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目次]
パーティーは3時間ほどで終わり、みんな平均15個以上はプティケーキを食べた感じであった。加賀はケーキ40個くらいにチキンも20本くらい食べたなどと言っていた。今日のパーティーのスポンサーになっている化粧品会社からのお土産をもらって会場を出る。
「凄い、これ。化粧水・乳液に口紅4色サンプルとリップブラシのセット」
「受験が終わったらお化粧も練習しなくちゃ」
「忍もお化粧練習するよね?」
「するよー」
「満子もお化粧練習するよね?」
「しないよー! 桜野使うんだったら、これやるよ。こんなの持って帰宅したら、うちの母ちゃんが仰天するし」
などと言って、加賀はお土産の化粧品を忍に渡してくれた。
「でも工学部行くんでしょ? 男子ばかりだろうから、女装したらクラスのアイドルになれるよ」
「嫌だ、そういう展開は嫌だ」
「姫になれるのに」
「そういう腐女子の用語言っても、たぶん満子は分からない」
「満子、姫って分かる?」
「へ? プリンセス?」
「やはり分かってないようだ」
「忍は分かるよね?」
「多分満子は女装しなくても姫になりそうな気がする」
「ああ、そうかも」
「忍は分かっているようだ」
「忍も腐女子だったりして」
「でも今日はみんなお疲れ様ー。冬休みはひたすら勉強だろうけど、みんな頑張ってね」
「蓉子はお正月何するの?」
「ひたすら寝るー」
「いいなあ」
「私、最近睡眠時間は毎日4時間くらい」
「私もそんなもの」
「私、5時間くらい寝てる。4時間では身体がもたない」
「でもセンター試験の1週間くらい前からは早寝早起きにした方がいいよ」
「そうそう。試験に向けて体調を整えたほうがいいんだよね」
「じゃ、みんな今日は帰ったら勉強?」
「そうそう」
「忍と鈴音もしばらく交際は保留かな?」
「うーん。年内は私、鈴音の家に泊まり込むから」
と忍は言う。
「何〜!?」
「エンドレスで練習問題を一緒に解く。多分解いている内に眠っちゃうから結局泊まり込むのと同じ」
「ふたりで一緒だと〜!?」
「何て奴らだ」
「でも受験まではキスまでしかしない約束。ボディタッチNG」
「キスはするのか!?」
「やはりこいつら許せん」
「加賀も一緒に勉強する? 加賀なら受験レベル近いし」
と忍は誘ってみたが
「遠慮しとく。当てられて勉強にならん気がする」
と加賀は呆れたような口調で言った。
加賀は駅の多目的トイレで女装を解いて学生服に戻ったが、忍は女子制服のまま、鈴音の家に行った。御両親に挨拶した上で、鈴音の部屋で一緒に勉強をする。このまま大晦日まで受験体制だが、鈴音の父は忍のことを女子の友人だと思っている。でもこの時期、忍は受験が終わったらきちんと自分の性別のことを自分の父にも鈴音のお父さんに話さなければならないと思っていた。
ふたりは友人たちにも言ったようにしばらくはキスを越えることはしないという約束で、11月末に一度シックスナインをしたのが最後。その後は裸で抱き合ったり、お互いの敏感な所を刺激したりするようなことは(原則としては)していない。厳密にはちょっとだけなら触ることもあるし、着衣で2度抱き合っているが、そこまででお互い気持ちを抑制した。
気持ちが暴走しにくいように、こたつの向かい合わせの位置に座って一緒に勉強していたのだが、夕食の後は鈴音は忍の隣に座った。どうも今日はクリスマス会に行ってきたので少し興奮状態にあるみたいだなというのは感じていたので、とうとう我慢できなくなったなと忍は思った。
