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■クロスロード1(1)

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(C)Eriko Kawaguchi 2011-05-20

 
主な登場人物は下記のシリーズに出てきた人達です。
 
千里・桃香・青葉 →「女の子たちの成人式」〜「女の子たちの花祭り」
青葉については→「寒椿」〜「寒梅」も参照。
あきら・小夜子 →「les amies 振袖は最高!」「les amies 恋は最高!」
淳・和実→「Twilight」「続Twilight」
和実については→「萌えいづる日々」「萌えいづるホワイトデー」も参照。
 
新キャラの設定については徐々に明かしていきますので、とりあえず
期待しながらお読みください。

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これは2011年6月下旬頃の物語である。
 
青葉の携帯に千里から着信があった。
「ハロー、ち〜姉」
「ハロー、青葉。今週末、こちらに来る予定とかある?」
「ごめーん。私今週末は岩手に行ってくる」
「ああ、また『例のお仕事』か」
「そうなの。『霊のお仕事』なのよ」
「たいへんね。宿題も忘れないでね」
 
「はーい。途中のバスの中でやります。あ、何かそちらで用事があったんだっけ?」
「ううん、逆、私と桃香も週末は東北なのよ」
「ああ、また炊き出し?」
「そうなのよね。要望が大きくて復活したから。火曜の朝まで不在になるから青葉がこちらに来る予定があったらまずいなと思って連絡したの」
「ありがとう。そちらも頑張ってね」
「うん」
 
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千里と桃香は3月に東日本大震災の被災地で勤めているファミレスの炊き出しのプロジェクトに参加していたのだが、そのプロジェクトは一応3月いっぱいで終了していた。しかし現地のほうから、あれはとても良かったので可能なら復活させられないかという声があり、スタッフの確保できる週末だけ復活したのであった。千里と桃香は今週末それに参加してくるらしい。
 
「さてと・・・」
青葉は千里からの電話を終えると、携帯を防水ポーチの中に戻した。
「何の話してたっけ?」
「いや、だから橋本君と山岸君と、どちらがより逝っちゃってるかという話で」
湯船の中で、美由紀と日香理が補い合うように言った。
「私の感じでは橋本君は突き抜けている感じ、山岸君は逸脱している感じかな」
と青葉は勝手な感想を言う。
「あ、その分析、けっこういい線いってない?」
 
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今日、青葉は新しい学校で仲良しになった同級生2人と近隣の温泉に来ているのであった。ふたりが青葉の身体に『異様に関心を持つ(青葉の見解)』ので「私の裸に興味あるなら温泉にでも行こうか?じっくり観察していいから」などと言ったら「じゃ行こう行こう」と言って、美由紀の親戚の人が経営している温泉旅館に今夜はお泊まりなのである。学校が終わってから送迎の車で迎えに来てもらい、明日の朝も学校の近くまで送ってもらう予定である。平日はお客も少ないので、この時間帯、広い浴室が貸し切り状態であった。
 
日香理も美由紀も脱衣場に来るまでは少しドキドキしていた。体育の着替えの時に青葉の下着姿は見ている。それはどう見ても女の子の身体にしか見えなかったものの、下着を脱いでも女の子に見えるものなのだろうか?と。
 
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でも青葉は平気な顔で服を全部脱いでしまったし、全裸でこちらを見て「どうしたの?」と首をかしげる。その姿は、上半身を見ても下半身を見ても女の子の身体にしか見えない。
 
「早く中に入ろう」という青葉のことばに促されて、ふたりとも服を脱ぎ掛け湯をして、あのあたりをよく洗うと湯船に入り、青葉の近距離観察をしてついでに接触観察をしたのであった。
 
「じゃ、性転換手術してる訳じゃないのね?」
「全部体内に押し込んで接着剤で留めているだけ。一応見た目は女の子の股間でしょ。手術はね、できたら18歳、最低でも15歳になるまではしちゃだめってお母ちゃんやお姉ちゃんたちに言われてる。一応お母ちゃんに連れられて病院行って性同一性障害の診断書2ヶ所からもらったから、海外に行けばいつでも手術はできるけどね」
その2枚目は実は今週もらったばかりである。
 
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「あれって、大きくなったりしないの?」
「もう機能を停止させちゃったてるからね。大きくはならないよ」
「実質去勢状態か・・・・ホルモン的にはもう完全に女性なのね」
「うん。病院で検査されてもそうだった」
 
「だけどこうして間近であらためて見ると、青葉立派な胸だよね」
「日香理の胸もかなり育ったね」と青葉は答える。
「だけど私も日香理も美由紀の胸には負けるけどね」と青葉は続けた。
「いや、青葉の胸、けっこうありそうだし育ってる最中という感じだったから負けてたらどうしようと思ってた」と美由紀。
「でも私達3人、裸も見せ合ったし、胸も触り合ったからもう他人じゃないよね」
と日香理。
「他人じゃないというと・・・・姉妹かな?」
「じゃ三姉妹ということで」
「誰が長女?」
「胸の大きさ順で、美由紀」
 
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3人はお風呂から上がると、浴衣を着て部屋に戻る。夕飯の支度がしてあって3人分の卓に手頃な量の料理が並べられている。
「わあ、こういうの小学校の修学旅行の時以来だ!」などと青葉がはしゃいでいる。「これ、量が手頃でいいね」と日香理。
「そうなのよ。温泉旅館の料理ってしばしば『これでもかこれでもか』というくらいボリュームがあるじゃん。でもそんなの女の子は食べきれないって。それで食事の量を選択できる設定にしたのよね、ここ」
「ああ、いいね、それ」と日香理。
「これは『姫様』の量で、もっと多い『お姉様』『女王様』もあるし、もっと少ない『乙女』もあるよ。私達の食欲なら姫様は行けるかなと思ってこれ頼んだ」
「へー」とこういう世俗のことをほとんど知らない青葉が感心している。
 
