【東風】(2)

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2021年7月28日(水).
 
アクアの実に6年ぶりのフルアルバム『ダブルボイス』が発売された。
 
アクアはドラマなどでは、女役は地声の女声、男役は声色の男声で演じているが、このアルバムは“同じ曲のラインナップ”を男声・女声の両方で歌うということをしている。基本的には男声版は女声版のオクターブ下で歌っており、伴奏は同じ伴奏音源を流用していて、ボーカルだけ男声版・女声版の2種が入っている。曲目は12曲で、男声版は青いCD、女声版は赤いCDである。
 
収録曲目は下記である。実は12曲の内の9曲が何かのCM曲(のフルバージョン)で、オリジナル曲はわずか3曲である(実はオリジナル曲が少ないから制作できた)。元々は2019年秋以降CM曲として制作されたものが多い(それ以前のCM曲は何らかの形でその内制作しようと言っている)。
 
『男の子女の子』(男声女声デュエット:実質的なタイトル曲)
『ライオンの眠り』(自動車/Album mix)
『白い恋の物語』
『夜間飛行』(航空会社)
『右手薬指の指輪』
『街角のシレーヌ』(女性服ブランド)
 
『Aqua on Fire Cattle』(火牛AZ:没CM)
『海辺のサワー』(清涼飲料水)
『太陽がいっぱい』(ソーラーパネル/Album mix)
『博多の情熱』(インスタントラーメン)
『華麗なる雅』(振袖)
『綺羅星の如く』(化粧品/Album mix)
 
『男の子女の子』のみ男女デュエットで、“赤”“青”共通であり、それ以外は男声歌唱/女声歌唱である。『男の子女の子』ではPVもサンローランのドレスを着たアクアと、ポールスミスのメンズスーツを着たアクアが一緒に歌っている(実はアクアFとアクアMを使って撮影しているし歌唱も2人のリアルデュエット)。
 
テレビで多数流れた曲もあるが、実はレア音源だったものも含まれている。
 
『Aqua on Fire Cattle(*2)』は火牛アクアゾーンのCM曲として制作されたものの三密回避の観点からCM自体が放映中止になったため、折角アクアが歌った歌もメディアに流れず仕舞いになったものである。熱心なファンの間でのみ存在が知られていたものだが、何らかの形で公開して欲しいという声も寄せられていた。それがこのアルバムで初公開となった。
 
『夜間飛行』は航空会社のCM曲として制作されたものの、やはり三密回避の観点からテレビで放送されたのは僅か2週間のみで、その後は航空会社のサイトでのみ聴くことができる状態になっていた。
 
『博多の情熱』は九州方面でのみ販売されているラーメンのCM曲なので、九州以外の人は初めて聞くことになった。
 
『華麗なる雅』は呉服屋さんのCMなので、この呉服屋さんの本支店がある地区のみのCMで流れていた。関西一円と東京付近以外の人には初めであった。
 
(*2)牛を表す英語は多数あり、cattleは“家畜の牛”を表す。もっとも野生の牛は現代日本でも平安末期の日本でもまず居なかったと思われる。cowは雌牛、bullは去勢してない雄牛、oxは去勢した雄牛である。つまり bull/cow/ox は牛の男の子/女の子/男の娘だったりして?
 

2枚組のアルバムではあるが、価格は普通のCD1枚のアルバムと同等の3300円(DVD付4枚組4200円)である。なお、DVDに収録されたPVで“赤”ではアクアは女物の服を着ており、“青”では男物の服を着ている。
 
『博多の情熱』で“青”ではアクアの山笠法被姿が見られるが、“赤”では女物の浴衣姿になっている。
 
『華麗なる雅』も“赤”でアクアは振袖を着ているが、“青”では紋付き袴姿であり振袖は姫路スピカが着ている(赤では篠原倉光が紋付き袴)。 『ライオンの眠り』では青だと運転席に座るアクアが紳士用スーツで助手席が雌ライオン(CMと同じ)だが、赤では運転席のアクアはお化粧してドレスを着ており、助手席には雄ライオンが座っている。
 
『白い恋の物語』はPVが白雪姫を連想させる造りになっているが、“赤”ではアクアが白雪姫に扮していて(王子様は西宮ネオン)、“青”ではアクアが王子様である(白雪姫は白鳥リズム)。
 
要するにPVもほぼ同じシナリオで別の配役で作られていて、これだけ凝ったものを作って、この値段で本当に赤字にならないか?と心配する声もあった。
 
アクアの白雪姫姿には特に女性ファンが騒いでいたが、アクアの王子様姿にも「かっこいいー」という声が多く、アクアにはぜひ白雪姫と王子様の二役でドラマか映画を撮って欲しいという声が殺到することになる。
 

またこのアルバムが発売されてから結構評価の高かったのが実は“青”である。
 
アクアは通常(地声の)女声で歌唱しているので、男声で歌った音源というのが、これまでほとんど無かった。それで男声歌唱も結構魅力的というので、意外に高く評価されたのである。(女優の柏木宏佳が「子宮に響く」と表現して、しばらくこの表現がネットを飛び回っていた)
 
ちなみにこの“男声”が電気的に加工して作られたものでないことは、男声版と女声版が“重ならない”、つまり微妙に発声タイミングや長さが違うことで、多くの“研究者”たちが確認した。
 
実際、アクアは「声について電気的な加工は一切していません」とテレビ番組でも自身のブログでも明言している。
 
「だから全部女声で歌って男声でも歌ってで大変だったんですよ」
とアクアは言っていた。
 

7/29。水泳では夕方から800mの予選がある。青葉は昨日の1500m決勝の後は浦和の家に戻り、明け方近くまでひたすら泳いでいた。朝になってから仮眠し、お昼すぎに起きて軽く泳ぎながら体調を整えている。
 
ジャネは26日夕方に1500mの予選で落ちた後、郷愁プールに戻りひたすら泳いでいた。ジャネが休んでいる間はマラに泳がせていたようだ。
 
もうひとりの800mの代表・金堂さんは毎日何かに出ていたので、ずっと深川で練習をしていた。
 
24日 400iM Heats
25日 400iM Final
26日 200iM Heats
27日 200iM Semi-Final
28日 200iM Final
29日 800 Heats
 
忙しいスケジュールだが(18歳の)若さで頑張りますと言っていた。
 
しかしそういう訳で800m代表3人の内、青葉は浦和、金堂さんは深川、ジャネは郷愁と3人は各々別の場所で直前まで練習していた。
 

3人の代表の中で金堂さんは3組(19:22), ジャネと青葉は4組(19:33)に出た。この種目ではジャネが春の日本選手権で日本記録を出している。
 
予選の結果、金堂さんは3組のトップ、ジャネが4組2位、青葉が4組4位だった。金堂さんは全体では6位になり、この種目では3人とも決勝に進出することとなった。
 
ジャネは今回のオリンピックで初めての決勝進出である。この日、ジャネは口の方も調子良かった。
 
「青葉、400m個人メドレーでは銅メダルで、1500mでは金メダルでしょ?」
「ええ」
「800mで銀メダルを取ると3種類のメダルをコンプリートできるよ」
とジャネは言っている。
 
