【夏の日の想い出・ラブコール】(5)
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(C) Eriko Kawaguchi 2021-09-04
私は広い車両を私たちとスターキッズの8人(+竜木マネージャー)だけで独占するのが申し訳なかったので、アクアと同じ車両でいいですと申し出たのだが、道中“マリから”どうやってアクアを守るか悩んだ!
しかし当日アクアは
「マリさん、お早うございます。色々お話ししたいけど、ボク疲れてるので寝てますね」
と言って眠ってしまったので(実際本当に疲れているはず)、マリは仕方なく、バンドリーダーのヤコとおしゃべりしていた。(寝ちゃう作戦はたぶんコスモスの提案)
ヤコは以前組んでいたバンド(サイドライト)で★★レコードの八雲礼江(礼朗)や秋月花謡子などにお世話になったということで、そのふたりの話で盛り上がっていたようだ(これもきっとコスモスの入れ知恵)。特に八雲さんのことでは、あれこれ話が尽きないようだった。
「八雲さんの近くによると、しばしば化粧品の匂いがしたから、恋人いるのかなと思ってたんですよ」
「それが恋人の化粧品じゃなくて、自分でお化粧してたのね」
「そうそう。あと、歩き方が女の子っぽい歩き方と思った。大股広げずに、膝から下だけで歩くの」
「よく観察してますねー」
こんな感じならきっと帰りもこの話題で1時間半もつな、と私は思った。
しかしヤコのおしゃべりから、私は八雲佳南(東郷誠一の娘・八雲春朗の妻)が妊娠したと聞いて驚いた。彼女は昨年9月に出産したばかりなのに。このタイミングなら、きっと生理再開する前に妊娠してる!当然彼女の女優復帰は最低2年くらい伸びる。
(誰も復帰するとは思っていない!そもそも業界に物凄い影響力を持つ大作曲家さんの娘なんて、使う側はご機嫌を損ねないようにヒヤヒヤなので、正直あまり使いたくないのである)
今回§§ミュージックのアクア以外のタレントは桃ステージを8/31の1日独占してパフォーマンスする。スケジュールはこのようになっている。
_9:00(1h)ラピスラズリ
10:00(30)ビーナ・コリン&水谷姉妹
10:30(30)甲斐姉妹・大崎志乃舞・カリナ・イリヤ
11:00(30)七尾ロマン&恋珠ルビー withパール・あまめ
11:30(30)花咲ロンド・石川ポルカ・原町カペラ
12:00(30)桜野レイア with "novus ignis"
12:30(30)山下ルンバ with リセエンヌ・ドオ
13:00(1h)西宮ネオン
14:00(1h)高崎ひろか
15:00(1h)品川ありさ
16:00(1h)姫路スピカ
17:00(1h)白鳥リズム
18:00(1h)川崎ゆりこ with 長浜夢夜・上田姉妹
19:00(1h)常滑真音 with セレン&クロム
end=20:00
桃ステージはあけぼのテレビが担当する。実際には深川アリーナに1万人と繋がったプロジェクター、2万人とつながったスピーカーを設置して実施する。深川アリーナは前後に2つのステージを設営して、交互に使用し、各々のステージで演奏中に他方のステージは消毒・清掃をした上で次の演奏者のための設営をする(セットも作る)。消毒は、あけぼのテレビではおなじみの“ルンバ隊”が行う。
ビーナ・コリン&水谷姉妹については、水森ビーナも水谷姉妹が各々まだ1枚しかシングルを作っていないので、1組だけで30分のステージを持たせるのは辛い。それで組ませたのである。コリンは正式デビーはまだであるが、食材の宅配サービスのCMに出演して1曲CM曲を歌っているので、その曲を歌った。その他は、常滑真音の「こどものうた」の中から、童謡をいくつか歌った。(ビーナが舞音のパートを歌う)
甲斐姉妹・大崎志乃舞・カリナ・イリヤは、5人組という大人数になったが、この日は、大崎志乃舞がヴァイオリン、甲斐波津子がフルート、鹿野カリナがピアノ、大仙イリヤがアコスティック・ギターを弾き、甲斐絵代子(エーヨ)が歌う、という組合せで演奏した。曲はエーヨがこれまで制作したCDの中から3曲と、後は合唱でよく歌われる『みどりのそよ風』『河はよんでる』を甲斐姉妹のデュエットで歌った(こういう楽器の組合せにとても合う)、この2曲では、イリヤがフルートを吹き、ギターを省略した。
しかし各々が得意な楽器で参加しているので、充分鑑賞に値するとして、評価は高かった。
七尾ロマン&恋珠ルビー withパール・あまめは、しばしば組まされている、ロマンとルビーのデュエットで、パールとあまめがコーラスを入れている。この組合せで、ロマンとルビーが各々出している2枚のCDの中の曲を歌った。
花咲ロンド・石川ポルカ・原町カペラの“売れたらいいなシスターズ”は、ロンドとポルカの持ち歌を1曲ずつ歌った他は、先日カペラが出したばかりのアルバムから3曲を歌った。ラストはかなり評価の高かった『湖の伝説』を歌ったが、このネット中継を聴いて
「これいい曲だ」
と思った人がかなりあったようで、この曲の単独ダウンロード、またアルバム丸ごとダウンロードする人、あるいはアマゾンなどで、このアルバムのCD版を買う人が出て、慌てて追加プレスすることになった。
桜野レイア with "novus ignis"だが、元々イグニスというバンドは、↓の3人で組んでいたバンドである。
Gt.Lisa→ローズ+リリーのマネージャー
B.Lucy→招き猫バンド
Dr.桜木レイア
今回はこういう構成になっていた
Gt.松元蘭
B.海浜ひまわり
Dr&Vocal.桜木レイア
海浜ひまわりは、コスモスからお使いを頼まれてレイアのマンションに来た所を徴用された。ついでに(本人がギター弾けますと言う)亜蘭にギターを弾かせてみたら、あまりに下手だったので「あんた歌だけじゃなくて楽器もダメか」と言っていた所に、偶然松元蘭が通り掛かった!ので
「蘭ちゃん、ギター弾ける?」
「一応弾きますが」
「ちょっと弾いてみて」
と言って弾かせたらうまかったので、そのまま徴用した。
今回のイベントでも松元蘭のギターについては評価が高く
「蘭ちゃん、こんなにギター上手かったのか」
「もう歌手とか女優は辞めてギタリストになるといいかも」
などと言われていた。
蘭が自身ギターを弾くバンド“フラワーズ”を結成するのは4年後の2025年である。
