【夏の日の想い出・戯謔】(3)

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2018年の春、私がマンションで「上島問題」の対策を千里・川崎ゆりこと話しあっていた(コスモスがあまりに多忙だったのでゆりこが代理で来ていた)時、若葉が遊びに来た。最近のCDを少し貸してということだったので適当に持って行ってと言ったらリビングの棚を眺めていた。
 
ちょうどその時、テレビ局の人が来訪したが、バスケットチームの支援をしてくれる企業を探しているという話だった。どうも私にも数百万出してもらうことはできないか?のような話だったようである。ローズ+リリーが毎年東北復興支援のライブをやっていることからであろうか。
 
「女子ですか?男子ですか?」
「男子です。東北のチームでBリーグにも所属しているのですが、メインのスポンサーが撤退するので、資金難に陥る危険があるのですよ」
 
と言っているが、本人はあまりバスケットに詳しくないのだろうか。日本女子代表の千里がここにいることに気付いていないようである。
 
「それどのくらいの支援が必要なんですか?」
「チーム関係者が奔走しているのですが、最低でもあと3000万円くらいないと、チーム解散の危機もあります」
 
「それをポンと出せる企業ってあまり無いですよね」
と私が話していたら、若葉が寄ってきた。
 
「それどこのチームなんですか?」
「福島市を本拠地にするアブクマーズというチームなんですよ」
「あそこは阿武隈交通がメインでしたよね?」
と千里が言う。
「お詳しいですね。それが昨今の鉄道不況で経営が苦しいので撤退することになったんですよ」
とテレビ局の人は言っている。本当に千里を認識していないようだ。
 
「3000万くらいなら私出そうか?」
と若葉は言った。
 
「あなたは?」
「都内で飲食店のチェーンを経営しているのですが、宮城県の飲食店にも出資している人なんですよ」
と私は若葉を紹介した。
 
「おお。東北にも縁のある方でしたら、ちょっと相談に乗ってもらえませんか?」
「いいですよ」
 
それで若葉はそのチームの人に会うことにしたようであった。
 
それが2018年の春のことだった。
 

“クロスロード”の集まりは後に結構人数が増えていったのだが、初期メンバーは下記である。これは2011年6月28日に川口市内のビストロに集まった10人である。
 
和実・淳・胡桃、あきら・小夜子、青葉、千里、桃香、冬子、政子
 
この中で天然女性は、胡桃、小夜子、桃香、政子の4人である。
 
それ以外の6人の内、この時点で性転換手術を受けていたのは私だけと、当時は思っていたのだが、実際には、千里は間違い無く手術済みであったし、和実もかなり怪しい。青葉も実は手術済みだった可能性が高い気がする。本人たちは千里と青葉が2012年7月18日、和実が7月25日に手術をしたと主張している。
 
しかしそれでまだ手術をしていないのは、あきら・淳の2人だけになったのだが、淳は2018年9月12日に手術を受けた。そして最後の1本のおちんちん、もとい、最後の1人となっていたあきらが2018年12月3日(月)に国内の病院で性転換手術を受けた。本人は自分は女の子になりたい訳ではないと常々主張していたのだが、周囲に乗せられてしまった感はある。むろん本人も女の身体になるのが嫌という訳ではなかったようなので、手術を受けてお股の形が変わってしまったのを見て「まあいいか」と思ったようであった。
 
奥さんの小夜子さんとの間に子供も4人作ったし、おちんちん自体はもう2年ほど前から全く勃起しないようになって排尿以外の機能を喪失していたし、その排尿にしても彼女(彼?)は立ってすることはなく、女子トイレしか使っていない状態だったので「無くても困らない」状態ではあった。
 
それでも無くしたくないと言っていたのは本人としては自分は男という意識があったからなのだろうが、手術が終わった後は「これいいかも知れない」と言っていたので、まあ手術して良かったのだろう。
 
なお彼女(彼?)は小夜子さんとの婚姻を維持するため戸籍上の性別は変更しない。これは和実との婚姻状態維持のため性別変更しない淳と同様である。実態上の性別と戸籍の性別が異なるのは様々な不都合を引き起こすが仕方ない。
 

「姉貴の性別がはっきりしないから、私、長女なのか次女なのか曖昧だったけど、これで正式に次女になった」
 
などと北海道から出てきた妹の紘(ひろ)さんは言っていた。もっともあきらは既に結婚で戸籍を分けているし、そもそもあきらは戸籍上の性別を変更する意志は無いので彼女は、法的には長女のままである。
 
他にあきらのお母さんと従妹も来ていた。
 
お母さんなど
「高校出たらすぐ性転換するかと思っていたのに、随分時間が掛かったね」
などと言っていた。
 
あきらはパートナーが女性なので、最後までヴァギナを造る完全な性転換手術と、ヴァギナは造らず陰裂と陰核のみ作る簡易性転換手術のどちらにするか悩んだようだが「アッキーが女の子になったら入れてみたい」と小夜子が言ったので、侵襲が大きく身体に負担は掛かるものの完全性転換手術を選択した。
 
手術直後はかなり痛かったようだが、東京で合宿中の青葉がリモートでヒーリングしてくれたので、かなり痛みが緩和されたようである。
 
あきらは1週間入院して12月10日に退院。埼玉の自宅に戻った。私と政子は多忙で富山までは行けなかったものの、帰宅した所で“お祝い”に出かけた。政子は「女の子になったお祝いに」と言って、物凄く可愛いワンピースをプレゼントしたが「こんな可愛いの着て歩く勇気が無い」とあきらは言っていた。
 

12月上旬、私は姉の萌依から「また赤ちゃんできたー」という連絡を受けた。姉は既に2人子供を産んでいるので、これが3人目になる。
 
2015.06.18 梨乃香
2018.02.25 清代歌
 
現在3ヶ月目に入った所らしく、予定日は7月中旬頃という話であった。学年が2年おきになるのは理想的である。
 
「また女の子だったら『か』の付く名前をつけようかな。今までの2人とは別の字で」
「それもいいかもね。全員同じ字を使うのは、わりと不評なんだよね」
「そうそう。全部違う字を使ってあげた方がいいみたい」
「男の子だったらどういう名前にするの?」
「そうだなあ。それでも『か』の付く名前で」
「男の子の名前になる?」
「『よしたか』とか『むねちか』とか」
「ああ、そういうのもあるか」
「あるいはおちんちん切ってもらって女の子として出生届けを出す手も」
「犯罪にならないようにね〜」
 

