 
「それって、どのくらい保存しておけるの?」
「電源さえ入っていれば半永久的に、もつよ。停電とかでも半日くらいは維持できる」
 
「それ1個くれない?」
「いいけど、何に使うの?」
「悪いこと」
「それは楽しみだ」
 

「え〜〜〜!?女の子になっちゃったって!?」
 
真広は28日(土)の夕方、兄(もはや姉)の初広からの電話に驚愕した。
 
「でもスズカも実は本当はレスビアンだったらしいんだよ。だからやはり男の僕とはやっていけない気がしてきて、別れようと思ってたんだって。でも僕が女になっちゃったから、それなら結婚したいと言って、結婚の約束をした。実際に式を挙げるのは3年くらい先になると思うけど」
 
「・・・・つまりレスビアン婚するということ?」
「結果的にそういうことになる。でも結婚式は“世間体”を考えて、僕は男装してタキシード着て、彼女がウェディングドレス着る予定」
 
真広は“色々なこと”を考えていた。
 
「だから、ぼくが女になっちゃったから、まあちゃん、性転換したかったかも知れないけど、取り敢えず結婚して子供ができるくらいまでは待ってくれないかなあと思って。待ってくれるなら、性転換手術の費用は僕が出していいよ」
 
えっと・・・ぼくも既に性転換しちゃってるんだけど!?
 
真広は、父がショック死するのでは?と心配になった。
 

8月28日(土).
 
千里GはVが早朝ジョギングと滝行!の修行をして戻って来た所で
「後はよろしく」
とVに言って、自分で!ライフを運転して旭川に出た。
 
「絶対その内、お巡りさんに捕まると思う」
とVは言っていた。
 
なお星子は“千里B”の振りをして8:00-15:00の間、Q神社にご奉仕に行く。星子が戻ってくるまでは千里Vがひとりで司令室を預かる。
 
「心細いよぉ」
と千里Vは弱音を吐いていた(この子はすぐ弱気になる)。
 
実は先週、美輪子から千里Rの携帯に
 
「剣道大会、銅メダルおめでとう!ところでまた不動産屋さんのCMを撮りたいらしいんだけど、来週は動ける?」
 
というメールが来ていた。Gはこのメールを横取りして、この日は(カーボン竹刀を買いに行くので)都合がつかないRに代わって自分が行くことにしたのである。
 

撮影が午後なので、朝から天子の所に行ってくることにして、Vが“修行”から戻った朝7時にフルートを持って留萌を出た。そして8時半頃に、旭川に到着し、駅近くの駐車場にライフを駐めると、タクシーで天子のアパートに行き、一緒に朝御飯を食べた。つまり瑞江と入れ違いになっている。
 
※8/28前半の各千里や眷属の動き
 
5:30 &瑞江がRX8でアパートを出る
5:30 ¶Vジョギングに行く。
6:00 &瑞江が旭川駅前でセレナに乗り換え
6:30 ¶V滝行から戻る
7:00 ♪Gがライフで留萌を出る
7:30 〒瑞江が留萌到着。カフェで休憩。
8:00 ●Rや清香がカフェに集合
8:00 ■Bが駅前バス乗り場から札幌行き高速バスに乗る。
8:00 ☆星子がBの振りをしてQ神社に出る。
8:00 ▼千里YがP神社に行き、勉強会を始める。
8:30 ●瑞江がRたちを乗せてセレナで旭川へ出発
8:30 ♪Gが旭川到着。タクシーで天子のアパートへ。
10:00 ●瑞江やRの乗るセレナが旭川駅前に到着。
10:00 &瑞江はRX-8で帰宅。そこにも千里(実はG)が居る
10:00 ●道田が運転して千里や沙苗たちが剣道用具店へ。
10:09 ■Bが札幌に到着。愛子と会い放送局へ。
11:00 ♪浅谷が迎えに来て千里Gは比布町へ。
12:00 ●Rたちが食事をする。
13:30 ●道田がセレナを運転しRや沙苗たちを留萌の天野道場へ。
 
(8:00の所はバスターミナルとカフェが30m以上離れているのがミソ)
 

Gは天子と朝御飯を食べた後、一緒に笛の練習をしたり、将棋を指したりしていたが、10時頃、瑞江が戻ってくるので、
 
「瑞江さんお帰り〜。早朝からバイトか何か?」
などと千里は言った。
 

11時頃、浅谷さんが自分の車で迎えに来たので、それに乗って、今日の撮影が行われる比布町(ぴっぷちょう)まで行く。1980年代に、ピップエレキバンのCM(出演:樹木希林&横矢勲会長)が、比布駅や比布神社で撮影されたことで全国的に有名になった所だが、千里たちの世代は知らない。
 
撮影に参加するのは、千里の他には22-23歳の女性と、小学生の女の子4人である。昨年2度一緒に撮影した女子高生2人は来ていない。なんでも受験勉強が忙しくて不参加ということになり、小学生4人を知り合いのツテで急遽集めたらしい。22-23歳に見えた女性は音大の4年生さんらしい。
 
ちなみに小学生4人の内1人は実は男の子(男の娘?)らしいが、千里にはどの子が男の子か分からなかった。女の子が3人しか揃わなかったので、ディレクターさんが、ヴァイオリンの弾ける自分の息子に女の子の衣裳を着せちゃったらしい。でもドレス姿に違和感のある子が居ないので、普段からスカートとか穿いているのだろうか?
 
