【夏の日の想い出・Long Long Ago】(3)

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地方ガールズからの臨時昇格オーディションの3人の合格者の中で、石川県の馬渡聖美は合格を告げられると
 
「このまま東京に行って、信濃町ガールズ本部生にすぐ参加したい」
と言った。
 
私たちは驚いたものの、お母さんは
「だったら私が地元に戻って転校の手続きをしてきます」
と言うので、本当にそのまま東京に連れてきた。
 
そして夕食時間帯に、各部屋に置かれているビデオシステムを通して
 
「信濃町ガールズ・新人の馬渡聖美(うまわたり・さとみ)です。みなさんよろしくお願いします」
と本人に挨拶させた。
 
ちなみにこの紹介の時は、3階の空部屋(302)を使用している。
 
この日の時点での2-4階の住人(人数/室数):(+は同室)
 
2F(8/8) 鈴原さくら、鹿野カリナ、鈴鹿あまめ、花貝パール、夕波もえこ、薬王みなみ、宮地ライカ、知多めぐみ
3F(8/7) 大仙イリヤ、豊科リエナ、箱崎マイコ、左蔵真未、水谷康恵+水谷雪花、美崎ジョナ、山本コリン
4F(8/8) 今川容子、坂田由里、青木由衣子、太田芳絵、中村昭恵、斎藤恵梨香、長浜夢夜、直江ヒカル
 

鈴原さくらと長浜夢夜は本来は男子寮の住人だが、ローズ+リリーの制作に協力してもらうため、9月は夢夜を、10月はさくらを、女子寮の空き部屋に泊めていた。(他に9月は鈴鹿あまめ、10月は薬王みなみにお願いしている)
 
花ちゃんは夢夜のスマホに電話した。彼女(きっと既に“彼”ではない)は、9月にはローズ+リリーの制作をしていたが、9月いっぱいで外れて男子寮に戻っている
 
「夢夜ちゃんさ、新しい子が入ってきて、緊急に部屋が必要なのよ。それで、来月、第2女子寮が完成したらまた部屋を確保するから、1ヶ月ほど夢夜ちゃんの部屋を使わせてもらえない?」
 
「ああ、全然問題ないですよ」
「じゃ荷物は取り敢えず8階の空き部屋に入れておくね」
 
「そんな8階を使うとか恐れ多いです!地下かどこかにでも」
などと夢夜が言うので、花ちゃんは結局、2階の鈴原さくらの部屋に一緒に置かせてもらうことにした!
 
(さくらはローズ+リリーの制作中だけの臨時で泊まっているので荷物が少ない)
 
しかし花ちゃんは
「そんなに7〜8階って恐れ多いのかね〜」
などと呟いた。
 

聖美が今日女子寮に入居するという連絡を花ちゃんが受けたのは16時くらいである。すぐに夢夜と連絡を取り、彼女(彼?)の荷物を、さくらの部屋に移動することを決める。
 
この時、偶然にも定例のレッスンを受けるために、男子寮住人の、セレンとクロム、立山きらめきが来ていた。また、たまたま、リズムに関する打合せで(1階応接室に)本田覚マネージャーが来ていたし、舞音の制作に関する打合せで、招き猫のメンバー(木下君・篠原君・谷口君・ルーシー)が来ていた。それで彼らを動員した。更に花ちゃんは在室していた直江姉(兄?)も動員した。
 
また比較的近くで短時間で来られると思われた江戸川区サテライトに置かれたシステム部に電話して腕力のある男性を3〜4名寄こして欲しいと要請した。更に花ちゃんは、いつも頼んでいる清掃・消毒業者に連絡して時間外で申し訳ないが、19時くらいに1部屋頼むと依頼した。
 

まずは居合わせた中で、多分男性と思われる、篠原君・谷口君・立山きらめきと本田さんで夢夜の荷物をさくらの部屋に移動してもらう。篠原君は早まったことをしていなければ多分まだ睾丸があるはず。なお、さくら本人は地下のスタジオでローズ+リリーの制作作業中であり、不在だった(社外の仕事をしているので中断させることはできない)。
 
花ちゃんはシステム部や業者への連絡までした所で、2階の花貝パールの部屋204号室に行き、緊急に2階の部屋を空けなければならないので、悪いけど4階に移動してと頼んだ。
 
「今夢夜ちゃんに407号室を空けてもらっている所なのよ。本当は業者入れてクリーニングしないといけないんだけど時間が無いから、そのまま入ってもらえない?部屋が空いたらすぐルンバ掛けてアルコール噴霧するから」
 
「ノリちゃん(夢夜)はきちんとした子だから大丈夫ですよ。でも今からなんですか!?」
「うん。今作業中だから、たぶん30分後くらいになると思う」
「下着が散乱してるのどうしよう?」
とパールは悲鳴をあげていたが、手の空いている女子たちを動員して、パールの部屋の荷物を取り敢えず箱詰めする。
 
花ちゃんは最初の30分間は男の娘たちは入れずに、宮地ライカ・知多めぐみといった女子だけで(途中で気付いた鹿野カリナも手伝ってくれた)、あまり男の子や男の娘に見られたくないもの(って何?)の箱詰めあるいは廃棄をしてもらった。
 
30分もしないうちに407の清掃が一通り終わったという連絡が本田さんから入るので、2階に降りてきてもらう。この頃、江戸川区のシステム部から若い男性が5人来てくれた。この5人には“臨時女子”のIDカードを渡した!彼らは男子禁制の女子寮に入域するというので少し緊張していた。普通は性転換でもしない限り入れない場所である(でも「女の香りが凄い」と言っていた)。
 
セレン・クロム・直江姉・木下君という男子廃業済である疑いが濃厚である4人(+ルーシーも名乗り出たのでお願いした)を部屋の中に入れて、まずは箱詰めの終わっている荷物を部屋の外に運び出し、システム部の男性5人と本田・篠原・谷口・きらめきで4階に運ぶ(男性は洋服類の箱詰めが完了するまでは部屋に入れない)。
 
その後、男の娘5人も箱詰め作業に加わる。本とかCDなど結構重いものについては彼ら(彼女ら?)が役に立った。彼らが箱詰めしてマジックで戻すべき場所を書いたら部屋の外に出すので、男性陣がそれを台車に乗せて運んでいく。箱詰めがだいたい終わった所で、いよいよ男性を部屋の中に入れて本棚・机・冷蔵庫といった大物の運搬をする。
 
この移動作業が行われている間に聖美が到着してしまう。
 
それで
「今部屋を空けている最中だけど、取り敢えずここで休んでて」
 
と言って3階に唯一空いている部屋302号室に入れ、寮長のロンド(*8)にお世話をしてもらう。ロンドから信濃町ガールズの教育体制、お仕事のこと、寮での生活などについて説明してもらった。ここで夕食を食べさせて、その後、全館放送で、彼女を在室している女子寮生たちに紹介した。
 
(*8)多くの人に忘れられているが、花咲ロンドは女子寮の寮長である!でもコスモス社長はロンドではなく、副寮母の花ちゃんに連絡してきた。社長も寮長が誰か忘れているのかも!?
 