2018年12月29日。今年のRC大賞授賞式が行われた。私は1人だけで行くつもりだったのだが、政子が
 
「アクアちゃんを見たいから行く」
と言うので、何かあった時のために鱒渕さんにも付いてきてもらい、佐良さんにリーフを運転してもらって新国立劇場へ出かけた。会場前で降ろしてもらい佐良さんは車をマンションに戻す。また帰るときに迎えに来てもらう。
 
最初は新人賞の紹介から始まる。今年新人賞を受賞したのは下記4組であった。
 
清原大助『板東追っかけ唄』
松元蘭『影遊び』
Trine Bubble『愛の八高線』
フローズンヨーグルツ『キャロット・ギャロップ』
 
それでこの順に演奏するので、席で聞いている。演歌の人はまあそれなりの歌唱力はある。次に登場した松元蘭は私が仕掛け人だけに注目して聞いていたが、本当に上手くなったなと思った。
 
そして3組目のTrine Bubbleが『愛の八高線』を歌い出した時、私はギョッとした。
 
「これ私たちの『東へ西へ』じゃん」
と私が言うと
 
「あれ?言ってなかったっけ?この子たちに何かいい曲下さいって、北川さんが言ってきたから、冬は忙しそうだったし『東へ西へ』に新しい歌詞を付けてタイトルも『恋の八高線(はちこうせん)』にして渡したんだよ。東京の高校生は忍路(おしょろ)なんて知らないだろうしと思って」
と政子が言う。
 
「そうだったんだ!」
 
政子が言ったのに私が忘れてしまった可能性とそもそも政子が言い忘れた可能性は50:50だなと思った。
 
「編曲は風花ちゃんにしてもらったよ」
「へー!」
 
「この曲、今年80万枚くらい売れてますよ」
と鱒渕さんが言うので
「うっそー!?」
と私は驚いた。
 
「この曲聴いたことなかった?」
「知らなかった!」
「どうかした集団アイドルの曲は100万枚売れていても全然聞かないって曲が多いけど、この曲はマジでヒットしてたよ。スーパーとかのBGMでもかなり流れてたよ」
 
「う・・・今年はあまり買物とかにも出てなかったかも」
「ああ、冬はマジで今年忙しすぎたね」
 

最後に出てきたフローズンヨーグルツは酷かった。自分の名前で楽曲を提供しているのであまり悪く言えないが、この子たちは歌手とか辞めて、バラエティタレントか何か目指した方がいいのでは?と思ったのだが・・・司会者との受け答えを聞いていると、トークのセンスも無いようなので、私は匙を投げた。
 
「でも今年の新人賞は凄いですね。4組の内、3組がケイさん関連じゃないですか」
と鱒渕さんが言う。
 
先日のBH音楽賞では私の作品があまり無く、千里の作品が多くてつい私は嫉妬するような気持ちを持ってしまったのだが、今年のRC大賞の新人賞で自分関連の作品が多いと言われて、私は少し気分が良くなった。
 
確かに松元蘭は私もプロデュースチームに入っている(メインプロデューサーは近藤七星)し、Trine Bubbleとフローズンヨーグルツはマリ&ケイ名義の曲である。但し『キャロット・ギャロップ』を本当に書いたのは丸山アイである。
 
4組が歌唱を終えた所で、最優秀新人賞が発表された。
 
最優秀新人賞は『板東追っかけ唄』を歌った清原大助が獲得した。
 
まあ演歌は強いよね、などと思いながら拍手をしていたのだが、他の3組を見ると、松元蘭は凄く悔しそうな顔をしている。あれは自分が最優秀新人賞を取るつもりだったんだろうなと思った。これはとても良い傾向である。自分がトップだという自信を持っていないとこの世界では生きていけない。
 
Trine Bubbleはむしろ不快そうな顔で拍手をしていた。自分たちがトップとは思わないものの、選考に不満があるんだろうなという気がした。Trine Bubbleも充分上手いのだが、松元蘭とは比較にならなかったのである。
 
そしてフローズンヨーグルツはというと、全く関心が無いようで、拍手もしていない。それどころかスマホをいじってる! そしてそれを隣に座っている三ノ輪会長が注意もしない。マジで救いようのない感じだなと私は思った。
 

金賞受賞作品が披露される。今年金賞にノミネートされたのは下記の10作品である。
 
アクア『旅人の休息』
カラー・ボックス『ノックノック』
カトラーズ『バンブーグローブ』
桜野みちる『竹細工の宝石箱』
津島瑤子『冬の月』
ナルカヤ32『アンノウン・フィーリング』
松浦紗雪『大きな海大きな空』
松原珠妃『ロコモコ前奏曲』
三つ葉『檸檬爆弾』
ローズ+リリー『お嫁さんにしてね』
 
今年は何と言っても『ノックノック』と『バンブーグローブ』のヒットが凄かった。特に『ノックノック』は小学生などにも受けて、老弱男女、これにハマっていた。
 
ローズ+リリーの『お嫁さんにしてね』はマリの妊娠というハプニング(?)のおかげで御祝儀的にセールスが伸びた。ここにノミネートされるのが、ちょっと申し訳無いくらいであるが売上げ枚数としては多分、これとナルカヤ32の曲が僅差だろうという気がする。ただナルカヤ32は固定ファンがひとりで10枚20枚と買うから売上げが大きいだけで、世間一般にはほとんど知られていない。
 
御祝儀という意味では結婚と引退を発表した桜野みちるもだ。桜野みちるのラストシングルとして、紅川さんは『ありがとう』という曲を用意したのだが、みちるはそういう記念碑的な作品は嫌だから普通の曲を歌いたいと言った。それで松本花子作品を特にイリヤさん本人が編曲したものを提供してもらい、『ノックノック』と『バンブーグローブ』に次ぐヒット作となった。
 
私は正直その3つの作品のどれが受賞してもおかしくないと思った。
 
枚数的にはローズ+リリーも可能性はあるのだが、主宰者からマリに出席を求めるような連絡は無かったので、大賞ではないだろうと思っていた。この賞では過去に大賞受賞者が海外に出ていて欠席という事態が起きたことがあり、それ以降、確実に当日出席してくれる人だけを大賞選考の対象曲にするようにになっている。
 