この比布町で撮影に使われたのは、白亜の素敵なおうちだった。2000坪ほどの広大な敷地に200坪ほどの平屋建ての邸宅が建っている。ここも“充分土地があるならわざわざ2階建てにする必要は無い”というのの典型という感じだ。広い家だがユニット工法で作られており、建築費が2000万円と聞いて驚いた。
 
千里と共演者は全員白いドレスで庭を歩き、また楽器を合奏した。音大生さんが庭に置かれた透明外装のピアノの前に座り、千里がフルート、小学生たちがヴァイオリンを弾く。譜面は、千里は初見になったが、他の5人は一週間ほど前に渡されていたらしい。
 
「あ、ごめん。送るの忘れてた」
などと浅谷さんが言っている!この人らしい。
 
しかし簡単な曲なので、千里は一発で吹けた。
 
正式の音は後でスタジオで録音すると言っていたのだが、この合奏がとてもうまく行ったので、結局この場で録音した音がそのままCMに流れることになった。この庭の音響をそのまま活かしたいとディレクターさんは言っていた。確かにこういう響きはスタジオでは再現できないだろうなと千里も思う。
 
ピアノを家の中の“パーラー”に戻し、ここでも再度同じ曲を演奏した。パーラーはまたパーラーなりの音響がある。響きがいいので、しっかり音響設計された部屋なのだろう。
 
その後、家の中のあちこちで撮影を行った。
 

この家での撮影を3時間ほどしてから、16時頃撮影一行はマイクロバスで層雲峡に移動する。夕方の層雲峡の絵が欲しかったらしい。それで銀河流星の滝の前で、また同じ曲を演奏(ピアノは電子ピアノ)して撮影は完了した。
 
小学生がいるので、撮影一行はマイクロバスで銀河流星の滝からとんぼ返りし、19時頃、旭川駅前で解散した。千里(G)は星子に電話した。
 
「今終わったけど、そちらは今どこ?」
「ついさっき、Rさんを貴子さんの家に届けました。今タクシーで旭川駅に向かっています」
「ごはんは食べた?」
「17時半にRさんからサンドイッチを頂きました」
「じゃお腹空いてるよね。何か食べようよ」
と言って、旭川駅の中央北口で待ち合わせ、駐車場に駐めているライフに乗る。びっくりドンキーに行って食事をし、一休みしてから、21時過ぎに旭川を出発。22時半頃に、留萌市W町のGとVの自宅に帰着した。
 
留守番していた千里Vが
「お疲れ様。ひとりで辛かったよお」
と言っていた。
 

この日の星子の行動
 
7:50 駅前のバスターミナルに出現した千里Bに、小春のふりをして水着を渡す。
8:00 千里Bを装い、Q神社に転送移動してご奉仕。
15:00 Q神社でのお務めを終えてW町のGV宅に帰宅。この後、2時間ほど“管理室”の監視業務をVと代わり、Vは仮眠する。
17:30 天野道場に行き、セレナを運転してRを旭川のきーちゃんの家に送る。
19:00 きーちゃんの家に到着。タクシーで旭川駅に移動。Gと落ち合う。
21:00 ライフを運転してGと一緒に留萌へ。
22:30 留萌のW町の家に帰還。
 
(この日いちばん仕事した人かも!?)
 

この日の千里Yの行動。
 
8:00 P神社に出掛けて勉強会を始める。
16:00 勉強会終了。千里以外は全員帰宅。千里は花絵さんと算数!のお勉強。
20:00 お勉強終了。帰宅しようとして途中で消える!
 
今日は多数の千里が動き回ったもののYの出番は無かった!!
 

