【春四】(3)

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12月25日(日)朝。
 
ネットの速報で『百道良輔・大輔兄弟急死』という報道を見た人たちのほとんどがそれに続く26日以降の大騒動のことを全く予想していなかった。
 

12月25日朝、大館蒔乃(氷川チャイム)は爽快に目覚めた。なんか身体が軽い気がするなあと思いながら取り敢えずトイレに行く。
 
おしっこの出方に驚く!
 
何これ!?
 
放出位置は昨夜の“タック”された状態とほぼ同じなのだが、あの辺を回りくどく通過してから出るのではなく、膀胱から直接まっすぐ“落ちて行く”感じである。男の子のおしっこは“出す”、女の子のおしっこは“出る”と性転換手術を受けたタレントさんがテレビで言ってたよなぁというのを思い出した。ほんとにこれは“出す”ではなく“出る”感覚だ。
 
つまりぼく本当に女の子になっちゃったみたい。
 
でも・・・“痛くない”よね?性転換手術の痛みって短い人でも3〜4ヶ月、遅い人だと1年くらい続くって聞いてて覚悟していたのに。
 
トイレを出たから自分の“身体”を確かめてみると、完全に女の子の形になっていることを認識する。クリトリス、あります。おしっこの出るところ、あります。ヴァギナ!あります。おちんちん、ありません。たまたま、ありません。たまぶくろ、ありません。ほんとにぼく女の子になったんだ。嬉し〜!
 
少し落ち着いたら、バストが昨日までより大きくなっていることにも気付く。すご〜い、これBカップあるよね・・・・と思ってから重大な問題に気付く。
 
このバスト、Aカップのブラジャーには入らない!
 
今日は午前中にあけほのテレビで月城たみよちゃんが歌うののバックダンスをすることになっている。たみよちゃんが中2なのでバックダンスは原則としてメインのアーティストより若い子ということで1年生4人が指名された。
 
七石プリム・春野わかな・鏡家トマト・氷川チャイム
 
絶対に遅刻とかは許されないし、ダンスもしっかりしなければならない。それなのに合わないブラジャー着けてたらまともに踊れない。
 

蒔乃はフロントに電話してみた。稲田姉妹のどちらかが出た。
 
「朝早く申し訳ありません、ブラジャーをこの時間帯に買える所とかご存じありませんか?なんか急に胸が成長したみたいで」
「ああ、女の子はそんな時もあるんだよ、でもブラジャーならあげるよ」
「もらえるんですか!?」
「買い物する時間が取れない子も多いからね。サイズはいくら?というかフロントまでおいでよ。計測してあげるから」
「ありがとうございます!」
 
それで蒔乃はフロントまで行って稲田さんに測ってもらい、B70の普通のブラジャー2枚と、スポーツブラをもらった。
 
「バックダンスって動きが激しいからスポーツブラしてたほうがいいんだよ」
「へー!」
 
着けてみると物凄くしっかり胸を押さえてくれるので、動きやすく気持ち良く踊ることが出来た。それであけぼのテレビで本番をこなしたが、
 
「さすが昇格組はレベル高いね」
とマネージャーさんに褒められた。
 

仕事が終わった後、カデットに行き
「私女の子になっちゃった」
と言って身体を母と姉に見せた。
 
「きれいに女の子になったね!」
と母も姉も感心していた。
「痛みは?」
「全然無いよ」
「凄いねー。昔は傷が治るまで1年掛かったって聞いたけど」
 
「これ役場に提出する書類らしい。未成年だから保護者のサインが必要なんだって」
と言って、“魔女っ子千里ちゃん”からもらった『性別訂正届』に署名してもらった。
 
蒔乃は午後も今度は地上波のテレビ局に行き、舞音ちゃんのバックで踊った。今度は20人くらいの中の1人である。
 
「この衣裳着て」
と言われて着てみると、信楽焼のたぬき(金玉付き)だったのできゃーと思った。
 
おまけに司会者さんが寄ってきて
「君、金玉大きいね」
と言われたので
「はい、18金(18禁)です」
と答えたら、大笑いしながら背中を叩いていた(セクハラでは?)。
 
(でも「信濃町ガールズの子はどの子でもちゃんと受け答えができるから、素晴らしい」と後から褒められたらしい)
 

その日の夕方、仕事が終わって20時半頃寮に戻る。すぐ夕食が配送されてくるので、頂いて食べる。
 
お昼は放送局の駐車場に駐めた§§ミュージックの車の中でもらったお弁当を食べた。コロナが収まるまでは食堂での飲食は避けるらしい。でもなんか高そうなお弁当だったけど。夕食もなんだか美味しそうだし、けっこうなボリュームもある。合格した後の説明会で、最初に注意されたことで“ダイエット禁止”というのがあったもんなと思う。でも今日みたいに忙しく仕事してたらダイエットなんて無理〜!しっかり食べてないと身が持たない。
 
食べた後、ミルクティーでも飲みながらのんびりしていたら、電話が掛かってくる
 
「ナース室の広丘です。この寮では生理用品は各々お好みのものを無料配布していますが、大館さんはナプキンは何を使っておられます」
「ナプキンですか?」
 
生理来てません、なんて言うわけにはいかない。中学生にもなって生理が来てなかったら大変だ。何か適当に言っておくか。別に使わないけど。
 
そう思ってチャイムは答えた。
「えっと、センターインコンパクト1/2です」
「中高生でセンターインの子(*10)多いよね」
「ですねー」
「何センチの買ってる?」
「えっと私生理あまり重くないので、21.5cmと30.5cmがあれば。どちらも羽つきで。あ、無香のが好きです」
 
(生理用品の銘柄とサイズをすらすら答えるってさすが元男の娘ね♪)
 
(*10) センターインは元は資生堂が開発した商品だが、資生堂が生理用品から撤退したため、現在はユニチャームが製造販売しており、同社の4大ブランド(ソフィ・はだおもい・ボディフィット・センターイン)のひとつとなっている。おしゃれで生理用品らしくないパッケージもあり、資生堂時代から中高生に人気が高い。コンセプト的には同社のボディフィット同様、中央が盛り上がるように作られていて、女性にとっては着け心地がいい。
 

「OKOK。それで登録しておくね。必要になったらいつでも連絡してね。今在庫はある?」
「あ。少なくなってきてました」
「じゃ配送システムに乗せるね」
「はいお願いします」
 
それで5分ほどでセンターインコンパクト1/2の“多い昼〜ふつうの日用”21.5cmと“多い夜用 ”30.5cmが1パックずつ送られてきた。どちらも無香タイプ・“羽つき”である。なおセンターインコンパクト1/2には“羽なし”は無い。
 
付けてみよう!
 