一方でパールの荷物を407に移動し終わったのが、18時半頃である。部屋の中で本棚や机などを配置するのは男性たちがやってくれている。更に本やCDなどの類いを戻す所までは男性たち・男の娘たちでやって、そこで男性たちはお疲れ様でしたということになる。1階応接室で夕食を食べて取り敢えず一休みしてもらう。
 
男の娘たちと女の子たちでそれ以降の荷解きを進める一方、204には頼んでいた業者さんを入れて清掃・消毒する(お風呂や洗濯機なども清掃消毒する:テレビや冷蔵庫はそのまま新しい部屋に移動している)。このクリーニングが1時間ほどで終了した。20時頃、1階で休んでいた男性たちにお願いして、消毒の終わった部屋に、新しい寝具・本棚・机・冷蔵庫など(これらはいつも新しいものをストックしている)を搬入してもらった。
 
それで、聖美を204に案内した。
 
「まだ消毒のアルコール臭があるけど、換気はしてるから1時間くらいで気にならなくなるはず」
「全然問題無いです」
 
それで彼女は最初の夜から定まった部屋で寝ることができたのであった。
 
花ちゃんの決断力・行動力、そして住民の協力があってできたことである。花ちゃんは寮生全員から慕われている(恐れられている?)ので、こういう時はみんな協力してくれる。
 
なお、即時採用された残りの2人、立川心桜と榊原瑞菜は、1-2週間程度以内に東京に出てくる予定で、花ちゃんはそれまでに寮の部屋をあと2つ空ける作業をしなければならない。
 

馬渡聖美のお母さんは日曜日の内にG450で能登空港に送り届けた。
 
オーディション参加者を集める時は、Hond-Jetが5機しかないので、最も遠くから来た子にG450を使ったが、帰りは荷物の問題があるので、馬渡さんにG450を使うことにした。でも14人乗りの飛行機に1人で乗ったお母さんは恐縮していた!
 
馬渡家では、その夜の内に主としてお母さんと小学5年生の妹・朋美さんの手で、聖美の荷物がまとめられる。机や寝具などを持って行く必要がないので、持って行ったのは、すぐ必要になる着替え、ペンギンの抱き枕!、辞書や教科書・ノート・筆記具の類い、それに愛用のフルートと電子キーボードである。お父さんとお兄さんの手でこれを車に積み込む。漫画やCD等は後で宅急便で送ることになった、
 
月曜日の朝、連絡して車で聖美の学校に行く。妹の朋美も同乗していく。朋美は車内で待機しておき、母が職員室に行って、転校したい旨を告げる。東京の芸能事務所のオーディションに合格したのでと言うと、学校は驚いたもののすぐ手続きをしてくれた。
 
また母は担任と一緒に教室に行き「急で申し訳無いが聖美が東京の芸能プロのオーディションに合格したので、東京に転校することになった。それで同級生の皆さんに挨拶もできないままで申し訳無いが、向こうに行くので」と言った。
 
「どこのプロダクションですか?」
と生徒たちから質問がある。
 
「§§ミュージックさんです。現時点ではタレント候補生なんですけど、デビュー前でもネットテレビなどには出るかも知れないということです」
「夏にも一度そこ受けましたよね?」
「はい。その時は14位だったので勧誘されなかったんですが、デビューするタレントさんが急増して、バックとかで踊るタレント候補生が足りなくなったということで」
「聖美ちゃんなら、1年以内にデビューできるかも」
とみんなは期待の声をあげていた。
 
お母さんは学校を出ると朋美と一緒にそのまま能登空港に向かう。待機してもらっていたG450に、荷物ごと母と朋美が乗って、昼前に東京に出て来た。朋美と荷物を女子寮に置き、母は聖美本人及び広橋窓佳マネージャーと一緒に朝の内に連絡していた中学に行き、転入手続きをする。
 
それで聖美は5時間目冒頭、担任になる先生と一緒に教室に行き新しいクラスメイトに挨拶した。つまり学校を1日も休んでいない!
 
そしてその日は挨拶だけして学校を出て、指定の洋服店に行き、採寸してもらってすぐに制服の注文をした。
 

女子寮の方では、朋美の手で荷物を部屋に運び入れるが、ちょうど在室していた花咲ロンドと原町カペラが手伝ってくれた。
 
朋美を見たロンドは
「ね、ね、君も信濃町ガールズに入る気無い?」
 
と勧誘していた!
 
話を聞いたお母さんは
 
「せめて中学生になってから」
と言った。それに娘が2人とも突然東京に出てしまったら、親は寂しいだろう。でも信濃町ガールズ北陸に加入して月1回のレッスンを受けることになった(地方ガールズには小学生も多い)。
 
(小学生の内に信濃町ガールズの本部生になったのは、白鳥リズムが唯一の例だと思う。当時は地方ガールズの教育体制も無かったので、育成するには東京に出て来てもらうしか無かった)
 
なお、お母さんと朋美はその日は聖美の部屋に1泊して、翌12日にHondaJetで能登空港に帰還した。結果的に妹は11-12日の2日間、学校を休んでいる。妹としては姉の引越にかこつけて東京に行って来たかったのもある(姉から頼まれた買物をした後で、渋谷に移動して109など見て感激していた!)。
 

聖美は月曜の夕方からは信濃町ガールズたちのレッスンにも参加した。この時期、信濃町ガールズたちの定例レッスンのスケジュールはこのようになっていた。
 
(Mon) Vocal
(Tue) Piano or Electone
(Wed) Dance or Ballet
(Thu) Guitar, Bass or Violin
(Fri) 各種楽器
(Sat) 朗読or寸劇|英会話|社会常識|映画ドラマ鑑賞
(Sun) 漫才orコント|音楽理論|芸能界知識|ライブビデオ鑑賞
 
そういう訳でこの10/11(月)にはボーカルのレッスンに出た。感染拡大防止対策で全員個室で歌う。そしてZoomを使って6-10人程度の単位を電子的にまとめてグループ化している。
 
聖美は、最初なので1年目の子のクラスに入れられた。このレッスングループに居たのは、こういうメンツである。
 
花貝パール(中3)・美崎ジョナ(中3)・薬王みなみ(中2)・立山きらめき(中1)・知多めぐみ(中1)・宮地ライカ(中1)・長浜夢夜(中1)・鈴原さくら(中1)
 