ちなみに夕飯前にふたりとも制服を脱いで普段着に着替えている。ふたりともセーターに長めのスカートだ。それで鈴音が身体をくっつけてくる。
「大きくなってたりしない〜?」と鈴音。
「しないよー」と忍。
すると鈴音は
「確かめてみよう」
などと言って、忍のスカートの中に手を入れてくる。
「ちょっとちょっと。ボディタッチNGの約束」
「忍の健康状態を確認するだけよ」
「健康状態??」
「性的な機能の健康状態」
「そんなの確認しなくてもいいと思うけど」
「あれ?小さい・・・・っと思ったら大きくなってきた」
「さすがに触られたら大きくなるよ」
「出しちゃわない?」
「その気になった時は自分でするよ」
「でも私考えてみたら、忍が自分でしてる所を見たことない」
「私がする前に鈴音がやっちゃうじゃん」
と言って忍は苦笑する。鈴音はしばしば自分の手でしてくれたり、あるいは口でしてくれたりする。ふたりはシックスナインまではしたことあるが、まだスマタとかはしたことがないし、(どちらの)Aも使ったことはない。ふたりの間で暗黙に了解している微妙な境界線である。
「やってる所、一度見てみたいなあ」
「やめとくよ」
「どうして?」
「この格好の時は私も女友だち同士のつもりだから」
「こんーなに密着しても?」
と言って鈴音は身体をほんとに密着させてくる。鈴音の身体から甘い匂いがして忍の嗅覚を刺激する。
「だから受験が終わってから、たっぷりやろうよ」
「もう・・・・」
それで9時頃になって、お母さんがドアの隙間から
「あなたたち、お風呂には入らない?」
と声を掛けてくれた。
Hなことをしていない限り、ドアは少し開けておく、というのがお母さんとの間の了解事項なので、ドアが開いている限り、お母さんは気軽に声を掛けてくれるし、おやつやお茶などを持って来てくれたりもする。
「ああ。じゃ忍から先に入るといいよ」
と鈴音が言うので、忍は先にお風呂をもらった。
一応Hなことはしない約束だけど勢いでしてしまう可能性はあるのでちゃんと丁寧にあの付近を洗う。また結構汗を掻いていたので頭も洗い、しばらくゆっくりと湯船に浸かって手足を揉みほぐす。それから上がり際に冷水を身体に掛ける。
冷たい!!!
でもこれをやらないとこの後眠ってしまって勉強にならない。(実際、鈴音はたいていお風呂の後、眠ってしまう)
身体を拭き、今夜は新品のショーツとブラジャーをつけ、その上にお気に入りのキャミソールを着て、トレーナーとスカートを穿き、セーターを着て部屋に戻った。着替えた服は脱衣場の洗濯籠に入れておくと、鈴音が洗ってくれることになっている。
鈴音とタッチして、鈴音がお風呂に入っている間、忍は勉強を続ける。
すると10時頃、携帯に着信がある。加賀だった。
「夜分ごめん。でも起きてると思ったし」
「加賀も今日はお疲れ様ー。でも女装楽しかったでしょ?」
「桜野が女装にハマってしまった訳が分かるような気がした」
「何なら女物の服を買うのに付き合ってあげようか?」
「いい。自分が怖い」
「あはは」
「それでさ」
「うん」
「お前さ、まだ畑中とやってないんだろ?」
「まだしてない」
「でも将来、結婚するつもりなんだろ?」
結婚という言葉をダイレクトに聞いて、忍はドキっとした。確かに彼女のことが好きだし、大学に入ったら一緒に暮らす約束もしている。でも、具体的に《結婚》という概念までは考えたことは無かった。
「うん」
たっぷり5秒くらい考えてから忍は答えた。
「プロポーズしちゃえよ。その方が試験前にお互いの気持ちも安定するぞ」
と加賀は言った。
プロポーズ!