※8/28後半の千里たちと眷属の行動
 
15:00 ●道田やRたちが留萌の天野道場到着。
15:00 ☆星子がQ神社のお務めを終えて帰宅
15:00 ■Bが出るTV番組の生放送開始
16:00 ♪GたちCM撮影隊は層雲峡へ
16:00 ■Bが出た生放送終了。愛子とミスドで話す。
17:00 ●Rたち天野道場組練習終了
17:00 ♪Gは銀河流星の滝で撮影
17:00 ■BがJRで札幌を出る
17:30 ●Rが星子の運転するセレナで旭川へ
18:00 ♪CM撮影終了。旭川へ。
19:00 ●Rが旭川のきーちゃん宅に到着。星子は駅へ移動。
19:00 ♪CM撮影隊、旭川駅前で解散
19:03 ■Bが留萌駅到着。小春に送られて帰宅。
19:30 ■BがC町の村山家に帰宅
19:50 ▼Yがお勉強終了。(帰宅途中で消滅)
21:00 ♪星子がライフを運転してGは留萌へ。
22:30 ♪Gと星子がW町の家に帰宅
 

8月28日(土)。愛子からの呼び出しがあり、またもや強引に起こされた千里Bはぶつぶつ言いながら、高速バスで札幌に向かった。
 
留萌7:30(高速るもい号)10:09札幌駅前
 
千里Bは中学2-3年の頃ほとんど冬眠していたので、中学時代の記憶が非常に少ない。しかしこの札幌行きは数少ない記憶のひとつである。
 
出がけに小春(実は小春のふりをしている星子)が
「千里、この水着持ってって」
と言うので、何気なく持ってバスに乗った。
 
愛子は函館に住んでいるのだが、この日は札幌での待ち合わせだった。
 
函館7:20(スーパー北斗1号)10:35札幌
 
駅前で落ちあってマクドナルドで話したのだが、愛子は言った。
 
「ちーさ。私の身代わりでオーディション受けてくれない?」
「へ?」
 

それで千里は愛子に連れられて、11時半頃、札幌の放送局に入った。
 
オーディションを受ける女の子は全部で50人くらい居る。
 
やがてお昼頃から第一次審査が始まる。
 
1人ずつ出て、審査員の前で歌を歌う。歌う曲目は事前に申請しているらしく愛子は松原珠妃の『夏少女』という曲を指定していた。千里はその曲を知らなかったので直前にmp3プレイヤーで聴かせてもらっただけである。自信無ーいと思ったのだが、先に歌った参加者の歌を聴くと下手糞ばかりである。それでこれなら自分の覚え立ての歌でもいいかと思った。
 
下手な人は15秒程度で止められて、お帰り頂くようである。ほどほどだと1分近く歌わされる。そしてスタッフ?の男性と少し言葉を交わしていた。この人たちは残されている。
 
千里の番になる。さっき聴いたばかりの歌で歌詞はうろ覚えだが、どうせすぐ止められるだろうからと思って歌い出す。
 
ところが止められない。
 
うっそー!?歌詞全部覚えてないのに。
 
それで分からなくなった後は適当に作詞しながら歌う。目の端で愛子が頭を抱えているのを見たが、千里は笑顔で最後まで堂々と歌いきった。
 
つまり最後まで止められなかった!
 
スタッフ?の男性から声を掛けられた。
 
「ねぇ、君、この歌、よく歌ってるの?」(*15)
「いえ。実は会場に入る直前に覚えました」
と千里は正直に答える。
 
(*15) 『夏少女』は蔵田孝治!が昨年(2003年)7月発売の松原珠妃のミニアルバムに提供した曲である。つまり、千里は作詞作曲者自身と話しているのだが、そのことに千里は全く気付いていない!
 
千里は蔵田のことを放送局のADか何かと思い込んでいる。
 

「なんかオリジナリティあふれる歌詞だったね?」
「はい、私、しばしば友だちから発想が独創的だと言われます」
 
スタッフさんがお腹を抱えて笑っている。
 
(これを怒らずに笑ってくれる蔵田は本当に器量が大きい)
 
ああ、これは落とされたよな、と千里は思う。
 
「でも君、髪が長いね」
「はい。テレビから這い出す山村貞子を演じるために髪を伸ばしました」(*16)
 
千里はもうやけくそで答えたのだが、スタッフさんはまた笑っていた。
 
それで「帰っていいですよ」と言われると思ったのに千里は残された。どうも一次審査は合格のようである。なんで〜?と思う。
 
(*16) 鈴木光司『リング』は1991年6月に発表され、映画は1998年1月31日に公開されている。クライマックスで貞子がテレビから這い出して来て被害者を呪殺するシーンは、その後多くのパロディを生んだ。このシーンは映画オリジナルで原作には無いシーンである。
 

2次審査は市内の私立高校のプールに移動し、水着審査になるということだった。
 
うっそー!? 水着なんて恥ずかしいよぉ。
 
でもそういえば、出がけに小春が水着を渡してくれたなと思い、その水着に着替えようとして
 
何よぉ!この水着!!こんな可愛いのを私が着るの〜?
 