この§§ミュージック・オールスターのライブ環境を使わせて欲しい、という声があったので、桃ステージは30日は“破壊性の無い”ロックバンドの演奏に使用することになった。
8/30 momo stage (each 1 hour)
_9:00 XANFUS
10:00 Coldfly5
11:00 キャロル前田とアドベンチャー
12:00 Rose Quarts
13:00 アイダラコン
14:00 蓬莱男爵
15:00 クロード・プッシー
16:00 スリルボカン
17:00 クロコダイル
18:00 金属女給
19:00 ゴールデンシックス
20:00 シュールロマンティック
21:00 スイート・ヴァニラズ
22:00 スカイヤーズ
end=23:00
31日と同様に前後のステージを交互に使用し、反対側のステージで演奏している間にステージの消毒を行う。
キャロル前田とアドベンチャーについては
「お美しい!」
「私のお嫁さんに欲しい」
という女性客からの声が圧倒的で、多分ファンが2〜3万人増えた。
批評家たちからは「ヴィジュアルだけではなく演奏もしっかりしていた」と評価されていた。
今回のメンツには、クロード・プッシーやスリルボカンのような次世代のビッグステージ候補生もいれば、以前はビッグステージを務めたバンドもいるが、全体的にひじょうにクォリティの高い演奏になった。ColdFly5など、アイドルに毛の生えたようなバンドと思っていた人が多かったものの、彼女たちの演奏を聴いてかなり評価を変えた人が多かったようである。
だいたいアイドルしてるのがもったいなかった米本愛心のような音楽的能力の高い子がいるし(超絶キーボード・プレイを見せて、あれだけで恐らくファンが10万人は増えた)、木原扇歌の力強いドラムスワークもガールズバンドらしからぬ力強さと言われた。ついでに
「あの子は実は男の娘らしいよ」
「鈴美ちゃんのお兄さんなんだって」
「だからあんなに腕が太いのか」
などという噂まで立って、本人は苦笑していた。2人の容姿が似ていることから姉妹(兄妹?)であることに気付いた人は多かったようである。本人たちも「母は違うけど父が同じなんです」とコメントしていた。
“破壊性”の問題で、どう考えてもモニターなどを壊しそうなサウザンズは他のステージに回ってもらった。これは私が樟南さんに通告したが、彼も「うん。物を壊さないというという自信は無い」と言って、ここを使わないことに同意してくれた。
ロックバンドを30日、§§ミュージック・オールスターを31日にすることについては「逆では?」という声もあったのだが、終了が、どうしても23:00になってしまうので、メインの桜ステージと同じ時刻に終わるのは困るということで、1時間前倒しする案もあったものの、そもそも
「31日の桜も見たい。ロックバンドのステージも見たい」
という声がかなりあるようだということで交換したのである。
しかしおかげで29日に自分のライブをした高崎ひろかはライブの連チャンを避けることができた(今回のフェスが30日§§ミュージック・オールスターになった場合は体力のある白鳥リズムを29日にする案もあった)。
Firefly20, Waterfly20, Windfly20, ファレノプシス、ホワイト▽キャッツ、XETIMA、金平糖クラブなどといった集団アイドルは、あじさいステージの8/30に登場する。ここは埼玉ドームを使用する。参加人数が多いので、換気を考えて敢えて広い会場を使うことにしたが、観客席は5000人分だけ用意して、やはり書き割りとサイリウム振り装置・声援発生装置を設置した。ここはジェッターTVの担当である。
同じ会場を8/31日はもう少し人数の少ない、グループアイドルが使用する。ここに登場するのはこういうメンツである。
_9:00 スパイスミッション
10:00 ボニアート・アサド
11:00 フラワーサンシャイン
12:00 赤いトマト
13:00 ムーンサークル
14:00 スリファーズ
15:00 チェリーツイン
16:00 カチューシャ
17:00 トライン・バブル
18:00 三つ葉
19:00 UFO
end=20:00
演奏者・視聴者の年齢に配慮して20:00終了である。一番人気のスパイスミッションとUFOはトップとラストに振り分けた(“公開ジャンケン”で勝ったUFOがラストを取った)
こんなイベントに出るのは初めてというフラワーサンシャインのメンバーは「嘘みたい」と言って感動していた。7月に発売した2枚目のシングルも7万枚売れており、彼女たちも充分な人気ユニットになった。
ラビット4は8/30の“にんじん”ステージをまるごと渡され
「どのラビット4が何時から何分間演奏するかは君たちで決めて」
と因幡さんに投げた!
(“にんじん”の名前も「うさぎにはにんじんだよ」と言って因幡さんが付けた。最初は“りんご”だったのだが)
それで因幡さんは全てのラビット4(同名バンドが6つある。因幡さんは“ラビット4スーパー”)のリーダーに電話し、希望時間帯を聞いて予定表を作ってもらった。これが公開された演奏時間予定表である。
_9:00 Rabit4
11:00 Rabit4
13:00 Rabit4
15:00 Rabit4
17:00 Rabit4
19:00 Rabit4
21:00 Rabit4 Super
みんな「分からん!」と言った。
一応“にんじん”ステージはアロロの担当である。都内のコンサートホールに書き割りとサイリウム自動振り装置・声援発生装置を並べて実施する。
このにんじんステージは31日は、年齢の高いバンドが6つ登場した。
10:00 ラララグーン
11:30 スウィンギング・ナイツ
13:00 トライアル&エラー Ver2
14:30 モンシング・スペシャル
16:00 ナラシノ・エキスプレス・サービス
17:30 タブラ・ラーサ
19:00 ワンティス
end=20:00
演奏は1時間で、撤収・消毒・清掃・設営に30分見ている。
久しぶりに生演奏を聴けた、よかった、という声が多かった。
中でもワンティスのフェスへの登場は、活動再開して間もない2014年以来で、反響が大きかった。(三宅が全員に呼びかけて実現した:確かに今全員をまとめられるのは、この人しかいない)
スウィンギング・ナイツは平均年齢72歳!である。それでも若い人に負けないエネルギッシュな演奏をしたので