忍と鈴音はお互いに好きだというのは今年のバレンタインに告白した。そして10ヶ月間、恋人として付き合ってきた。でもまだ《結婚》という言葉は口にしたことない。
でも忍は答えた。
「うん。考えてみる。ありがとう」
「あ、それと今夜、ちゃんと避妊しろよ」
「えっと・・・・」
「持ってるよな?」
「うん。それはいつも持ってる。万一そういうことになった時のために」
「今夜はクリスマスイブだぞ」
「うん」
忍は笑って答えた。
「じゃ、またな。頑張れよ」
「うん。加賀もね」
「俺、恋人いねーよ」
「違うよ。勉強だよ」
「そうだな。お互い頑張ろう」
「うん」
忍は加賀との電話を切ってからしばらく笑みが消えなかった。
やがて鈴音があがってきた。忍がミルクココアを入れておいたので、それを飲んでから、また勉強を再開する。でも、ほどなく鈴音は眠ってしまった。
忍は鈴音に毛布を掛けてあげた。この鈴音の寝顔を見られるのも自分にとっては幸せだよな、と忍は思う。この寝顔をずっと見ていられたらいいなとも思う。
鈴音は1時間半ほど寝ていた。
「あれ〜。私寝てた〜」
などと言って目を覚ます。
「お早う。今日は疲れたもんね」
と忍は言う。
「そうだね。何時だっけ? 23:50か」
「コーヒー入れてくるよ。ちょっと待ってて」
忍はコーヒーサーバーを持つと部屋を出て台所に行き、お湯を沸かしてインスタントコーヒーを入れた。勝手知ったる家の中である。
ふたりで一緒にコーヒーを飲んでいる内に0時を告げる時計の音楽が流れる。
「メリークリスマス!」
「メリークリスマス!」
とふたりで言い合い、キスをした。
「2時くらいまで頑張ろうか」
「そうだね」
「まあ途中で眠っちゃってもいいけどね」
「暖房は入っているから風邪引くこともないだろうし」
「それでね」
と忍は話を切り出した。
「ん?」
「こんな時に言うのも何だけど」
「なあに?」
「今すぐは無理だろうけど、大学卒業して就職して、少し収入が安定してからになるかも知れないけど」
鈴音はじっと忍を見ている。
「結婚して欲しい」
と忍は言った。
鈴音は相好を崩した。
「いいよ」
と鈴音は答えた。
それで忍もドッと肩の荷がおりた気がして笑顔になった。
そしてふたりは再度キスをした。
「でもさ」
と鈴音は言った。
「ん?」
「就職してからって、忍は、男性社員として就職するの?女性社員として就職するの?」
「んーーー」
と忍は悩んでしまった。
「女性社員として就職でもいいよ。それから結婚式はふたりともウェディングドレスでもいいよ」
と鈴音は言うが
「それ、唆さないでよー」
と忍は言った。
「それから、結婚前に性転換してしまっていてもいいよ」
「それ、自分が怖い!」
2時過ぎまで勉強してから、寝ようということになる。
いつものように布団を2つ敷く。(最初からHなことをするつもりの時は1つしか敷かないが、ふつうにお泊まりする時は2つ敷くのが、ふたりの了解事項である)。布団は30cmくらい離すのもふたりのルールである。
ふたりとも可愛いパジャマに着替える。鈴音は大きなひまわり柄のパジャマ、忍はキティちゃんのパジャマ(鈴音が選んだ)である。
「おやすみー」
と言って電気を消して布団の中に入る。
でも忍は眠られなかった。
鈴音が「忍、寝ちゃった?」と声を掛けてきた。
「ううん。今夜はなんだか眠れない感じで」
「私もなの」
「でも、そろそろ寝なくちゃ。また明日も1日中勉強だし」
「ね。私たち結婚の約束したから、もうフィアンセだよ」
「うん」
「フィアンセっぽいことしてから寝ない?」
「そうだね。そうしようか?でもいいの?」
「もちろん。いつでもあげると言ってたのに、忍がもらってくれないんだもん」
それで忍は鈴音の机の2番目の引き出しから、避妊具を取り出し1枚開封した。
「それ、どのタイミングでつけるの?」
「もう付けられる」
と言って鈴音は自分のパジャマとショーツを少し下げる。
「あ、もう大きくなってる」
「ふふふ」
実は付ける練習をしたことがあるので、忍はスムーズに装着することができた。
「じゃ、しちゃうよ」
「うん」
「メリークリスマス!」
「メリークリスマス!」
とふたりで言い合い、キスをした。そしてしっかりと抱き合った。鈴音が忍のブラを外してしまう。鈴音は自分のブラは忍に外させた上で乳首を舐めることを要求した。鈴音も忍の乳首を舐めてくれた。
クリスマスの夜は静かに、そして熱くふけて行く。
「でも忍がおちんちん取っちゃうまでに、私たち何回くらいするのかなあ」
などと鈴音が言う。
「私、おちんちん取っちゃうんだっけ・・・」
「取りたいんでしょ?」
「うーん・・・・」
忍は悩んでしまったが、今はそのことも忘れて、ただ鈴音との熱い時間に没頭して行った。
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■クリスマス・パーティー(4)