10組の歌手が歌っていく。桜野みちるは明後日の紅白には出場しない(明日のラスト・コンサートが最後の歌唱というポリシー)ので、テレビで彼女の歌唱が見られるのはこの番組が最後である。歌い終わった時、涙を目に浮かべて深くお辞儀をしたが、そこに松浦紗雪と松原珠妃が一緒に花束を持って行って渡した。みちるは驚いて完璧に泣きながら花束を受け取った。その時、珠妃がみちるに何か言ったようであった。その言葉は、後日、珠妃自身がツイッターに書いていた。
 
「結婚して子供でもできて少し落ち着いたら、音楽の世界に戻っておいで」
と言ったらしい。
 
確かに彼女の歌唱力はこれで引退してしまうには惜しい。そしてきっと彼女は結婚しても練習を続けるだろう。
 
ローズ+リリーだが、マリは欠席予定だったのだが、一応会場には来た。しかしかなりお腹も大きいし、何かあってはいけないということでこの日は私ひとりで歌わせてもらうことを主宰者側には了承してもらっている。実際司会の人もそのようにアナウンスしてくれた。カメラを向けられたマリは大きなお腹を抱えたまま、笑顔で手を振っていた。
 

10組の歌唱が終わった後、様々な賞の発表があり、また今回は60回記念ということで、過去の大賞受賞作品も多数放映された。しかし去年のRC大賞受賞曲もその前の受賞曲も全く聞いたことのない曲だ!
 
やがて放送も終わりに近づく。司会者がおもむろに紙を開く。
 
「第60回RC大賞は」
と言って言葉を切った上で、彼は発表した。
 
「カラー・ボックス『ノックノック』」
という発表に会場全体から歓声があがる。
 
なんか久しぶりに私が知ってる曲が受賞した!!
 
私や珠妃なども含めて、他の受賞者たちがカラー・ボックスのメンバーに握手を求める。多数の拍手の中、彼らは今年大ブームになった『ノックノック』を歌った。
 
そして興奮したムードの中、今年のRC大賞の放送は終了した。
 

放送が終わった後、松元蘭が最初にマネージャーさんと一緒にこちらに来て挨拶した。
 
「ケイ先生のお陰で新人賞も頂けましたし、私もっともっと頑張りますからよろしくお願いします」
「うん。頑張ったね。七星さんにも伝えておくから」
「はい、よろしく」
 

続いてTrine Bubbleが事務所社長の児島さんと一緒に来る。
 
「マリ先生、ケイ先生ありがとうございます。素敵な曲を頂いたのでこんな大きな賞の授賞式に出ることが出来ました」
「まあこれがスタートラインだから、これからも頑張ってね」
「はい!」
と3人は同時に笑顔で返事した。息は合っているようである。
 
「それでマリ先生、ケイ先生、ご相談なのですが、年明けてからまたあらためてお願いに参りますが、この子たちに次の曲も書いて頂けないかと」
と児島さんが言う。
 
うーん。今私曲が書けないんだけど、と思ったが、マリは
「いいよ」
と返事した。あはは。まあ何とかなるかな、と私は内心冷や汗を掻きながら笑顔を見せていた。
 

あとでマリや風花から話を聞くとTrine Bubbleはデビュー曲は青島リンナから提供を受けたものの、全く売れなかったらしい。それでリンナが「申し訳無い」と言い、やはり妊娠中はあまりいいのが書けないのかも知れないと言い、それで私を紹介してくれたらしい。それはまだ政子の妊娠が発覚する前だった。
 
向こうは楽曲をもらった直後にマリの妊娠報道があり、頭を抱えたかも知れないが、もらった曲を出さないわけにもいかないので松本花子ブランドの曲『恋は大回り』とカップリングで出したら大ヒットになり嬉しい悲鳴をあげたようである。
 
この曲のヒットで八高線の乗車率、特に東京近郊区間で唯一非電化区間である八高北線(高麗川−倉賀野)は乗車率がこれまでの5倍になって地元の人が困るくらいになったらしい。
 
そういう社会的なブームまで引き起こしていたなんて、全く知らなかった!
 
なお、私たちはこの日、松原珠妃から一緒に食事しない?と誘われたものの、妊婦があまり動き回ってはいけないからと言って遠慮して私たちは帰宅させてもらった。この日は早めに寝せて、翌12月30日朝、鱒渕さんと一緒に新幹線で小浜に向かわせた。
 

さて、小浜市でのカウントダウン・ライブを終えた後の、打ち上げに参加したのはこういうメンツだった。
 
●乾杯だけで帰した人・帰った人
マリ、詩津紅、谷口翼、★★レコードの秩父、UTPの江口マル、§§の沢村・河合・緑川、19歳学年の西宮ネオン、花咲ロンド。山下ルンバ、桜木ワルツ、上野陸奥子、ヴァイオリン奏者の女性5人、○○プロから来ている人で小森以外、★★クリエイティブの人で山岸以外
 
●1時間ほどおしゃべりした人
私、七星、千里、風花、川崎ゆりこ、高崎ひろか(未成年で唯一残った)、若山一門6人、田中世梨奈、上野美津穂、生方芳雄、山岸欣一(★★クリエイティブ)
 
高崎ひろかは本来なら同学年の西宮ネオン・花咲ロンドと同様、乾杯だけで帰すべきだが、§§ミュージックの看板歌手のひとりなので「あんたはしばらく居なさい」と言って、川崎ゆりこが残るよう言った。
 
§§ミュージックのアクア・プロジェクト以外の売上げでは、品川ありさと高崎ひろかで合わせて6割を稼いでいる(桜野みちるは§§ミュージックではなく§§プロ)
 
●2時まで居た人
妃美貴(幹事)、鱒渕(サマーガールズ出版)、氷川(★★レコード)、甲斐窓香(UTP)
 
●朝まで飲んでいた人!
加藤銀河、七星以外のスターキッズ&フレンズ、鮎川ゆま、小森雅洋(○○プロ:幹事代行)
 