青葉は苦笑した。
 
「つまり金メダルは・・・」
と青葉が言いかけたら、金堂さんが
 
「金メダルは私ですね」
と言うので、青葉は吹き出した。でも彼女がもし800mでも金メダルを取れば金メダル3つという凄いことになる。それはジャネット・エヴァンス並みだ。
 
この日も予選が終わった後、金堂さんとジャネは深川で夜遅くまで練習していたらしいが、青葉は浦和に帰るととりあえずぐっすり眠った。そして朝4時に起きて、30日いっぱいひたすら泳ぐ。そして20時頃練習を終えて、彪志の部屋でひたすら寝た(むろん大会中はセックス無し:彪志が青葉の隣で寝ながらひとりで何かしているのは気にしない!!)。
 

7月30日は女子バスケット予選リーグの第2試合があった。この日はアメリカとの対戦である。この試合には千里2が出た。
 
第1クォーターでは、日本がアメリカに対してリードを奪う展開である。しかしこれでアメリカの“本気”を引き出すことになった。第2クォーターでは主力が投入されて、猛攻が掛けられる。試合はあっという間にひっくり返ってしまった。
 
後半日本も必死で食い下がるも点差は縮まらず。結局86-69で敗れてしまった。
 
(28-30 21-10 16-13 21-16 T.86-69)
 
青葉は合宿所にいる千里姉に電話した。
 
「さすがアメリカは強かったね」
「うん。強い強い。こんな選手が揃っているんだから、花園亜津子がWNBAでスターターになれない訳だと思ったよ。王子はWNBAでプレイしてるからよく研究されてて封じられちゃったし」
 
「まあ気持ちを切り替えて最終戦頑張ろう」
「最終戦は成績には関係無い」
「そうなんだっけ?」
 
「バスケットの順位というのは、勝ち点が同点になった場合は、その同点になったチーム同士の試合限定の得失点差で計算される」
 
「なんか難しいね」
 
「だから日本がナイジェリアに何十点差を付けて勝ったとしても何も関係無いんだよ、ここでアメリカが8/2にフランスに勝ってくれたら、アメリカ1位、日本2位で、日本は問題無く決勝トーナメントに進出する。でも万一フランスがアメリカに勝つと上位3チームが全て2勝1敗になり、この3チーム間だけの得失点差勝負になる。するとアメリカに17点も点差をつけられた日本は3チーム間の得失点差で3位になってしまう。下手すると予選敗退」
 
女子バスケットは12チームが参加して4チームずつ3つの予選リーグで戦っている。各リーグの2位以内は無条件で決勝トーナメントに進出するが、3位の場合は3つのリーグの3位のチームの成績を比較して上位2チームが決勝トーナメント進出である。但し3位で決勝トーナメントに行った場合は、いきなり強いところとぶつけられるから、とっても苦しい。
 
(なおナイジェリアとの得失点も2位チーム3者の中の総合順位を決めるのには効いてくるので全く無意味ではない)
 

7/31 10:48.
 
水泳では青葉が出場する最後の競技、女子800m決勝が行われた。
 
泳ぐレーンは、ジャネは予選2位で5レーン、青葉は4位でその隣の6レーン、金堂さんは6位で青葉の隣の7レーンである。つまり青葉は日本人選手3人が並ぶ中で真ん中で泳ぐことになった。
 
号砲が鳴り、一瞬置いて飛び込む。
 
高校3年の春に水泳部に入って以来、6年4ヶ月の集大成、青葉にとって現役最後のレースである。まあ楽しかったなと青葉は思った。ジャネはこの種目で私が銀を取ればメダル3種コンプリートだよと言った。それも面白い気がする、
 
。。。という気もしていたのだが、青葉が全力で泳いでいたら、隣7レーンの金堂さんがスパートを掛けて青葉を追い抜いた。
 
追い抜かれて青葉の闘争心に火が点く。
 
彼女には400m個人メドレーでも負けた。この種目でも彼女に負けたら、今大会のエースは完全に金堂さんになる。福岡(来年5月の世界水泳)では自由に金メダル3個でも4個でも取ってくれ。でも今回まではまだ譲れん。彼女に勝って有終の美を飾るんだ。青葉はそう思い、気合を入れ直してスピードをあげる。それで彼女に追いつく。
 
しかし青葉に追いつかれた金堂さんがまたペースを上げる。すると青葉もペースをあげる。
 
これがちょうど半分400mを越えたあたりから始まったのだが、この後、青葉と金堂さんの抜きつ抜かれつのデッドヒートが続く。
 
ゴール。
 
ゴールした時、青葉は金堂さんより感覚的に10cm程度前に居た。彼女の身長が185cm, 青葉は161cmで、腕の長さが10cmほど違う。つまり青葉は彼女より10cmくらい先を泳がないと勝てない。そのギリギリくらいだと思った。
 
時計を見る。
 
1 JPN Kawakami 8:07.94 NR
2 JPN Kanado 8:07.95 3 USA Brown 8:09.43

6 JPN Hatayama 8:12.68
 
あはは。0.01秒勝ってた(ひょっとすると0.006秒くらいだったかも?)。
 
でも有終の美を飾れた!!
 
青葉と金堂さんはエア握手・エアハグをした。
 
でもジャネは青葉たちには視線も向けずにさっさと離水して帰っちゃった!(離水ルール違反として厳重注意をくらった)
 
なお例によって、青葉と金堂さんのタイム差0.01はおかしいのではないか。もっと差があったように見えたと言われて、ビデオを確認して(以下略)。
 

Time Schedule & Summary
 

 
そういう訳で今回の津幡組・長距離陣の成績はこのようになった。
 
400im (G)金堂 (B)川上
400           (B)竹下
200im (G)金堂
1500  (G)川上 (B)竹下
800   (G)川上 (S)金堂

 
なお、短距離陣の希美と夏鈴は残念ながら決勝に進出できなかった。男子の筒石は金メダルを1個獲得している。
 
青葉は最後の種目800mで優勝して有終の美を飾ることはできたものの、今回のエースはやはり金堂さんだったなと思った。金メダル2個と銀メダル1個というのは素晴らしい成績である。
 
青葉はこれで安心して後のことは彼女に任せて引退できると思った。
 
オリンピック終了後の日本記録はこのようになった。
 
400m 竹下リル 4:00.18 :2021東京五輪
800m 川上青葉 8:07.94 ;2021東京五輪
1500m 川上青葉 15:37.20 :2021東京五輪
400iM 金堂多江 4:30.74 :2021東京五輪
 
