【春四】(1)
1 2 3 4
11月7日(月)の夕方、(多分)出産した千里さんとも朝食の時に居た千里さん(青山のレディス・スーツをくれた人)とも違う千里さんが言った。
「彪志君、バイクの免許は持ってたっけ?」
「いえ持ってませんが」
「多分必要になるから取った方がいいよ。今年中に」
「今年中にですか!」
彪志は驚いたものの、千里さんの“予言”は確かである。12月に入ったら忙しくて教習所に行く時間も取れないだろうと思い、すぐに電話連絡して空いていることを確認の上、翌日11/8 (Tue) の夕方入校した。
この時、彪志は自分の現在の免許証が“鈴江月子”になっているので、仕方無く“鈴江月子・1993.11.15 女”で申し込んだ。自分の戸籍や住民票がどうなっているのか不安だが、確かめるのが怖かった。
性別・女で申し込んでいるので、仕方無く?彪志は帰りの車の中で(正確には会社の駐車場で)男性用スーツを脱いで、中性的な格好に着替え、一応アイメイクと口紅程度は塗ってから自動車学校に行った。自動車学校では一貫して女声で話したし、トイレも女子トイレを使用したが、特に何も言われなかった。
普通免許を持っていれば第1段階は学科は無くて実車9時間である。これを土曜までにこなす。
「君結構上手いね。運転してた?」
「原付を」
「ああなるほど」
原付は学生時代にピザ屋さんの配達で運転していた。でもあれから10年経っているし・・・と思ったのだが、感覚はわりと早く戻った。
「四面楚歌というのはよく誤解している人の多いことばだよね」
と千里さんは言った。
「そうそう。周囲はみんな敵ばかりという意味に解釈してる人が多い」
と明恵も言う。
「え!?違うの?」
と言ったのは幸花である。
「周囲はみんな味方だったものばかりということだよね〜」
と初海。
「そうそう。敵ばかりというのより更に絶望的な状況」
と明恵は言う。
「項羽と劉邦の最終決戦で、項羽は周囲を劉邦の軍に取り囲まれてしまった。そして夜を明かすけど、敵陣から楚の歌が聞こえてくる。楚というのは項羽の国。だから周囲の劉邦軍の中に多数の楚の兵士が居る」
と千里さんは言う。
「だから味方だった筈の楚の人たちも多くが劉邦支持に回ってしまった。もう自分たちの味方は居ない、と項羽は絶望的な気分になった」
「いわば自分の味方をしてくれると期待していた、担任の先生や友だちたち、更には家族まで自分を責めるみたいな状況ですね」
「それは確かに敵に囲まれるより辛い」
と幸花も言う。
「まあ策士の劉邦だから、そういう心理的効果を狙ってわざと楚の歌を歌わせたのかも知れませんけどね」
「それはあり得ますね」
ところで吉川日和(入瀬コルネ/金沢チョコ)は11月9日に、信濃町ガールズの姉妹が無試験(実際には簡単な能力検査を課す)で信濃町ガールズになれるという規定で信濃町ガール゛に入らないかと誘われていた件で、お断りの電話をした。それで日和の身分はドラマの撮影などに参加する“トラフィック”のメンバーということになった。
なおこの「姉妹は無審査で加入できる」という規定は信濃町ガールズの人数がまだ少なく、どんどん増やしたかった時代のもので、歴史的役割を終えたとして今年一杯で廃止されることになっている。
その電話をした翌日(11/10 thu)、花ちゃんから電話がある。
「今週の土日にドラマの撮影があるのよ。萌花ちゃんとセットで使いたいんでちょっと出て来てくれない?」
「まあいいですよ」
「明日は学校何時に終わる?」
「えーっと15時くらいかなあ」
「じゃそのくらいに迎えに行かせるね」
「あ。はい」
11.06(日) ウィンターカップ予選決勝
11.08(火) 迷路に迷い込む・封印に参加
11.09(水) 花ちぉんに辞退の電話
11.10(木) 土日に出て来てという電話
11.11(金) 夕方東京へ
11.11-13 ドラマの撮影に参加
11,13(日) 夕方氷見に戻る
日和は土日(11/12-13) に東京に行ってくる件を母に説明したのだが、例によって日和の話はさっぱり分からない!
「お迎えを寄越すって、どこに?能登空港?」
「あれ〜?どこだっけ?でもお迎えなら能登空港かも」
ということで母は日和を明日学校が終わってから能登空港に送っていくことにした。
金曜日、母はmoveにガソリンを満タンに入れてから13:50くらいに学校に行った。ところが母が来てすぐ、顔見知りの真珠がピンクのスペーシアでやってくる。こちらを認識すると運転席のそばまでやってくる。
「こんにちは」
「こんにちは」
と挨拶を交わす。
「もしかして、うちの子のお迎えですか」
(↑もはや“息子”とは言えないが“娘”と言う勇気が無いので“子”と言った)
「そうですよ。お母さんもですか?こちらで学校まで迎えに行くって話になっていたはずなんですが」
「あの子、話が曖昧でどこにお迎えしてもらえるの?と訊いても要領を得ないし」
「日和ちゃんと話す時は想像力が大事ですね」
「そうなのよね!」
「これから能登空港までですか」
「いえ、氷見飛行場ですよ」
「そんなものがあるんですか!?」
「9月に開港したんですよ。飛行場まで一緒に来られません?」
「ええ」
14:02くらいから生徒が出てくる。
女子制服に身を包んだ日和が出て来たのは14:15くらいであった。
本人は昨日花ちゃんに「学校が終わるのは15時」と言ったことは忘れている。花ちゃんからお迎えの手配を頼まれた青葉は、日和の話は絶対危ないと思い、春貴に電話して終業時刻を確認し、真珠に伝えたのである。日和の周囲の人間は想像力が大事である!