早速取り敢えず21.5cmを1個取り、ショーツに装着してみた。
 
「これいい!」
と思わず声をあげた。
 
蒔乃は“生理ごっこ”はよくしていたので何度もナプキンを付けたことはある。でもお股に余分なものが付いていると、ナプキンをつけていて凄く邪魔に感じた。でもお股に変な物が無いとしっかり装着することができる。特に盛り上がり部分が、陰裂にちょうど填まるのは安心感があった。
 
余分なものが無くなって良かったなあ、とあらためて蒔乃は思った。
 

その日お風呂に入ってからお布団の中で目を瞑る。手があの付近に行く。
 
だって仕方無いよね。お布団の中に手を入れると、自然に手が腰の付近に来るんだもん。自然にお股を触るようになってるんだよ。だからぼく悪いことしてるんじゃないよ。
 
(自分の身体に触るのに誰に断ることも無いし、言い訳とかする必要も無いと思うけど)
 
それで蒔乃はあそこを触ってみた。ゆっくりと回転運動を掛ける。
 
何この気持ち良さは?
 
ちんちん触るよりずっと気持ちいいじゃん。
 
蒔乃はゆっくりとそこを20分くらい刺激していて“逝った”ような感覚になった。余韻を楽しむようにお股のあちこちを触る。シャッターは二重になっている。その中には敏感な所、おしっこの出てくる所、そして女の子だけにある穴。
 
女は男より穴が1つ多いっていうもんなあ。
 
その女の身体が自分の物だなんてすごく嬉しい。
 

1日ほど前。12/24夕方。
 
§§ミュージックの事務所で、新人の信濃町ガールズがどうも遅刻して叱られている様子を見て少し声を掛けてから、ケイは18時半頃事務所を出た。佐良しのぶの運転するアコードで小平市のマリの自宅に向かう。
 
ちょうどその頃、グラナダの千里邸の地下プールで泳いでいた青葉(R)は何かの胸騒ぎを感じて泳ぐのをやめプールからあがった。時差は8時間あるので現在こちらは午前10時半である。
 
からだを簡単に拭いてから、邸内の居室にいるはずの千里(実際に居るのは千里2B Olivia)に電話を掛けた。
 
しかしこの電話は“指令室”の5番(Grace)が横取りした。
 
「ねぇ。何か起きた気がするんだけど」
「さすが青葉だね。正確な時刻までは私も分からないけど、この3〜4時間以内に百道大輔が薬物中毒で死亡したっぽい」
と千里(Grace)は答えた。
 
つまり千里姉は3〜4時間前から、この“ダーク”な波紋を感知していたのだろう。さすがだ。時々千里姉はひょっとして虚空さんより凄いのではと思うこともある。
 

「やばくない?」
「警察はマリの所に事情を聴きに来ると思う」
「変なこと言わないか心配だなあ」
「マリよりケイのほうが怖いよね」
「社会的な責任が重いのに、ケイ自身の自覚が無いからね」
「私はこないだケイに忠告した」
「だったら今度は私が警告しておくよ」
 
それで青葉(R)は、そのままケイのスマホに電話した。大輔が死んだなどとは言わずに、このように警告した。
 
「ケイさん、ここ1〜2日中に百道大輔さんのことで警察に何か訊かれるかもしれませんけど、何も知らなかったで押し切ってくださいね」
「あ、うん」
 
ケイは先日も千里から言われたことであったが再度青葉からも言われたことで、大輔の逮捕が近いのかもと思った。今日政子の家に大輔を招いたのはやばいかなあとも思ったのだが、実際には大輔は警察の手の届かない所に行ってしまった。
 

司令室では情報を集める。
 
(日本時間で)夜中の12時過ぎに良輔の事実上の妻(指輪ももらっていていつも着けている)がスタジオに行き、ふたりが死んでいるのを発見する。スタジオ内に入った時変な臭いがしたので、一酸化炭素中毒かと思い、窓を全部開放した。
 
(しばしば誤解されているが一酸化炭素は無臭)
 
それで119をする。救急搬送されるが病院で死亡が確認される。医師は薬物中毒を疑い、警察に通報する。それで1時半頃、警察が動き出した。
 
警察も薬物死と判断したが、ふたりの遺体を詳しく調べたい。そのためには遺族の許可が必要である。良輔については妻(この時点で警察は法的な妻と思っていた)が同意した。大輔の身内について訊かれた彼女は
 
「大輔さんはマリちゃんって子と付き合ってたと思う」
と言うので、良輔のカーナビから“マリ”と書かれた目的地に行ってみる。それで午前4時頃、警察は小平市のマリの家に辿り着いたのである。
 

マリは待っていた大輔がやっと来たかと思い玄関に出るが、刑事さんたちから大輔が死んだと聞かされ混乱する。そこに異常に気付いてケイが出て来てくれて、マリをお母さんに託してケイが警察の質問に答える。
 
この状況をモニターしていた司令室のグレースは青葉Rに電話して、マリをサポートしてあげてと頼んだ。これはスペイン時刻で夜8時過ぎである。
 
青葉(R)はすぐにマリのお母さん!のスマホに電話を入れた。マリのスマホの通話履歴が調べられた場合に微妙な時刻にマリが外部の人間と話したことが分からないようにするためである。
 
そしてここで青葉はマリに、現在の状況を整理して話した。実際マリは何がどうなってるのか、混乱していたのである。それが青葉と話したことでかなり落ち着くことが出来た。
 

「この状況、私次第でかなりこの先が変わるよね」
「マリさんが下手な対応をすると、アクアちゃんとかまで活動できなくなります」
「アクアは絶対に守らないといけない」
と言ってマリはかなり気合が入った。
 
「青葉、私何をすればいい?」
「まず自分は大輔さんとは関係無いと明確に否定することです。だって別れていたんでしょ?」
「それを誰も信じてくれないんだよ」
「だって、かえでちゃんはケイさんの子供だし」
「よく分かったね!」
「かえでちゃんの顔見たら、みんな気付くと思いますけど。リンナさんや亮平さんにも分かったと思いますよ」
「だよね?なんでケイは気付かないんだろ?」
「ケイさんって、こういう所鈍いですよね」
 
かえでの父親がケイであると青葉が知っていたことで、マリはかなり気分が落ち着いたようである。青葉はマリに「警察にこう聞かれたらこう答えて」といくつかの想定問答を教えてあげた。マリはアクアを守るために頑張った。
 
それでケイからの連絡で、警察が直接話を聞きたいと言っていると言われた時、マリは気合を入れて出て行ったのである。
 
(ケイはマリのスマホに電話した。青葉はお母さんのスマホでマリと話していた)
 

それで警察は取り敢えず遺体の詳細調査については大輔たちのお母さんの許可を取る必要があると判断し、マリが教えてあげた大輔たちの母のところに4時半頃向かったのである。その前にマリ、ついでにケイも薬物検査を任意で受けたが、むろん陰性である。
 
一方、警察は良輔の妻が任意の調査に応じてくれたため良輔のマンションに入り、妻が知っていたパスワードでパソコンを起動し、中身を調べた。そして様々な薬物を買った人の膨大なリストを発見。そこから翌日12/26の大量逮捕劇に至る。
 

12月26日(月).
 