●5時半に様子を見に来た人
詩津紅・秩父
 
ちなみに下記の高校生以下のメンバーは先に寝ていたか、あるいは終わった所ですぐ寝せたので、乾杯にも参加していない。
 
信濃町ガールズB班(中学生)、白鳥リズム(中2)、石川ポルカ(中3)、今井葉月(高1)、原町カペラ(高1)、姫路スピカ(高3)、
 

そういう訳で乾杯をしてから約半数が離脱した後、残っていたのはこういうメンツである。
 
私、妃美貴、風花、鱒渕、氷川、千里、川崎ゆりこ、高崎ひろか、若山一門6人、田中世梨奈、上野美津穂、生方芳雄、山岸欣一、スターキッズ&フレンズ、鮎川ゆま、加藤銀河、甲斐窓香、小森雅洋
 
「田中さん、上野さんはもう就活してるの?」
「まだでーす。5月くらいから動き出さないといけないかなと思っているんですが」
「青葉はもう去年の夏くらいからやってますね。アナウンサーって戦線が無茶苦茶早いみたいです」
「東京と大阪のキー局・準キー局は全滅と言っていたね」
「名古屋はまだ結果出ていないけど、厳しいかもと言ってた」
「名古屋にも落ちていたら、もう札幌とか福岡には参戦しないで金沢か富山を目指すという話でしたよ」
 
「でもあの子、金沢のテレビ局に出てるんじゃないの?」
「そうですけど、出演者とアナウンサーでは基準が違うから」
 
「高崎ひろかちゃんは、大学には行ってるんだっけ?」
「行ってないです。とてもそんなの行く時間無いです」
「同じ学年の西宮ネオンと花咲ロンドは行ってますけど、この子とは仕事の量がまるで違うから」
と川崎ゆりこが言っている。
 
「スケジュール表の空きが週に1回くらいしか無いんですよ。もっともアクアのスケジュール表とか見たら恐ろしいですけどね」
「まあ、あの子は仕方ない」
 
「だったらアクアちゃん、高校にもまともに行けないのでは?」
 
「それがアクアは契約で高校在学中は学業絶対優先なんです。だからよほどのことがない限り、授業を最後まで受けてからお仕事に行きます。もっとも彼はいわゆる“光GENJI通達”の対象なので、深夜労働の縛りがないから、深夜までお仕事してますけどね」
とひろか。
 
「私時々身体辛くない?と訊くけど、ボク丈夫なのが取り柄ですから、と言ってますね。小学生時代、大病と闘っていた子とは思えない元気さです」
とゆりこ。
 
「物凄いハードスケジュールでお仕事してるのに、疲れているような顔見たことないって、彼と同級生の松梨詩恩が感心していますよ。詩恩は学業優先みたいな契約無いから授業中でもどんどん呼び出される」
 
と高崎ひろかが言うので
 
「ひろかちゃん、松梨詩恩ちゃんと知り合い?」
などと訊かれる。
 
「え、えっと・・・」
とひろかが悩んでいるが、千里がバラしてしまう。
 
「高崎ひろかちゃんと、松梨詩恩ちゃんは姉妹だよ」
 
「え〜〜〜!?」
「知らなかった!」
 
というのでここにいたメンツのほとんどが知らなかったようである。
 

「あれ?でも苗字が違わない?」
 
高崎ひろかの本名は柴田邦江、松梨詩恩の本名は天羽飛鳥である。
 
「うちの両親が離婚して、私は父の元に、詩恩は母の元に引き取られたんです。だから苗字が違うんですよ」
「そうだったのか!」
 
「あの子は都内の実家に住んでいて、私は高校時代は研修所に住んでいたんですが、よく外出許可取って、母んちに泊まってました」
 
「お父さんは北海道に住んでいたから、ひろかちゃんはタレントになって東京に出てきて、結果的にお母さんと近くなって嬉しかったのでは」
「えへへ」
 
「きょうだいはその2人?」
「父が再婚して、子供が生まれたからその子まで入れて3人姉妹です」
「その子は妹さん?弟さん?」
「多分弟じゃないかなぁ」
「性別が曖昧なの?」
「あの子、父親似で、詩恩も父親似だから、男女なのに顔がそっくりなんですよ」
「へー!」
 
「だから『カントリーロード』に『シンデレラ・エクスプレス』の映画を撮った時は2度とも北海道から呼ばれて詩恩の衣装付けて、かなりスタンドインとボディダブルまでやらされていました」
 
「ほほぉ」
 
「女の服とか嫌だよぉとか言いながら、やってましたけど、あれはかなりハマったんじゃないかなあ。特に2度目は」
「おお、それはぜひ女装の味をしめさせよう」
 
「女の衣装付けてると、ほんとに詩恩そっくりだから、双子だったんだっけ?とかも言われていたし、取り敢えずトイレは女子トイレ使うように言われて恥ずかしがっていたし」
「そりゃ詩恩ちゃんが男子トイレに居たらみんな仰天する」
 
「あまり男っぽくならないように去勢したいなら病院紹介するよと言われて、それだけは勘弁してと言ってました」
「でも詩恩ちゃんに似てるなら凄い美少年じゃん。男っぽくなっちゃうのはもったいない」
「取り敢えず女物の下着を送りつけておきました」
「あはは」
 
「何歳?」
「小学6年生なんです。だからちょうど背丈も詩恩と同じくらいなんですよね。それにまだ声変わり来てないし」
「おお、それはぜひ声変わり前に去勢を」
 

「私、小浜と聞いた時に、てっきり長崎のほうかと思っちゃった」
と言っているのは福岡在住の明奈である。
 
「そのあたり紛らわしいよね。福井県小浜市と長崎県の小浜温泉、滋賀県草津市と群馬県の草津温泉、長崎県の川棚町と山口県の川棚温泉、山口県の小郡と福岡県の小郡、佐賀県の陶磁器の里の有田と和歌山県のみかんの里の有田、横浜市の金沢文庫の金沢と北陸の金沢市、沖縄県の宮古島と岩手県の宮古市」
 
「草津温泉が滋賀県にあると思い込んでいる人は結構いる」
「金沢文庫が石川県にあると思い込んでいる人もいる」
「有田みかんって佐賀県で作られていると思い込んでいる人もいる」
 
