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■クロスロード1(3)

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「これ・・・セクマイの集会・・・とかじゃないですよね?」と和実が訊くと「偶然の遭遇ですよ」と青葉は笑って答えた。
 
千里はポカーンとして会話を聞いていたが「え、まさか、この人も?」と和実の方を見ながら青葉に訊く。
 
「うん。だけど、この人がそれと分かるのは、よほどいい目をしている人だけ。だって出しているオーラが完璧だもん。この人、霊的には既に完全に女性。手術がまだだから分かった。手術済みだったら私にも分からなかったと思う」
と青葉は言う。
「君も凄いね。痕跡がどこにもないもん。ホントにあれなの?まだ信じられない。あ。。。。でも君も身体はまだいじってないね。いや、もしかしてタマだけ抜いてる?」
と和実も言う。
 
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「でも・・・」と青葉と和実が同時に言った。
「どうやってそのおっぱい作ったの?」
「ホルモンしてないですよね?」「うん。君もでしょ」「うん」
 
そこに反対側から一周してきた淳がやってきた。和実が足を留めているので「どなたがお怪我されました?」と聞く。「ううん。それは大丈夫なんだけど」
と和実が答えたら、その淳を見つめて「え!うそ」と青葉が叫ぶ。
 
そこに千里が戻ってこないのを心配して桃香もやってきた。「何だ何だ?」
桃香はそこの少し不思議な集団?を見て言う。あきらが「まさかその人まで?」
と言ったが、和実が「違いますよ。そちらのお姉さんは天然女性」と言う。 
「ね、この場ではあれだし、あとでこのメンツでまた1度集まりませんか」
と青葉が言う。
「私と、あなたが携帯メール交換すれば全員集まれそう?」と和実が青葉に言った。「うん。そんな気がする。交換しましょう」といってふたりはアドレスを交換した。
 
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「あ・・・」その時、青葉が声を出した。
「あんまり凄い遭遇があったから避難所全体を見るの忘れてた。あの赤ちゃんやばくない?」
と言って青葉が、避難所内で赤ちゃんの泣き声のする方に走って行った。千里、桃香、あきら、淳、和実が付いていく。佐竹はおばあさんの所に残った。 
そこのブロックで、20代の女性が激しく泣く赤ちゃんをかかえて困ったようにしていた。「どうしましたか?」と淳が尋ねた。
「私がスープをこぼしてしまって」
炊き出しのランチを食べていて、そのスープがこぽれ、赤ちゃんの腕に掛かってしまったようだ。
「地震でこぼれたんですね」
「いえ。地震では押さえていたので無事だったんですが、終わったあとでつい今さっき、うっかりひっくり返してしまって」
確かに事故を起こす時はそういうものである。
 
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「千里、氷水で冷やしたタオル、いそいで作って持ってきて」と桃香が言った。「分かった」と言って、千里が掛けていく。
「取りあえずこれで」と言って和実がバッグの中からウェットティッシュを出すと、赤ちゃんの腕に当てた。しかしスープのかかった範囲が結構広い。「淳、救急箱の中にたしか馬油があったと思うから」「取ってくる」
 
「大丈夫ですか?」
声を掛けてきたのはさきほどステージで歌っていたバンドのボーカルの子である。「ウェットティッシュ持ってます?」と和実が訊く。
「ウェットティッシュなら」といって、その子もバッグから出してくれた。そのまま赤ちゃんの腕に当ててくれる。
 
少しして、千里が冷やしたタオルを持って駆けつけてきた。
桃香はそれを受け取ると、ウェットティッシュの代わりに赤ちゃんの腕に当て千里に「もう1個作ってきて」と言った。「とにかく冷やさなくちゃ」
 
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「お母さん、この赤ちゃんにヒーリングしてもいいですか?」と巫女装束の青葉が訊く。「効果のありそうなことなら何でもしてください」というので青葉は赤ちゃんのそばに正座して座ると、目をつぶり左手で赤ちゃんの腕の少し上のほう数cmあけたところに手をかざすようにした。
 