高田晃に4度目の生理が来た。これでやはり12日に排卵が起きていたことが確かめられた。晃は基礎体温の記録を付け続ける。
 
09.28 本当に最初の生理
10.27 2度目の生理 +29
11.27 3度目の生理 +31
12.12 推定排卵日
12.25 4度目の生理 +28
 

テレビ各局は12月25日までは普通に放送が行われていた。12月26日も最初は普通に放送が始まった。しかし朝から大量に有名人逮捕の速報が入り始めた。
 
速報は次から次へと入るので、テロップ部分が常にふさがっている状態になり番組が成り立たなくなっていく。そして多くの局がお昼からは特別番組に切り替えてしまった。普段通りの番組を流していたのは、CSやネットテレビを除けば、毎度独自の報道体制をすることで有名なЯRテレビのみであった!
 
大量逮捕“底引き網作戦”は全国の警察から麻薬関係の捜査官を多数集めて実行された。リストに基づき各々の(電話会社に登録された)住所にも向かったが、番組の制作現場とか試合・ライブの会場で逮捕状を執行された人もあった。ライブなどは観客の暴動を防ぐため、終了後に逮捕状を執行した。また警察は全国の空港にも捜査官を派遣していた。各空港から海外に行く芸能人やスポーツ選手に任意の薬物検査を求め、陽性が出れば逮捕する。この結果、リストに無かった人まで30人ほど逮捕された!
 
捜査官は郷愁飛行場・ミューズ飛行場・藺牟田飛行場・氷見飛行場にも来たがさすがにこういう所から外国に行く人はいない。そもそも税関や出入国審査設備も無いし!(多分密出国による海外逃亡防止のため)
 
“百道”リストによる被疑者は一部所在の掴めなかった人を除いて全員26日中に逮捕されたのだが、この“余分に逮捕された人たち”の供述や家宅捜査から新たな売人としてプロダクションも経営している演歌歌手・十足正義が浮上し、26日夜に逮捕。彼の事務所および自宅の家宅捜索から新たな覚醒剤・大麻などの購入者が50人ほど判明。ここから更に27日も逮捕は続くことになった。それでこの事件は2人の名前を取って“百十事件”とも呼ばれる。
 
また百道リストで昨日所在の掴めなかった人は全員指名手配されたため、本人がびっくりして近くの警察に出頭。全員逮捕された。それでも逮捕劇は27日のお昼すぎくらいまでに完了した。全国で1000人以上の警察官が稼働した大作戦だった。
 

各局の報道部門が、他局の報道も見ながら、逮捕された人の正確なリストを確定させるのに必死になっていた一方で、番組制作部門では、どの番組のどの回が放送可能なのかを必死に確認していた。あまりに多数の逮捕者が出て、放送困難な番組、継続困難な番組、が多数発生していた。
 
誤報もあった。お笑い芸人のアルマ次郎は複数の局で逮捕情報が流されたが、ЯRテレビに出て行って
「俺は逮捕されてねーぞ」
と主張した。
「だいたい考えてみてくれよ。俺みたいに売れてない芸人が違法薬物とか買う金があるわけないじゃん」
「そもそもあんた薬使わなくてもいかれてるから薬使う必要ねーよな」
とその時間帯に情報バラエティをやっていた丸呑ワンダから言われていた。
 
結局似た本名の人と間違われたようであった。実際に逮捕されていたのは最近あまり売れていなかった俳優さんで、ЯRテレビの報道を見て、他のテレビ局も逮捕者リストを訂正した。
 
この手の情報修正が5件ほどあった。
 

ちょうど年末の特別番組が多数流れていた時期だけに、問題になる人物の出演シーンをカットするなどの編集対応も多く行われ、それで尺を合わせないといけないのでカットした分どこを復活させるかなど、編集者たちは悩ましい問題に曝されていた。一部急遽、うちわの人間などを使って追加撮影したものもある。
 
26日の夕方くらいから§§ミュージックに、出演依頼が舞い込み出す。結局逮捕者はまだまだ出るかもしれないが、若いタレントの多い§§ミュージックなら多分薬物には関わってないだろうと多くのテレビ局に思われたのである。
 
このほか、富士川32・利根川32、東青山少女合唱団などの子たちも多数の局に出ていた。
 

12月27日(火).
 
妊娠中の青葉Lは東京のテレビ局がパニックになってるようなので、千里に電話してみた。
「私何かしなくていい?」
「妊婦にはストレスになるから気にせずのんびりしてて。必要な時はRを使うから」
「分かった。よろしくねー」
 

信濃町ガールズの突然の動員が続きそうなので、男子寮の子たちを女子寮に呼ぶことにした。学校が休みの間はこれでも特に問題無い。また外部に住んでいる人もこちらに呼び寄せて空いている部屋に入れた。
 
C708:今井葉月 C709:アクア
C601:町田朱美 C602:東雲はるこ C603:桜野レイア
C402:三陸セレン C403:山鹿クロム
C104:川泉パフェ(姉のスピンと同居)
A705:大崎忍 A706:鈴原さくら(元々さくらの部屋)
A201:七石プリム 202:早幡そら 203:花園裕紀 204:夢島きらら
 
庭に一時的に?建ててある隔離用アパート
101:立山煌、102:三国舜、103:西宮ネオン
 
アクアたちの滞在のために初めてC7階が使用された(夏に泊まり込んだ時はC609を使ったが、現在そこには舞音が入っている)。葉月も近くがいいので隣のC708にした。
 
鈴原さくらは元々女子寮にも部屋をもらっていて「どちらに帰ってもいいよ」と言われているので、そこに入る。パフェはもちろん姉の部屋に。セレンとクロムは3月に中学の卒業式が終わったら女子寮に移動することになっており、その場合の入居先としてC402,403が確保されていたので、そこに入れた。
 
純粋な男の子3人は庭のコロナ隔離用アパートに入れた。これは彼らを女子たち“から”レイプされないように守るためである!!
 