「スーパー爺ちゃんたちだ」
と言われていた。メンバーはオリジナル・メンバーの1人、ベースの人が昨年コロナで亡くなっており、今回、彼らが若い頃にトップセールを競い合っていたボーダーマンズの、カサンブランカ由美が紅一点でサポートで入りベースを弾いた。その雰囲気か良かったので、スウィンギング・ナイツのメンバーからは
「由美ちゃん、またやろうよ」
と言われていた、
カサンブランカ由美(74)は、カルーセル麻紀の性転換が騒がれた頃に、やはりモロッコまで行き
「マラケシで魔羅消してきました」
などと言って。ワイドショーなどに取り上げられた人でもある。当時は大胆にもヌードを映画などで披露していたが、今はすっかりいい、おばあちゃんになってしまった。ボーダーマンズは色々な意味でボーダーな人を集めて作ったコミックバンドだったが、当時としては驚異的なミリオンとなった『黒と白の夜明け』など本格的なヒット曲も出している。4人組バンドだったが、他の3人はもう故人である。
彼女の名前は「マラケシで性転換手術したから“マラケシ由美”にしよう」とマネージャーが提案したものの事務所社長が「マラケシなんて誰も知らん」と言って“カサブランカ由美”の名前にされた。本名は“大五郎”だったのだが、後に永年使用で“由美”に改名している。また特例法が施行されたらすぐに性別を変更したので、現在は法的にも女性である。長年夫婦として連れ添った男性(特例法施行前に亡くなったので婚姻届けは出せなかった)が亡き先妻との間にもうけた養女(学校の先生)とその夫(音楽プロデューサー)、および孫たちと一緒に暮らしている。
モンシング・スペシャルは、モンシングのボーカルだった、堂本正登がもう充分な声が出ないということで、臨時ボーカルに、俳優の広河敏也を迎えて演奏したのだが(堂本正登はギターに専念)、広川くん、こんなに歌がうまかったのかと彼の評価を大きく変えることになった。
インディーズ・アーチスト専門の“たんぽぽ”ステージは、東京近郊でプロ野球の二軍の試合がふだんは行われている球場を使用した。換気のよい屋外を使いたかったのである。事前のリモート審査により8組が選ばれ、1組1時間の演奏+入れ替え時間30分(撤収・消毒・設営)で行われた。
各バンドは演奏時間の1時間前に来て待機し、演奏が終わったら即帰る、ということで“密”が発生しないよう気をつけた。
ここはジェッターTVの担当であった。
“すずらん”ステージは、あけぼのTVが提携しているシュテフレスネッシャーTVが現地のスタジオから中継する。そのため中継時間が、ドイツ時間の9:00-17:00になり、日本では、8月30日16:00-24:00の8時間の中継である。
今回唯一の海外中継となり、非常に注目された。ラストを務めたのは過去に日本の(リアルの)フェスに登場したこともあるザルツィッヒ・ザッハトルテで、物凄い接続回線数になった。今回アクアに次ぐ接続数だった。
なお、シュテフレスネッシャーというのは「階段を登る人」という意味で、このネットテレビ局が本拠地としているシュトゥットガルトがとても階段の多い町であることから、この町の市民たちの自称として定着していることばである。(北海道の“どさんこ”、香川の“うどん県”のようなもの?)
上記以外の3つのステージは各々の本部スタジオからの中継になる。
椿(演歌歌手)ジェッター
いちご(ソロ歌手)あけぼの
ぶどう(お笑い系・スポーツ選手など)アロロ
サウザンズは“ぶどう”に入れられた!ほとんど色物扱いである。更にスタシオの機器を壊して、アロロの社長が激怒し、事務所に抗議して、社長さんが平謝りしたらしい。樟南さんはマジで禁酒しなかったら干されるぞ、と私は思った。
サウザンズは以前にもライブハウスで演奏していて、観客の女子大生にキスして訴えられたり(高額の解決金を払って和解 *1)、テレビに出演していて、バットでカメラを叩き壊して、このテレビ局には「お出入り禁止」をくらったり(1年後にあらためて誓約書を提出して解除)というのもあった。
昔から品行不正!のバンドである。
(でも奥さんが戻って来た10月以降はこの手の事件は起こさなくなったようである)
(*1)「(スカイヤーズの)Bun-Bunが客の女にキスしたのは本人喜んで「嬉しい!」とブログに書いてたのに」と私には文句を言っていたが、顔と人望の違い!
樟南は“抱かれたくない男WORST 10”にランクインしたこともある!一方でBun-Bunは“抱かれたい男BEST10”に過去3回ほどランクインしている。
“抱かれたい男BEST10”には過去にはアクアもランクインしたことがあるが、最近はアクアは間違い無く女だろうと多くの人が思っているので、この手のランクには入らなくなった。アクア男性説を取る僅かな人たちも、多くは「男の子だけどちんちんは無いんだろうな」と思っているようである。
一方“お嫁さんにしたい芸能人”ではアクアは昨年・今年と2年連続トップである!
今回のフェスで(リアルタイムの)接続回線数 Top 10 は下記であった。
1.アクア
2.ザルツィッヒ・ザッハトルテ
3.常滑真音
4.UFO
5.ハイライトセブンスターズ
6.ローズ+リリー
7.スパイスミッション
8.スリルボカン
9.ステラジオ
10.ゴールデンシックス
アクアに負けるのは仕方ないと言っていたハイライトセブンスターズの∞∞プロ鈴木社長が、常滑真音にもUFOにも負けたので、物凄く悔しそうだった(しばらく誰もそばに近寄れなかった!)一方、ζζプロの兼岩会長は、UFOが4位に入ったので、超ご機嫌だった。
もっともタイムシフトで見た人の数が集計されてくると、9月末までには、ハイライトセブンスターズがUFOを逆転した(上位3者は動かず)。
結局、UFOのメインのファン層である10-20代の男子がネットに強いので確実に接続できたのに対して、ハイライトセブンスターズのファン層は女性が多いので、接続の仕方が分からない内にもう終わってた、などという人が結構あったようである。それで友人などに尋ねて遅れてタイムシフトで見た人たちがあり、逆転に至ったようだ。
タイムシフトでは、リアルタイムで12位だったスカイヤーズも10位まで上昇した代りにスパイスミッションが8位以下に抜かれて11位に転したが、この付近は元々数字が接近していた。
2021年9月1日(水).