それで聖美が歌うと、ひじょうに上手いので、みんなから“厳しい視線”を向けられる。強力なライバルが入ってきたと警戒されたのである。
 
でも気のいい花貝パールが
 
「聖美ちゃん、うまいね!」
と声を掛けてきて、それで、圧倒的に歌がうまいので一段高い所から見ていた感じの薬王みなみや、最初厳しい視線を送ってしまったものの変わり身が早い!知多めぐみ、それに性別的に女性には優しくなる男の子・男の娘たちも
 
「強力な新人が入ってきたね〜」
「これは、うかうかしてると追い越される」
などと笑顔で声を掛けてくれるので、聖美は
 
「みんないい人たちばかりだなあ」
と思い、結構ホッとしたのであった。薬王みなみなど
 
「こういう所に注意するともっとよくなる」
と言って、熱心に指導してくれた。
 

マリは唐突に歌い出した。
 
「コーベンターイン、コーベンソンタック
コーベンターイン、コーベンジーラ
コーベンターイン、コーベンラーマ
コーベンターイン、ブードゥーヤー!」
 
そして私に尋ねた。
 
「これ何の歌だったっけ?」
 
「それは多分これだと思うな」
と言って、私は正しい歌詞で歌ってあげた。
 
「プー・フシグター、ブージェット・サンツェ
プー・フシグター、ブージェット・ネーバ
プー・フシグター、ブージェット・マーマ
プー・フシグター、ブードゥー・ヤー!」
 
いつも太陽がありますように
いつも空がありますように
いつもママがいますように
いつも私がいますように。
 
「あ、その歌だ。何て歌?」
「Пусть всегда будет солнце(プー・フシグター、ブージェット・サンツェ). 『いつも太陽がありますように』という歌だよ」
 
「童謡だよね?」
「うん。基本的には童謡だと思う。そして反戦歌」
 
「へー!」
 
「戦争に反対し、平和を求める歌だよ。ソビエト連邦時代の歌って、やたらと戦死者を称える歌とかが多いけど、その中で珍しい平和を求める歌。歌詞の中には『兵隊さん、やめて』とか『みんなが平和を求める』といった歌詞が出てくる」
 
「確かにソ連時代の歌にしては珍しい。『カチューシャ』なんて、戦争に行った彼氏の留守を健気に守る娘の歌だし」
 
「プロテスト・ソングや平和を希求する歌って、『花はどこへ行ったの?』とか『イマジン』とか、どうしても、私たちは英語の歌を多く知ってるけど、平和を求める気持ちを広めていくには、色々な国の言葉で歌った方がいいよね」
 
「それ賛成」
 
「だから、この歌はたくさん歌うといいと思うよ。ロシア語を理解する人たちに平和への思いを持ってもらうためにも」
 
それで私はyoutubeに上がっている動画を政子に適当に見せてあげた上でこの歌の歌詞も適当なサイトを開いて見せてあげた。
 
↓はこの歌の歌詞を解説しているサイトのひとつ
http://tostar.s70.xrea.com/always/always.htm
 

「1928年、コスチャ・バランニコーヴァという4歳の女の子が“всегда”(フシグダ。英語なら always)ということばを覚えて、楽しくなって、こんな詩を書いた」
 
Пусть всегда будет солнце,
Пусть всегда будет небо,
Пусть всегда будет мама,
Пусть всегда буду я.
 
プー・フシグター、ブージェット・サンツェ
プー・フシグター、ブージェット・ネーバ
プー・フシグター、ブージェット・マーマ
プー・フシグター、ブードゥー・ヤー
 
いつも太陽がありますように
いつも空がありますように
いつもママがいますように
いつも私がいますように
 
「この詩をたまたま目にした児童心理学研究者さんが雑誌で紹介して、面白い詩だということになって、子供の詩を集めた詩集に収録された。それを偶然目にしたデザイナーさんが、自分の描くポスターの中にこの詩を掲載した。すると、そのポスターを偶然見たレフ・オシャニンという詩人がその4行詩を取り込んだ、平和を希求する詩を書いた。それにアルカディ・オストロフスキーという作曲家が曲を付けて、この歌は生まれた。そして1962年に発表された」
 
「なんか凄い偶然の連続」
 
「だからこの歌が生まれたこと自体が奇蹟だと思うよ。最初の女の子の詩から歌ができるまで34年掛かってるけどね」
 

歌詞の大意
 
丸い太陽、周りの空。それを男の子が描いた。彼は紙にその絵を描いて署名した。
 
(※)
いつも太陽がありますように。
いつも空がありますように。
いつもママがいますように。
いつも僕がいますように。
×2回
 
親愛なる友よ、良き友よ。人々は切に平和を求める。心臓が35回動くように、その言葉を繰り返しても疲れない。
 
(※繰り返し)
 
待って、兵隊さん。聞いて、兵隊さん。人々は爆弾を怖がっている。千の瞳が空を見上げている。私の唇は断固として言う。
 
(※繰り返し)
 
災厄は嫌だ。戦争は嫌だ。少年たちのために立ち上がろう。太陽よ永遠なれ、幸福よ永遠なれ。それが人の訴える所。
 
(※繰り返し)
 

私は更に説明した。
 
「サンクトペテルブルク(旧レニングラード)には、第二次世界大戦の時の“レニングラード包囲戦”で命を落とした子供たちを追悼する生命の花というモニュメントが立っているけど、その花びらに平和を希求する思いから、この歌の歌詞Пусть всегда будет солнцеが刻まれているんだよ」

(この写真はwikipediaから引用)
 
「たくさん子供たちが死んだんだろうね」
「だからこの歌を歌おう」
 

政子は私の話を聞いていたが、ふと言った。
 
「ね、この4行詩を書いたのは女の子だよね」
「そうだけど」
「でも、このオシャニンさんの詩では男の子になってるけど」
「オシャニンさんは元の詩を書いたのが女の子とは知らなかったのかもね」
「性転換しちゃったんだ!」
と政子は楽しそうに言った。
 
でもその日、政子はずっとこの歌を歌っていた。
 
そして夜中になってから言った。
 
「この歌を次のローズ+リリーのシングルに入れようよ」
「いいと思うよ。★★レコードを通して使用許諾を取ってもらうよ」
「よろしく〜。私、日本語訳を書くね」
「じゃその訳詩と、そのマリちゃんの詩のロシア語訳を付けて先方に照会してもらおう」
 

ところで、臨時昇格オーディションが行われた10/9-10日、アクアは9日には古那屋での出会いの場面、10日には芳流閣での決闘のシーンを撮影した。この2つのシーンは、物語の中では、芳流閣のシーンの続きが古那屋なのだが、芳流閣のほうは多数のエキストラが動員されるので日曜日にしか撮影できない。それで撮影順序は逆転した。
 