そして残る性別微妙な4人をA館2階に入れた。
 

 
本 天羽・高崎 峰花
C7 ---- ---- ---- ---- ---- ---- ---- 葉月 AQUA
C6 町田 東雲 桜野 ---- ---- ---- 坂田 悠木 常滑
C5 白鳥 薬王 姫路 花咲 原町 品川 恋珠 花貝 水谷
C4 三田 三陸 山鹿 斎藤 七尾 石川 安原 桜井 甲斐
C3 直江 容子 暢香 瑞絵 ゆか 立花 太田 中村
C2 鈴鹿 夕波 古屋 松島 鹿野 大仙 石条 山本
C1 広瀬 月城 月城 川泉 入瀬 麻生 城ル 上野
A8 日高 吉田 坂上 ---- ---- ---- FS1 FS2
A7 今川 左倉 大空 ---- 大崎 鈴原 長浜
A6 春野 酒田 豊科 箱崎 花畑 米田 南里 西浜
A5 美崎 ---- ---- ---- 宮地 知多
A4 夏江 筒木 水巻 山口
A3 紺青 清水 鏡家 氷川
A2 七石 早幡 花園 夢島
S1 立山 三国 西宮
 

百十騒動でテレビ局はパニックになっていた。
 
27日になると出演者の派遣ではなく、番組を丸ごと1本頼むなんてのが出てくる。しかしこういうのは、あけぼのテレビで鍛えている信濃町ガールズたちは強い。あけぼのテレビはほとんどが生番組である。何かトラブルがあっても何とかまとめてしまう。
 
アクア、北里ナナ、常滑舞音、白鳥リズム、姫路スピカ(ドリームトライン)、高崎三姉妹、品川ありさ&カペラ、立山煌(withヨーホーズ)、薬王みなみといった所を中心とするグループを各々送り出す。できるだけあけぼのテレビで司会進行を経験している子を付けて行かせた。
 
各グループには適当な伴奏者も付けて行かせた。エレメントガードをアクアに付けたので、ナナの伴奏には実は浄瑠璃バンドに行ってもらった。玉突きで伴奏者が居なくなった薬王みなみには金平糖を付けて行かせた。
 
更にロマン&ポルカと古屋姉妹・広瀬姉妹で1本やらせる(古屋あらたが付いている)。これには石川県在住の古屋姉妹と相性がいいだろうと北陸組(田中世梨奈・吉田邦生・日高久美子・坂上透)も付けて行かせた。
 
ロマン&ポルカに古屋あらたも加わり“ニュー・ロマン&ポルカ”と称して3人で歌を歌う。(Gt.広瀬みづほ B.坂上透 KB.古屋きんつば Dr.吉田邦生 Fl. 田中世梨奈 ASax,日高久美子 TSax.広瀬のぞみ)
 
その後、古屋あらたが聞き手になり、ロマン&ポルカが甘味談義で40分くらいトークした。古屋姉妹・広瀬姉妹が甘いものを食べていることろを映す。ほぼ即興でやっているのに、まるで事前に多数取材していたかのような番組になった。しかも古屋あらたはそつが無い。実態は付いていったスタッフが必死で大量のおやつを買い込んで来ていた。実は買物している間を歌でもたせていた。
 

北陸組まで使って、もう出払った感じなのに更に要請があり、向こうは本当に困っているようなので、若い子たちだけで行かせる
 
『Theクイズ東西』
司会:松島ふうか 助手:筒木サリナ 問題読上:水巻イビザ 監修:水巻アバサ
西軍:七石プリム(兵庫)山口ヨルカ(奈良)夏江フローラ(尼崎)清水姉妹(西宮)
東軍:春野わかな(東京)川泉姉妹(青森)美崎ジョナ(江差)酒田レモン(酒田)
 
まるで何日も前から企画していたかのような番組だが、必死で問題を考えながら乗り切った。アバサがうまく全員をまとめてくれた。七石プリムとか酒田レモンとか知識の広い子がいたのでかなりうまく行った。レモンはこれで結構ファンが増えたと思う。
 
清水スピリの妹・清水せぴあは見学するつもりで付いていったのが、ADさんに「早く席について」と言われて姉の隣に座ってしまい、放送が始まってしまったので、結局そのまま出演した。
 
「トルコの首都は?」
「イスタンブール」(正解はアンカラ)
「江戸城を作ったのは?」
「徳川家康」(正解は太田道灌)
 
と美事に間違って、おいしい役どころを演じた。
 

バニショコ+ももくりの4人だけで行かせたら、バニショコとももくりの対抗戦をして、腕立て伏せ対決とか、腹筋対決とかして(若い女の子がしてるから見てくれる)何とか番組を成り立たせた。
 

くれは西の4人だけでも行かせた。紺青セイラは東京に出て来たばかりでメインの地上波出演である。セイラの弟2人を付き人代わりに連れて行った。
 
前半はトークで盛り上げ、後半はバンド演奏で何とか乗り切った。トークがほんとに受けてて「M−1よりレベル高い」と言われていた(コルネにはBGM担当という札を下げさせてずっとヴァイオリンを弾かせていた。セイラの弟たちがピアノとフルートを演奏した)。後半のバンド演奏も上手いので「みんな能力高いですね」とテレビ局の人が感心していた。
 
最後は月城姉妹だけで出て行き、月城すずみのギター伴奏でたみよ・としみがClariSとかローズ+リリーのヒット曲を歌うなどというのをやってくれたが、たみよ・としみ2人とも声域が広いのできれいに原キーで歌い、かなり好評だった。
 
後半では無謀にも生のテレビ番組でリクエストを受けるなどというのをやったが、Puffy『アジアの純真』、Kiroro『長い間』、あみん『待つわ』、Wink『淋しい熱帯魚』、Pink Lady『サウスポー』、更にはザ・ピーナッツ『恋のバカンス』とこなして
「レパートリー広ーい」
と感心されていた。(テレビ局の人は冷や汗だったもよう)
 
しかし例によって、たみよを男の娘、としみを女の子と思った人が多く
「この男の娘、女の子の声でこんなに広い音域を出せるって凄いね」
などと言われていたようである!
 