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「でもお風呂の中でお姉ちゃんから電話があると分かってたから携帯を浴室まで持ってったのね。凄い霊感」
「うん。ちー姉と桃姉とお母ちゃんの3人からの電話は分かるよ。問題が菊枝なんだよなあ。しばしばこちらに察知されないように掛けてくるから」
「面白い人みたいね、その人」
「常に課題を与えられている感じ。それをクリアしたらまた課題を与えられる」
「先生なんだ」
「先生だし、ライバルだし、ある意味で恋人みたいなものかも」
「青葉って恋愛対象は女の子なの?」
「ううん。男の子が好きだよ。バイのつもりはないけど、でも菊枝は別格かな」
 

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「ねえ、今週末はどこどこ行くんだっけ?」
ケイが尋ねた。
「今週は気仙沼から釜石までヘビーローテーション」
「よし。頑張るか」
「Superfly の新曲、もう入ってる?」
「今練習中。ここの所少し忙しくてさ。3日前にやっと落としたんだもん」
「AKBは大丈夫だよね」
「どの曲リクエストされても大丈夫。マキこそとちるなよ」
「とちったら誤魔化す!」
 

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「じゃ、今度の土日は和実、休めるんだ」
 
淳は立ったまま和実のゴスロリな通勤用の服を脱がせながら言った。今日の和実はビクトリア朝風のクラシックな感じのスリップを着けている。首を少しかしげてこちらを見る視線が色っぽい。元々和実はとても男の子とは思えない雰囲気を持っていたが、最近ますます女らしくなってきた気がしていた。
 
「うん先週も先々週も休みが1日も無かったから、2日続けて休みがもらえた」
といって和実は淳に熱いキスをした。ふたりはぎゅっと抱きしめ合う。
 
「じゃ、一緒に東北に行くかい?丸山君と組んで行って来ようかと思っていたんだけど、まだ声掛ける前だったし」
「うん、行く行く」
そういいながらふたりは布団の中に潜り込んだ。
 
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淳と和実は東日本大震災の被災地に救援物資を届けるボランティアをしていた。最初は2人で個人的に運んだものであったのが、支援する人たちが大勢現れて、資金を寄付してくれる人も増えて、運ぶ人・買い出しをする人あわせて30人ほどの大きな活動になっていた。当初5月頭までの活動予定だったのが夏までに延長され、更には来年の3月までに延長されていた。
 
運送に使うトラックも知り合いのものを借りて使っていたのが、和実の勤めるメイドカフェの常連さんのツテでレンタカー会社がキャンター・ハイブリッドを1台無償でリースしてくれたので、現在はそれを使用している。ハイブリッドなのでガソリンの消費が少なく、その分を物資の購入に回せるので助かっていた。保冷機能まで付いている優れものでこれから来る夏の期間の食料の配送にも助かると和実は喜んでいた。
 
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「で、今週末はどこに行くの?」
和実が淳に訊いたが、淳は少し反応が無かった。ああ、逝っちゃってるなと思ってしばらく待つ。少し落ち着いてきたかなと思ったあたりで再度尋ねた。
 
「あ、ごめんごめん。これまで気仙沼までは何度か行ったけど、今回はその先の陸前高田や大船渡まで行くよ。岩手県に入るのは初めてだね」
「大船渡は買出組の松田さんの出身地だね」
「わあ」
「松田さん自身の家族は無事だったらしいけど、親戚や知り合いで何人も亡くなったりまだ行方不明の人いるみたい」
「あのあたりはひどかったからなあ」
 

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「じゃ、今週末はまた被災地ボランティアなのね」
小夜子はシャワーを浴びてきて室内用の和服に着替えたあきらに、御飯を盛りながら尋ねた。小夜子も和服を着ている。今日の和服はあきらは赤、小夜子は青である。五十鈴は遠方の会合に泊まりがけで行っていて留守である。
 
「うん。今回は岩手県南部の被災地を数ヶ所回る。金曜日の朝の新幹線で現地入りして、向こうではボランティアの人のマイクロバスを使って避難所を回って洗髪・散髪のサービス。火曜日の夜の新幹線で戻るよ。前回はけっこうきつかったけど、今度は2度目だし、道路事情もかなりよくなってそうだから少しは楽かなと思ってるんだけど」
「丸5日間か・・・私も妊娠中じゃなきゃ、一緒に行ってシャンプーくらいお手伝いしたい所だけどなあ」
「サーヤはそのお腹の中の子を守るのがお仕事」
「うん」
ふたりはテーブル越しにキスをした。
 
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「ところで、アッキーさ・・・・向こうでは男性扱いなの?女性扱いなの?」
「うーん、こんな格好なんで、避難所ではだいたい女性美容師と思われている感じがする」
「アッキー見て男と思う人いないよ。トイレはどうしてるの?」
「・・・女子トイレ使ってる」
「いいんじゃない? で。。。。お風呂は?」
「部屋にお風呂が付いてる所に泊まった時はそれ使った」
「大浴場の所は?」
「えっとね・・・」
「こら。正直に白状せい」
 
「・・・・・・夜中にこっそり入った」
「どちらに?」
「1度目は男湯に入ったんだけど、2度目は夜中だから誰もいないだろうと思ったら先客が居て・・・」
「姉ちゃん、こっち違うと言われた?」
「うん。仕方ないから女湯に入った」
「あはは。こないだ聞いた時もそのあたり誤魔化したから、たぶんそんなことだろうとは思ったけどね。まあ捕まらないようにね」
「うん」
 
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