それで日和は母の車に乗り、母は真珠の車に続いて走り、氷見飛行場まで行った。
「こんなところに空港ができてたなんてびっくり。でも小さいですね」
と母は言う。
「こういう小さいのは“空港”airport ではなく“飛行場”airfield って言うんですよ」
「へー」
「ここは主としてヘリコプターやドローンの離着陸に使いますが、滑走路が1200m (*4)あるから小型のプロペラ機なら離着陸可能です」
と真珠は説明する。
それで真珠は空港のスタッフに会釈して親子をエプロン内に案内する。
「今日はこれを使います」
「ヘリコプターですか!」
「ヘリですけど時速250km近く出る優秀な機体なんですよ。東京まで1時間半です」
「速いですね!」
「能登空港や富山空港まで行ってジェット機に乗るよりよほど早いですよね。エアバス社の製品で エキュレイユ2、日本語で言えば“栗鼠(りす)”ですね」
「すばしっこそうですね」
「そうなんですよ。エキュレイユとエキュケレイユ2がありますが、これは2の方です」
「何か違いがあるんですか?」
「エキュレイユは単発、エキュレイユ2は双発なんですよ」
「それは双発のほうが安心ですね!」
「でしょ?だから§§ミュージックでは2の方を買ってるんですよ。これが確か5-6機あったはずです(*1)」
「すごいですねー」
「使い手がありますよ。1個いかがです?」
「置くところが無いです!ちなみにこれ1個おいくらなんですか?」
「もう生産終了しているんですけど、これは確か1億円くらいで買ったと思いますよ」
「いいお値段しますね〜!」
それで日和はヘリコプターに乗り、東京に向けて離陸していった。
「じゃ帰りは私か迎えに来ますよ」
「分かりました。よろしくー」
(*1) §§ミュージック所有のエキュレイユ2は2機だけだが、郷愁飛行場をホームにしているムーラン(ムーランエアーではない)のエキュレイユ2が2機あり、空いている限りいつでも使って良い。
これを使うのはムーラン、播磨工務店、§§ミュージックだが、7割は§§ミュージックが使用している。
2020年12月にミューズ飛行場がオープンしたので、若葉は地元からの要望も受けてヘリコプターによる若狭湾の遊覧飛行を計画した。そのために適当なヘリコプターを2〜4機買おうと思った。それで“ゆりかごからロケットまで”(*2) 扱っている商事会社を経営している叔母に照会してみたら、
「ちょうど5機で4億5千万というのがあるけど」
と言われた。安い(*3)。でも5機もは要らないと思った。
それでケイに「ヘリコプター1個買わない?まとめ買いでお安いのよ」
と言ってきた。それで最近熊谷の郷愁飛行場と東京ヘリポート(江東区新木場)の間の輸送が多くヘリ会社にかなり依頼していたことから1機買ったのである。これが2021年春のことだった。
ところがヘリコプターを買ってみると、これがかなり使い手がある。最初は熊谷と東京の間の輸送用に考えていたが、エキュレイユ2はスピードが 224 km/hも出るし航続距離が703kmもあるので、これで東京から目的地まで直接行けるじゃんということになる。
一方若葉の方は、若狭湾の遊覧飛行を始めてみるとパイロット以外に6人乗れるエキュレイユ2は必ずしも遊覧向きではないことに気付く。内側の座席に座った人はあまり景色がよく見えない。結局内側の席は基本的に使わないことになる。
そこで若葉はパイロット以外に3人乗るロビンソンR44をあらためて2機導入し、エキュレイユ4機の内2機は熊谷に移動した。それを主として§§ミュージックが使用することになった。また1機は若葉自身の移動専用とした。
つまり2021年秋くらいの時点ではこうなっていた。
ミューズ飛行場
Ecureuil-2(ムーラン所有:若葉専用)
Ecureuil-2(ムーラン所有:遊覧用)
R44×2(ムーラン所有:遊覧用)
R22(播磨林業所有)
郷愁飛行場
Ecureuil-2×2(ムーラン所有:§§ミュージック・ムーラン・播磨工務店などが使用する)
Ecureuil-2(§§ミュージック所有)
ここに2022年春、§§ミュージックがもう1機Ecureuil-2を購入した。これは主として青葉のスタッフを高岡−東京間で輸送することを想定したものである。具体的には立花紀子を何度か輸送するかもと言っていたが、実際には桜井真理子が代替してくれて、立花紀子は高岡で作業しながら東京日帰り往復というのはやらずに済んだ。しかしこれを秋以降、吉川日和(入瀬コルネ)がよく使うようになる。
一方の若葉はシーラスの軽飛行機SR20を偶然福井空港で見かけて惚れ込んだ。緊急時には飛行機自体のパラシュートが開いて降下するという装備を持っているのも面白いと思った。結局このシリーズの最強機 SR22T(ターボ付き)を「安いし」と言って“取り敢えず”5機1.2億円で買った。
このシリーズのラインナップ
サイズは3機とも 全幅11.67 全長7.92m 全高2,71m、乗員5名(実質4)
SR20 155kt 627nm (Engine:IO-360-ES 200HP)
SR22 183kt 804nm (Engine:IO-550-N 310HP)
SR22T 213kt 895nm (Engone:TSIO-550-K / Turbocharged 315HP)
それでミューズ飛行場において若狭湾遊覧に使うと、
「可愛い!」
と特に女性客に人気で、好評であった。
(5機並んでいる写真をインスタにあげた人が複数あり、それでわざわざこれに乗りに来る人たちまで発生した)
しかしどうも5機までは必要無かったようだと思い、2機は郷愁飛行場に移した。この機体は空いている時はパイロット志望の人の練習用に使用している。
(*2) “ゆりかごからロケットまで”は日本の商社についてよく付けられる形容詞であるが、元々はダイムラー社について「ゆりかごからロケットまで」作っていると言われたことばらしい。
(*3) エキュレイユの中古はCOVID-19が落ち着いた2024年ならだいたい2〜3億円すると思う。多分2020年暮れの時期はパンデミックで世界的に航空需要が急速にしぼんだのが背景にあったものと思われる。§§ミュージックが2022年春に買った時は1億2千万円している。
(*4) 氷見飛行場は緊急時以外はジェット機を離着陸させないという口約束で運用しているので滑走路も1200mあれば充分だが、実は“誘導路”の名目で滑走路の“続き”が1200mあり、緊急時にはあわせて2400mの滑走路として使用することが可能である。
主な小型ジェット機の離陸距離
Honda Jet (pax6) 1067m
Cessna CJ4 (pax10) 1039m
Hawker400XPR(pax8) 1532m
Gulfstream G450 (千里機 2+13+1) 1707m
Gulfstream G650 (江藤機 2+10) 1920m
Cirrus SF50(2+4.5) 621m
(プロペラ機)
Do228 (pax19) 792m
KingAir350 (pax11) 1006m
Cirrus SR22T (pax3) 260m!