ここで芳流閣のシーンでは現八役の白鳥リズムと抱き合って転がるシーンがあり、古那屋では小文吾の吹き替え役の山本コリンが胸を押して水を吐かせるシーンがあって、どちらもFにしか務まらない。それでこの2日間、信乃を演じたのはFである。
 
Mは休みだったので、代々木のマンションでベッドに寝転がって台本を読んでいた。ところがそこにコスモスから電話が掛かってくる。
 
「アクア、悪いけどちょっとΛΛテレビまで行ってきてくれない?」
「私、今撮影中なんですけど」
「分かってる分かってる。ちょっとクイズ番組に出てくるだけなのよ。実は舞音ちゃん予定してたら舞音ちゃんのドラマの撮影がずれ込んでるみたいでさ」
「分かりました。行ってきます」
 
確かに舞音を予定していたのなら、ガールズの子とかでは代役が務まらない。東雲はるこは機転が利かないのでクイズ番組には使えない。自分か町田朱美・白鳥リズムあたりだけど、白鳥リズムも町田朱美も今日八犬伝村で撮影している。結局自分が行くしかない(“アクア”だって撮影中なのに!)。
 
それで彩佳に車で六本木のΛΛテレビまで送ってもらった。彩佳には「時間が分からないからマンションに戻ってて」と言って帰し、局に入って、聞いていたスタジオに行く。
 
プロデューサーさんは舞音のスケジュールがずれこんで来られそうにないので誰か代わりの者を行かせると聞いて不機嫌だったのが、来てくれたのがアクアだったので急にご機嫌になった。
 

それで1時間の番組を2時間ほど掛けて撮影。
「お疲れ様でしたー」
「アクアちゃんありがとね」
 
などと言われてスタジオを出た。それで彩佳に迎えに来てもらおうと思っていたら、バッタリと美高鏡子さんと遭遇する。
 
「おはようございます」
「おはようございます」
と挨拶をかわす。
 
「あれ?アクアちゃん、熊谷で撮影だったのでは・・・そうか、あんたMか」
「あ、はい。そうです」
 
「今時間ある?」
「帰ろうとしていた所なんですけど」
「じゃ、ちょっと来て」
「え〜〜?」
 
ということでアクアは美高さんに引っ張っていかれた。次の予定がありますと返事すべきだったと後悔したがもう遅い。
 

連れて行かれたスタジオに理史がいるのでギョッとする。
 
向こうもギョッとしている。
 
アクアは両手の指を曲げて合わせて“M”のかたちを作った。それで彼はここにいるのがMの方であることを認識してくれたようで頷いていた。
 
「アクアちゃんがちょうど2時間くらい時間が取れるらしいのよ」
と美高さんは言う。
 
待て。ボクは時間が取れるなんて言ってないぞ。
 
「だからさ、厳蔵(ごんぞう)の恋人役の女の子、アクアちゃんにやってもらおうよ」
 
何〜〜!?理史の恋人役!???
 
しかし鳥山プロデューサーは
「おお、それはいい。アクアちゃんが出るなら予算は取るよ」
などと言っている。
 
アクアは言った。
「待ってください。このドラマは松田理史君の初主演作なんです。それなのにボクが出演したら、それが話題になってしまい、折角の初主演の松田君に悪いです」
 
「だったらアクアちゃんは顔を映さない。後姿だけということで。配役にもクレジットしない」
と美高さん。
 
「ああ。それでもいいよ。実は恋人役を演じる予定だった内野涼美ちゃんが撮影前の感染検査で陽性判明して降板したんで、困ってたんだよ」
と鳥山さん。
 
また代役かい!
 
「どうだろう。顔も出さないし、クレジットもしないというのでは。もちろんギャラはアクアちゃんにふさわしい額を出す」
「分かりました。でしたら松田君のギャラを超えない範囲で」
「うん。それで行こう」
 
(理史のことばかり考えていたので、アクアは自分が女役だけの仕事を受けたことに気付いていない!)
 

ということで、アクア(アクアM)が理史の恋人役を演じて『大工と鬼六』の撮影は進められたのである。アクアのスケジュールが厳しいことから、この日は厳蔵(ごんぞう)の恋人が出る場面のみをひたすら撮影した。
 
アクアが台本を渡されてさっと斜め読みするとすぐ演技が出来るので、共演の獄楽(鬼六役)が感心していた。
 
3ヶ所ほど、理史と抱き合うシーンもあり『キャー』とアクアMは思ったし、理史もさすがにドキドキしているようだったが、お互いに恥ずかしがりながらラブシーンを演じている感じが出て初々しくてよかったと言われた。
 
むろん理史は『ロミオとジュリエット』での失敗で自戒して自分の感情を殺して演技したし、また今日の相手はMだと分かっているので、冷静さをキープできたようであった。
 
でも最後にキスシーンまであった!
 
「本当にキスしちゃわない?」
などと鳥山さんが言う。
 
「それボクがアクアとバレたら松田君が殺されかねないのでやめましょうよ」
とアクアは言ったが、理史は、どうしよう?みたいな顔をしていた。
 
結局寸止めで勘弁してもらった。でも半止めでも、理史はかなりドキドキしていたようだった。でもそのドキドキ感が良いと言われていた。
 
(2時間と言われたのに結局4時間掛かった)
 
そういう訳で、アクアは理史の初主演作に共演することになったのである。
 

羽鳥セシルはその日、白河夜船社長に呼ばれた。
 
「正式発表は来月だけどさ、セシルちゃん、紅白が決まったから」
「紅白・・・って何でしたっけ?」
「NHKの紅白歌合戦に決まってるじゃん」
「えっと、紅白歌合戦の何が決まったんでしようか?」
「君が紅白歌合戦に出ることが決まったんだよ」
 
「え〜〜〜〜!?」
とセシルは超絶驚いた。
 
「あのぉ、他に出るのは?」
「うちの事務所からは君1人だけど、§§ミュージックからは4組出るよ」
 
4組というのは、アクアちゃん、常滑舞音ちゃん、ラピスラズリに、もう1人は白鳥リズムちゃんかな?去年も出たし、とセシルは頭の中で考える。でも私も出るの〜〜〜?
 