ネットフェスが終わった翌日。
水森ビーナのデビューシングル『女子高生の味方』『午後の一息』が発売された。
前者はビーナが5月以来出演している松芝電機のヘアドライヤーCM曲である。この発売に合わせて新たに撮影したCFも流れている。そのCFのシーンも取り込んだMVがDVD付きの版には収録されている。
MVでは(女子)制服を着たビーナが、急な雨に降られ、曲がり角で男の子と衝突しそうになって転んで(パンは咥えていない)、更にトラックの水はねで、全身泥水だらけになるも、お風呂に入って(お風呂シーンはむろん首から上だけ)、洗濯済みの服(ビーナがCMに出ているカタエアの服だと指摘されていた)を着て、ヘアドライヤーで髪も乾かせば元通り!というストーリーになっていた。またスタジオで歌う場面も撮影されているが、伴奏をしているのは↓のメンツであった。
Gt.鈴原さくら
B. 鈴鹿あまめ
Dr.長浜夢夜
“次のデビュー候補生”だとファンの間では騒がれていた。
『午後の一息』は缶コーヒーのCM曲で、これもこの日から放送やネットに流れる。
これのMVはCFの“完全版”になっている。
まず大量の多種多様の缶コーヒーの入った袋が出て来て、そこにビーナが手を入れて取りだしたら、それがこのCMをしている「波旡BAN」のカフェオレ・スノーホワイト味だった。それを手に取ってビーナが
「スノーホワイト?」
と呟くと、白雪姫に変身する!という趣向になっている。そしてそこにリンゴ売りのお婆さん(演:篠原倉光←また女装させられた)が来ても
「いりません。波旡BANG(*2)さえあれば幸せなの」
と言って追い返してしまい、缶コーヒーを飲みながら、美味しそうなケーキ(ビーナがCMをしているチェーン洋菓子店“シューセプルク”の商品だと指摘されていた)をのんびりと食べているというストーリーになっていた。
こちらでもスタジオで↑3人の伴奏を背景に歌う所がMVには含まれている(CFには無いシーン)。
(*2)「ばんばん」と読む。“波旡”(ばん)は明治時代に使われたコーヒーの訳語のひとつだが、現代でもよく喫茶店の名前に使用されている。
なお、このセリフはCFのものである。CD添付のDVDの動画では「カフェオレがあれば幸せなの」に置換されている。またCFでは多数のコーヒー缶から波旡BANG(ばんばん)を選び出すが、こちらのDVDでは、サイダー・ジュース・お茶など多様な缶が入っている袋からカフェオレを抜き出す。
発売日には、ビーナとコスモスの2人が並んで簡単なネット記者会見をあけぼのTVを通して放送した。記者チケットを請求してこれに参加した記者さんが50人も居て、コスモスが仰天した。新人でこんなに注目されるのは珍しい。
コスモスがビーナのプロフィールを説明する。
「2005年5月20日北海道帯広市生まれの高校1年生。牡牛座。血液型はAB型です」
とコスモスが言うと
「牡牛座ですか?」
と確認の質問がある。5月20日というのは結構微妙な日付である。
「ギリギリ牡牛座です。2005年は5月21日朝7:48から双子になるようです」
とコスモスは説明する、質問される可能性を考えて、確認していたようだ。
(*3)牡牛座と双子座の境界
2003.5.21 20:13
2004.5.21 02:00
2005.5.21 07:48
2006.5.21 13:33
2007.5.21 19:13
2008.5.21 01:02
2016年なら星座境界は 5/20 23:38, 2020年なら 5/20 22:50 となって、境界が5/20に入り込む年もある。
「高崎ひろかちゃん、松梨詩恩ちゃんの妹さんですよね?」
「姉たちが歌手・女優として活躍しているのを見て育っているので、自分もその内、歌手や俳優になりたいと思っていたようです」
コスモスは“妹”という言葉も“女優”という言葉も使っていない!
好きな歌手、目標とする歌手を訊かれて、ビーナはその姉2人の名前を挙げた。
「外国の歌手で好きな人いますか?」
と記者は質問を変えた。
「フィービー・ブリジャーズ (Phoebe Bridgers) とか好きかも。ひろか姉が『Stranger in the Alps』持ってたんで聴きましたけど、いいなあと思いました。キング・プリンセス (King Princess) も結構好きです。あと、オリヴィア・ロドリゴ (Olivia Rodrigo) にも注目しています(*4)」
「キング&プリンス?」
「いえ。名前が似てますけど、キング・プリンセスというアメリカの歌手がいるんですよ」
記者たちの中にはこういう名前が分からない人もあったようなので、コスモスがその3人の名前をホワイトボードに書いて提示し、記者たちはメモしていたようであった。
アヴリル・ラヴィーンとか、アリアナ・グランデとか言われれば、みんな知っているが、こういう新興勢力?は、洋楽好きな人でないと分からないかも知れない。
「キング・プリンセスって、名前が男女混淆してますが、念のため性別は?」
「本人も自分の性別はよく分からないと言っているようです」
というビーナの返事で困惑している記者もいる。
「法的な性別は女性で、一応代名詞は she を使ってくれといっているようですけどね」
この説明で、何となく把握した記者が多かったようである。
(*4)↓参考までにビデオ
King Princess "Rain"
https://youtu.be/NG3LPrqNStM
普通のメディアだと発禁になりそう。レスビアン色たっぷりです。
「自分は49%くらいしか女ではない」という発言もあったらしい。但し上にも記述したように、本人は自分を she/her の代名詞で参照して欲しいと希望しているそうなので、女が49%だとしても男の比率は多分もっと低い(30%くらい?)のでしょう。
Phoebe Bridgers "Motion Sickness"
https://youtu.be/9sfYpolGCu8
この人はバイだそうです。
Olivia Rodrigo "good 4 u"
https://youtu.be/gNi_6U5Pm_o
女優の方がメインのようです。今年1月に出た sour が多分最初のアルバム。
ちなみに過去に高崎ひろかは「弟がいる」というのを何度か発言していたので
「弟さんじゃなくて妹さんだったのか」
という声もネットでは結構見られた。
「男っぽい性格で、からかわれて弟と呼ばれていたのでは?」
「いや、弟さんと妹さんがいたんだよ。今回はその妹さんがデビューした」
だれもビーナが“弟”であるという可能性を全く考えていない!
ビーナは5月から『青空高校の午後』に出ていたし、ドライヤーのCMで注目され、7月からは『シンドルバッド』のニャンドル役としてまた注目された。そもそも、“松梨詩恩の妹が近いうちにデビューするらしい”という噂は今年初め頃から流れていた(多分“氷の家”でのエアコンCM放映以降)ので、発売スケジュールが発表されて以来、かなり予約が入っていた。それで初日に15万枚売れ、一週間で25万枚を突破。いきなりプラチナディスクとなった。§§ミュージック9人目のプラチナ歌手の誕生であった。
↓現在の§§ミュージックのプラチナ歌手
ミリオン:アクア、常滑真音、ラピスラズリ
ダブルプラチナ:白鳥リズム、品川ありさ
プラチナ:姫路スピカ、高崎ひろか、エーヨ、水森ビーナ
そして高崎ひろかとの姉妹プラチナである!