「辻真先の推理小説で、その小郡と川棚のコンボで場所を誤認させるトリックが使われたことある」
「あれは九州山口の人には速攻でバレてしまうトリック」
 
「今は新山口と名前が変わってしまったけど、昔は福岡市にいると、JR小郡行きは東に向かい、西鉄小郡行きは南に向かっていたんだよ」
 
「大阪に到着した外国人観光客が山笠を見ようと思って福岡行きの切符を買ったら、なぜか着いた所は北陸の地」
 
「それで予定を変えて讃岐うどんを食べて帰ろうと思い高松までの切符を買うとなぜか能登半島に行ってしまう、と」
 
「JRの福岡駅は富山県福岡町だからね。山笠見に行くなら博多駅までの切符を買わなければいけない。そして高松駅は四国だけじゃなくて能登半島にもある」
 
「カーナビでさいたま市に行こうと思って大宮ICを目的地に設定すると、なぜか到着するのは千葉市」
 
「字が同じだけど読み方が違うのもある。大阪の空港がある八尾(やお)と富山の風の盆の八尾(やつお)とか、東京の三田(みた)と兵庫の三田(さんだ)、京都の桂川(かつらがわ)と福岡の桂川(けいせん)」
 
「同じではないけど紛らわしい所もあるよね」
「北海道と水海道、宮城県の白石市(しろいしし)と千葉県の白井市(しろいし)、大阪府大阪市と大府(おおぶ)市、秋田県の男鹿(おが)半島と宮城県の牡鹿(おじか)半島、長野県の大町と長崎県の大村」
 
「長野県大町市と長崎県大村市って、県名も似ているから紛らわしい」
「昔青森県の大湊に送るべき除雪車を間違って大村市に送っちゃった会社があった」
「さすがに長崎県では除雪車は要らないな」
 
「私、千里浜(ちりはま)と言うつもりで久里浜(くりはま)と言っちゃったことある」
と言っているのは金沢市在住の千鳥である。
 
「久里浜は神奈川県で九十九里浜は千葉県」
「それも紛らわしい」
 
「千里浜(ちりはま)と言ったら、千里浜なぎさドライブウェイだよね」
「そうそう。日本でただ1ヶ所普通の車で砂浜を走れる道」
「あそこ地図見て行ったら道路とか何も無いから、どこ?と思ったことある」
 
「普通は4WDのSUVとかでないと、砂浜を走ると簡単にスタックする。でも千里浜なぎさドライブウェイの場合は砂が物凄く硬いから、ごく普通の車で舗装道路と同じように走れるんだよね」
 
そんな会話を聞いていた時、唐突に私は昔蔵田さんに連れられて、千里浜なぎさドライブウェイを走った時のことを思い出した。まだ中学生だったのに運転させられたよなあ、などと思い起こす。
 
そしてその時、突然その千里浜なぎさドライブウェイに夕日が沈んでいく様が脳裏に浮かんできた。
 
あれ?私あそこで夕日見たことあったっけ?などと考えていた時、千里がさっと五線譜とボールペンが入った、ファスナー付きクリアポーチを渡した。
 
「ありがとう」
と言って受け取ると、私は今脳裏に浮かんだ情景を五線紙にメロディーと歌詞の同時進行で書き込んでいった。
 
私のイマジネーションの中で太陽はぐいぐい水面に近づき、やがて沈んで行く。その沈んでしまう直前にキラリと光ったのがダイヤモンドのように美しいと思った。
 
10分ほど、私の周囲の人たちは会話をとめて静かに私の作業を見守ってくれた。
 

1月1日の早朝。私は悪夢のような夢を見て目を覚ました。
 
凄くストレスの掛かる夢だったので、私はその印象をノートに書き綴った。そして、1時間ほどでメロディーも付けて歌の形にまとめた。
 
今月2作目だけど、いいよね?と思う。
 
(※以下、閲覧注意なので、見たくない人は少し先までスクロールして下さい。これは実際には私が大学生時代に書いた詩です)
 
異端修道士の洞窟
 
汽車を降りた近くの道に
ちっぽけな洞穴(ほらあな)があったよ
そこにたたずむ年老いたシスター
静かに祈りを献げていた
 
むかし洞窟の奥には、ちっぽけな教会があったよ
牧師と二人のシスター、きれいなのとそうじゃないの
子供たちに囲まれて、神様の話をきかせる
村はいつも静かで平和だった
 
シスターは語る。小さな声で。
過ぎた日の、悲しみを。
 
ある時牧師は突然破門された
若者が五人で異端牧師を殺しに行く
2人までは殺したが、きれいなシスターを殺せない
代りに大将を撃ち殺し、シスターは抱いてやった
 
シスターは語る。震える声で。帰らぬ日の悲しみを
クロスを胸に、涙を瞳に、跪いて祈りささげる
 
むかし洞窟の奥には、ちっぽけな教会があったよ
牧師と2人のシスター、きれいなのとそうじゃないの
子供たちに囲まれて、神様の話をきかせる
村はいつも静かで平和だった
 
村のはずれの小さな道端に
ちっぽけな洞穴(ほらあな)があったよ
ただすむシスターに別れをつげて
私は再び汽車に乗ってゆく
 
名前も知らぬ小さな村の
秘めた悲しみ胸において
 
去り行く旅人の
瞳に小さな涙一つ
 

※この付近までスクロール
 
「修理は終わったね」
と千里はこの歌の譜面を見て言った。私たちは早朝Muse-3施設を出て敦賀に向かうバスの中だった。
 
「千里の嫌いなテンションコードをたくさん使っているけど」
「いや、この歌にはあっていい。これをむしろシンプルなコードだけで書いてはいけないと思う。ある意味、私には絶対書けない曲だよ」
 
「でも、私まだまともな曲が書ける気しない」
 
「修復は終わったけど、始動できない状態だと思う」
「・・・それは分かる気がする」
 
「壊れた発電機を形の上で修復しても、スイッチを入れないと発電は始まらない。冬がこれからしなければならないのは、そのスイッチを入れることだよ」
 
と千里は言った。
 
「どうすればスイッチが入るだろう?」
「うーん。。。私にも分からないけど、これは少し時間が掛かるかもね」
 
「やはりもう少し時間を掛けなきゃだめかぁ」
 
「どん底は越えたと思うから、この後も月に1曲くらいのペースで何か書くようにしていきなよ。たぶん半年くらいの内にはスイッチが見つかると思うよ」
 
「半年かぁ・・・」
 
と言ってから私は千里に言った。
 
「Trine Bubbleに渡す曲を頼まれていたんだけど、昨夜打ち上げの場で書いた曲が彼女たちにはいいと思うんだよ。千里、千里浜なぎさドライブウェイ走ったことある?」
 