「まだ未発表だから人には言わないでね。リズムちゃんとは同級生とか言ってたけど、彼女とも、人が居る所では話してはいけない」
 
「で、でも、坂出モナちゃんとか、松梨詩恩ちゃんもいるのに」
「その2人はほとんどお芝居の仕事しかしてないから。CDをたくさん売ってるのは君だからね」
と社長は言う。
 
そうかなあ?モナちゃんのCDもかなり売れてる気がするけど、と思ったが、モナの場合、前の所属プロダクションに配慮して今年は見送ったのかもという気もした。結婚したアイドルなんて無価値と思われて放出されたのに、かえって若い女子には支持されてWindFly時代より売れている感じだ。
 
「うちの事務所から紅白の出場者が出るのは初めてだからさ、頑張ってね」
と社長が言うので
「はい、頑張ります」
とは言ったものの、私が紅白〜〜!?と思うと、夢でも見てるんじゃないかという気がした。
 

花ちゃんは10月10日(日)に緊急の部屋移動で、聖美を受け入れた後、残りの2人を受け入れるため、引き続き部屋の移動を寮生たちにお願いした。
 
対象となる寮生たちには10日の内に電話やメールで了承を取った上で、業者を入れて10月11日(月)に一気にやってしまったのである。
 
移動班
_9:00 中村昭恵 405->508
11:00 鹿野カリナ 202->302 (昨日聖美が一時使用した部屋)
13:00 山本コリン 308->405 (昭恵が出た部屋)
15:00 202に机・本棚・寝具・冷蔵庫を搬入
17:00 鈴鹿あまめ 203->308 (コリンが出た部屋)
 
清掃班
11:00 405 昭恵が出た部屋(コリンが使用)
13:00 202 カリナが出た部屋
15:00 308 コリンが出た部屋(あまめが使用)
19:00 203 あまめが出た部屋
 
これで2階の202,203を空けることができた。203の清掃修了後、机・本棚・寝具・冷蔵庫を搬入するのは、篠原君と谷口君、本田・山本マネージャーにお願いした。
 
また、この日、寮入口の郵便受けにも3人の郵便受けを増設してもらったが、この作業は、日中に本田・山本マネージャーにお願いした。
 
まずはその時点で郵便受けの中に入っているものを全部稲田姉妹に頼んで各自の部屋に放り込んでもらい空にした上で、本田・山本の2人で郵便受けに入っている名札を移動した。郵便受けは部屋番号と無関係で、単純五十音順である。
 
寮生にも、部屋番号は移動するので様々な所に住所を届ける時に部屋番号まで書かないよう指導している。
 
郵便受けの鍵は電子キーなので管理室側から一斉に書き換えることができる。電子キーにしないと紛失する子が割と多いので(盗難もあると思う:東雲はるこの鍵はこれまで5回も変更している)、その度に鍵の交換をするのは大変である。名札の移動作業が終わった後、各々の寮生のスペアキーを使って、ちゃんとその名札の所の郵便受けが開くか確認した。
 
腕力は使わないものの結構神経を使う作業だが、プライバシーとセキュリティの問題があるので、外部の人間の使用や寮生の徴用はできず、マネージャー2人でやってもらった。
 

この移動の結果、各フロアの使用室数は、2F=6 3F=8 4F=8 となった。5,6階も既に満室である。7階も1つしか空いていない。夢夜に一時的に部屋を空けてもらっていることも考えると完璧に満員御礼である。
 
新入りの古屋あらた以外で2階に残ったのは夏のビデオガールコンテストで上位に入った子たちのみである。夕波もえこなど仕事の実績から言うと4階でもいいくらいなのだが、彼女たちを2階に留めたのは、ビデオガールコンテストの優勝者である美咲ジョナの感情に配慮したものである。自分が優勝者なのに、自分のデビュー前に下位の子が優遇されるなんてと思うと面白くない。既に現在でも面白くないと思うが、彼女と特別賞の立山きらめきはデビュー予定の1月までは表だった仕事はさせずにしっかり教育するという契約なのである。
 

10月16日(土).
 
この日は、熊谷の八犬伝村で対牛楼の仇討ちの場面、春日部の屋内スタジオでは、庚申山のシーンを撮影する。この2つの場面は出演者が重ならない。
 
対牛楼:毛野(水森ビーナ)小文吾(西宮ネオン)
庚申山:大角(常滑舞音)現八(白鳥リズム)偽一角(品川ありさ)船虫(坂田由里)
 
実はこの2つのエピソードで、籠山逸東太(花貝パール)だけが両方に関わっているのだが、対牛楼のエピソードでは話の中に出てくるだけなので出演しなくてもよいのである。
 
そして新加入したばかりの、馬渡聖美は熊谷の八犬伝村に行き、馬加大記の娘・鈴子の役をしてと言われた。
 
「戦いの巻き添えで死ぬだけの役なんだけどね。セリフも死ぬ時に『きゃー』と悲鳴をあげるだけ」
「死ぬ役OKです。やります!やります!」
と元気である。
 
場面としては対牛楼の上で誤って斬られた母親(演:直江ヒカル)が階段の上から落下してきて、下に居た鈴子がその身体に衝突して双方死亡するという展開である。実際に転落するのも下で潰されるのも人形だが、聖美は
「すごーい!私の人形だ!」
と言って喜んでいた。
 
(鈴子役は白雪姉妹の誰かを使うつもりだったが、聖美が加入したので彼女にさせてみることにし、急遽聖美の写真をもとに人形を制作した)
 
決闘場面に先行する宴会の場面では、父親の馬加大記(演:花咲ロンド)から紹介され、笑顔で小文吾(ネオン)に会釈するだけである。でもこの場面も凄くきれいな袿(うちき)を小袖の上に羽織った姿でお化粧もしてもらい
「私、きれーい」
と喜んでいた。
 
演技もしっかりこなして、撮影の田崎さんから褒められていた。
 

「鈴子役の役者さんの芸名を教えて下さい」
と衣装係の人から尋ねられたコスモスは
 
「“古屋あらた”です」
と答えた。
 
(衣装係は誰がどういう服を着たかをきちんと記録しておかないと、後で映像を繋ぎあわせた時に服装に矛盾が生じる恐れがあるので詳細に記録する)
 
「私の芸名がついたんですか?」
「うん。一週間掛けて考えた」
とコスモスは言った。
 
「すごーい。ありがとうございます」
と聖美(あらた)は感激して言っていたが、今瞬間的に思いついたのでは?とロンドは思った。
 
しかしそれで馬渡聖美の芸名は“古屋あらた”となったのである。
 
温故知新??
 