「うーん」と青葉が呟く。
「マズイの?」と桃香が訊く。
「違う。今の段階では私のヒーリングよりその冷やしているタオルの方が効果が大きい」
「紛らわしいこと言わない」「ごめん。あ、タオルひっくり返して」「うん」
桃香がタオルの表裏をひっくり返した。赤ちゃんの熱をすった所が少し暖かい。青葉は赤ちゃんの腕と並行に患部の上で手を動かしヒーリングを続けている。やがて千里が新しい氷水付きタオルを持ってきたので交換する。
「押さえておくの代わります」といって、あきらがタオルを押さえておく係を桃香と交替した。
 
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「ありがとう。確かに押さえておく側も手が冷たい」と桃香が言う。
淳が馬油を取って来ていたが、まずは応急処置を見守っている。
 
「あ、大丈夫。これなら跡は残らない」と青葉が言った。
応急処置を始めてから10分ほどが経っていた。タオルも3回交換した。赤ちゃんも泣き止んでいる。
「タオルもう要らない?」と千里が訊く。
「もう1本分、やっておこうかな」と青葉。
「OK。持ってくるね」と千里が駆けていく。
 
「あ、もしかして、あなた八島さんのとこの曾孫さんですね!」と
赤ちゃんを抱えたお母さんが青葉に言う。「今、気付いた」
「ああ、うちのひいばあさんをご存じでしたか」と青葉は微笑んだ。
 
「私が中学生時代に大病した時、祖母が八島さんを呼んで祈祷してもらったんです。実は医者から匙を投げられた状態だったらしくて。その時、祈祷だけじゃなくて、今あなたがしているみたいな感じでヒーリングしてもらって。そしたら凄く楽になったの覚えてます。おかげで私命拾いして。その時に、八島さんがまだ4〜5歳くらいの女の子連れてたのが、あなたですね」
「たぶんそうです。そうやってよく現場に連れ回されていましたから。でも良かったですね。病気回復して」と青葉は微笑みながらヒーリングを続けていた。 
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「へー」と桃香は感心して言うが、そもそも桃香はこの手のものを信じていないので、無感想である。青葉のヒーリングについても半分気休めのようなものと思っている。ただ千里の身体への効果については信じざるを得なかったが。 
「もう大丈夫そうかな。じゃ私達はそろそろこれで」とバンドのボーカルの子がいう。すると青葉が「待って。ね、和実さん、その人と連絡先の交換を」というので和実が少し離れた場所でそのボーカルの子に、たまたまここにパス度の物凄く高いMTFさんが集まっていて、あなたのことにも注目したのでぜひ連絡先を教えて欲しいと言った。
 
ケイは、あきらと淳が女装者というのは気付いていたが、千里・和実・青葉には全く気付かなかったと言って驚き、特に和実と青葉については「ホントにMTFなんですか?どう見ても女の子にしか見えないけど」とむしろ疑っている感じであった。しかし連絡先は交換してくれて、ぜひまた会いましょう、と言い、バンドのメンバーといっしょに体育館を後にした。
 
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あきらも、美容師グループの人から「そろそろ今日の宿舎に移動するけど」と声を掛けられる。青葉が「宿舎はどちらですか?」と訊くと一関市内のホテルの名前を言われる。「あ、私達今日は一関経由で帰りますから送っていきましょうか?ただこのあとまだ3ヶ所避難所を回りますが」と和実が言った。「そうですね。いろいろお話したい感じだし。荷降ろし手伝いますよ」と言うので、あきらはそのまま残って、今日はこのあと和実たちと移動することにした。 
「もう大丈夫でしょう」と青葉がいうのでタオルを外す。赤ちゃんの肌はもう全然赤くない。「馬油塗っていいですか?」と和実が母親に尋ねる。
「ええ、お願いします」というので和実が赤ちゃんの腕に馬油を塗ってあげた。「でも、ほんとに可愛い赤ちゃんですね。私にもこんな赤ちゃん欲しいくらい」
などと和実が言うと「そのうちできるかもね」と青葉が言った。
 
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「え?」と和実が目をパチクリさせながら問うような視線を投げかけると青葉は「今のことば、私が言ったんじゃない。私の後ろの人が言わせた」と青葉。「あら、お若いんですもの。これからきっといい人できて可愛い赤ちゃん、さずかりますよ」と赤ちゃんの母親は笑顔で言っている。『女性』ばかりに囲まれた気安さでさきほどから乳房を出して授乳していた。
 