金堂はこの他に200iMの日本記録(2;07.91)も持っている。
 
今回は女子長距離の全ての日本記録が塗り替えられた。
 
青葉は400iMの記録を金堂に破られたが、800mでジャネの記録を破って結局2種目の日本記録保持者である。ジャネはこれまで400m, 800m 2種目の日本記録を持っていたが、いづれも破られた。
 

全てのレースが終了した後、竹下リルが「負ぁけぇたぁ!」と叫んでいた。金堂さんとメダルの数の勝負をしていたらしいが、金堂が金2個と銀1個に対してリルは銅2個なので、今回は完璧に負けである。それできっちりトンカツをおごったらしい。トンカツ用お肉を20枚!用意してもらい、ホテル昭和のお部屋で旅館の板前さんに揚げてもらいながら(自分たちで買いに行くのは幸花が禁止し、自分達で揚げるのも若葉がやめてと言った)、金堂さんは8枚、リルは7枚食べて
 
「トンカツで負けるからレースでも負けたのかな」
などと言っていた。
 
ちなみに残った5枚は揚げるだけ揚げて食べやすいサイズに切ってもらい、夜間練習の合間に“おやつ”で2人で食べて翌朝までには無くなったらしい!?
 

31日夕方、幡山ジャネ(1993.8.28 16:35 あわら市生 27歳)が自分のツイッター・アカウントから競技引退を発表した。所属している百万石スイミングクラブにも退部届を提出したらしい。
 
彼女は交通事故で足首から先を失った上に窓から突き落とされる事件の被害に遭い、1年間意識不明だったことから、リオ五輪に出場できなかったのが気の毒であった。そこからカムバックして東京五輪に出たのは凄かったが、オリンピックのメダルには届かないまま無念の引退である。
 
彼女にとっては2019年の世界水泳 800m で金メダルを取ったのが頂点となった。
 
青葉は、自分はジャネみたいな有名選手じゃないから、わざわざ引退発表とかする必要もないだろうけど、東京五輪で引退することは予め水連にも石崎部長にも言ってあるし、金沢に戻ったら退部届けを書こうと思った。
 

§§プロのカレンダーというのは2004年に作られたのが最初である。それまでも個々のアーティストのカレンダーは制作していたのだが、この年は、2003年に同事務所のトップスターであつた新宿信濃子が結婚して引退したことから、次世代のトップスター・立川ピアノを盛り立てていくのと、その他の若手歌手のプロモーションのために制作したものである。この最初の§§プロカレンダーは6枚物でこのような構成だった。
 
2004 上野陸奥子+立川ピアノ/春風アルト/日野ソナタ/大宮どれみ/上野陸奥子/立川ピアノ
 
以下各年のメンツはこのようであった。
 
2005(5) 立川ピアノ×2 大宮どれみ 日野ソナタ 春風アルト 冬風オペラ
2006(6) 立川ピアノ 大宮どれみ 日野ソナタ 春風アルト 冬風オペラ 夏風ロビン
2007(7) 立川ピアノ 大宮どれみ 日野ソナタ 春風アルト 冬風オペラ 夏風ロビン+満月さやか(セット)
2008(6) 大宮どれみ 春風アルト 冬風オペラ 夏風ロビン 満月さやか 秋風コスモス
2009(6) 大宮どれみ 冬風オペラ 満月さやか 秋風コスモス 浦和ミドリ 川崎ゆりこ
2010(6) 大宮どれみ 満月さやか 秋風コスモス 浦和ミドリ 川崎ゆりこ 桜野みちる
2011(6) 満月さやか 秋風コスモス 浦和ミドリ 川崎ゆりこ 桜野みちる 海浜ひまわり
2012(6) 秋風コスモス 浦和ミドリ 川崎ゆりこ 桜野みちる 海浜ひまわり 千葉りいな
2013(6) 秋風コスモス 川崎ゆりこ 桜野みちる 海浜ひまわり 千葉りいな 神田ひとみ
2014(6) 秋風コスモス 川崎ゆりこ 桜野みちる 海浜ひまわり 神田ひとみ 明智ヒバリ
2015(5) 秋風コスモス 川崎ゆりこ 桜野みちる×2 品川ありさ 高崎ひろか
 
アクアは2014年12月に初露出で、それまで情報を伏せていたので2015年のカレンダーには出ていない。ただし1月にアクア単独のカレンダーを販売したら物凄いセールスになった。以降アクア単独のカレンダーは全員カレンダーの10倍以上売れている。
 
2016(7) 秋風コスモス+川崎ゆりこ(セット) 桜野みちる 品川ありさ 高崎ひろか アクア 西宮ネオン
2017(10) 秋風コスモス 川崎ゆりこ 桜野みちる×2 品川ありさ 高崎ひろか アクア×2 西宮ネオン 姫路スピカ 白鳥リズム 花咲ロンド
 
人数が増えたのでこの年から12ヶ月構成に変更された。アクアと桜野みちるが2回登場である。
 
2018(12) 秋風コスモス 川崎ゆりこ 桜野みちる 品川ありさ 高崎ひろか アクア 西宮ネオン 姫路スピカ 白鳥リズム 花咲ロンド 桜木ワルツ 石川ポルカ
 
2019(12) 品川ありさ 高崎ひろか アクア 西宮ネオン 姫路スピカ 白鳥リズム 花咲ロンド 桜木ワルツ 石川ポルカ 山下ルンバ 桜野レイア 原町カペラ
 
ついに12名を越えたので、コスモスとゆりこが遠慮した。
 
2020(12) 品川ありさ 高崎ひろか アクア 西宮ネオン 姫路スピカ 白鳥リズム 花咲ロンド 桜木ワルツ 石川ポルカ 山下ルンバ+桜野レイア(セット) 原町カペラ ラピスラズリ
 
年長の2人が「私は外してもいいよ」と言ったが、その2人をセットにした。
 
2021(12) 品川ありさ 高崎ひろか アクア 西宮ネオン 姫路スピカ 白鳥リズム 花咲ロンド 石川ポルカ 山下ルンバ+桜野レイア(セット) 原町カペラ ラピスラズリ 七尾ロマン+恋珠ルビー(セット)
 
桜木ワルツが引退して空いた1枠に新人2人をセットで放り込んだ。
 

そして2022年のカレンダーを制作しなければならない時期になったのだが、
「構成任せた」
と、昨年までこの作業をしていたゆりこから言われた花ちゃんはマジで悩んだ。
 