あけぼのテレビは人が出払って番組が作れず、鈴鹿あまめが孤軍奮闘していた。関東の信濃町ガールズを呼び出し、一緒にパフォーマンスをした。桜野レイアがignis-exと一緒にナツメロなどを演奏してくれたので、それでも結構場を持たせた。また大崎忍と夢島きららに伴奏させて東雲はるこに唱歌の類いを歌わせたりした。更には立花紀子のコネで、いくつか暇な(=売れてない)グループアイドルを呼びだし、バラエティ的なものを構成した。
 
27日は東海、28日は北陸、30日は関西の信濃町ガールズを各々の拠点に集め、鹿野カリナ・大仙イリヤ・山本コリンを現地に行かせて何とか番組にした。(29日は放送休止)
 

28日になると、各局は27日に放送予定だった番組で何とか編集の終わった番組を1日遅れで放送するが、それでも、アクア、北里ナナ、常滑舞音、などは出て行った。アクアと北里ナナは火の鳥、シンデレラを思わせるようなセットで歌い、舞音はまたコスプレショーをしていた。昨日が猫を始めとする動物系・縁起物系だったので今日はロボットとか有名な彫像などをやっていた。(水谷姉妹演じる“乙女の像”など)。またロボットに扮したらそのロボットを主人公とするアニメの主題歌を歌ったりして盛り上げた。
 
今日は月城姉妹は3人とも男装して出て行き、まだすずみのギターでコブクロ、ケミストリーなど男性デュオのヒット曲を多数歌った。「さすがに生リクエストは勘弁して」と言われたので事前にネットで“男声または男女デュエット”でリクエストを受け付け、それにもとづいてチャゲ&石川優子の『ふたりの愛ランド』、鈴木雅之と菊池桃子の『渋谷で5時』、AAAの『恋音と雨空』、セリーヌ・ディオンとピーボ・ブライソンの『美女と野獣』、クリスタルキングの『大都会』、狩人の『あずさ2号』、猿岩石『白い雲のように』、KinKi Kids『硝子の少年』などを歌った。
 
月城としみが『大都会』のバス音域まで出すので「すげー」と言われていた。(実は低い声でも男声っぽくならないよう倍音の混ざり方に気を付けている)
 

バニショコ・ももくり・くれは西は今日は8人で出て行き、山本コリンも司会で入って、ダーツで当てた楽器で1曲演奏するというゲームをやり楽しい番組に仕上げた。題して『ダーツってミュージック』。
 
8人がクラリネットとかトロンボーンとか、あるいは三味線とか尺八とか、様々な楽器が当たってもちゃんと演奏するので「この子たちすげー」と言われる。
 
チャルメラ・大正琴・篠笛・ハーモニカと当たってもそれでベートーヴェンの第九『喜びの歌』を演奏したので、ディレクターさんが
「ほんとに君たち“芸人”だね」
と感心していた。これにも
「リゲイン飲んで頑張ってます」
と紺青セイラがすぐ応じるので「参った」と言われた。
 
(この企画はその後あけぼのテレビでレギュラー化される)
 

29日はあけぼのテレビがお休みなので、鈴鹿あまめまで動員されて出て行き、青い傘、Transparent Wall、Flower Sunshine といった“売れてないグループ・アイドル”を使って、それで充分面白い番組を生で構成した。彼女の上手さに驚愕したプロデューサーさんが思わず
「君学校出たらうちの局に入らない?」
などと勧誘したとか!?
 

テレビ局の混乱は続き、30日のRC大賞は選考が全てやり直され、既に発表されていた賞も全ていったん取り消された。その上で今年は生出演を条件とせずに賞が選考され、生出演が不可能な人にも賞を出した。ローズ+リリーはとうとう連続出演が途切れたと思っていたものの、これで復活して金賞をもらった。逆にせっかく金賞が決まっていたのに、作詞者などに今回摘発されていた人が入っていたため取り消された気の毒な歌手さんとかもいた。
 
せっかく何年とかぶりの大ヒットだったのに、CDとかが回収されJASRACからまで抹消され、ステージでも歌うことができないという可愛いそうな歌手が何人も居た。でも多分薬のせいで凄い歌詞とか曲とかができたのだと思う。
 
また摘発された人がメインライターだった歌手は歌うべき楽曲が無くなり、年末年始に予定していたツアーなどが中止に追い込まれた人もあった。ディナーショーでカバーばかり歌う羽目になった人もあった。
 

そのRC大賞の授賞式の最中(12/30 21:30) にコスモスに電話が入る。NHKからであった。
 
「紅白の出演者がどうしても足りないんです。紅組と白組1名ずつ推薦して頂けませんか」
 
前日のこんな時間になってから電話してくるというのは本当に切羽詰まったのであろう。
「では紅組は白鳥リズム、白組は立山煌で」
 
NHKから出場者一覧が発表されたのは22:00であった。元々は各1枠にまとめられていた、富士川32と利根川32、また FireFly20, WaterFly20, WindFly20 が各々1枠もらっているのにも、苦労の跡が見えた。
 
結局今回§§ミュージックからは下記の6組が出場することになった。
 
北里ナナ『若草の少女』(2) ラピスラズリ『プロポーズ・ラプソディ』(3)
常滑舞音『オールシーズン・コスプレ』(2)
白鳥リズム『銀のエクスプレス・青のエクスプレス』(2)
薬王みなみ『変わらない距離』(初)
立山煌『山があるから山ガール』(初)
 
(北里ナナはアクアと通算すると連続8回)
 

12月29日(木).
 
彪志の会社は仕事納めであるが、納会の時、異動のことが話題になる。
「水川係長と鈴江主任は異動ですか?」
「それ私たちも聞いてないんだよ」
と水川は言い
「報道機関に発表前だからまだ言えない」
と課長は言う。
「何か新設の部門なんですね」
「今は言えない」
 
ということだった。
 
この後は正月休みを休む人と、ずらして休む人に別れる。前にずらして12/22-28を休んだ人たちもいる。労働体制としては正月休みが必要だが、彪志たちの部門は誰か出てないといけないので大変である。12/30-1/3の5日間は半分くらいの人数で作業をすることになる。彪志は1/4-10を休むことになっている。
 

水川さんは12/29, 彪志は12/30 でドローンの講習を終了した。どっちみち卒業試験は年明けになる。それに合格すれば国土交通省の学科試験(と身体検査)を受けることになる。これはかなりの勉強が必要で、お正月の間に勉強しなきゃあと彪志は思った。
 
それにしても12月30日から1月3日までは少ない人数でオペレーションしているのでかなり忙しかった。緊急の薬の配送も多数発生し、かなりあちこち走り回った。
 

12月31日(土).
 
百十事件の影響で信濃町ガールズは朝から晩まで大忙しであった。花園裕紀は本当は高校生だから22時で開放してもらえるはずが、テレビ局を出たのが22時半だった。女子寮の部屋に帰宅する。この状態がたぶん1月3日か4日まで続く。
 
帰宅したらすぐに晩御飯が配送されてきた。今日は大晦日で年越し蕎麦である。大きなエビ天を含む具だくさんのおそばである。ぶりのお刺し身もある。
 
お刺し身というのは夕食が“帰宅時配送”に変更された以降で時々現れるようになったメニューで、女子寮生たちにはとても好評である。やはりお正月ということで、鰤が登場したようだ。男子寮には無いメニューである!
 