少し離れた所から様子を伺っていた感じの亜衣華が近づいてきて「落ち着いた?」
と尋ねる。「うん」と千里と桃香が同時に言った。「あ、亜衣華、これうちの妹」
と言って、千里が青葉を紹介する。「あら、可愛い妹さんね」
「いつも姉たちがお世話になってます」と青葉が挨拶する。「姉たち?」
「うん、この子、私の妹でもある」と桃香。
「うむむ。なんか複雑そうな。でも巫女さんのバイト?」
「ええ、まあそんなものです」と青葉がにこやかに言った。
桃香は青葉の笑顔が日増しに明るいものになっていっているのを再認識した。 
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「じゃ、青葉、私達は食器を片付けて撤収するから」
「うん、頑張ってね」「青葉もね」
 
和実は病院に行くなら乗せていきますがと母親に言ったが、病院まで車でもかなり時間が掛かるのを知っているので、大丈夫ですと言った。「それに重傷者優先だからこの程度で病院行ったら叱られます」と。そこで和実は、この先別の避難所に行ったあと、一関方面に戻るのにまた近くを通りますから、必要だったら電話してくださいといって自分の携帯の番号をメモして渡す。そして淳・あきらとともに表に駐めているトラックのほうに戻った。
 
青葉も「もうしばらくこの避難所にいますから、何かあったら声掛けてください」と言って先程のおぱあさんの所に戻った。
 
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ケイはマキの運転するワゴン車の助手席でSuperflyの「Rollin' Days」を歌っていた。「調子いいね」と後部座席に座っているギターのタカが言う。
「うん。ちょっと面白い人たちに遭遇したからちょっと楽しくなっちゃった」
とケイは答える。
「今の避難所で?」
「そうそう。また会いましょうって約束してきたよ」
「へー」
「特にあの巫女装束の子、私に何かインスピレーションを湧かせるな。あ・・・・・・・五線用紙取れる?」
「ほい」
とタカは座席のポケットにあった五線用紙とボールペンを渡す。
ケイは頭の中に浮かんだモチーフを五線用紙にささっと書き留めた。
更に歌詞も浮かんだのか、たくさん字を書き綴っている。
独特の崩し字で本人以外読めないが、物凄く高速で書けるようだ。
 
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「あと2分くらいで次の避難所に着くけど」とマキ。
「だいじょうぶ。2分あれば書き上げられる」とケイ。
 
五線紙のいちばん上の標題を書くところには「Saint Girl」という文字が、そこだけはマキにも読めるように書かれていた。
 

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「でもリードされたのは3年ぶりだなあ」とキャンターの座席の中央に座った和実が悔しそうに言っていた。「あの子、完璧だった。本人から私のことを言って来なかったら、私もあの子が女の子じゃないなんて疑いもしなかった」
 
「いや、和実ちゃんも凄いけど。。。。確かにあの子は凄いね。私もリードされてから、もしかしてと思ってよくよくあの子を見たんだけど、それでもまさか?と思ったのよね」
と左側の席に座っているあきらが言う。
 
「あの子の『お姉さん』と言ってたうちの一人はMTFだと言ってたけど・・・・あの人も物凄く女性的で、言われないと私には分からなかったんだけどさ、もう一人のお姉さんの方は?あの人も独特の雰囲気持ってたよね」と運転席の淳。 
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「あの人はね・・・・FTM要素もあるビアンじゃないかなあ。でもあまり男装はしてない気がする。男装をよくする人なら、服装の雰囲気に特徴があるもん」
と和実。
 
「服装ってあれ、ファミレスの制服でしょ?」
「着こなしに微妙な特徴が出るのよね。背広着ていても女装の習慣のある人は私分かるよ」と和実は言う。
 
「でも集まろうって約束したし、今度会う時が楽しみだね」
「うん」
 
ただ、和実は、さきほどの「凄い遭遇」を思い出しながら千里と桃香の関係が何なのか図りかねていた。恋人とは微妙に違う感じだし。自分が知らないタイプの人間関係かもという気もした。
 

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