過去に姉妹ゴールドなら、岩崎宏美(聖母たちのララバイなど)と岩崎良美(あなた色のマノンなど)、倖田來未(youなど)とmisono (datとしてmoon gateなど)といった例もあるが、姉妹プラチナは恐らく初めてではないかと言われた。
(姉妹女優は多いが、そもそも姉妹歌手で両方売れた例がひじょうに少ない)
しかし物凄い売れ行きになったことから、ビーナは各種歌番組にも呼ばれることになる。しかし元々予定がびっしり詰まっているビーナのスケジュールに歌番組の出演を割り込ませるのは困難を極め、月原美架が頭を悩ますことになる。
現在ビーナは2時間ドラマ『青い鳥』の撮影の真っ最中なので、結局歌番組の方は半分くらい「申し訳ないが時間が取れない」として辞退することになった。するとまだ予定の確定していない9月下旬でもいいから出てくれという要請がされて、どんどんビーナのスケジュール表が凄いことになっていく。
ビーナのデビュー・シングルが出てから話題になったことがある。
それが先日出たアクアの写真集である。ビーナはこの写真集にもかなり写っているのだが、他の子が侍女の格好をしているところでビーナは1人だけ将軍の格好とか、騎士の格好とかしていたり、“七人の小人”では、リーダーの小人の役をしていたり、結構“目立つ”のである。
おそらくデビューに向けてのプロモーションだったんだろうなと随分書かれていた。
実際は“唯一の男子”だったから、他の子と違う衣裳だっただけだが!
(夢夜はほぼ女の子だし、セレンとクロムは女の子の服を着たがる)
私とコスモスは、♪♪ハウスの白河社長を、四谷のオフィスに訪ねた。
「大変申し訳ないのですが、お願いがあります」
とコスモスは言った。
「ビーナちゃんの件かな?」
と白河さんはだいたい用件を予想していたようである。
「詩恩ちゃんが物凄く忙しくて、スタンドインが必要ということで、あの子を北海道から呼んだのに、本人自身が無茶苦茶忙しくなってしまって」
とコスモスは弁明する。
「誰が売れるかとか全く予想できないもんなあ」
と白河社長は理解を示す。
「水森ビーナは松梨詩恩のスタンドインから外そう」
と白河さんの方から言ってくれた。
「済みません」
「スタンドインは他の子でも行けるけど、ボディダブルが必要な場合はビーナちゃん使わせてよ」
「分かりました。それは今まで通り、ビーナのスケジュールボードに予定を直接書き込んでいただければ」
「じゃそれお願いするのと、スタンドイン役はこちらから指名させてもらえない?」
「はい、いい子がいれば」
(なんか人身売買みたいだ)
「スタンドインは本人より前の時間帯で使うことが多いからさ、学校に行ってない子の方が助かるんだよ」
「確かにそれはありますね」
と言いながら、コスモスはだったら、三田雪代あたりをご希望かなと思う。現役信濃町ガールズで、唯一高校を卒業しているのが三田なのである。あの子は歌唱力もあるし(音域が必ずしも広くないけど)、身長も詩恩に近い。演技力は・・・どうだったっけ??
ところが白河社長のリクエストは意外なものであった。
「佐藤ゆかちゃん、ちょうだいよ。あの子、松梨詩恩と同い年だし、身長も近いよね?」
コスモスは驚いた。必死で考える。
「え、えっと詩恩ちゃんと、佐藤ゆかはほとんど同じ背丈だったはずです」
ふたりが浴衣を着て並んでいるのを見たことがあるが、確かほとんど同じ高さだったという記憶があった。
「運転もできたよね?」
「はい。四輪もバイクも行けます」
実は松梨詩恩がバイクに乗るシーンは結構ある。詩恩といえばバイクというイメージが形成されつつある。詩恩ブランドのライダースーツまで売られている。
「だったら最適。佐藤ゆかはとにかく演技力がある。あの子も今若いガールズとかの付き添いとかよくやってるみたいだけど、スタッフみたいな使い方はもったいないよ。詩恩のスタンドインを1〜2年務めて、その間に演技の経験も積み、顔も覚えてもらって、本格的な女優の道を歩むというのは本人にとってもいいことだと思うんだ」
コスモスは私と顔を見合わせる。
佐藤ゆかは実はたくさん予定が入っている!
「容子ちゃんに頑張ってもらうか」
「容子ちゃんの仕事はどうする?」
「付き添いの仕事とかは、亜蘭にやらせようよ」
「そうか。あの子は使える」
「配膳係は誰か適当な人を雇えばいい」
ということで、私とコスモスの短い会話で、当面松梨詩恩のスタンドインは佐藤ゆかを専任で当てることが決まったのである。
佐藤ゆかには当面♪♪ハウスから直接指示を受けてほしいと、コスモスが直接彼女を呼んで頼んだ。
「あのお、今かなり若い子たちのサポートをしてるんですが」
「それは秋本亜蘭にさせようと思う。一応免許取って1年以上経ってるし」
秋本亜蘭は現在、配膳係のほかに結構な雑用をしてもらっているので、車でかなり走り回っており、運転経験(特に都内の運転経験)は充分である。亜蘭が使われているのは、やはり26歳で元歌手のひまわりより、20歳未経験の亜蘭の方が気軽に雑用を頼みやすいというのがあった。
「配膳係は?」
「誰か適当な子を雇う」
「あのぉ、リセエンヌ・ドオの活動は?」
「ごめーん。今、作曲家さんたちに余裕がなくて」
これはオリンピックで青葉も千里もしばらく使えなかったので、本当に手が足りてないのである。
なお、若いガールズとかの付き添いをしてと頼まれた秋本亜蘭は大喜びで引き受けた、
「海浜ひまわりの従妹の海浜ひるがおです、と言って君もテレビ局とかの人に顔を覚えてもらうといいよ」
「それもしかして私の芸名ですか」
「これ名刺ね」
と言って、コスモスは彼女に《§§ミュージック・海浜ひるがお》と書かれた名刺を渡した。
歌手とかタレントとか、あるいはマネージャーとかも肩書きが書かれていない実に曖昧な名刺だ。しかし亜蘭は喜んでいる。
「すごーい!もう名刺ができてる!」
名刺印刷機があるので、このくらいは10分でできる。ちなみに“海浜ひるがお”という名前もコスモスが5分で考えた名前である!