エキュレイユ2で東京ヘリポートまで運ばれた日和は、迎えに来てくれていた信濃町ガールズ担当の松原弓香マネージャーから、今回はアクア主演の昔話シリーズ『海幸彦・山幸彦』の撮影であると説明される。
「アクアが演じてる豊玉姫、海の神様のお姫様ね、そのそばに雛人形みたいに侍(はべ)っていればいい役だから」
「私とホルンってそういう役が多いですね!」
「今の年齢でなきゃできない役だけどね!」
「そうですよね!」
「2〜3年はそれで行けるかも。その間にしっかり演技の勉強すればいいし。まだ2人とも中学生だしね〜」
「・・・」
(↑私高校生ですと言えない)
松原マネージャーの車で、千葉のララランド・スタジオに行く。到着したのが17時頃である。
「あ。竹取物語の制作をしたスタジオだ」
と思った。(ザ・天下の撮影は砺波市・津幡町で行ったので関東には来ていない)
ここで萌花(入瀬ホルン)とお揃いの衣裳を着て可愛くメイクして、ほんとに豊玉姫のそばに侍っている役を演じた。セリフもほとんど無かった。
でも目立つ!美味しい役である。
ドラマの撮影は金曜日は夜20時であがる。
「中学生の役者さんはあがってください」
と言われる。
「はい、君たちもあがって」
とADさんに言われて上がったが
『私高校生なのにいいのかなあ』
と思った。でも中学生の萌花とセットの役だからいいんだよね。
この日はそのまま五反野の寮に戻る。萌花の部屋に入り、交替でお風呂に入って寝た。日和は23時には寝たが、萌花は遅くまでゲームか何かしているようだった。
なおここの寮は8畳サイズの洋部屋とDKである。実際には食事は朝晩(お昼に在室の場合はお昼も)配送されてくるので、ここで調理をする必要はほとんど無い。
御飯は今日みたいに遅く帰ってきた日は、idカードを持った寮生が寮内に入った時点で制御室からの報せで厨房は必要なら温めてから夕食を自動配送システムに載せる。すると各部屋の前まで届けられてピンポンが鳴る。
以前は定時配送だったのだが、それだと仕事で遅くなった人は冷めてるし、舞音の成功に嫉妬した子が舞音のご飯を捨ててしまうなどという事件があった(*5) のもあり、帰宅時配送方式に変更された。
居室は一応衝立で区切り、その半分を日和は使っている。この衝立はいつも置いていて、1人だけで使用する場合は休むためのスペースとお勉強とかをするスペースとして使用しているらしい。布団に寝たままごはん食べたり、お勉強とかはしないようにと言われているという。
(*5) 舞音のご飯を捨てた人物は後日花ちゃんに名乗り出て謝った。首にしてもらってもいいと泣いて謝っていたが、『舞音ちゃんは怒らないよ。だって連絡して再度作ってもらえば済むし、かえってできたてを食べられるもん』と言って不問にした。
舞音にも名前は言わずに謝罪に来たことだけを伝えたが、花ちゃんが思った通り舞音は『全然大丈夫です。本人にもあまり気にしすぎないように言ってあげてください』と答えた。
翌日(11/12) はドラマの制作は午後からということで、午前中は寮の地下の録音スタジオに行き、そこでいくつかの音源制作に参加した。
・アクアの歌(ほぼ完成済)にコーラスを入れた。
・白鳥リズムの歌(ほぼ完成済)にコーラスを入れた。
・薬王みなみの歌(リズムセクションと歌が入っている)にヴァイオリンを入れた。ホルンがフルートを吹いた。
お昼を食べたあと、千葉市に移動してドラマの撮影をする。この日でだいたい撮影は完了したようであった。ドラマの制作時間は一応明日まで取られているらしく今日も五反野の寮で泊まる。
日曜日(11/13) の午前中は、ツイストクリームの歌の伴奏をした。これは16小節しかなかった。何かのCM曲らしい。ツイストクリーム(バニショコ)の2人が歌い、日和たちは伴奏で入る。Gt,ホルン、B.コルネ、KB.麻生ルミナ、Dr.七石プリム。これは8月末に参加した“Luminnaries”の縮小版だなと思った。
実際元々、麻生ルミナと七石プリムがどちらも光に関わる芸名なので、この2人を入れたユニットを Luminaries と名付けたらしい。それにルミナと仲良しの入瀬ホルンを入れ、その姉妹の入瀬コルネを入れて上記のラインナップとなる。
しかしリズムセクションとボーカルで一緒に曲を練り上げて行く作業は楽しかった。コロナ以降こういう制作の仕方がほとんど消え、基本的にはリズムセクションとボーカルは別録りということになっている。しかし今回の曲はしっかりした伴奏譜を作る時間・費用が無いので、短い曲でもあるし、伴奏と歌の同時制作ということになったらしい。コロナが落ち着けばこういうのが主流に戻るのかなと思った。