と思った(先日ガトーキングダムでこの水着を着たのは千里Rである。RとBのバストサイズはほとんど変わらないので、Rが着た水着はBも着られる)。
 
でも仕方ないのでその水着を着たが、他の参加者もすっごい可愛いのばかり着ているので、自分はそう目立たないかもと思った。さっすがオーディションである。
 
プールに出ると、水の上に板が浮かべられており、ゴムボートでそこに連れて行かれ板の上に立って並んで下さいと言われる。ひとりずつ押しボタンを渡されたのでそれを手に持った。
 
これから出るクイズに早押しで答えて下さいと言われる。
 
へ?
 
なんか想像してた“水着審査”と違う!?
 

問題が出る。
 
「トルコの首都はどこですか?」
 
イスタンブールだっけ?と思ってボタンを押すが、一瞬速く別の人が押していた。
 
「アンカラ」
「正解」
 
えー!?イスタンブールじゃなかったのか。良かったぁ。
 
「韓国の大統領は?」
 
確かキン・ダイチュウとかじゃなかったっけ?と思ってボタンを押すが、またもや遅れる。うーん。私って反射神経悪いのかなあ(最近ひたすら冬眠しているせいだと思う)。
 
「ノムヒョン」
「正解」
 
あれー。何か全然違う名前だ。でも間違わなくて良かったあ。
 
例の男性スタッフが「ブッシュじゃなかったの?」と言う。ナレーターさんが「それはアメリカ大統領です」と言う。その時、偶然千里はそのスタッフさんと目が合った。
 
「18番の貞子みたいな髪の子、君2回続けてボタン押したの2番だった。答えは何だと思った?」
などと訊かれるので
 
「キン・ダイチュウと思いました」
と正直に答える。
 
「本当はキム・デジュンですが、それは前の大統領です」
とナレーターさん。
 
ああ、交替してたのか、と思う。
 
「お前遅れてよかったな」
とスタッフさん。
 
「はい。生理が遅れたらやばいですけど」
と言ったら、何だか受けてた。
 

そんな感じで千里は毎回ボタンは押すのだが、なかなか1番になれずランプが点かない。それで全然回答できないままオーディションは進行する。スタッフさんは、途中でしばしばボケたり、千里を含めて受け答えのできそうな子に当てて、笑いを引き出していた。
 
「『恋のバカンス』をヒットさせた双子歌手は?」(正解はザ・ピーナッツ)
に対して誰も答えられなかった(この世代の子が知っている訳無い)ので、千里が当てられる。千里は
 
「ダブルユー」
と答えた。(ダブルユーもカバーしている)
 
「双子じゃないだろ?」
と突っ込まれる。
 
「あ、四つ子でしたっけ?」
と千里が言うと
 
「せめて三つ子と発想しろ」
と言われた。
 

その内2問間違った人が出る。
 
「2問間違った人は残念ながら退場です。さよならー」
と言われて、上から凄い水鉄砲が浴びせられる。
 
「きゃー」と悲鳴をあげて、その人が水中に落ちる。なるほどー。このための水着だったのかと水着の目的を理解した、
 
ところがその人が落ちた時、板が揺れて、あおりをくらって一番端に立っていた回答者まで落下した。プールの上に浮かんだ板の上に立っているという状態はそもそも不安定なのである。
 
「はい。そこ、落ちた人も一緒に失格」
とスタッフさんが言う。
 
うそー!? そんなのあり〜?
 

その後クイズは進む。千里はかろうじて1問。
 
「伊勢神宮があるのは何県?」
というのに
「三重県」
と答えることができた。巫女研修や笛の会で行ってきたからね〜。
 
やがて3問正解して勝ち抜けしていく回答者が現れる。24番の人と3番の人が勝ち抜け、3人落とされ、あおりをくらって水中落下した人も2人いて、残りは3人になっている。ここで
 
「これが最後の問題になります」
とスタッフさんが言った。
 
「アメリカのプロスポーツ選手でマイケル・ジョーダンと言えば何の選手?」
 
千里は質問を聞き終わるのと同時に押したが、また遅れた。
 
隣の女の子が回答する。
「アメリカン・フットボール」
「違います」
 
いきなり上から水鉄砲が落ちてくる。悲鳴を上げて水中に落ちる。千里はすぐ隣で水しぶきがあがるので、ひゃーっと思ったものの何とかバランスを保って落ちるのを免れた(さすが運動神経が良い)。
 
「えっと2番目に押した人、四つ子の貞子の18番さん」
と千里が指名されたので答える。
 
「バスケットボール」
「正解」
 
やったね。
 
「えー、2人残っていますが、18番の子は2問正解、32番の子は1問正解。ということで18番が決勝進出!」
 
きゃー、ラッキー!と千里は思ったが、だいたいこのオーディション、何のオーディションなんだ?と疑問を感じた。
 
 
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【女子中学生・ミニスカストーリー】(5)