「凄いなあ。女子寮は人数多いのによくやるなあ」
などと思う。裕紀は高校に入る時には女子寮に移らない?というお誘いもあったが結局男子寮に近い高校を選び、こちらに引っ越す話は断っていた。
「だってぼく、男の子だもん」
と裕紀は思う。女の子の服着るのは好きだけど。そして不本意に?女子制服で通学してるけど(←嬉しいくせに)。
 
御飯を食べてからトイレに行く。裕紀のペニスは自然消滅してしまったので、現在彼の股間は“ヌル”に近い状態である。陰嚢の痕跡のヒダの多い部分のどこかからおしっこはにじみ出してくる。本人は『ペニスはある』と主張してはいるが、実際にその付近を指で触って探してもペニスらしきものは発見できない。
 
え?
 
出ない。。。。
 
出そうとしても先が詰まってる感じで出てこないのである。指でその付近を色々いじってみるものの、どうしても出ない。尿意はあるのに出せない。
 
これヤバいのでは?
 

焦っているとトイレ内に少女が出現する。
 
「こんばんわ、一葉(かずは)ちゃん。ぼくは“男の娘の味方”魔女っ子千里ちゃんだよ」
 
彼女とは過去に何度も会っているが毎回名乗るのが流儀のようだ。
 
「ねぇ、魔女っ子千里ちゃん、おしっこが出てこないんだよ」
「ちょっと見せて」
「うん」
 
魔女っ子千里ちゃんはビニール手袋を着けてその付近をかなり調べていた。
 
「これおしっこの出てくる穴が塞がってしまったのだと思う」
「どうしよう?」
「出る穴を作ってあげるよ」
「それまさか女の子の位置じゃ無いよね?」
 

「一葉ちゃん、それ嫌がってるけど、そろそろ受け入れるべきだと思うなあ。一葉ちゃん、ちんちん無くなっちゃったんだから、女の子の位置からおしっこするしかないよ。その位置からおしっこしても、一葉ちゃんが自分は男の子だという意識を持っている限りは男の子だと思うよ。ちんちんがあるか無いかなんて性別には関係無いんだよ。ちんちんなんて無くても自分の意識として自分が男の子だと思ってたら男の子だし、ちんちん付いてても自分は女の子だと思ってれば女の子だよ」
 
「それ前にも言ってたね」
「ちゃんとおしっこできるようにしようよ。今までの状態は不衛生たったし。夏とか拭くのが大変だったでしょ?」
 
裕紀は少し考えた。
 
「分かった。やっちゃって。ちんちんが無いのは自分としても受け入れてたし」
「OKOK。じゃベッドに戻って。溜まってる尿は注射器で吸い出してその後(あと)経路を作る」
「分かった。お願い」
 
それで裕紀が布団に戻ると、魔女っ子千里ちゃんは
「注射針刺すのに皮膚麻酔掛けるから」
と言って何かを塗った。
「このあたり感覚ある?」
「無い」
 

「じゃ刺すね。目は瞑ってて」
と言って注射器を刺されたようだった。痛みは感じなかった。
「OK。だいたい吸い出した」
「ありがとう。楽になった」
「じゃ経路作るから後は寝ててね」
「うん」
「ついでにおっぱいも作る?」
「要らない!」
「Cカップくらいにしてあげるのに」
と不満そうであった!!
 
でもそれで裕紀は眠りに落ちて行った。
 
「よいお正月を」
「よいお正月を」
 

裕紀の“処置”が終わった後、魔女っ子千里ちゃんは、セレンの部屋に行った。クロムも来ている。
 
「こんばんわ、ユカリちゃん、えむちゃん。ぼくは“男の娘の味方”魔女っ子千里ちゃんだよ」
「こんばんわー」
「何かあったの?結構大晦日ぎりぎり」
「ちんちんが無くなっておしっこが出なくなって困ってた子がいたから、ちゃんと出るようにしてあげてきた」
「ああ」
 
たぶん花園裕紀の処置をしたんだろうなと2人は想像した。あの状態では尿道が閉塞するのは時間の問題だと思っていた。
 
「それでやっちゃっていいよね?」
「お願いしまーす」
 
実は2人は大晦日に睾丸を取ってもらう約束をしていたのである。病院で去勢手術を受けるのでなく、彼女に頼むのは、前々から「女の子にしてあげるよ。玉取るだけでもしない?」と言っていたのと、彼女が取った睾丸を1年間は“ライブ保存”しておいてあげると言っていたからである。取って後悔することはないと思うものの、より安心感がある。それに彼女にしてもらうと多分痛くなさそうだし!
 
「じゃ取っちゃうね」
と言って彼女は2人のお股に手をやると、ひょいと玉を取っちゃった。
 
「無くなった」
「じゃ1年間は保存しておくね(本当は大神の指示で10年保存することになっている)。まあ後悔はしないだろうけど万一戻してほしくなったらぼくを呼んでね」
「うん」
「ではよいお正月を」
「ありがとう。よいお正月を」
 
それで魔女っ子千里ちゃんは消えた。そのあとお正月を告げる時報が鳴った。
 

そして2023年は明けた。
 
彪志と青葉は電話で話していて「明けましておめでとう」を言い合った。邦生と真珠も電話で話していて「ハッピーニューイヤー」と言い合った。邦生はアクアの音源制作をするのに、11月7日から東京に出て来ていた。現在五反野の§§ミュージック女子寮に滞在中である。
 
アクアMは彩佳と電話で話していた。アクアFは理史と電話で話していた。どちらも「明けましておめでとう」と言い合った。葉月も桜木ワルツと電話で話していて「明けましておめでとう」と言い合った。
 
浦和の家で貴司と千里(2A)は「明けましておめでとう」と言い合ってから“突入”を開始した。同じ家の別室で桃香(B)と千里(1)も「あけおめ」と言って突入開始した。千葉の家では桃香(A)と季里子が「あけおめ」と言って突入開始した。
 

1月1日の朝、花園裕紀は夢を見ていた。
 
何か表彰台のような所に立っている。なんか偉い感じの人が居る。
 
「ヒョーショージョー。あなたは立派な女の子になりました。よってこれを賞します」
 
え〜?ぼく女の子になったの?嫌だよぉ。
 
「おめでとう」
と言って偉い人は賞状をくれた。
 
「これで君は立派なお嫁さんになれるよ」
 
え〜?ぼくがお嫁さん??
 