ドラマの撮影は今日は結局行わないということになった。それであけぼのテレビのドラマに出てといわれ、寮の近くのあけぼのテレビ五反野サテライトに行く。台本を渡されて、30分で覚えてドラマに出演する。
主人公の姉妹(今川ようこ・広瀬みづほ・早幡そら・月城たみよ・春野わかな)が姉妹合唱団を組んでいて、毎回色々な町を訪れて出会いが起きるという、シチュエーション・コメディのようである。
コルネはその町で出会ったヴァイオリン弾きで、一緒におやつを食べたり、一緒に逃げたり?いろいろあって、最後は一緒に演奏をする。
「ここで何か適当な曲を弾いてほしいんだけど」
「何にしよう?」
とコルネが迷うとホルンが
「ツィゴイネルワイゼン」
と言う。
「そんな難しい曲弾ける?」
と心配されたが、
「そのくらいは弾けますよ」
と言ってかる〜く弾いてみせる。
「すごーい!」
と感激された。
夕方、帰ることにする。
「あいにくエキュレイユが出払ってるからシーラス使って」
と言われる。
日和は何のことやら分からない!
でも連れて来られたのは調布飛行場である。
「乗るのはこの機体ね」
「可愛い!」
ということで案内されたのはシーラス・エアクラフト(Cirrus Aircraft)製の軽飛行機SR22T である。
全幅11.67m 全長7.92m 全高2.71mというコンパクトなボディ。翼を除けばマイクロバス程度の大きさである。価格も3000万円程度で、自家用機としての人気が高い。それでいて、巡航速度は213kt(394km/h), 航続距離は895nm(1658km)もある。乗員は、パイロット1名+乗客最大4人である。
(4人の内1人はコーパイ席。3人が後部座席。キャビンの内幅は125cmで、軽乗用車の内寸程度である。一応3人分のシートベルトが付属しているが、実際におとな3人乗るのは無理だと思う。あまり横幅の無いおとな2人と子供1人が多分限界)
(再掲)
「ちなみにこれほんとに飛ぶんですよね?」
「もちろん。プリーズ・オンボード」
ということで、今回日和はSR22Tで調布飛行場から氷見飛行場まで飛んだのであった。
連絡を受けて氷見飛行場で待っていた日和の母は
「随分可愛い飛行機で飛んできたね!」
と言った。
彪志の自動車学校通いは続いていた。
第1段階をスムースに通過し、日曜日(11/13)からは第2段階に入る。第2段階は学科(危険予測)が1時間あるが、これは日曜日に受けてしまった。
そして第2段階8時間を月〜木(11/14-17)の4日でこなす。第2段階は1日3時間教習を受けられるのだが、会社が終わってから通っているので2時間ずつしか受けられない。
そして木曜日、最後の教習(見きわめ)を受けるために教習待合室で待っていた時のことである。
「あれ?もしかして鈴江さん?」
と声を掛けられギクッとする。
見ると水川係長なのでギョッとする。
「鈴江さんは何の免許取りにきたの?」
「ええっと、自動二輪なのですが」
「ああ、バイクあると通勤に便利だよね。私は大特を取ってくれと言われて取りに来た」
「あれは確か3〜4日で取れましたよね」
「うん。月火で第1段階、昨日・今日で第2段階。明日は卒業試験」
「早いですね!私は先週から通ってました」
「ああ、自動二輪だと2週間かかるかもね。だけど大特取って何の仕事させられるのか不安」
「ああ、どこか特殊な部署に行くんですかね」
「たぶんね。ここだけの話、係長の1人、というのが私みたいだけど、それと主任の1人が転勤っぽい」
「え!?」
「誰が転任かは分からないけど、ひょっとすると君はその自動二輪で通勤することになるのかもね」
「うーん・・・」
そこで水川さんは呼ばれて教習に行った。
この短い会話で彪志は女声で話した。一応中性的な格好ではあるがお化粧もしてるし、女子トイレも使っているから、ここで男声を使うわけにはいかないと思った。誰が見ていて不審に思わないとも限らない。
しかし結果的に係長に女装で自動車学校に通い、女声で話せるのを認識されてしまった!
でも水川さん、ぼくに
「可愛い格好してるね」
とか
「女の人みたいな声が出るんだね」
とか言わなかった。
普通に女性の同僚として接してくれた。
またこの件について水川さんは会社ても特に何も言わなかった。
彪志はこの日で見きわめOKをもらい、金曜日半日有休をもらって卒業試験を受けて合格した。そして土日を置いて月曜日(11/21)にまた半日有休をもらって鴻巣市(こうのすし)の運転免許センターまで行き、視力検査だけ受けて免許証をもらってきた。
むろん免許証は鈴江月子名義である!!
なお免許センターでも水川さんと遭遇し、手を振ってきたので会釈を返しておいた。
「彪志君免許取得おめでとう!」
と千里さんは言って
「これでしばらく練習してなよ」
と言い、庭に連れ出す。
庭にゴールドウィングが置いてある!!