「2回走ったよ」
「だったら、その時のイメージを参考に、昨夜私が書いた曲を添削してくれない?」
「いいよ。一週間ちょうだい」
「うん。お願い」
 
それで私は彼女に『ダイヤモンド千里浜』の譜面を渡した。
 

その日は5:20にMuse-3施設の地下入口のところに、私、川崎ゆりこ、§§ミュージックの子たち(信濃町ガールズB班の子たちを含む)が時間厳守で集合した。それでチャーターしているバスで敦賀駅に向かうが、千里も「乗せて」と言って一緒に行った。北陸本線の始発に乗り込む。
 
敦賀6:22(しらさぎ52)6:56米原7:18(こだま691)7:38京都7:43(のぞみ97)10:27博多
 
米原は、私ひとりなら走って走って6:59の《ひかり491》に間に合うのだが(米原駅の新幹線と在来線の乗り換えはかなり距離があるが走れば2分で可能)、多人数を引率しているので無理である。それで次のこだまに乗る。京都駅での乗り換えは5分しか無いが、14番線に着いて向かい側の13番線に入ってくる列車に乗ればいいので全く問題無い。
 
(ちなみに京都駅で私は北陸本線から新幹線に1分で乗り換えたことがある)
 
一行の中で沢村マネージャーだけは京都で乗り換えずにそのままこだまで大阪まで行き、1月2日京阪ドームでのアクア公演の準備に入った。1月3日の愛知公演の準備は小野市花が行っている。この2人は新年会欠席である。
 
また、千里も沢村さんと一緒に、こだまでそのまま大阪に行ったようである。恐らく細川さんとデートするのだろう。
 

のぞみに乗った私たちは、博多駅からレンタルしたバスで博多ドームそばのSホテルに入り、昨日の内に福岡に入っていたメンバー(桜野みちる・紅川会長・日野ソナタ・信濃町ガールズA班)と合流する。
 
昨日東京で泊まったグループ(品川ありさ・秋風コスモス・絹川和泉)は下記の連絡で博多入りした。
 
羽田空港8:20(ANA243.B777-200)10:20福岡空港
 
羽田空港まではタクシー、福岡空港からは月原美架マネージャーが運転するベンツ(山村勾美の友人所有の車)でSホテルまで移動している。実際には飛行機の到着が少し遅れたので、東京組が到着したのは私たちが着いた少し後であった。
 
なお月原は福岡公演準備のため12月29日に福岡入りして、地元のイベンターやレコード会社担当者などと作業を進めていた。彼女は今日のライブが終わったらすぐに北海道に飛んで1月5日の札幌公演の準備作業に入る。
 

なお、桜野レイアとアクアも私たちがSホテルに入ったとき既に来ていたが、いつ到着したかは話すと、迷惑の掛かる人があるので秘密にしてくださいと2人と一緒に行動していた山村マネージャーが言っていた。
 
実際には東京で紅白に出たのがアクアN、福岡に居るのはアクアM、そして小浜で出演したのはアクアFで、アクア自身は全く移動していない!
 
(小浜に居たアクアFがそのまま大阪に移動して1月2日の京阪ドームのライブで歌う予定である)
 

11時過ぎから新年会を始めた。§§ミュージック関係者のみのパーティーであるが、未成年の子たちの親も(交通費・宿泊費事務所持ちで)参加しているので、物凄い人数がいた。アクアの両親、田代夫妻も来ている。
 
紅川会長が音頭を取って、お屠蘇代わりのサイダーで乾杯し、お雑煮が配られるので「餅が硬くならない内に食べてください」と案内した上で、紅川さん、私、コスモスが新年の挨拶をした。
 
紅川会長からは、あらためてオーナー交替について説明があった。紅川さんは株主ではなくなったものの、引き続き会長を務めてもらうことを私から説明した。(§§ホールディングの株式は紅川さんが100%所有していたので、現在は私が100%所有している。§§ミュージックは§§ホールディングの100%子会社である)
 
現在§§プロに所属(A契約)または所属はしていないものの事務管理(BC契約)になっている(研修生・練習生以外の)タレント・ミュージシャンは4月1日付けで∞∞プロ“内”の《§§プロ》という“部門”に移籍され、そちらは日野ソナタと田所萬里愛が統括することになる。
 
A契約:立川ピアノ・大宮どれみ・満月さやか・明智ヒバリ
B契約:上野陸奥子・日野ソナタ(霧島鮎子)・秋風メロディー(上野美由貴)
C契約:新宿信濃子・春風アルト・冬風オペラ・浦和ミドリ・桜野みちる・海浜ひまわり・神田ひとみ
 
(事務所とトラブルがあった夏風ロビン・千葉りいな、短期間で活動停止したスーザンと藤沢ナインは完全に切れていて事務取り扱いもしない。ナインはデビュー直前に、実は女の子ではないことが発覚してデビュー中止になった子である)
 
なお、§§ミュージックの取締役は、紅川勘四郎会長・秋風コスモス社長・川崎ゆりこ副社長であったが、私もオーナーということで副会長を拝命している。
 
私はUTP専務(社長は須藤美智子、副社長は大宮伸幸)、サマーガールズ出版専務(社長は政子)、★★情報サービス副会長(会長は千里:上島先生が退きその株式を引き受けたので交代)、AI-Muse専務(社長は丸山アイ・副社長は若葉)、§§ミュージック副会長と、やたらと“サブ”的な肩書きが多い。
 

アクアのライブがあるので、新年会は12時に終了。多くが博多ドームに移動する。未成年の子たちの保護者には、ドームの席をリザーブしていたので、そちらでアクアのライブを観覧したようである。
 
私などはライブ終了まで楽屋で待機していて、田所さんや月原さんなどと話していた。紅川さんはどこか用事があるというので出かけていたが、後で聞いたのでは福岡在住の、明智ヒバリのお母さんと会っていたようである。なお明智ヒバリのお祖母さんは、ノロになったヒバリをサポートするため沖縄に移動している。お祖母さんは久高島出身で貴重なイザイホーの経験者である。
 