古屋あらたは、翌日日曜日(10/17)には、大田区の、あけぼのテレビに行き、最近このテレビのメインナビゲーターになっている鈴鹿あまめから紹介されて、まずは午前中にトークショー(生!)の聞き手をした。これはメインのインタビューアーが鈴鹿あまめで、あらたはそのサブとして一緒にお話を聞く。この日のゲストは三つ葉の3人であった。女性同士なので生放送ではあるがあまり緊張せずに楽しくトークできた。
 

午後一番からは、クイズ番組(収録)のアシスタントをした(司会:めろでぇずのジャズ)。回答者はお笑い系の人が多く、いきなり無茶振りされたりするのを無難に応じて
 
「あんた、なかなかやるね」
と出演者の米田ダリヤから言ってもらっていた。
 
でもさすがにこの番組は疲れました!と本人も言っていた。
 

でもこの日の夕方には、生放送・歌番組の司会!をさせられた。
 
(先週加入したばかりの中学1年生に単独で司会をさせるとは、さすがネットテレビ局である:もっとも昔の“夕やけニャンニャン”とかは加入したばかりの子に翌週からMCをさせたりしていた。あれは高校生が多かったが)
 
この日の歌番組の出演者は若手中心で、このようなメンツである。
 
ビンゴアキ
CCD
坂本メイ子
フラワーサンシャイン
パンプキンコーチ
赤いトマト
ColdFly5
スリルボカン
 
ギャラだけで凄そうである。トップのビンゴアキとラストのスリルボカンが目玉である。赤いトマトも注目株だ。
 
あらたは、
「私ひとりで司会するんですか〜?」
とさすがに不安がっていたが、
「君ならできる。平常心で」
とあまめに言われたので、失敗したらした時、と開き直って司会をした。
 
それにあらたにとって幸いだったのは、この日の出演者は彼女たちの世代に人気のユニットばかりで、曲目も知っている曲ばかりであり、話題が見付けやすかったことである。
 
また途中にフラワーサンシャインが入っているが、これは友好プロダクションである♪♪ハウスのアーティストで、ほぼ身内。リーダーの桜井真理子には寮やレッスンで親切にしてもらっていたので、一息つける相手であった。ColdFly5も、米本愛心(よねもと・あこ)が信濃町ガールズ出身なので新人の司会者に優しくしてくれて助かった。
 

一応各々のアーティストとのトークのネタは予め候補が例示されていたが、それを使わずにおしゃべりができた。
 
今年デビューして売出中のCCDからは
「僕たちの名前って何の略か知ってる?」
などと訊かれる。
 
「チャイコフスキー、ショパン、ドヴォルザークでしたっけ?」(*9)
 
「あんた凄いの思いつくね!」
「もうそれを正式名称にしようか?」
などとやりとりした。
 
(*9)チャイコフスキーは本当は T (Tchaikovsky)。Cで始まる作曲家には例えば『トランペット・ヴォランタリー』の作曲者、ジェレマイア・クラーク (Jeremiah Clarke)、日本の唱歌『星の世界』の元歌『エリー』の作曲者、コンバース (Charles Crozat Converse) などがいる。でも超有名なのはショパンくらいかも?
 

「で、本当は何か知ってる?」
「出身校の名前ですよね?」
「そうそう」
「で、どこ?」
 
「千葉市の千葉女子高校です!」
「そうそう」
とギターの松井君が言ってから、ベース四本君が
「んな訳ねーだろ!?俺たちが女子高に入れるわけねぇじゃん」
と言う。
 
「女装したら行けるかもですよ。松井さん女装してみません?凄い美女になりそう」
とあらたは平然として返す。
 
「だいたいDじゃない」
とキーボードの明山君。
 
Dyosikou?
 
「で本当は?」
とドラムスの初沢君。
「千葉市千垣大門高校でしたね。その科学部の部員で始めたんですよね」
「ちゃんと知ってるじゃん!」
 
ということで、笑いを取りながら、ちゃんとまとめたので、鈴鹿あまめが感心して頷いていた。
 

しかし最後のスリルボカンには際どいネタ(調整室に居た則竹部長が何度も瞬間的に反応してピーで消した!)で圧倒されそうになったものの、何とか負けずに頑張った!
 
「あんた1ヶ月に何回くらいオ***するの?」
「オムレツ得意だから5〜6回作りますよ」
「今何色のパ***穿いてる?」
「パスケースはライトグリーンです」
 
あからさまな下ネタに、美事にボケてみせた、あらたの機転も凄いが、生放送なのに、これをしっかりピーで消した則竹もさすがである。
 
もっともスリルボカンには後で月原美架マネージャーが
「女子中学生をあまりからかわないで下さい」
と注意したが
「嘘!?女子中生なの?落ち着いてるから、てっきり女子高生と思った。ごめーん」
と彼らも謝っていた。
 
女子高生でもセクハラだ!
 

ともかくも、あらたは1時間の番組を無難にこなして
 
「もう一人前だね」
と鈴鹿あまめから褒められた。
 
あまめは万一の場合はヘルプに出て行けるようスタンバイしていたが、あらたがしっかりしているので結構安心して見ていた。
 
一方、初司会を何とかこなした、あらたは思った。
 
あまめさんだってまだ中2で自分と1つしか違わないのに、あの貫禄と冷静さは凄いなあと。
 
しかしあらたは今回の司会で自信を持ち、これ以降、年内は、鈴鹿あまめ・夕波もえこ・古屋あらたの3人があけぼのテレビのメインMCとして確立することになる。
 

なお、現在鈴鹿あまめと夕波もえこは、B契約ではあるが、ギャラの取り分はA契約と同じという暫定運用(A契約との違いはマネージャーが居ないこと)をしているが、古屋あらたも同じ方式を適用することにした。それであらたは初回ギャラの振込額に仰天することになる。
 
(例によって桁を数え間違う!)
 

10月20日(水).
 
ローズ+リリーの4枚目のベストアルバム『Rose+Lily ランチセット2021』が発売された。このアルバムの制作には私もマリも関わっていない。まとめたのは和泉と小風である!(美空は最近ゴールデンシックスに入りびたり)。音源も既存のものを使用している(一部リミックス)。
 
2017年にベストアルバム『Rose+Lily ランチセット2017』を出しているので、その後の4年間にリリースした曲の中から24曲を選び、2枚組のCDとしてリリースした(DVD付きは4枚組)。和泉と小風が選んだのは下記である。
 
"On the Rock"
『青い豚の伝説』同名シングル
『トースターとラジカセ』郷愁
『斜め45度に打て』郷愁
『セーラー服の日々』郷愁
『お嫁さんにしてね』郷愁
『フック船長』郷愁
『ふるさと』郷愁
『恋愛自動販売機』天使の歌声
『H教授』戯謔
『トロピカル・ホリデー』十二月
『砂の城』十二月
『Burning Snow』君に届け
 
"Natural Wind"
『銀色の地平』青い豚の伝説
『縁台と打ち水』Four Seasons
『をぐなとをみな』郷愁
『天使の歌声』同名シングル
『Cat People』戯謔
『異端修道士の洞窟』戯謔
『Atoll-愛の調べ』同名シングル
『ヴィオロンの涙』十二月
『紅葉の道』十二月
『雪が白鳥に変わる』十二月
『君に届け』同名シングル
『ノーサイド』ホームワーク
 
物凄い難産で、千里・青葉・和泉・丸山アイなどにたくさん助けてもらった『郷愁』の曲が7曲も入っているのが何とも感慨深い。郷愁の制作のために若葉が用意してくれた郷愁村が今では大きく発展して大きなリゾートになり、映画制作のオープンセットの地にもなっているのも感慨深げである。あの苦労は無駄では無かったんだなと私は思った。
 

ベストアルバム『ランチセット2021』をリリースした直後、私は★★レコードの町添社長から電話を受けた。
 
「★★レコード30周年のCDボックスを出すんで、ローズ+リリーの曲も入れたいから、どれがいいか希望を出してくれない?」
 
「ああ。30周年ですか(*11)。それ何曲入りのCDボックスなんですか?」
「12曲×5枚で60曲入りの予定。諸事情で多少変動する可能性はある」
「なるほどー。分かりました。考えておきます」
 
60組も選ばれるのなら、まあ私たちが入ってもいいかなと思った。
 
この件に関して私は風花・詩津紅・七星さんの3人と話し合った。
 
つまりマリは入れてない!
 