「すみません。取得したのは普通二輪免許なので400ccまでしか運転できません」
「なんだ。大型二輪取れば良かったのに」
「いきなり無理ですー。原付しか運転したことないのに」
「じゃこっち使って」
と言って裏庭に連れて行かれる。250ccが駐めてある。やはりゴールドウィングは冗談だったんだな。しかしわざわざゴールドウィングを持ってくるとか手間を掛けたジョークをするものだ。ちなみに千里さんは大型二輪の免許はもちろん、バイクのレース・ライセンスも持っていたはずだ。
「ホンダのCBR250RR。ユーザーが多いし、250ccに慣れるには最も使いやすいと思う。これキーね」
「ありがとうございます。これどのくらいまで借りられるんですか?」
「うーん、取り敢えず2月か3月まで」
「分かりました。練習します」
2022年12月1-4日(木金土日).
東京辰巳国際水泳場で水泳のジャパンオープン(50m)が行われた。例年4月下旬に行われるジャパンオープンがこんな時期になってしまった複雑な経緯は以前に述べた通りである。
この大会で女子800mでは1位竹下リル・2位金堂多江、1500mでは1位金堂多江・2位竹下リル、と津幡組が金銀独占した。また400mメドレー・200mメドレーは“メドレー女王”の金堂多江が圧倒的1位だった。
またリルの妹・竹下ハネ(高2)も800mで7位、1500mで5位に入る健闘で今後に期待を持たせた。
しかし津幡組強し!を印象付けた大会だった。
12月2日(金).
吉川日和が11月12日に頼んでいたオーダーメイドのスポーツブラができたという連絡があったので、放課後、母に車で迎えにきてもらい、小矢部市のスポーツ用品店に行って受け取った。(母は春貴から場所を聞いた。日和の道案内では辿り着けない!)
「これお金は?」
「春貴先生が出してくれたんだよ」
「高そうなのに!」
「宝くじが100万円当たったんだって。だからぱーっと使っちゃうと言ってた」
「へー。確かにあぶく銭はさっと使ってしまうのがいいのかもね」
と母も納得していた。
12月2日(金).
松崎貴美(たかよし)は福岡市西区のアパートで郵便配達人さんのノックで目が覚めた。そばで寝ている恋人のガウンを羽織ると出て行き、印鑑を押して郵便物を受け取る。
彼は内々定している企業から呼ばれて福岡に出て来ていたが明日宮崎市に戻るつもりだった、郵便物を見る。
「裁判所?」
貴美はこれは絶対特殊詐欺だと思った。裁判所を騙って、お金を要求する詐欺はよくある。それで気合を入れて開封する。
「申立人の性別を女性に訂正する」
と書かれている。
えーっと・・・・・
「そうか。あいつ性別を変更したのか」
と納得が行く。
「じゃこの書類送ってやるか」
と思ったものの、ふと思う。
「これ多分大事な書類だよな。郵送中に万一紛失されたら」
恋人の博耶が起きてくる。
「なんかの督促状?」
「いや、元紀の性別変更が認められたって裁判所からの連絡」
「へー。性別変えるには裁判所に申し立てるんだ?」
「申請した時ここに住んでたから福岡の裁判所から送ってきたんだろうな」
「タカちゃんも裁判所に申請して性別変える?」
「俺が女になったら、ひろちゃんと結婚できないじゃん」
「私レスビアンでもいいよ」
「勘弁して〜」
「じゃ東京に持ってく?」
「持ってく?」
「だってそれ大事な書類なんでしょ?郵送とかしてて紛失されたらやばいじゃん」
「そうだなあ」
「ついでに新宿か渋谷でデート。羽田まで飛んで、帰りは宮崎空港に降りればいいよ」
「それが俺は§§ミュージックのドラマや映画で端役をする“トラフィック”に登録してるから、コロナが落ち着くまでは公共交通機関使用禁止なんだよ」
「へー。だったらバイクで行けばいいよ」
「バイクで東京まで?」
「宮崎から博多まで2回休んで5時間で来たんだから、東京までもきっと20時間で行けるよ」
貴美も確かに比例計算するとそんなものかもと思った。
「ちょっと距離を確認する」
といってノートパソコンで調べてみる。
「宮崎−周船寺(すせんじ)が312kmで5時間。周船寺−五反野が1120kmだから単純比例計算して・・・」
「約18時間だね」
と先に博耶が言ったので『理系すげー』と貴美は思った。彼がスマホの電卓を起動して計算すると17.9487である。
「ちなみに五反野−宮崎は1400km」
「22時間半」
「じゃ今から出掛けて土曜の明け方元紀の寮に到着して、それから22時間半で日曜の朝に宮崎に辿り着く感じかな。」
「渋谷でお買物〜」
「じゃ土曜日いちにち東京で遊んで土曜日の夜はホテルで一泊して日曜の朝から丸一日走って宮崎に戻るか」
「OKOK」
それで2人は着替えて(雨が降っているので)雨天用のバイクスーツを着る。Ninja650 KRT Edition に乗ると、まずは近くのマルキョーに行き食料を買い込む。石丸入口から福岡高速に乗ると東京へ向けて走り出した。概ね1〜2時間走るごとに適当なSA/PAで休み運転交代することにした。
13:10●めかりPA(95km) 関門橋を見ながらあごだし唐揚げを食べる。
15:50△宮島SA(273km) もみじ饅頭を食べてひとやすみ。
19:10●吉備SA(440km) デミカツ丼を食べてひとやすみ。