突然場面は変わり、自分がウェディングドレスを着て、タキシード姿の篠原君と結婚式を挙げるところのようだ。え〜?ぼくやはりお嫁さんなの?
 
「さあ今日も邪魔なおちんちんは切り落として元気に女の子しよう」
「きっとなれる。君も可愛いお嫁さんに」
とセレンとクロムが言っていた。
 
嫌だぁ!!
 

と思った所で目が覚めた。
 
「ふーっ」と溜息をつく。
 
「夢かぁ。良かった」
と思う。
 
しかし篠原君が女の子と結婚するとは思えないけど(*11)、ぼくそのうち男の子と結婚することになるのかなあ、などと考えて少し憂鬱な気分になった(*12).
 
取り敢えずトイレに行く。
 
思わぬ所からおしっこが出てくる。
 
「わっ」
と思わず声をあげた。
 
あっそうか。おしっこが女の子の位置から出るようにしてもらったんだ。
 
しかし・・・・
 
これ楽じゃん。
 
おしっこするのに何のストレスも無い。いいじゃん、これ。悪くないよ
 
と裕紀はこのおしっこの出方が割と気に入った。
 
出終わってからトイレットペーパーで拭くが、今までに比べて凄く簡単に拭けた。今まではあのあたりからじわっとにじみ出てきてたからかなり広い面積を拭く必要があり大変だった。どうしても完全には拭ききれないのでいつもナプキンが必要だった。でもこれなら簡単に拭けるし、ナプキンまでは要らないと思った。
 
でもパンティライナーくらいは付けとこうかな?
 
(そうだね。女の子の身体は、おりものもあるしね)
 

(*11) 篠原倉光は「自分はゲイだ」と公言している。
 
多数の信濃町ガールズ女子から「セックスさせてあげるよ」と誘惑されてきたものの「ぼく女の子には興味無いから」とお断りしている。裸で抱き付かれたりあそこを握られたりしたこともあるが、何とか逃げた!
 
「なんで握っても大きくならないのぉ?」
「ぼくは女の子に触られたりしたら萎える!」
 
(*12) 肉体上の性別・性自認・兼愛対象はそれぞれ別だから女の子になって女の子と結婚してもいいのだけど。そもそも裕紀は肉体的に中性であって、女の子でもないのだが。
 

1月1日の午前中は§§ミュージックのタレントは全員テレビ局はお休みにさせてもらい、毎年恒例の年会をした。今年もオンラインでの開催である。§§ミュージックの全所属タレント、信濃町ガールズ、地方ガールズ、トラフィックのメンツが参加した。
 
午後からはまた各テレビ局に出て行く。鈴鹿あまめたちもあけぼのテレビに行く。そして13時からは越谷の小鳩ホールでローズ+リリーのニューイヤーライブを実施した。これにマリーンコートの北陸組4人にも参加してもらった。
 
この年末年始のカウントダウン・二ユーイヤーライブは2017年末から始まったものである。2015-16はローズ+リリーのカウントダウンだけが行われ、1月1日にライブは行われていなかった。
 

2015.12 安中榛名でR+L カウントダウン
2016.12 宮城県M市でR+L カウントダウン
(当時新人の姫路スピカが前座に登場)
2017.12 博多ドームでR+Lカウントダウン/翌日アクアが同じ会場で新年ライブ
この時は両者の日程が偶然連続しただけ
R+Lの前座に石川ポルカ・桜木ワルツ・花咲ロンド・西宮ネオン・今井葉月が入る
 
2018.12 初めて小浜でR+Lカウントダウン/翌日アクアは博多ドームで新年ライブ
R+Lの前座には§§ミュージックの歌手が大量に出場した。マリは立体映像。
 
(2019.2 あやめ出産)
 
2019.12 再度小浜でR+Lカウントダウン/翌日アクアは博多ドームで新年ライブ
R+L前座に§§ミュージックの歌手大量出演。
 
(2020.10 大輝出産)
 
2020.12 深川で§§ミュージック・カウントダウン(ラスト:アクア)/翌日小浜からR+L新年ライブ
 
2021.12 深川で§§ミュージック・カウントダウン(ラスト:アクア)/翌日小浜からR+L新年ライブ
 
(2022.8 かえで出産)
 
2022.12 越谷で§§ミュージック・カウントダウン(ラスト:アクア)/翌日同会場でR+L新年ネットライブ(マリのパートは録音。マリは会場でMCとサービテージのみ)
 
2020年からローズ+リリーとアクアのライブが逆転している。これは意図したものではなく、紅白との絡みの問題で、アクアの負担を下げるためにこうなったものである。今回小浜を使わなかったのはマリの体力問題を考慮したためである。
 
地方ガールズまで集める§§ミュージック年会は2018年に始まった。この年から1月1日に博多ドームでアクアが年始ツアーの初日をするというのが始まったので、それに合わせて、アクアライブのバックダンスに参加してもらうのを兼ねて全国から招集したのである。しかしリアルで実施したのは2018-2020の3年間で、2021-2023はコロナのためオンライン開催になっている。地方ガールズの数が物凄く増えてしまったので、コロナが終息したあと、リアルに戻すかは不明である。
 

アクアのアルバム『六星座2』の制作のために11月7日に東京に行っていたマリーンコートの北陸組、日高久美子・田中世梨奈・吉田邦生の3人が1月3日、東京ヘリポートから氷見飛行場へ帰ってきた。邦生は翌4日から銀行に出勤した。
 
邦生が東京に行っていた間は、真珠と瑞穂(邦生の妹)との女2人暮らしだったが、邦生が戻ってきて女3人の暮らしになった!
 

1月4日(水).
 