(マリを入れたら収拾がつかなくなる)
 

ローズ+リリーはリリースしたばかりの『ランチセット2021』を含めて4枚のベストアルバムを出している。私たちはまずその4枚のベストアルバムの中からダウンロード数の多い曲を抜き出した。
 
『神様お願い』『キュピパラ・ペポリカ』『夏の日の想い出』『影たちの夜』 『ピンザンティン』『天使に逢えたら』『あの夏の日』『言葉は要らない』 『Spell on You』『Long Vacation』『振袖』『愛のデュエット』『花園の君』 『雪を割る鈴』『苗場行進曲』『門出』『青い豚の伝説』『お嫁さんにしてね』 『フック船長』『異端修道士の洞窟』『H教授』『Atoll-愛の調べ』『君に届け』
『Burning Snow』
 

「この24曲が候補かなあ」
「この中で『これがローズ+リリーの代表曲です』と言われていい曲を選ぼう」
 
「『神様お願い』は売れたけど楽曲の品質としては微妙だ」
「マリちゃん作曲だから仕方ない」
「『キュピパラ・ペポリカ』は売れたけど、代表作と言われたら恥ずかしい」
「歌詞が何語か不明だからね」
「上島先生とか千里ちゃんが書いた曲は取り敢えず外そう」
「『Spell on You』が代表曲と言われるとローズ+リリーの方向性を誤解される」
「ケイの迷走時期の作品だからなあ」
「『影たちの夜』『振袖』『Burning Snow』も本来のローズ+リリーの方向性とは少し違う」
「『影たちの夜』はロックだし、『Burning Snow』は未来音楽だし、『振袖』はジャンル不明の曲だし」
「『異端修道士の洞窟』は発禁処分になりそう」
「過激だからなあ。ケイの鬱期の作品だし」
「『雪を割る鈴』『苗場行進曲』はライブでやってこそ意味のある曲」
「『Long Vacation』と『H教授』は長すぎてこの手の企画に入れるのは迷惑だと思う」
「『あの夏の日』『天使に逢えたら』『Atoll-愛の調べ』は美しいけどインパクトが弱い」
 
ということになり、下記が候補として残ったのである。
 
『ピンザンティン』『言葉は要らない』『花園の君』『青い豚の伝説』『君に届け』
 
「ローズ+リリーの方向性ということでいえば『言葉は要らない』が一番正統派」
「ただ楽曲の作りが微妙」
「元々ライブのオープニングで即興で歌った曲だからなあ」
「それをファンから『あの曲はCDに収録しないんですか』という問合せが多くて。慌ててライブビデオ見ながら採譜した」
「その手のライブで即興で歌ってケイ本人も忘れてる曲ってかなりの数がある」
「あの歌、歌詞の中に矛盾がある」
「それはわりと指摘される」
「まあ即興で歌った曲なら仕方ない」
「『青い豚の伝説』はアニメと一体の作品だからなあ」
「音だけで聞いてもあの作品の良さは分からない」
 
「歌詞・楽曲・方向性・売上から、最高にいいのは『君に届け』だけど、新しすぎる」
「『花園の君』もいいんだけど、中学生時代の作品(*10)だからなあ」
「もう少し中期の曲がいいよね」
「だったら『振袖』だな」
「あ、賛成」
「え〜〜〜!?」
 
ということで、選考過程でいったん候補から外した『振袖』を★★レコードには推薦することになり、風花が!私のスマホを使って加藤部長に連絡した。
 
(*10)実際には『花園の君』を書いたのは、高校1年の9月である。
 

(*11) ★★レコードは元々は自主制作のカセット!やCDを取り扱う小さなレコード屋さんだった。ところがその店が潰れてしまう。その時、多くのアマチュア・セミプロのバンドやフォーク歌手などから「無いと困る」「何とか営業継続できない?」という声があり、結局、その店に勤めていた5人が1人60万円ずつ出し合って、“有限会社★★レコード”を1992年3月5日に設立した。
 
創業者5人(オリジナル5)
 
星原博秋(1935)・羽根治人(1938)・須丸秀秋(1945)・松前慧子(1964)・町添幸太郎(1970)
 
1人60万ずつ出したのは、当時、有限会社の最低資本金が300万円だったためである。全員が同じ権限を持とうということで全員同額出した。それで当初からこの5人は全員取締役であった。もっとも、実際には当時大学生だった町添は松前からお金を50万円出世払い!で借りて60万円出資している。
 
それで最初は潰れた店がやっていたのと同様の、自主制作CD,カセットの取り扱いをしていたのだが、その内、カセットやMDで持ち込まれた音源をCDに変換するサービス、CDを生産するサービス、そもそも録音してあげる作業(そのため防音のスタジオを作った)、アマチュアバンドの制作指導、時には編曲などもしてあげるようになる(その頃の町添のペンネームがマハトークである)。
 
また店で売るだけでなく、当時黎明期にあったパソコン通信を通して全国に通販するようになる。Big Modelのサーバーを運用しTri-Pに接続していたので、全国から安価にアクセスできた。音楽配信などのシステムが存在しない時代に、曲の触りをmidi化してish型式で公開してプロモーションをしていた。そしてサーバーを立てた結果、“東京から全国に売る(B2C)”のみでなく、全国のアーティストから音源が持ち込まれる(“全国から全国に売る(C2C)”)ことになり、営業エリアが事実上日本全国に広がって営業規模も数倍になった(1995年にWWWサーバーも立ち上げ、1998年にはそちらに完全移行している)。
 
営業規模は膨らんでいき、店舗と別に事務所を持つようになり、1994年には株式会社に改組して社員は100人を越える。また中堅レコード会社MMレコードに委託してそちらの販売網で全国のレコード店に置いてもらうようになった。レコード店を通しての販売は、★★レコードの売上を倍増させ、通販とレコード流通網が、同社の販路の両輪となった。
 