21:00△権現湖PA(542km) ここで少し仮眠(-24:00) 牛丼食べて出発
24:30●西宮名塩SA(586km) トイレ休憩して缶コーヒーを飲む
26:00△土山SA(696km) ラーメン食べてひとやすみ
29:10●清水PA(940km) トイレ休憩
_7:00△海老名SA(1047km) 海鮮丼定食を食べてのんびり休憩(-9:00)
10:00●首都高の千住新橋出口を降りて五反野の女子寮へ
(●貴美、△博耶)
仮眠は施設の隅で“インフレーターマット”(*6) を出して博耶を休ませ、貴美はその前で座ったまま寝た。でも最後30分くらい自分も横になった。
(*6) 空気で膨らむマット。バイクの長距離ツーリングをする人には持っている人が結構多い。
五反野の女子寮のフロントに行くと、貴美は持っているトラフィックのidカードで、そのまま元紀(月城すずみ)の部屋にも典佳(月城たみよ)の部屋にも入れるということだった。海浜ひまわりさんが出て来て、博耶のゲスト入館証を出してくれ、今夜はメゾン・ドゥラ・カデットに泊まれるということで、そちらの鍵ももらった。
「でも博多から東京までって頑張りますね〜。帰り一緒にツーリングしたいくらい」
と、ひまわりさんは言っていた。生憎年末年始はとても忙しいのでツーリングに行くお許しが出ないらしい。
それで結局貴美と博耶は、元紀に裁判所から来た手紙を渡し、メゾン・ドゥラ・カデットに行ってお風呂に入り一眠りしてから、午後から渋谷にお買い物に行った。21時過ぎに戻ると、典佳(月城たみよ)が帰宅していたので、声を掛けてついでに貴美が途中で書いた詩を渡す。
「1月か2月にCDデビューするんだろ?良かったら歌詞に使ってくれ」
「これ演歌じゃん。私演歌は歌わないよー」
「そうか?じゃ誰か歌う人にでも」
などと言っていたのだが、この詩を見た花ちゃんは、コスモス社長と話し合いの上でこれを和風ロックに編曲して、たみよに歌わせることにする。
貴美たちは月曜日が雨だったので結局6日(火)早朝までカデットに滞在し、それから宮崎に帰っていった。帰りは、典佳がお金を出してくれたので、大阪南港から志布志まで火曜日夕方の“さんふらわあ”で移動。船内でぐっすり眠っていくことができた。(12/7 宮崎には水曜日の昼帰着)
12月3日(土).
墓場劇団の公演『クラインの墓穴』があけぼのテレビ系列のネットテレビ・有線テレビで生中継された。9月,10月にも上演されたものだが
「ぜひもう一度見たい」
という要望が強く、また今回初めて全国で見られるようにするにあたり、最も人気の高かった作品を使いたいという、あけぼのテレビ側の意向もあり、これを使うことになった。
この劇の登場人物は14名なのに対して墓場劇団と死国巡礼を合わせても13人しかいない。しかし今回は槇原歌音が§§ミュージックの津幡教室のレッスンに出ている関係で、同じ教室の川本浜菜(翌週の昇格テストに合格して紺青セイラ)が、川岸奪衣女の名前で参加してくれることになった。浜菜としてはステージの実地体験をして翌週の昇格試験につなげたい所である、
しかも練習を見てて、この劇団の公演はお笑いセンスをかなり鍛えられると思った。夜野棺桶さんとか成仏霊子さんとか、いきなりアドリブで無茶振りしてくるから返すのが必死だった。
(この子は何とかできると見て無茶振りしてる)
放送の結果は物凄く好調で来月も全国中継されることが決まった。
公演の生中継が終わったので、墓場劇団・死国巡礼の人たちが『霊界探訪』の妖怪“藪入り”の再現ドラマに参加してくれた。これは12月4日の1日だけで全部撮り終えた。
出演:−
●仕事で大失敗し首になりそうだったAさん
A:涅槃安楽、友人:三途川守、新聞配達:死神大鎌、会長:地獄大佐
●女装がバレるかもと不安だったCさん
C:境界迷子、カフェの店員:金沢メッセ(双葉)、警官:森下英・城山次郎、女子社員:金沢パール、課長:神谷内大
●コンビニから帰られなかったD子
D子:月見里公子、パン屋さん:泣原戦死
●何度も恋愛に失敗していたE子
E子:黒衣魔女、タクシー運転手:夜野棺桶、新しい恋人:成仏霊子、子供:人形!
●放送局内で迷子になった初海!
初海:本人、警備員:九重、アイドル:槇原歌音、マネージャー:泣原死亡、遙佳:本人、歩夢:本人、幸花:本人
(体格の良い九重の警備員役はとても説得力があった)
●郵便局から帰られなくなったがエモパーに助けられた大学院生
H男:伊勢金剛(真珠の兄)、先輩:金剛の友人
●大学構内で迷子になったがシリでも帰られなかった
J子:古屋あんころ、友人:古屋きんつば、教官:地獄提督(友情出演)
(地獄提督は本職が高校教師なので教官役も雰囲気が出ていた。副業禁止なのでギャラを払わない友情出演。校長の許可は取っている)
●練習のあと帰宅出来なかった日和
日和:本人、舞花:本人、青葉:本人、千里:本人、明恵:本人
(全員オリジナルキャスト!ついでに、舞花ちゃんもまた出てると言われる)
12月4日(日).
この日は1日再現ドラマの撮影をしていたのだが、真珠と明恵は前日夜から青葉の家に来ていて、朝青葉のお腹を“経過報告”として撮影して帰って行った。現在青葉は25週目。7ヶ月目なのでお腹はかなり大きくなっている。
12月8日(木).