「どうやってこの人数を12枚に収めろと言うんだ!?」
と文句を言う。
 
載る権利のある人は↓である。
 
秋風コスモス 川崎ゆりこ 品川ありさ 高崎ひろか アクア 西宮ネオン 今井葉月 花咲ロンド 姫路スピカ 白鳥リズム 石川ポルカ 桜野レイア 山下ルンバ 原町カペラ ラピスラズリ リセエンヌ・ドオ 大崎志乃舞 七尾ロマン 恋珠ルビー 花貝パール 常滑真音 甲斐姉妹 中村昭恵 水森ビーナ 水谷姉妹 風谷リンゴ 広中礼音 四宮七菜 (28組)
 
まず下記8組を独断で外す。
 
(秋風コスモス 川崎ゆりこ 今井葉月 桜野レイア 山下ルンバ リセエンヌ・ドオ 大崎志乃舞 中村昭恵)
 
すると残りは20組である。
 
品川ありさ 高崎ひろか アクア 西宮ネオン 花咲ロンド 姫路スピカ 白鳥リズム 石川ポルカ 原町カペラ ラピスラズリ 七尾ロマン 恋珠ルビー 花貝パール 常滑真音 甲斐姉妹 水森ビーナ 水谷姉妹 風谷リンゴ 広中礼音 四宮七菜
 
もうこれは組合せていくしかない!というので花ちゃんの独断で次のようにまとめた。数字は割り当て月である。表紙には信濃町ガールズ全員の顔写真+外した8組の上半身写真を並べる。
 
アクア(1) 常滑真音(4) ラピスラズリ(7) 白鳥リズム(10) 姫路スピカ(2)
高崎ひろか+水森ビーナ(12)
品川ありさ(11) 西宮ネオン(9)
花咲ロンド+石川ポルカ+原町カペラ(6)
七尾ロマン+恋珠ルビー+花貝パール(5)
甲斐姉妹+水谷姉妹(8)
風谷リンゴ+広中礼音+四宮七菜(3)
 
「アクアは当然振袖だけど、ひろかちゃんも、12月に置くなら振袖着せようかな。そしたらビーナも振袖でいいよね?あの子、振袖着られるよね?」
 
トップアーティストであるアクアを12月でなく1月に置いたのは、ひょっとしてアクアが性別問題で人気急落したような場合に備えたものである。
 
「しかしこれ絶対、どうしてこういうまとめ方なの?とかどうしてこの順序なの?とか文句言われた時に、私のせいにするのに、私にこの作業押しつけたんだ」
などと花ちゃんはぶつぶつ言っていた。
 

花ちゃんは、この“全員登場”ものの他に“ヤング§§ミュージック”ものを作ることを提案することにした。こういう構成である。
 
ラピスラズリ(1) 風谷リンゴ(2) 広中礼音(3) 甲斐姉妹(4) 水谷姉妹(5) 中村昭恵(6) 水森ビーナ(7) 山鹿クロム+三陸セレン+鈴木春南(8) 四宮七菜+池田芽衣(9) 恋珠ルビー+花貝パール(10) 七尾ロマン(11) 常滑真音(12)
 
「8月の男の娘3人はビキニの女の子水着を着せたらダメかなあ。この子たち喜んで着そうな気がするけど。中学生のビキニは叱られるだろうか?」
 
などと花ちゃんは楽しそうに独りごとを言っていた。
 

熊谷の郷愁村で2枚のアルバムを同時進行で製作していた常滑舞音であるが、水谷姉妹と一緒に歌う童謡アルバムの方は、伴奏音源が7月中に完成して、伴奏していたアンサンブル・オーケストラのメンバーおよび仮歌係の山本コリンは7月31日に郷愁村を退去した。舞音は童謡アルバムを優先して完成させることにして、結局8月3日に完成させる。それで水谷姉妹も退去した。
 
コテージ“桜”には舞音とビーナだけが残る。ここでビーナが「舞音ちゃんと2人だけで何か誤解されたら困るから」と言ったので、ホテル昭和の方に泊まりこんでいたマネージャーの西岡空世(悠木恵美)がこちらに移ってきた。
 
「女の子同士ルームシェアしてて誤解されることはないと思うけど」
と舞音は笑っていた。
 

オリンピックに出場した水泳の津幡組は、一応8月8日まで熊谷で待機してから津幡に戻る(金堂さんも仙台には戻らず、来年5月福岡での世界水泳に向けてこのまま津幡で練習を続ける)予定である。
 
それで青葉も31日だけ浦和に泊まって(やっと彪志と愛の確認作業もした)、8月1日、熊谷に移動し、他の子たちと一緒に練習していたら、その日の夕方、〒〒テレビの石崎部長が熊谷に来たのである(社員さんが運転する車で移動してきた)。
 
「川上君、メダル3個おめでとう」
「ありがとうございます。色々便宜を図って頂いたお陰です」
「君のこの後のスケジュールはどうなってたっけ?」
「一応8月10日まで休職期間になっています。8日が閉会式ですが、その後もしかしたら何か公式行事があるかも知れないので、余裕見て10日までで。その後8月11日からアナウンサー部に復帰します」
 
「だったら、僕の権限で11日から13日まで特別休暇にするからさ」
「あ、はい」
「ずっと熊谷なり東京付近に居て8月16日に“この場所”に行って欲しい」
と言って、紙を渡される。
 
「Jヴィレッジ!?」
「うん、そこが会場になる。全国から多分30-40人が参加すると思うから」
「何をするんでしょう?」
「自転車40km, ランニング10000m、水泳1500mかな」
 
トライアスロン?
 
「あのぉ、まさか最後に水泳ですか?」
「それだと死者が続出するよね。たぷん水泳は先頭じゃないかなぁ。辛かったら途中棄権推奨だけど」
 
「まあいいですけど」
 
1500m水泳は全く問題無い。いつも泳いでいる距離である。10kmくらい走るのは平気だし、自転車40kmも全然問題無い。でもなぜ唐突にトライアスロンなのだろう。
 

「あと英語のテスト、数学と物理のテストがあるけど、高校1年程度の簡単なものだから。君、英語はペラペラだったよね?」
 
「ペラペラというほどではありませんが、一応通常の会話なら電話で話せる程度には」
「電話ができるのは充分凄いと思う。じゃよろしくね」
「はい」
と言いながら、方程式は解けると思うけど、物理忘れてないかなーと少し不安になる。
 
「オーディションの様子は民放各局で共同取材になるから」
「オーディション??」
 
一体何のオーディションなのだろうと思ったものの、部長は行けば分かるからとだけ言ったのである。
 
なお、青葉は〒〒スイミングクラブの退部届けも書き、石崎部長に渡したが「じゃ取り敢えず預かっておく」と部長は言っていた。
 
預かっておくって・・・受理じゃないの?と青葉は不安を感じた。
 

8月2日(月).
 