そういう訳で現在、木ノ下大吉先生の家には、ヒバリと祖母、上島先生夫妻の4人も居候している状態のようである。更には木ノ下先生が窓口になっている松本花子システムの管理のため、内瀬さんという女性(?)も毎日通勤してきていて、しばしば泊まり込みになるので、かなり賑やかな状態になっているらしい。
 
内瀬さんというのは私も1度東京に出てきた時に会ったが、女性にしか見えないものの本人は「性別は追及しないで」と言っている。そんなことを言わなければ誰も性別に疑問を抱かないと思うのだが!?彼女(彼?)は有名音楽家の娘(息子?)らしいのだが、父親(母親?)についても追及しないでと言っていた。
 

このアクアのライブが行われている間に、私とコスモスはレイアを別室に呼んで、自分たちはその件について全く知らないではいられないので、他には口外しないし、レイアが言ったことも誰にも言わないので、どういう移動で福岡まで来たか話して欲しいと言った。彼女の話はこうであった。
 
レイアは関東ドームでの姉のラストライブが終わった後、山村マネージャーが運転するバイクで東京駅まで移動し、敦賀までの切符を渡されて敦賀駅に鱒渕さんが迎えに来ているからと言われたらしい。それで新幹線・しらさぎを乗り継いで敦賀駅まで行くと、確かに鱒渕さんが居たので、彼女の運転する車で会場に入った。それが19時すぎだったらしい。Muse-3施設の一室でモニターでステージの様子を見ながら待機していたら、23時頃、アクアと山村マネージャーが来る。それで簡単な打合せの上で、23:22に『愛のデュエット』を演奏した。
 
自分たちの演奏が終わった後は、また鱒渕さんの運転する車で大阪に移動した。新大阪駅そばのホテルに入ったのが0時半頃だったらしい。それで朝一番の新幹線で博多に向かうよう言われチケットを渡されたので、ホテルを5時半にチェックアウトして新幹線に乗ったが、昨夜4時間ちょっとしか寝ていないので新幹線の中ではひたすら眠っていた。
 
新大阪6:00(みずほ601)8:28博多
 
博多駅に着くと改札の所に山村マネージャーが居て、駐車場に駐めてあった彼の車に乗るとアクアも乗っていた。それでレイアはアクアと山村は飛行機で移動したのかなと思ったらしい。一緒に車で移動して9時頃Sホテルに入ったということだった。
 

レイアには移動については人に訊かれても何も答えないように言っておき、私とコスモスは話し合った。
 
「ツッコミどころ満載の話だなあ」
とコスモスは苦笑している。
 
「まあ鱒渕さんはずっと楽屋に居て、ステージ傍に居る風花とインカムで連絡を取りながら、アーティストに指示を出していたんだけどね」
 
「その鱒渕が敦賀まで往復したり大阪まで行く訳が無いですね」
「それとこの新幹線以前に福岡に到達する飛行機は存在しないんだよね」
と私は時刻表を確認しながら言った。
 
伊丹発の始発が福岡空港に到着するのは8:25、関空発の始発の到着は8:20で、降機して地下鉄に乗り換えていたら新幹線よりずっと遅くなるのである。
 
「これってレイアは無名人だからひとりで新幹線に乗っていたら、彼女に気付く人はいなかったろうというのがミソだよね」
 
「まあアクアの周辺では色々不思議なことが起きるから気にしても仕方ないね」
などとコスモスは言っていた。
 
「ここだけの話、あの子時々完全な女体になっていることもある。どうも性別が不安定になっているみたい」
とコスモスが言うので、ああ、コスモスはアクアFとアクアMを感じ分けているなと思った。3人に分かれていることまで気付いているかは微妙だ。
 
「私あの子のフルヌードを何度か見ているんだけど、女の子にしか見えなかった時と、確かに男の子だった時があるんだよね。どちらも触って確かに作り物や偽装ではないことを確認した」
 
「それ人には言わないように」
「ケイちゃんだから言ってるよ」
とコスモスは言っている。
 
「まあアクアが体調万全で今日のライブをできたら問題ないよね」
と私は言った。
 
「あと、小浜で23時半に演奏したのに0時半に大阪に着く訳ないよね?」
「小浜から大阪へは多分303号線で山越えして高島に出て国道161号・湖西道路から名神に入るのがいちばん速いと思うけど、少々スピードオーバーで走っても2時間は掛かる」
 
「山村は絶対にスピードオーバーしないという誓約書を出している。それは守ってくれているみたいだよ」
とコスモスは言う。
 
「どっちみち1時間はあり得ない」
 
「ちなみに米原から小浜へのヘリコプターには誰が乗っていたと思う?」
とコスモスは訊いた。
「山村さんが1人で乗っていたというのに1票」
と私は答える。
 
「私も同じ意見」
と言いながらコスモスは笑っている。
 
「でもヘリコプター飛ばすとか、山村さんって事務所の予算を自由に使えるの?」
「私費で色々やってるみたいだよ。もっとも彼の給料ならヘリくらいチャーターできると思うけど、実際は、きっとMの付く人の財布を勝手に使ってる」
 
ああ、コスモスは山村さんを“彼”と言うんだな、などと思う。
 
「Mの人は自分の財布や口座に幾ら入っているか全く把握してないから」
「把握する必要もないくらい稼いでおられるようだし」
 
などと私とコスモスは会話したのだが“Mの付く人”というので私とコスモスが別の人のことを考えていたことに、この時は私もコスモスも気が付かなかった!
 

「ああ。そうそう言い忘れていたけど」
とコスモスは言った。
 
「管理者の山吹(若葉)さんには言ってあるけど、§§オータムが持っていたサマーガールズ出版の株式は私が全部引き継いだから」
「へ?」
「ケイちゃんが§§ホールディングの全株式を持っていて、§§ホールディングがサマーガールズ出版の株式を3%持っているというのは問題無いか?と山吹さんに相談したのよね。そしたら私が全部取得してしまえばいいと言うから、買い取っちゃった」
 
「そうだったんだ!」
「だから私はサマーガールズ出版の3%の株主になったから」
 
「わっ。大株主様だったのか!」
 
サマーガールズ出版の株主構成は私と政子が32%ずつ、マリ&ケイ・フレンズとRPL匿名組合が18%ずつである。実際にはマリ&ケイ・フレンズの出資額の大半は若葉が出しており、若葉は約15%の株主である。一方、RPL匿名組合は下記6者が同額(3%)ずつ出資しているものであった。
 