11月13日に行われた模試の成績が返ってきた。例によって全国の大学に対する合格可能性がA(確実)B(ボーダーライン)C(努力すれば可能性あり)D(かなり厳しい)E(絶対無理)のランクで表示されている。
金沢の竹本双葉(初海の妹)は国公立が全部D以下である。密かに期待していた富山県立大もD判定だった。母は頭を抱える。
「あんたもお姉ちゃんと同じ所行く?」
「それしかないみたい。ごめーん」
ということで双葉は姉(初海)と同じ金沢市のG大学に行く方向にした。
S市の川口遙佳は第1志望の金沢美大がC判定である。しかし模試は基本科目の成績だけで見ているのでCの場合実技での競争になると思った。すると美術予備校などに通って鍛えている子たちには勝てない気がする。それで遙佳は第2志望の富大芸文(富山大学・芸術文化学部:キャンパスは高岡市:青葉の家の近く!)を受ける方向で考えることにした。ここはB判定である。共通テストの結果が良ければ滑り込める可能性が充分ある。滑り止めに金沢市のG大学芸術学部も受けておく(富大に通(とお)った場合に無駄になる入学金が辛いがこれは出してくれると祖父が!言っている)。
氷見市の高田舞花(進学クラス)は第1希望がその富大芸文だったのだがC判定である。共通テストでいい点数を出せぱもしかしたら行けるかもしれないが微妙である。富山県立大はB判定だった。しかしこの2つと後は滑り止めにG大学芸術学部も受けることにした。
「でも公立の富山県立大にBなんでしょ?私立の滑り止め受ける必要あるの?」
と母は訊いた。G大学は入学手続きの時に80万円ほど納める必要がある。その内入学金の20万円以外は、入学辞退すると戻って来るが、それにしても80万円の一時支出はなかなか辛い。
「でも富山県立大には美術関係の学科が無いんだよぉ」
と舞花は言う。基本的に工学部のみの大学であったが、2019年に看護学部が新設された。舞花は看護師になるつもりはない。性格的に無理だと思う。芸術家気質でムラ気が大きいので毎日決まった事をする仕事は合わない。自分が看護師になったら絶対20-30人患者を殺す自信がある。
こちらはシステム系の学科狙いである。
それともうひとつ県立大には女子バスケ部が無いという問題もあった。というか富山県内には女子バスケ部のある大学が存在しない!金沢のG大学なら女子バスケ部がある。
谷口愛佳(就職クラス)は金沢の私立、G大学やH大学がB判定、S大学はC判定、J大学がA判定といったところである。就職クラスに在籍していてここまでの成績を出すのはかなり優秀である。
昨年度までは大学に行くつもりなど全く無く、高校出たらビジネス専門学校に2年通ってから就職すればいいと思っていた。しかし今年度バスケ部がかなり上の方まで行ったことから、あと4年間大学に行ってバスケをしたいという気持ちが強くなった。それで高校1年のレベルから勉強し直して大学進学を目指している。
この方針に母は
「大学なんてお金は掛かるし大卒女子は就職率良くない」
と渋い顔だが、父が張り切って
「よし。大学頑張れ。勉強は若い内にやっておくべきものだ」
と言っている。お金は出してくれないみたいだけど!でもG大学なら比較的学費も安く奨学金で何とかなりそうである。一応G大学は就職率100%をうたっている。そしてG大学には女子バスケ部がある!
12月10-11日(土日).
熊谷の§§ミュージック分室(郷愁村内)で信濃町ガールズの昇格試験が行われ、北陸代表の川本浜菜(紺青セイラ)と関東代表の大館蒔乃(氷川チャイム)が合格した。前回の昇格試験で昇格保留になっていた関西の白石乙羽(清水スピリ)・東海の杉田由夏(鏡家トマト)と一緒に4人とも冬休みから信濃町ガールズ本部生の活動に参加する。
川本浜菜が合格したと聞いて、同じ津幡教室に通っていた吉川日和(入瀬コルネ)も槇原歌音も
「やはりね〜。浜菜ちゃんレベル高かったもん」
と思った。
12月10日(土).
高岡C高校の体育館で、高岡C高校女子バスケ部とH南高校女子バスケ部の練習試合が行われた。この試合には高岡C高校側の希望で“高田妹”つまり高田晃も選手として参加する。
高田晃は前回の生理が11月27日にあった。すると次の排卵は12月11日くらいのはずで、この日はギリギリで排卵前の卵胞期のはずである。つまり調子の良い期間にあるはず!。
この日の審判・T/O・モッパーは高岡C高校の男子部員がしてくれた。
高岡C高校とH南高校は11月6日にウィンターカップ富山県予選の決勝で対決し、その時は118-116で高岡C高校が勝っている。しかしあの試合には晃が出ていなかった。
今日はH南高校はこのようなスターターで出ていった。
PG 愛佳 SG 美奈子 SF 夏生 PF 晃 C 河世
事実上のダブルセンターである。向こうもセンターを2人入れて対抗する。
そして高岡C高校は1ヶ月前の試合と同様、点取り合戦を仕掛けて来た。H南高校がこういう戦いに最も弱いことを知っての上でのことである。
しかし今日のH南高校は左右に河世と晃が居て、なかなか攻めにくい。どちらもシリンダーを活かした防御をしているので、接触が発生するとたいていが高岡C高校側のファウルである.一方で美奈子も夏生もよくスリーを入れる。
それて第1クォーターは16-22とH南高校が6点もリードする展開である。高岡C高校の矢作監督の顔が厳しい。
第2クォーターでもこの傾向は変わらず18-19とH南高校のリードである。前半終わって34-41と7点差。
ここで向こうはスリー中心の攻めに切り替えてきた。シューターを2人入れて接触プレイの起きにくい遠隔攻撃中心にする。しかしそれこそH南高校の好きなスタイルである。第3クォーターはスリーが多かったこともあり、21-28とこちらが大きくリード。ここまで55-69である。矢作監督が頭を抱えている。そして最終クォーターも向こうは必死で追いすがるが24-23と1点詰めただけである。
結局79-92 と13点差でH南高校の勝ちとなった。
「え?嘘?私たち勝ったの?」
と愛佳キャプテンが戸惑っている。
整列して審判がH南高校の勝利を告げる。両者握手したりハグする。
矢作監督は首を振りながら笑顔で部員たちに言った。
「ヘイ、ガールズ。少し基礎から鍛え直そうか」
監督は笑顔だが向こうの部員たちの顔がこわばっている。
「こっわぁ」
と愛佳と舞花が言った。
一方控室に戻ったH南高校の部員たちに春貴は言った。
「今日の第4クォーターの高岡C高校。あれが本物の高岡C高校だから。たまたま勝ったといって有頂天にならないように」
「第4クォーターはなんか気合が凄かったです」
「第3クォーターまでは、やや甘く見られていたね」
「次からは最初からマジ本気で来ますよね」
「うん。だから私たちも頑張ろう」
「はい」
愛佳と舞花はこれでバスケ部引退となり、次のキャプテンは満場一致で夏生に決まった。愛佳と舞花は受験勉強に集中することになる。
12月12日(月).