女子バスケットは、まず10:00から、日本とナイジェリアの試合があった、日本はこれに勝つことが前提である(負けたら話にならない)。
 
しかしさすがに格の違いを見せつけ、日本は終止リードを保った。
 
(22-30 16-21 19-33 26-18 T.83-102)
 
ということで102-83で勝利である。
 
青葉はこの試合を記者証で会場の大宮アリーナに入場し、現地から解説者の三木エレンさんと一緒に実況。試合終了後、千里を含む数人の選手にインタビューした!
 
千里が青葉からマイクを向けられて仰天していた!
 
千里姉は、ネットを通した応援に感謝した上で
「第4クォーターで向こうにあんなに点数取られたのは問題」
と不満を漏らしていた。
 
「でも、きちんと勝って、あとは午後のアメリカ・フランス戦ですね」
「そう。それ次第で運命が決まります」
「アメリカ頑張って欲しいですね」
「ええ。アメリカが勝ってくれることを祈るのみです」
と千里姉は言っていた。
 

この時点で、日本が予選リーグ2位になる条件は下記のいづれかになることである。
 
・アメリカが勝つ
・フランスがアメリカに31点以上の大差で勝つ
 
後者の可能性はほぼ無いので、アメリカが勝ってくれることを祈るしかない。
 
現時点でA組は順位が確定している(1スペイン2セルビア3カナダ4韓国)。C組は1,2位と3,4位が確定している(1・2:ベルギーと中国、3・4:オーストラリア・プエルトリコ)。B組はナイジェリア4位だけが確定していて1〜3位の順位は、午後のアメリカ−フランス戦次第である。
 
日本は現在2勝1敗で、A組3位のカナダ(1勝2敗)を勝ち点で上回っているので、決勝トーナメント進出自体は確定である。しかし2位通過と3位通過では、決勝トーナメントで“置かれる位置”がまるで違うので、ここはアメリカが勝ってくれることを祈るのみである。
 

「1番さん、オリンピックに出られるまで回復したんだね」
と青葉は後で千里3に電話して言った。
 
青葉が見ていた試合に出ていたのは千里1だったのである。
「予選リーグの3試合は1人1試合ずつ出ることを決めていた。1番は直前まで自信無ーいとか言ってたけど、よくやったと思う」
と千里3は言う。
 
「会場行ってみたら1番さんがいるから、私びっくりしたよ」
 
「自分がここに立てるようになったというので、あの子涙してた」
「ほんとにリハビリ頑張ったね」
 
2017年7月に千里1はいったん死亡し、蘇生したものの全ての能力を失っていた。当時《姫様》は千里姉が霊的な力を取り戻すことはないと言った。それなのにこの4年間のリハビリで霊的な力・音楽的な能力・バスケット能力の全てを取り戻した。驚異的な復活だ。
 
途中、霊的な力が暴走して、人を性転換しまくったりもしたが!(犠牲者は数十人)石川県X町の切株事件とか東京都B市の通り魔事件のように、千里姉が暴走していたからこそ解決できた事件もあった。
 
「まあ去年1月の時点で、スリーを入れる力だけではもう亜津子にはほぼ追いついていたんだけどね」
 
「そういえばそうだった!」
 

日本の運命を決める、アメリカ対フランスの試合は13:40から始まった。
 
第1Q、この試合にぜひとも勝ちたいフランスが必死の攻撃でアメリカをリードするも、第2Qでアメリカが少し本気を出して突き放し、前半は44-50である。第3Qではフランスが必死に追いすがり4点差まで詰め寄る。しかし第4Qでアメリカは再び突き放して、最終的には92-83でアメリカが勝った。
 
(22-19 22-31 23-21 15-22 T.82-93)
 
この結果、B組は1位アメリカ、2位日本、3位フランスで、アメリカと日本は決勝トーナメント進出が決定。
 
フランスも得失点差でA組3位のカナダを上回っているので決勝トーナメントに進出するが、同じ決勝トーナメントに進むにしても2位通過と3位通過では組合せの有利不利が出るはずだ。
 
最終的な決勝トーナメントの進出者と組合せはこの後行われる、C組の2つの試合で決まる。
 

青葉は16日まで結構時間があくので、熊谷からは離脱して浦和で15日まで過ごすことにした。普通の年なら大船渡でお墓参りもしたい所だが、コロナの折、行かないことにする。慶子さんに送金して、お墓にお供え物だけしてもらった。
 
石崎部長から
「作曲家アルバムの撮影をしよう」
と言われた。夏休み中でラピスラズリの日程が取りやすいのである。
 
(でも私、休職中なのに?−そういえば休職中なのに実況アナウンスもしたぞ)
 
「結局、作曲家アルバムは継続ですか?」
と青葉は部長に尋ねたのだが
 
「うん。継続・継続。漆野さんとの話し合いでは一応来年の春で終了予定」
「そのあたりで主な作曲家は網羅してしまいそうな気がします」
 
この時、青葉はなぜ石崎部長が“来年春”という期日を出したのか、その意図を全く知らなかった。
 
石崎さんがケイさんと話し合って、このような日程が組まれていた。つまりオリンピックの最中にやっちゃおうという魂胆である。
 
取材日/放送予定日
8.3 8.16 スカイヤーズ(集団取材)
8.4 8.30 サウザンズ(集団取材)
8.5 9.13 スリーピーマイス(集団取材)
8.6 9.27 上野美由貴
8.7 10.11 マリ&ケイ
 
とうとう“08年組”が登場する。ケイは自分たちより1つ年上の醍醐春海(千里)を先に取材してもらいたかったようだが、千里はオリンピック中で取材不能だったので、先にマリ&ケイをすることになった。
 
実はスリーピーマイスも2008年デビューで、初期の頃は08年組のイベントに相乗りすることも多かったが、最近は3人が各々忙しいことから、その手のイベントにまではあまり関わっていない。
 
上野美由貴さんは彼女の曲がメジャーで売られ始めたのは2013年ではあるが、シンガーソングライターとしての活動は2008年から始まっているので、ここに入れることにした。
 
しかし・・・今回の取材はひたすらハードな取材が続く!と青葉は思った。
 

女子バスケは、8月2日の夕方・夜にC組の残り2試合が行われ、中国とオーストラリアが勝利。全ての順位が確定した。この結果、日本は総合5位で、総合4位のベルギーと準々決勝では当たることになった。決勝トーナメントの組合わせは下記である。
 
AUS-USA━━┓
CHN-SRV━━┻┓
BEL-JPN━━┓┣
ESP-FRA━━┻┛
 
ベルギーに勝った場合は、フランスとスペインの勝者と当たることになる。準々決勝は8月4日、日本は第3試合 17:20 である。
 

8月3日(火)、スカイヤーズの集団取材は、Pow-eruさんの御自宅に、BunBun, YamYam, Chou-ya の3人が来て、そこに青葉、ケイ、ラピスラズリとカメラマン、ディレクターがお邪魔するという形を取った。
 