(最初「海浜あさがお」というのを考えたが、たまたま事務所に来ていた千里が「それ語感が暗いし、画数も良くない」と言ったので、ひるがおになった。“ゆうがお”でもいいが、両者の吉凶は微妙という。でも“ひるがお”は外格が良いから、タレントとしてはそちらがいいかもと千里は言ったらしい。外格は周囲の人から支援されることを表す)
海浜ひるがお 総29◎無限挑戦 地10×破滅誤解 人11◎成長大樹 外18○難関突破
海浜ゆうがお 総31◎円満順風 地12△天地波乱 人12△天地波乱 外19△不達挫折
海浜あさがお 総33○大河合流 地14△離散徒労 人13◎和合繁栄 外20□分裂統合
実はどれも微妙な名前だが、多分この子がタレントになることはあり得ないから、大きな問題はないだろう!?
音痴でギターも下手、ピアノは弾けないし、リズム感も良くなく、滑舌も悪いので、使い道が無い!(でも本人は歌手志望)
なお新しい配膳係は、募集を掛けて、稲田あかり・ひかり、という22歳(3月に大学を出たばかりらしい)の双子女子がホームページに募集広告を出した翌日に「一緒に雇ってください」と言ってきたので2人とも採用した。大学を出ても仕事がなく困っていたらしい。
しかし2人は着ている服も同じものだし、とても仲の良い姉妹のようだ。ついでにどちらがあかりで、どちらがひかりかは外見だけでは、全く見分けがつかない!
ついでに履歴書は1枚である。
「同じ日に同じ場所で生まれて、同じ学校に通い、運転免許とか秘書検定・簿記・MOSとかも同じ日に取りましたから、履歴は全く同じです」
と2人は言っていた。
「生まれが寛政10年って書いてあるけど」
「すみませーん。変換ミスです。平成10年です」
寛政10年は後で確認したら1798年で本当に寛政10年生まれなら222歳ということになるが、222歳には見えない。たぶん平成10年生まれの22歳でいいのだろう。
ひまわりは「増員は助かる」と喜んでいた。
稲田姉妹は、現在の住まいが(大学生時代に住んでいた)さいたま市のアパートということで、遠いので、臨時厨房の空き部屋に引っ越してきてもらうことになった。つまり、ひまわりのお隣さんになる。部屋は2つ用意できると言ったのだが「同じ部屋がいいです」というので、ひとつの部屋にベッドを2個運び込んだ。本当に仲のよい姉妹のようだ。
女子寮生の間で、しばらくは「あかりちゃんとひかりちゃんの見分け方」が話題になったが、最初に気がついたのは、水谷雪花だった。
実はあかりちゃんは右利きで、ひかりちゃんは左利きであった。小さい頃、向かい合って座ってたからこうなったと言っていた。双子にはありがちである。
雪花も左利きなので、このことに気付いたのである。
天月和紗(桜木ワルツ)の妊娠という事態を受けて、どうしても人手が足りなくなるので、私たちは、アクア・葉月のマネージングのサポート役として、取り敢えずバイトなのだが、鐘崎絢水(かねさき・あやみ)ちゃんという子を採用した。
都内の国立大学に通う大学4年生である。
実は青葉から「雑用係でもいいから使ってもらえませんか」と頼まれたのである。青葉の2年後輩(1999年度生)らしい。
大学4年生なので、就活しなければならないのだが、ここまで面接10連敗らしい!それは彼女が男の娘だからである。
しかし私とコスモスは彼女と会ってみて
「君、ほんとに男の子なの?」
と訊き直した。
「ええ。お恥ずかしいですが」
と答える声が男声である。
なるほどー、この容姿でこの声なら「面接10連敗」の意味が分かるというものだ。
「運転免許は?」
「大学1年の時取りました」
「運転経験は?」
「千葉市内に叔母が住んでいて、その叔母の車を借りてだいぶ練習しました」
「都内の道の運転経験はある?」
「はい。下道も首都高もだいぶ慣れました」
私とコスモスは顔を見合わせる。
「これプライバシーに関することだから、答えなくてもいいけど、去勢しているかと、女性ホルモンを使っているかを、もしよかったら教えて。誰にも口外しないから」
これはつまり女性と2人きりにできるかという問題や、更衣室の使用などに関わる。女性用更衣室に入れていいかどうかは、仕事での使い方上、大きい。
「高校2年の時に、姉からお金を借りて、都内の病院で去勢しました。女性ホルモンもそれ以降ずっと摂っているので、今バストがBカップくらいあります。この件は他の人に言っても構いません」
「性転換手術はしてないんだよね?」
「あのぉ手術した方がよいのでしょうか?」
「いや、性転換手術なんて個人の自由たけど、今手術受けられて、何ヶ月か休まれたら困る」
「あ、そうですよね」
私とコスモスは顔を見て頷き合った。
「じゃ君、取り敢えず仮採用で。3ヶ月経って問題なければ本採用」
「ありがとうございます!」
ということで、鐘崎絢水ちゃんを取り敢えず、葉月の送迎に使うことにしたのである。むろんある程度見極めるまではアクアの送迎には使えない!