毎朝付けている基礎体温の記録から、高田晃に排卵が起きたことが推測された。12/26ころに生理が来ることが想像される。つまり今回の練習試合はやはりギリギリ卵胞期であったと思われる。
12月16日(金).
日和に7度目の生理が来た。日和にとって生理は完全に平常のできごとになった。
6月17日(ルーレットを回す夢を見る)
7月 1日+14(最初の生理)
7月29日+28
8月26日+28
9月23日+28
10月21日+28
11月18日+28
12月16日+28
ここまで生理はきれいに28日おきに来ている。
12月16日(金)24:10.
『霊界探偵金沢ドイルの北陸霊界探訪』が放送された。今回の主な内容は下記である。
・金沢ドイルの妊娠経過報告
・長時間時代劇『ザ天下』(12/29放送予定)の制作の様子
関連映像
(1) ロケ跡地に野菜(キャベツ・タマネギ・ジャガイモ・大豆)が植えられた様子
(2) “きつねうどん”南砺店の様子。
・七尾城の死体遺棄事件の経過
・九転十起の像(浅野総一郎の事績紹介)
・旧人形美術館跡の整備された様子
・妖怪“藪入り”(メイン題材)
(1) 事件の状況(再現ドラマ)
(2) 金沢ドイルたちの推理
(4) 封印作業のレポート
(6) 妖怪ファイルの記述紹介
(7) 迷路の歩き方(左手法)の解説(金沢パール)
(8) 迷子になった時の対処法(金沢セイル)
反響
「遙佳ちゃんは完全にレギュラーになったね」
「来年は高岡か金沢の大学に出てくるらしいよ」
「正式に編集部入りだな」
「金沢チョコって入瀬コルネだよね」
「そそ。“チョココルネ”という連想」
「なるほど」
「お姉さんの入瀬ホルンとよく似てる」
「まるで双子みたいな姉妹だね」
「今こちらの中学に通いながら、毎月1回東京に出て行って仕事してるらしい」
「なかなか大変だね」
「結構姉妹セットのお仕事があるみたいだもんね」
「往復大変だなぁ」
「Dream5がそういう仕事の仕方してたね」
「中学卒業するまではそのパターン続けると聞いた」(一体どこからそんな噂が)
「ああ、御両親も娘が2人とも東京に出て行くと寂しいよね」
12月21日(水).
彪志は3度目の生理になった。今回は前回の生理から29日後に来た。やはり最初のうちは?完全に28日周期というわけでもないのかもと思う。
1.10/25
2.11/22 (+28)
3.12/21 (+29)
彪志は予兆もあったので3日前くらいから生理用ショーツとナプキンを使用していたので特に大きな問題も無く、生理を迎えることができた。
「なんか生理も3度目になると『ああ1月たったんだな』くらいの感覚になってきたなあ」
と彪志は思った。
彪志の会社では年末・年始は多忙になるのでお正月からずらしてお休みを取ることになる。彪志は年末年始ずっと出て、1月4〜10日の一週間をお休みさせてもらうことにした。車で伏木まで往復する。
12月23日(金).
生理も3日目になり量も落ち着いてくる。この日彪志は夢?を見た。夢の中に白衣を着た30代の女性が出て来て
「ではこのお薬をお飲みください」
と言う。それで飲むが少し気分が悪くなった。
「飲むと少し気分が悪くなるかも知れませんが」
気分が悪くなりました!
「取り敢えず今回は4日間続けましょう。うまく行かなかったら来月は5日間にします」
「はい」
「若い方だと最初は3日間くらいから始めるのですが、30歳だとどうしても卵巣の力が衰え始めていますから4日くらい必要なんですよね」
え〜っとぼくまだ29歳なんだけど。
「赤ちゃんのためにも頑張りましょう」
「はい!」
これを飲むのが、青葉が赤ちゃんを無事産むために必要なのかな。頑張らなくちゃと彪志は思った。
目が覚めてから少し悩んだ。
「青葉が赤ちゃんを元気に産むためにどうしてぼくが薬を飲まないといけない??」
これ、ぼくが赤ちゃんを産むためだったりして!?
彪志はこの夢?を結局4日間(23,24,25,26)見て、4回その気分が悪くなる薬を飲んだ。
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【春四】(1)