1996年には★★レコードの流通に協力してくれていたMMレコードの経営が行き詰まったことから、これを救済合併する。それで★★レコードは音楽の制作と販売の双方をおこなうレコード会社になった。そういう経緯で★★レコードには元々、制作部門には元の★★レコード系、営業部門にはMMレコード系の社員が多かった。この時、レコード協会に加盟し、まずは準会員となった。
 
★★レコードと共に成長したのが“ロングノーズ”である。彼らは1992年頃からライブハウスでアマチュアバンドとして活動していた。当時はマハトークこと町添が事実上のプロデューサーだった。★★レコードの営業活動が拡大するのと共に彼らの売上も大きくなっていった。★★レコードは2000年にレコード協会の正会員に昇格(年間出荷額5億円以上が必要)したが、そのセールスの3割くらいをロングノーズの売上が占めていた。
 
(ロングノーズのメンバー3人の内、堂崎隼人は2021年現在★★レコードの取締役、松崎連鹿はTKRのアドバイザーの地位にある。またバンド解散後に前川優作のプロモーションをするために畠山裕光が2002年に設立したのが∴∴ミュージックである。
 
2001年以降、★★レコードの売上の中心は、ワンティス、モンシング、ラララグーン、ドリームボーイズ、スカイヤーズ、ハイライトセブンスターズ、などと変遷してきているが、CD Boxを作るなら、恐らくはそのトップを飾るのがロングノーズになるのだろう。
 
★★レコードの歴代社長は村上を除いて★★レコードの創業者である(創業者のひとり羽根治人は1998年に離脱)。村上はMMレコード出身。
 
1.星原博秋(1935) 1992.3-2001.6 (制作部長:羽根→須丸)
2,須丸秀秋(1945) 2001.6-2007.6 (制作部長:松前)
3.松前慧子(1964) 2007.6-2016.6 (制作部長:町添)
4.村上時二郎(1950) 2016.6-2019.6 (制作部長はそのまま)
5.町添幸太郎(1970) 2019.6- (制作部長:加藤)
 

臨時オーディションで即採用された残り2人は、いづれもオーディションの翌週末に東京に出て来た。荷物を運ぶためにG450を迎えに行かせている。
 
10/16 G450:熊谷→仙台→熊谷/Honda-Jet:熊谷→仙台→熊谷
 
朝一番にG450を仙台まで飛ばして、立川心桜を荷物ごと連れてくる。熊谷から東京まではミニバンで運んだ。
 
引越の手伝いに親御さんと2人のお兄さんも一緒に来ている。本来女子寮は男子禁制だが引越の手伝いということで特別に立入を許可している。
 
「すっごいきれいな寮ですね。広いし。僕が住みたいくらい」
などとお兄さんが言うので
 
「性転換してお兄さんも信濃町ガールズに入ります?」
などと花ちゃんが言うと下のお兄さん(高2)が
 
「悩んじゃう」
などと言っていた!
 
悩むのか?
 
付き添いの家族は、引越作業終了後、Honda-Jetで仙台に送って行った。
 
その日の夕食の時間に館内放送で川崎ゆりこが彼女を紹介した(コスモスは八犬伝の撮影現場に行っている)。
 
「紹介して頂きました立川心桜(たちかわ・ここな)です。出身地は女の川と書いて女川町(おながわちょう)、名前は立った川と書いて立川(たちかわ)。下の名前は心桜(ここな)です。コロナではなく“ここな”です。でも実家にはコロナのストーブがあります。うちの父はコロナビールが好きです。祖父は以前コロナ・マーク2に乗っていました。伯父は東北大学で太陽コロナの研究をしていました」
 
という紹介には結構みんな笑っていた(どこまで本当なのかよく分からない話だ)。
 
「名前が例の病気に似ているので、COVID-19(コヴィッド・ナインティーン)、新型コロナウィルスによる感染症の流行が始まって以来『コロナ、コロナ』とからかわれて、ついでに『コロナが来た。逃げろ〜』とか言われて、みんなに避けられていたので、お陰でクラスに感染者が10人も出たのに私は無事でした」
 
などと言うのには、笑っていいのかいけないのか、みんな困っていた!でもCODID-19 の発音が美しかったので英語は得意なようである。
 

10/17 G450:熊谷→松山→熊谷/Honda-Jet:熊谷→松山→熊谷
 
日曜日は松山空港2往復で愛媛県西条市の榊原瑞菜を連れてきた。彼女も夕食時間に川崎ゆりこが紹介して、本人にも自己紹介させた。
 
「愛媛県西条市(さいじょうし)から出て参りました榊原瑞菜(さかきばら・みずな)です。未熟者ですが、みなさん、よろしくお願いします。好きな歌手はアクアさんと、松原珠妃さん。好きな小説家は西尾維新さんと梨木香歩さんです。好きな画家はマリー・ローランサンさんとルノワールさんです」
 
などと言っている。花ちゃんは彼女の自己紹介を聞いて、心桜が8位で、この子が12位だった理由(わけ)が分かったと思った。
 
「もう一言(ひとこと)、何か自己アピールして。得意なこととか」
と花ちゃんが言ってあげる。
 
「えっと、えっと、得意なことは、円周率を200桁まで言えることです」
 
寮生たちが「へー!」という反応。
 
「じゃ“204桁”まで言ってみよう」
と花ちゃん。
 
「え〜〜!?204桁ですか?」
とは言ったものの、唱え始める。
 
「3.1415 9265 3589 7932 3846 2643 3832 7950 2884 1971 6939 9375 1058 2097 4944 5923 0781 6406 2862 0899 8628 0348 2534 2117 0679 8214 8086 5132 8230 6647 0938 4460 9550 5822 3172 5359 4081 2848 1117 4502 8410 2701 9385 2110 5559 6446 2294 8954 9303 8196 3765」
と彼女は小数点以下204桁目まで唱えた。
 
「こういうの得意そうな・・・安原祥子ちゃん、合ってた?」
「200桁目までは合ってたけど、その先の4桁は3765ではなく5713です」
と安原祥子。
 
(本当は201-204桁目は4428.安原祥子は適当に答えている!それを堂々とまるで本当のことのように話すのが祥子の凄さである)
 
「あれ〜、違ってました?電卓のキーを打ち間違ったかなあ」
「電卓で円周率を計算するのはしんどそうだね」
 
というやりとりをして、花ちゃんは瑞菜が、最低限の応答能力を持っていることを確認した。これなら何とか使える。“中学生の内は”。
 
どんなことを言われても、何を要求されても、何らかの反応をしなければならないのがタレントというものである(だからタレントと禅問答は似ている)。「分かりません」とか「できません」とか言うのは素人未満、無言になってしまうのは問題外である。
 
 
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【夏の日の想い出・Long Long Ago】(3)