竹本初海は大学を卒業した後入る予定の会社に新年顔を出すように言われていたので、その日金沢市内、山環(金沢外環状道路・山側)沿いの小さなビルに来た。エレベータで3階まで昇り、事務所に行こうとしたら何だかロープが張ってあり、ヤクザっぽい男が2人立っている。
 
何?何?と思ったら男の1人が言った。
「姉ちゃん、ここは入れないよ。この会社倒産したから」
「え〜〜!?」
「私物取り出すなら、見てるから取り出してもいいけど」
「いえ、私物は置いてません。私4月からここに入る予定だったんですけど」
「そりゃ気の毒だけど、他の会社を探すんだな」
「そんなぁ」
 

初海が思わず
「4月から入るはずの会社が倒産してたぁ」
とmixiに書き込んだら、速攻で千里さんがメッセージを送って来た。
 
「初海ちゃん、§§ミュージックのカウンセラーになる気無い?」
 
ああ、そういえば§§ミュージックでカウンセラーが足りないからってコネで探しているという話だった。確かにあんなところで一般募集掛けたりしたら、アーティストに会いたい目的の人が大量に応募してくるに決まっている。人選も大変だろう。
 
初海は興味は感じた。でも東京で勤務するとか言ったらお母ちゃんがなんて言うかなあ。でも話だけでも聞いてみようかな。それで初海は返信した。
 
「すぐには決断できないですが、関心はあります。細かい条件とかお話を聞いてみたいのですが」
 
「だったら青葉の家で」
 
ということで、初海はお昼頃、青葉の家で千里から話を聞くことにしたのである。
 

千里は11時頃青葉の家にVolvo XC40で現れた(つまり来たのは6番victoria:菫色)。
「サンルーム借りるね」
と言って中に入る。
「お土産〜」
と言って、朋子と青葉に鰤カツ弁当を渡す。
「わあ、ありがとう」
 
「今日は何かの用事?」
「うん。初海ちゃんと打合せ」
「へー」
「初海ちゃんが就職する予定だった会社が倒産したらしい」
「ありゃー」
「で、§§ミュージックの女子寮カウンセラーにならないかというお誘いなのよ」
「ああ」
 
「美津穂ちゃんもいるしね」
「北陸組がじわじわと§§ミュージックに浸透してるな」
 
「あれ、ちー姉は食べないの?」
「初海ちゃんが来てから一緒に食べる」
「なるほどー」
 

初海は11時半頃Kawasaki Ninja 250 でやってきた。ちなみにこのバイクは長らく彼氏のを借りたまま使っていたのだが、昨年夏に彼氏と別れた時に「買い取らせて」と言って初海が10万で買い取った。従って現在は初海の物である。彼氏はその10万を就職活動の資金にしたらしい。
 
ちなみに明恵が乗っている Yamaha YZF-R25は青葉から借りっ放なしだが、多分青葉は既に忘れている。真珠が乗っている Suzuki GSX250F は兄の金剛から借りっ放なしであるが、兄は特に文句を言わないのでそのまま使用している。
 
初海が来たので朋子は「部屋に行ってるね」といって退席する。青葉も席を立とうとしたが「青葉さんも一緒に」と初海が言うので一緒に聞くことにした。
 
「お弁当買って来たけど」
「頂きます」
というので、千里と初海で鰤カツ弁当を食べる。
 
その食べている間に、青葉は向こうのカウンセラー1号は青葉の同級生の上野美津穂であると説明し、富山大学を出た後、最初地元の電子機器関係の企業にカウンセラーで入ったものの、あまりにヘビーでダウンして退職。少し休養の後、§§ミュージックに入り、既に2年半近くカウンセラーをしていると説明する。
 
「電子機器企業よりはきつくないということですね」
「電子機器というのが、そもそも神経を使うみたいだし、当時はコロナの流行り初めだったのもあるかもね」
「ああ。コロナだけでも辛かったですよね」
 

お弁当のあと、お茶も飲んで一息付く。
 
「まそれでお給料は額面月70万とかでどう?」
と千里が数字を提示すると
「やります!」
と初海は即答した!
 
これで初海の東京勤務が決まった!!
 
「保険とか税金とか引くと55万くらいになると思うけど」
「それでも充分です」
 
「あと心理学専攻を出るから認定心理士の資格は申請すると思うけど、東京で大学院に通って臨床心理士の資格を取るならサポートするよ」
「わっ」
「実際美津穂ちゃんは2020年の夏にカウンセラーになってから2020年10月から2022年9月まで大学院に通って臨床心理士の資格をこの秋に取得した」
「すごいですねー。忙しそうなのに」
「カウンセリングは基本的に夕方、学校は昼間だから両立できるんだよ」
「なるほどー!」
 

「住まいは女子寮の中に部屋を用意するからそこに住んでほしい。§§ミュージックのタレントさんたちは学校が終わったらすぐ仕事に行き、中学生は8時、高校生は10時になったら戻って来る。それでその時間から相談に来るんだよ。だから基本的な勤務時間は、16:00-23:00 になる」
 
「学校が変わった後になるから16時からなんですね」
「そうそう。23時に終わって、自宅に帰るのはきついし、特に今は外部との出入りをできるだけ少なくしたいという事情もあるんだよ」
「なるほどー」
 
「それと、もし勤務時間外でも個室まで相談に来た寮生にはできる範囲で対応して欲しい。むろん残業手当は払うから」
「それは全然大丈夫ですよ。医者と似たような立場ですから」
「そうなんだよ。心の医者だよね」
 
「現在カウンセラーは美津穂ちゃんを入れて2名。3人体制になればだいぶ労働環境が改善されると思う」
「今は結構きついんですか」
 
少々きつくても55万もくれるならやっていいと思う。身体も心もわりと丈夫だし。
 
「やはりコロナで自由に外出できない状態が続いてるからねー.相談に来る子が増えてる状況もあるんだよ。タレントなんてそもそもストレスの多い仕事だし、元々悩みの多い世代だし、地方から出て来てホームシックになる子もいるし」
「ああ」
 

「一度東京に行って社長や先輩カウンセラーと会ってみる?」
「いいですね」
「気に入ったらそのまま契約を」
 
「身分的にはどうなるんでか?」
「タレントさんたちの立場で相談に乗ってあげてほしいんだよ。だから§§ミュージックとは直接利害関係のない状態にしたいので“サマーガールズ出版”という会社の社員になってもらう。もちろん社会保険付き」
「それはどういう会社なんですか」
「ローズ+リリーのマネージメント会社だね」
「ああ」
「だから§§ミュージックからサマーガールズ出版にカウンセラーの派遣依頼をする形になっている」
「なるほどー」
 
それで初海は今月中旬くらいにでも東京へ行ってくることになった。
 

初海の母は初海が東京で仕事をするという話に最初は反対したが、月70万もらえると聞くと「あら、いいお仕事ね」と言った!
 
「でもきつい仕事じゃないの?」
「どうかした企業のカウンセラーよりはいいと思うよ。実際には10代のタレントさんたちのグチを聞いてあげるのが主たる仕事らしいから」
「ああ。タレントなんてストレス多いだろうしね」
「それでカメラの前ではニコニコしてないといけないから大変だよね」
 
真珠と明恵は初海が東京に行くと聞くと
「霊界探訪・東京事務局の開設だな」
と言った!
 
結局初海は『霊界探訪』に関わり続けることになって、夏頃初海が“藪入り”の迷路に入り込んだ件が解決することになった。
 
 
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【春四】(3)