彼女は出生名は「鐘崎絢人」らしいのだが、20歳になった時点で「絢水」に改名済みらしい。
「実は中高生の頃、生徒手帳の“絢人”の“人”という字に筆画を書き加えて“絢水”にしてたんです。公文書偽造になるけど」
「“人”に書き加えて“水”になる?」
「はい」
と言って、やってみせたが、確かに“水”に見える。やや字形が不自然ではあるが。
「良一を良子とか良美にしてた、みたいな人はよく居るけどね」
「みんな気持ちは同じですよね。でも改名を認めてもらったから助かりました。性別変えなくても改名だけでどこでも女としてパスするので凄く楽になりました。特に運転免許は性別が記載されてないから助かるんですよ」
「うん。助かると言う人多い」
「同級生にお願いして、暑中見舞いや年賀状を“絢水”名義で送ってもらっていたので、永年使用が認められたんですよ」
「お友達に協力してもらえてよかったね」
「はい。いい友だちを持ちました」
彼女は高校は一応男子制服で通学していたものの、女子制服も所有していて、部活(茶道部)では、その女子制服や、女物の浴衣を着ていたらしい。
なお、彼女の身元保証人は、お母さんと、千葉市内に住んでいる叔母さんが署名してくれた。
また彼女には、女声習得のため、ボイトレに通うことを勧めた。それで毎週1回、トレーニングに通うことにした。
むろん葉月は、彼女が男声で話していても、全く気にしない。
2時間ドラマ『青い鳥』の撮影は、9月3日(金)から始まった。↓が主な配役である。実は当初の企画からかなり配役が変更になっている(コスモス承認済み)。
光/アンジェラ《主役》恋珠ルビー
ミチル《準主役》水森ビーナ
チレット《アンチヒロイン》坂田由里
チルチル 石川ポルカ
チロ 西宮ネオン
父 峰沢義紀
母 古賀紀恵
妖精ベリリューヌ/ベルランゴ夫人 入江光江
その他の精霊 信濃町ガールズ
祖父・祖母 中平弦太・室川紫織
夜の女王 峰沢義紀(二役)
樫(声)黒沢七郎
狼(声)中山大造
母の愛 古賀紀恵(二役)
金持ち・酒飲み 丸呑ワンダ・丸呑ジョージア
幸せの国の住人 ○○ミュージックスクールの生徒
未来の国の子供たち 劇団桃色鉛筆
時の番人 金居弘信
シナリオを書き上げてみると、どう見てもチルチル・ミチルより光とチレットが目立つということになり、プロデューサー・監督・脚本家で検討したのだが、再度原作も読んでみて、結局青い鳥の主人公はどう考えても“光”であるという結論に達した!それでコスモスに打診した所、ルビーは“光”でよいということになり、ビーナは“チルチルより目立つミチル”ということで、準主役とする。(シナリオ上でミチルのセリフをチルチルより増やした)
そして何と言っても目立つ“ダークヒロイン”のチレット、それとついでにチロの配役は§§ミュージックさんにお任せします、と言われてしまった!
コスモスとゆりこが忙しい中、あらためて原作を読んでみた所、確かに光とチレットの目立ちようが凄いと納得する。
チレットは目立つものの、汚れ役なので、誰を当てるか悩み、桜木レイアか花咲ロンドにお願いできないかと言っていた所、たまたま別件(常滑真音に関する打合せ)で事務所に来ていた坂田由里が言ったのである。
「その役(チレット)、私にやらせてもらえませんか」
と坂田由里は言った。
「へー!」
「汚れ役だけどいいの?」
「全然平気です。意地悪な女を演じるの大得意です。私、根が意地悪だし」
「うーん・・・」
「私、3月頃から、舞音ちゃんの付き添い随分して、間近で彼女見てて、彼女の凄さにもう圧倒されて、とても同い年とは思えないくらい堂々としてるし。私も何かやりたい!という思いが募ってたんです」
「確かに舞音ちゃんも、朋ちゃんのこと気に入ってるみたいね。よく付き添いに指名している感じだし」
「ダークヒーロー上等です。目立つ役ならお金払ってもやりたいです」
「分かった。じゃ君にやってもらおう。でも演技力不足と判断されたら降ろされるかも知れないからね」
「私、本質は性悪なのに表面的に優しい女演じるのは得意だから、青い鳥のチレットなら、私の地(じ)だと思います」
「うん。じゃ君を推薦しよう」
なお、チルチルは、ビーナより年上の石川ポルカ(高3)を当てることにした。チロは男性の役柄なので、西宮ネオンを当てた。
ポルカを起用したのは、実はもし坂田由里が実力不足と監督などから判定された場合に短時間で交替できるようにするためでもある。ポルカも「汚れ役OKです」と言ってくれた。このことはポルカと、ビーナの付き添い・青野桃仁花にだけ言ってある
チルチルはあまり演技力を問われない。
なお、坂田由里はB契約なので、ギャラの取り分が2割しかないが、この仕事に関しては、特にA契約のタレント同様4割もらえるものとした。契約の変更については、また後日考えることにする。
また《§§ミュージック・アーティスト・坂田由里》という名刺を作ってあげたら、喜んでいた!
(ちなみにこの日はこの後、いつものように常滑舞音の付き添いをしっかり務めた。舞音は由里が大役をもらえたことを喜んでくれたので、舞音ちゃんって本当にいい人だなあ、と由里は思った)
『青い鳥』の撮影では、最初に監督さんがこの物語の位置付けに関して、簡単な説明をした。
「実は『青い鳥』、フランス語でいうと"L'Oiseau bleu"(ロワゾ・ブル)という物語は2つあります。ひとつがこのメーテルリンク (Maurice Maeterlinck) が1908年に書いた舞台用の劇。もうひとつはオルノワ夫人(*5)が1697年に書いた童話です。チャイコフスキーのバレエ『眠れる森の美女』の結婚式シーンに“青い鳥とフロリーヌ姫”というのが出て来ますが、これがオルノワ夫人の童話の主人公ですね。チャイコフスキーが『眠れる森の美女』を書いたのは1890年で、この時代にはまだメーテルリンクの舞台劇は無かったんです」
と監督が言うと
「そうだったのか!」
「誤解してた!」
という声が多数あがっていた。
(*5)オルノワ男爵夫人 Baronne d’Aulnoy, 実名 Marie-Catherine d'Aulnoy, マリ・カトリーヌ・ドルノワ。出生名 Marie-Catherine Le Jumel de Barneville. 日本では ドーノワ夫人という、英語式?に読んだ読み方も随分広まっている。
「元々のオルノワ夫人の童話では、青い鳥に変えられてしまったシャルマン(Charmant)王子、英語だとチャーミング王子を、フロリーヌ(Florine)姫、英語だとフロリーナ姫が苦労して元に戻してあげる話です」
「全然違う話ですね!」
「メーテルリンクは現代の人なんだよね。1862年生れで1949年に亡くなっている。彼は第二次世界大戦でドイツがフランスを占領したことに怒っていたから、自分の作品はドイツと、その同盟国であった日本には絶対版権を渡すなと遺言してる」
「それなのに日本で出版したり上演していいんですか〜?」
「よく分からないけど、遺族と話がついたんじゃない?ちなみに日本語訳は彼の生前からとっくに出版されていた。彼の死後もたくさん出版されてるし」
「ああ」
一応今回の制作に当たっては、中映がフランスの友好映画会社ラマンを通して、著作権を管理していた所から承諾を得ていることも説明された(*6).