ケイが彼らには“禁酒”をお願いしていたのだが、彼らはお酒が入ってなくても、とっても楽しい人たちだった!(この人たちアルコール入ってなくても酔ってるのでは?と青葉は思った)。
 
しかし酔っても、扱いにくくなるタイプや、いやらしくなるタイプ(後述)ではないので、高校生のラピスラズリも、楽しく盛り上がって取材をすることができた。YamYamさんが、うまく東雲はるこをノセるので、ふだん発言の少ない、はるこがこの日の取材ではかなりよくしゃべっていた。
 

8月4日(水)のサウザンズの集団取材は、ケイ!の自宅マンションに、樟南・在杢・獄楽・釜倉・稲邑・釣丘というメンバー6人を招いて、そこで取材を行った。自宅以外で取材するというのは、この番組始まって以来、初めてのことである。これは6人の自宅がどれもあまりにも酷く散らかっていて「とても映せない」ので、6人の中で最も常識人である獄楽さん(顔はヤクザにしか見えないが)のリクエストで「第七のメンバー」ケイの自宅を使うことにしたのである。
 
「ケイさん、サウザンズのメンバーだったんでしたっけ?」
「洋子はサウザンズの初代チューニング係で、永久名誉メンバーだ」
 
などと樟南さんは言っていた。“(柊)洋子”はケイがローズ+リリーを始める前の芸名である。
 
メンバーの中に“音感のある”人が1人もおらず、当時スタジオでバイトしていたケイが見かねて楽器のチューニングをしてあげるようになってから、サウザンズは売れるようになったらしい。それまでは「ただの騒音」と言われていたのである。楽器のチューニングをせずに音感の無いメンバーだけで演奏していたら、確かに騒音以外のなにものでも無かったかもしれない(ピアノまで音がくるっていたらしい)。
 
実は初期の楽曲は当時公表されていた手書きスコアと後にケイによってリライトされソフトで作られたスコアがまるで違う。初期のスコアに忠実に演奏しようとすると、“音楽”に聞こえない。そもそもソかラか分からない音、ミかファか分からない音など、手書き譜面からは読み取れない音が大量にある。1小節の中に8分音符が9つあったり7つしか無かったりするのも珍しくなかった(要するにスコアも適当に書かれていた)。
 
もっとも彼らの演奏は気分次第でフレーズが省略されたり唐突に聞いたことないモチーフが挿入されたりするので、同じ演奏は2度と無いとも言われる。歌詞も歌う度にまるで違っていたりする(もしかしたら音楽の本来の形なのかも)。
 
他の歌手に楽曲を提供する場合“モチーフのかたまり”を渡されるので代々の“チューニング係”がそれを楽曲の形に整理して当該歌手に渡している。でも印税の3割をもらえる。実際、チューニング係との共同作品に近いと思う。でもこの印税は美味しくて、初期のケイもそれで随分活動資金を得ていた。
 
チューニング係はケイが多忙になった後は、代々“音感のある男の娘”が受け継いできたという。現在5代目のチューニング担当が付いているが、可愛い男の娘高校生で、彼女は女子制服姿を取材のカメラに曝して手を振っていた。
 
(声も女の子にしか聞こえないので東雲はるこが「本当に男の子なんですか?」と驚いていた)
 
サウザンズのメンバーにもケイは禁酒をお願いしていたのだが、全く守られてなくて全員アルコール臭かった!でも彼らは酔ってても酔ってなくても無茶苦茶なのて、この日はもう訳の分からない混沌とした取材になった。
 
ラピスの2人がセクハラ(というより痴漢)されないように、ケイと、まだシラフに近い獄楽さん(「ごめん。ちょっとと思ってビール5缶飲んだ」と言ってた)がガードしていた。青葉はたくさん胸やお尻に触られたけど気にしないことにした。
 
町田朱美はその中でもしっかりメンバーから色々な話を引き出した(東雲はるこはかなり悲鳴をあげていた)。最終的に編集された番組は、一応放送可能なものになっていた。今回は町田朱美のパワーのお陰で、番組が成立した。
 
「今日はもうプロレスでした」
などと朱美は言っていた。朱美に抱きついてきた樟南は思いっきり蹴り上げられて10分くらい、うずくまっていた。
 
「もうこいつ去勢しちゃおうぜ。洋子、良い病院紹介しろよ」
などと在杢から言われていた。
 

8月4日は女子バスケットの準々決勝が行われたが、この件は後述する。
 

8月5日(木)はスリーピーマイスの集団取材だったが、これはプロデューサー兼マネージャーのリデルの自宅に、エルシー、ティリー、レイシーの3人が来て、そこにラピスたちが行く形を取った。
 
それは彼女たちが個人主義で、お互いの自宅の所在地を他のメンバーにも教えない主義でやってきているからである。彼女たちは音源制作でも決して同席しない。各々自分のパートをスタジオに来て吹き込んで帰るというスタイルを取っている。3人はお互いの電話番号やメールアドレスも知らないので連絡は全てリデルを通してしているのである。
 
町田朱美は
「あのぉ、仲が悪いわけではないんですよね」
と確認する。
 
「仲はいいと思うなあ」
とティリーは言う。
「お互いのプライバシーには関わりたくないだけだよね。少年隊方式」
とエルシー。
「お互いに尊敬してるよね。最近ではガーネット・クロウもこういう方式だった」
とレイシー。
 
スリーピーマイスは、楽曲も各々がひとりで詩・曲を書いたものを集めてアルバムを作っている。誰かが詩を書いて、それに他の人が曲を付けるということもない。初期の頃は、エルシーが曲を書いたのにティリーが詩を付けて、レイシーが編曲していた(これがガーネット・クロウ方式に近い)が、最近はそれもしないらしい。
 
「まあ3人が顔を揃えるのはライブの時たけだね」
とエルシーは言っていた。
 

スリーヒーマイスが初期の頃“覆面バンド”であったことも話題になる。初期の頃、彼女たちは、ライブにはアイスホッケーのマスクのようなものを付けて出てきて、決して顔を見せてなかったのである。
 
「あれは実際は『スリーピーマイスは顔を見せない主義らしい』という噂が広まっちゃったから、それに悪乗りして、アイスホッケー・マスクとか仮面ライダーのお面とか付けてみただけなんだけどね」
 
「特に顔を隠す理由もないからデビュー7年目の記念ライブで初めて素顔を見せたね」
 

この日の取材では3人の間にある微妙な壁のようなものの扱いでわりと苦労したのだが、前日・前々日に比べると、かなりやりやすい取材で、町田朱美もリデルの自宅を出た後
 
「今日の取材は楽でしたぁ」
と言っていた。
 
「3人バラバラと言ってましたけど、エルシーさんとティリーさんは距離が近くて、レイシーさんとは距離がある気がしました」
と東雲はるこが言う。
 
「君はなかなか鋭いよ」
とケイが言った。
 
「元々はエルシーとティリーのデュオだったんだよ。このユニットは」
「そうだったんですか!」
「そこに語呂合わせのためだけにレイシーを入れたから、レイシーと他の2人の間には少し壁があるんだよね。だからお互い電話番号も知らないと言ってたけど、実際にはエルシーとティリーはお互いの電話番号は知ってると思う」
 