§§オータム、ζζパイン、○○△△、$$ストレジ、アクアDP、★★レコード。
 
ζζパインはζζプロと松原珠妃、○○△△は○○プロと△△社と津田民謡教室、$$ストレジは$$アーツと蔵田さん、アクアDPは雨宮先生・三宅先生に千里である。そして§§オータムが§§プロと秋風姉妹だったのだが、これを全部コスモスが個人で取得したということらしい。
 
「あれ?メロディーさんは出資やめたの?」
「お金が無いから株を買い取ってというから買い取ったよ。もう2年くらい前」
「たくさん稼いでそうなのに!?」
「ね?」
 
この姉妹は、見た目がいかにもしっかりしてそうなメロディーが適当で、軽そうな印象を与えやすいコスモスが実は堅実ということのようである。
 

アクアのライブが終了した後は、打ち上げはパスさせてもらい、帰ることにした。航空券は予め取っていたから良かったがキャンセル待ちの人が凄かった。
 
福岡17:55(ANA264 777-200)19:30羽田
 
それで搭乗口で待っていたら、そこに桜野みちるが居る。
 
「あれ?同じ便だったんだ?」
「お土産買ってから帰ろうと思って余裕持った便を予約してたんですよ。ふくやの辛子明太子と、千鳥饅頭の花千鳥を買ってきました。あと博多ラーメンと」
「なるほどー」
 
みちるがエコノミー、私がプレミアムクラスだったので、みちるの隣の人に席を代わってもらい、ふたりでエコノミーの並びの席に乗って、おしゃべりしながら羽田まで一緒した(みちるの隣の席の人は喜んで替わってくれた)。
 
「でもあんなに慰労金もらって良かったんですか?」
「実際問題として誉志詠ちゃん(浦和ミドリ)が引退した2012年頃から2015年春にアクアがデビューするまでは実質、舞香ちゃんひとりで§§プロを支えていたようなものだもん。私と紅川さんと(秋風コスモス)社長の三者会談で、どーんと出しましょうよということにした」
 
「お陰でマンションの残債も返せるから、玲香も引っ越さなくて済むし」
「でも家賃取るんでしょ?」
「当然です。給料から天引きしてもらうことにしましたから」
「ああ。それがいい。特に姉妹間なんて適当になりがちだもん」
 
「でも私は税金が怖いです」
「まあ半分持って行かれるのは慣れてるでしょ?」
「ですけどねー」
「やはりたくさん稼いでいる人はそれだけ社会的な責任も大きくなるから」
「ノブレス・オブリージュ(Noblesse Oblige)ですよね。でも今日からは私は無職・無収入なんですけど」
「印税が少し入ってくるでしょ?それと玲香ちゃんの払う家賃と」
「ええ。でも住民税が怖い」
「だよねー」
 

1月1日は到着したのが夜だったのでそのままマンションで寝た(政子は小浜の旅館で2日まで過ごし、1月3日に戻って来る予定:政子のお母さんが小浜まで迎えに行く)。
 
1月2日は加賀友禅の訪問着を着て佐良さんにリーフを運転してもらい、風花・鱒渕と一緒に、放送局、レコード会社、プロダクションなどへの挨拶回り、それから雨宮三森先生、下川圭次先生、東郷誠一先生、東堂千一夜先生の所に挨拶してきた。
 
例年この流れで上島先生のお宅にも挨拶に行っていたのだが、今年はそれが無くなったのが寂しい気持ちであった。上島先生の御自宅のあった所に秋頃行ってみたが、更地になっていて、ワンルームマンション建設予定地などと書かれていた。先生の御自宅にあったピアノなどの楽器、またCD類、書籍などは、全て雨宮先生が買い取り、ピアノは上島先生の一番弟子を自称していた山折大二郎さんの家に「置かせてもらっている」。CDや書籍類は取り敢えずトランクルームに放り込んであるらしい。
 
上島先生が滞在しておられる沖縄まで行ってこようかとも思ったのだが、謹慎中なので、あまり芸能関係の人と接触を持ちたくないということだったので、年始の挨拶のメールを春風アルトさんの携帯に送っておいた。
 
ところでドライバー会社、★★情報サービスで上島先生担当だった川村さんと津島さんだが、川村さんは、望坂拓美プロジェクトの主宰者で非常に多忙な状態になっていた王絵美さんを担当している。現在、夢紗蒼依・松本花子・望坂拓美という3つのプロジェクト(およびUDP)がJPOP業界を支えているが、昨年前半楽曲が極端に不足した分、現時点ではまだ供給がギリギリなので、万一そのどれかひとつにでも事故があるとやばい。それで★★レコードの町添専務が、ぜひドライバー会社を使って欲しいと申し入れ、川村さんを専任につけたのである。彼女のドライバー使用料金に関しては、UDPプロジェクトが負担することにした。津島さんは醍醐春海の担当・矢鳴さんのバックアップに入っている。
 
矢鳴さんは千里・蓮菜の2人の担当ではあるのだが、蓮菜は自宅と勤務先の病院の間を(電車で)往復する毎日であまりドライバーは使わない。それで実質千里の専任のようになっている。ところが千里を担当していると、しばしば身体が1つでは足りないような事態が発生する。
 
千里を東京から水戸まで送って「遅くなるから帰っていていいよ」と言われるので電車で東京に戻ろうとしていたら、唐突に“今高崎なんだけど”という千里からの連絡が入ったりする。それで高崎まで新幹線で急行して、千里を千葉まで送り、それで帰ろうとしていたら“今大阪なんだけど新幹線か飛行機でこちらに来てくれない?”という連絡が入ったりする。
 
つまり千里はどう考えても3〜4人いるとしか思えないらしい。千里は最初からそうだったが、2年ほど前からそれが更に凄いことになっていて、千里を乗せている最中に、別の千里?からの連絡が入ったりするので、千里は実際10人くらいいると思わないと理屈に合わないという。
 
私は、元々千里は3人くらいいたのが2017年春に各々3分裂して9人になったということはないか?などと考えたりしている。千里は前日言ったことを全く覚えていないといったことが昔から多い。
 
そういう訳でバックアップにもうひとり投入することになったようであるが、その津島さんもすぐに「うっそー!?」と思うほど多数の千里に翻弄されるようになったようである。
 
 
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【夏の日の想い出・戯謔】(3)