(*6)メーテルリンクは1949年に亡くなったので、2019年12月31日で作者の死後翌年から70年、という保護期間は終了し、本来著作権は消滅したはずである。ところが日本では“戦時加算”のため著作権が約10年延長された可能性がある。ただ実は、規定が微妙で本当にまだ保護期間なのかは、よく分からない。今回の中映による交渉でも向こうは「許諾が必要なんだっけ?」と驚いていた。
戦時加算の規定は、個々の作品について適用されるかどうか、また何年加算されるかを調査するのがかなり困難であり、実際調査不能な作品も多い。本国ではとっくに著作権フリーになっているため、どこが著作権を持っているかの調査も困難な場合もある(有名作家ほど著作者の子孫が持っている可能性は低い)。
また、戦時加算は日本だけに課されている(戦争の張本人であるドイツには課されていない!)極めて不合理なものであり、現在日本政府は各国と解消に向けて交渉を重ねている。フランスからは好意的な返事をもらっているが、まだ正式な解消には至っていない。(多分勝手に制作しても、よほど原作レイプした作品でない限り、向こうはクレームしてこないと思う)
その後、メーテルリンクの舞台劇のあらすじが説明されてから撮影は始まる。
チレット役の坂田由里に関しては、これまで“その他大勢”みたいな役しかした経歴がないのて、監督も最初は不安がっていたようだったが、夜の女王を唆して意地悪させる所、その後何食わぬ顔でチルチルたち一行に戻る演技が、本当に表面だけ取り繕うのがうまい性悪な女という感じで、監督が感心していた。むろん坂田由里でそのまま行くことになった。
クリスマスイブ。貧乏なチルチルとミチルの家にはクリスマスなど来ようも無い感じであった。父と母は各々仕事に出かけていて、子供2人だけが取り残されている。
近くの家で賑やかなクリスマスパーティーが開かれているようであるのを寂しく音だけ聴いていた。それでもミチル(水森ビーナ)は聞こえてくる音楽に合わせて踊り、つられてチルチル(石川ポルカ)も一緒に踊った。
そこに唐突に妖精のお婆さん(入江光江)が入ってくる。そして病気の孫のために“青い鳥”を探して欲しいと頼む。
「青い鳥ですか?」
「うちの、みーちゃんはあまり青くないしなあ」
と言って、鳥籠を見る。中に居る鳥はやや水色っぽいが、どちらかというと白に近い。
(美高監督のお姉さんが飼っているセキセイインコでわざと白っぽい子を連れてきて映している)
妖精ベリリューヌは、チルチルにダイヤモンドの付いた帽子を渡した。
このダイヤモンドの力で家の中のものが活性化する。
最初に12人の時計の精(信濃町ガールズ関東の中学生メンバーから選抜)が出現する。お揃いのピンクのドレス(1〜12の数字が書かれている)を着て躍っている。
そして、パンの精(立山きらめき)・砂糖の精(美崎ジョナ)・ミルクの精(鈴原さくら)・火の精(夕波もえこ)・水の精(薬王みなみ)と出現。
チロ(西宮ネオン)とチレット(坂田由里)が対のように出現する。ここでチロは白い衣裳でチレットは黒い衣裳である。最後に光の精(恋珠ルビー)がまばゆい光に包まれて登場した(“まばゆい光”はCGで書き加える)。
そこに両親(峰沢義紀・古賀紀恵)が帰宅するので、チルチルは慌ててダイヤモンドを戻して現実世界に戻す。その回し方が急すぎたので、十二人の時計の精は慌てて時計の中に飛び込んだが(あんまり慌てていたので文字盤の数字の並びがメチャクチャになった!!)、他の精たちは戻ることができず、現実世界に取り残される。
そこでベリリューヌは、光に、チルチル・ミチルを案内して、青い鳥を探してきて欲しいと頼むのであつた。それで一行は出発した。
ドアを開けて中に入ってきた両親は、家の中が賑やかになっていた気がしたのに、ドアを開けてみると誰も居ないので首をひねった。
「子供たちはどこ?」
「お友だちの家にでも行ってるのかしら」
ここで父親役の峰沢義紀さんは実年齢が40代だが、古賀紀恵さんはまだ24歳である。しかし“老けメイク”で40代に見えるようにしている。この理由は後述する。
最初に行ったのは“想い出の国”(Le Pays du Souvenir)である。ここでチルチルとミチル(石川ポルカと水森ビーナ)は、数年前に亡くなった祖父母(中平弦太・室川紫織)と語り合う。
原作ではここに幼くして亡くなったミチルたちの兄弟が出てくるのだが、今回のドラマは「できるだけ密を発生させない」という観点から登場させていない。
おじいちゃんたちが青い鳥を持っているのを見てもらってくるが、現実世界に戻ると、鳥は黒くなって死んでいた。
(鳥はロボットを使用している。小道具係さんの力作!で、本物の鳥のような外見に加工してある)
次は夜の宮殿 (Le Palais de la nuit) に行くのだが、チルチルたちに先行してチレット(坂田由里)が、宮殿に行き、夜の女王(父親役・峰沢義紀の二役)に「今から人間の子供たちが青い鳥を奪いに来ますよ」と告げ口をする。この坂田由里の演技がほんとに性悪女っぽくて、参加しているおとなの役者さんたちが「凄いね、この子」と感心していた。
なお、父親役の峰沢義紀さんは、普通の(多分)ノーマルな男性俳優さん(*7)だが、昔から女役もこなしており、よく“女魔法使い”とか“意地悪な女王”とかの役をしている。昨年はテレビドラマで江戸川乱歩の黒蜥蜴を演じている。
声は男声でも女性の話し方ができるので、知らないと普通に女優さんと思ってしまう場合もある。むろん男役をする時はちゃんと男の話し方をする。
若い頃はハムレットのオフェーリアを演じたこともある。今回は夜の女王の方がメインで、父親役はついでである!(しかし「青い鳥」で夜の女王と父親を同じ役者さんが演じる例は時々あるようだ)
(*7) 元女優の女性と結婚して高校生・中学生のお子さんもいる。むろん性自認と恋愛対象は別々ではあるが。
チレットの告げ口で、夜の女王はチルチルとミチルに随分意地悪をして関係無い部屋のドアをたくさん開けさせるのだが、チロ(西宮ネオン)の活躍もあり、部屋から飛び出してきた、邪悪なものは全て向こうの世界に押し返した。そしてとうとう月の間まで辿り付いてしまうので夜の女王も根負けして、その部屋の扉を開けることを許し、鍵を渡す。
すると月の間の中にはたくさん青い鳥が飛んでいる。チルチルとミチルはその青い鳥を3匹も捕まえて籠の中に入れた(多数の青い鳥が飛んでいるシーンはCG)。しかし現実世界に戻ると、3羽の青い鳥は3羽とも死んでいた。
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【夏の日の想い出・ラブコール】(5)