「へー」
 
(スリーピーマイスの3人のステージネームは『不思議の国のアリス』に出てくるヤマネの三姉妹の名前から採られている。スリーピーマイスという名前もヤマネの英語名 dor-mouse “眠りネズミ”から来ている。エルシーとティリーはそれでレイシーという名前にできる女子を探し出してメンバーに加えたのである。レイシーの本名は麗子さん。ちなみにエルシーは苗字の長丸からLong Circle→LC, ティリーはやはり苗字の寺入から)
 
「ただ、初期の頃は、レイシーの絶妙なアレンジのお陰でスリーピーマイスは売れた。レイシーは売れるようにアレンジするのがうまい。天才アレンジャーなんだよ」
 
「そのあたりの“売れる”という問題っていつもバンドの方向性で揉めますよね」
と町田朱美。
 
「うん。やりたい音楽と売れる音楽はなかなか一致しないから難しい」
とケイは言っていた。
 

8月6日(金)は上野美由貴(別名義:阿木結紀)さんに取材した。
 
§§ミュージックの秋風コスモス社長の実姉で、歌手名は秋風メロディーである。
 
彼女はこの芸名を付けられたものの、1枚のCDもメジャーからは出さないまま引退してしまった(§§ミュージックが所有していたインディーズ・レーベル"Pisagar Records"からは3枚CDが出ているが売上は100枚未満である。現在このCDを所有しているのは多分妹の秋風コスモス(売上に貢献しようとわざわざあちこちのお店で各CD 20枚くらい買ったらしい)と謹呈してもらったケイだけ。メロディー本人も所有していない)。
 
§§ミュージック退所後は、自主制作で“上野美由貴”名義で自分で作曲して自分で歌って録音し、CDのディストリビューターに流していたが、それも全く売れなかった(これもコスモスとケイは所有している)。なお、秋風メロディーの名前を使わなかったのは権利問題のためである。
 
しかし2013年、彼女が自主制作で出していたCDをたまたま、小野寺イルザのマネージャーが見かけて聴いた所、凄くいい曲だと思った。そしてこれをイルザに歌わせたいと思った。イルザは年齢的な問題で、アイドル歌手から脱皮する必要があったが、本格的な歌を歌わせてもそれまで売れていなかった。
 
イルザのマネージャーは、このCDの制作者の連絡先を見つけ出して交渉した結果カバーはOKということになり、小野寺イルザがこの曲『あなたのことが好きだから』を吹き込んだ。すると3万枚も売れたし、明らかにこれまでのファン層より上の年齢層に受けたので、それ以降、上野美由貴作詞作曲・小野寺イルザ歌、というパターンの作品が発表され、じわじわと販売数を伸ばして行く。そしてついに2014年に出した『夜紀行』がRC大賞の金賞にノミネートされ、“大人の歌手・小野寺イルザ”が音楽市場に認められることとなったのである。
 
それとともに、上野美由貴への楽曲提供依頼も来るようになり、上野美由貴は作曲家として開花することとなった。
 

自分たちの事務所社長のお姉さんなので、ラピスラズリの2人はかなり緊張していたが、彼女の出生作となった『夜紀行』を2人が歌うと、上野美由貴さんは笑顔でたくさん拍手する。
 
「君たち本当に上手いよね」
と言っていた。
 
ラピスの2人も褒めてもらったので、この後はかなりリラックスして取材していた。
 
(上野美由貴はラピスラズリにも何曲か曲を提供しているが、この番組では自分たちの歌は歌わないポリシーてある)
 
上野美由貴はローズ+リリーのマリなどに似て“ぽえむの世界”で生きている傾向があり、発想がユニークというか、不可思議な反応をすることもあるので、夫の田船智史(*3)(バインディング・スクリューのリーダー)が取材の席には付いていて、ラピスたちが困るような発言をうまくフォローしてくれていた。
 
お陰で、ラピスたちも気持ち良く取材することができて、この日の取材を楽しく終えることができた。
 
(*3)人間関係の"chain"
 
槇村博司(同級生)近藤嶺児(夫妻)宝珠七星(妹兄)宝珠北斗(夫妻)田船美玲(姉弟)田船智史(夫妻)秋風メロディー(姉妹)秋風コスモス(妻夫)木取道雄
 
他に、鮎川ゆまは七星の同級生で、ケイとはドリームボーイズのバックダンサー仲間。ゆまのデビューには千里が深く関わっている。
 
ドリームボーイズのバックダンサー仲間には諏訪ハルカもおり、彼女の従妹が夢路カエルでふたりはプリヴェーラというデュオを組む。カエルは雨宮先生の妻である(三宅先生は雨宮先生の夫!)。カエルは現在三宅先生の家に住んでいる。この家は東翼・西翼から成るが、三宅先生が西翼に、カエルが東翼に住んでいる。カエルがここに住み着いてから雨宮先生の“帰宅頻度”がぐっと上昇したらしいが、雨宮先生は帰宅すると、妻と夫の両方に奉仕する“義務”があるらしい(雨宮先生は早死にする気がする)。
 
ゆま・ケイ・千里は雨宮先生の弟子である。
 
雨宮先生の弟子には、三つ葉のプロデューサー・毛利五郎、雨宮派の統括者・新島鈴世(にいじま・りんぜ)などもいる。新島鈴世の本名は本名大谷一洋で“おおたに・かずよ”と読む。でもいつも“かずひろ”と読まれ、男(男の娘?)と間違われて苦労したらしい。「性転換なさったんですか?」と言われるのは慣れていると言っていた。実は雨宮先生も男の娘と思い込んで弟子にしたので「あんたなんで妊娠するのよ?」と言われたらしい!しかし彼女のペンネーム“鈴世”だって、『ときめきトゥナイト』の江藤鈴世を知っていると男名前と思われるかも!?
 
雨宮先生のわりと最近の弟子には真城聖美・歌美という双子の姉妹(元双子兄弟)がいて、羽鳥セシルの事実上のマネージャー兼ディレクターをしている。彼女たちの母は、しまうららである。
 
(“真城”はしまうらら(里村加奈子)の旧姓。ふたりは“父の性から母の性に変えたので、姓も父の姓から母の姓に変えました”と言って、母方の姓で活動している)
 
しまうららは、友人のゆきみすずから「かなちゃんの所、双子の息子さんだけじゃなくて、双子の娘さんもいたのね」と言われて「へ?」と思い、いつの間にか、双子の息子が双子の娘に華麗なる変身を遂げているのを知りショックを受けたらしい。
 
木取道雄のwooden fourの仲間・大林亮平はマリの息子・大輝の父親。亮平の妻は原野妃登美で、マリはデビュー前に原野妃登美のバックダンサーをしていた。
 
また近藤嶺児とスカイヤーズのChou-yaは昔同じバンドに居て、このバンドにはしばしば七星がゲスト参加していた。
 
七星は松原珠妃のバックバンドに居たことがあるが、ケイも珠妃のバックバンドに居たことがあり(時期は重ならない)、ケイに七星を紹介したのは珠妃である。
 
松原珠妃はしまうららが見い出した。しまうららが見いだしたアーティストには他にチェリーツインなどもいる。チェリーツインの“コーラス”(という建前の実質的なメインボーカル)少女Xと少女Yは、メテオーナの元メンバーである。
 
メテオーナからこの2人(+1)が抜けた後、“千代紙”の和泉とケイが加わって、KARIONが生まれた。
 

「でもメロディーさんって、ほんとに凄い美人ですね」
 
と秋風メロディー(上野美由貴)の御自宅を出た後で、東雲はるこが言っていた。
 
「それ取材中に言えば良かったのに」
とディレクターさんは言うが
 
「でも美人さん本人に向かって美人と言うのは失礼だと思って」
と、はるこ。
 
「私もそう思って、容姿については触れませんでした」
と町田朱美も言う。
 
「彼女は自分が美人なのは当然と思っているので、容姿で褒められるのは、何を今更と思うようですよ。ウサイン・ボルトに向かって、あなた走るの速いですねと言うのは失礼でしょう?」
とケイが言うと
 
「なるほどー」
とディレクターさんも納得していた。
 
「コスモスちゃんによると、メロディーさんは“立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花”で、コスモスちゃんは“立てば韮崎観音、座れば鎌倉大仏、歩く姿は大魔神”らしい」
 
「大魔神は恐いです」
「あはは」
 

8月7日(土)はマリ&ケイの取材である。これは先日のサウザンズの取材をしたのと同じ、恵比寿のケイのマンションで取材をおこなった。
 
普段取材する側のケイがこの日は取材される側である。
 
先日はマリさんは実家の方に退避していたのだが、今日は、あやめ・大輝の2人の子供と一緒に恵比寿のマンションに出て来ている(お母さんも付いてきているが、カメラには映らない)。町田朱美が2人を見て「可愛いぃ!」と言って喜んでいた。
 
サウザンズの取材の時は騒然としていたので、このマンションの部屋をあまり紹介できなかったのだが、今日はリビングの壁一面に並んだ数千枚のCD、リビングのヤマハ製“音楽室”内に設置されたエレクトーンSTAGEAとクラビノーバCLP-545 も映される。なお取材班は、ふたりの“安らぎの場”である、マリの実家にも昨日お邪魔して、大型のグランドピアノ S6B が置かれた部屋なども撮影している。放送時には両者の様子がミックスして画面に流れていた。
 
S6Bはせっかく高いお金を出して買ったのに、マリ自身が実家にめったに行かないので、まさに宝の持ち腐れになっていたのだが、最近、おやめがよく触っていて、ほぼあやめのおもちゃと化している(マリの母が弾き方の基礎を教えてあげたら楽しそうに弾いているようだ)。
 

今回の取材で、ラピスラズリはローズ+リリーの初期の作品『ギリギリ学園生活』を歌った。マリはラピスの歌唱が物凄く気に入ったようで、たくさん拍手をし、
 
「ぜひ君たちのアルバムにでも」
と言うので、またまた『懐メロ』用の楽曲が溜まっていく。
 
「これ以前他の方もカバーしてますよね」
「そうそう。坂井真紅(まこ)ちゃんがカバーしている。でも彼女も20代だし」
 
坂井真紅は1997年2月生で、青葉のひとつ上の学年である。
 
「さかいまこ?」
と博識の町田朱美が悩む。それで青葉が
 
「あの人、たいてい“さかい・しんく”と誤読されるよね。紅白に出た時も間違えられた」
と言うと
 
「あのお名前、“しんく”じゃなくて“まこ”だったんですか!」
と町田朱美はマジで驚いていた。
 

社長の秋風コスモスのお姉さんの前では緊張したラピスラズリが、会長のケイの前では最初からリラックスしていた。この1年半ずっと一緒に取材で同行していたので、身内感覚が働くようである。
 
しかしローズ+リリーには色々“謎”があるので、そこを町田朱美がわざと質問して、ケイが答えに窮するような場面も多々あった。
 
「ケイさんが2008年11月15日にわずか1時間で名古屋から金沢に移動したのはいまだに方法が謎だと言われているのですが」
 
「それは勘弁して。でも方法はあるんだよ」
 
とこれに関してはひたすら逃げていた。
 
「ケイさんは2011年に性別を変更したと主張なさっていますが、小さい頃から女の子だったという証言が多数あるのですが」
と町田朱美が“追及”すると、マリが
 
「これが証拠だよ」
と言って、ケイが女の子の格好をして写っている小さい頃の写真をたくさん広げる(生まれた直後の写真を含む)ので、その手の写真が多数カメラに写って、ケイが困ったような顔をしていた。
 
「やはり生まれた時から女の子だったみたいですね。この生まれた直後の写真に男の子ならあるはずのものが見当たりません」
と朱美。
「出生証明書もあるよー」
と言って、マリが
《唐本冬子・女》
と書かれた出生証明書を出してくるので
「おお!これは決定的な証拠だ」
と朱美が喜んでいた。
 
「最後にひとつ。ケイさんは何人いるんですか?」
「私はひとりだよー」
「ケイさんのお友だちに聞くとケイさんが5人以上居るのは確実と皆さん、おっしゃるんですが」
「そんなこと言われても困るなあ」
 
「だってケイさんの仕事量を考えると、どう考えても最低5-6人以上居ないと、不可能だと思うのですが。ケイさんが複数いるなら、名古屋から金沢まで1時間で移動した問題も解決しますし。他に30分でやはり名古屋から長野に移動したのも確認されてるんですよ」
と朱美が笑顔で言うと
 
「私の推測では100人だな」
とマリが言うので
「マリさんの証言によると、ケイさんは100人居るそうです」
と朱美は言って、一連の質問を終えた。
 

取材終了後、朱美は笑いながら言っていた。
 
「ケイさんが100人はさすがにジョークですけど、アクアって絶対3-4人いると思いません?1人であの仕事量はどう考えても不可能ですよ」
 
ケイは
「マジであの子は5-6人いるかも知れないよね」
と内心冷や汗を掻きながら答えた。
 
「だけど私もケイさんは最低3人はいる気がしているんですけど」
と青葉まで言っていた。
 
 
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【東風】(2)