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■萌えいづるお正月(2)

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10月の文化祭で、和実たちのクラスと隣のクラスの女子有志でメイド喫茶の模擬店をすることになった。和実は「監修してよ」と言われて、いろいろアドバイスしていたが、オムレツがうまく作れる子が参加メンバーの中に2人しかいないということで、結局、和実も調理場に入って料理担当をすることになった。
 
ふだんの男子制服のまま調理場に入るつもりだったのだが
「だって女子の有志でやるお店だもん。学生服は無いよね〜」
「じゃ、女子制服を着ようかな」
「いやいや、ここはやはりメイド服だよ〜」
「!」
「調理だけで、お店には出なくていいから」
 
ということで、和実はメイド服を身につけることになってしまったのであった。メイド服はイベント企画会社から安価にレンタルしたが、ウェストが64cmと61cmの2パターンで、そのサイズでややきつい子はウェストニッパー付けて頑張るか、などと言っていた。
 
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「和実はウェストいくつだっけ?」
「今お店で着ているメイド服は61cm。実はウェスト62くらいあるんだけどね。気合いで着ちゃう」
「細いね。体重は?」
「42kgだよ」
「羨ましい」
 
「あれ、でも和実、春頃一時期けっこう太ってなかった?」
「ああ、ちょっと体調崩して。一時期70kgまで増えちゃったけど、夏休み前には48kgまで落としたよ」
「凄いダイエット」
「身体壊すよ、そんな急激に落としたら」
「うん。その件では姉ちゃんに殴られた」
「殴られて叱られるほどシビアなダイエットしたのか」
 
「だけど和実の身長があれば70kgでも、そんな太った感じにはならないよね」
「BMIが25になるんだよね。一応標準体重の範囲。BMI26になったら肥満。一応67cmのメイド服を着ることができてたからね」
「70kgの体重で67cmが入るんだ!」
「そのあたりは気合いで」
 
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当日、模擬店のメイド喫茶は繁盛して、和実はメイド服を着て会場の教室に設置したカセットコンロで、じゃんじゃんオムレツやハンバーグを焼いていた。お昼くらいの時間帯にはかなり混雑したが、14時をすぎると閑散として来たので、スタッフも1人2人と「ちょっと他を見てくる〜」といって出て行く。とうとう和実と梓と、隣のクラスの亜美の3人になってしまった。
 
お客もなかなか来ず、暇なので3人でおしゃべりをしていた。その時和実が「あれ?」
と言った。
「どうしたの?」と梓。
「今、BGMで流れている曲」
「ああ、歌うまいよね。この子たち私たちと同じ高校2年生らしいよ」と亜美。
「何ていう名前?」
「《ローズ・プラス・リリー》というユニットで、この曲は『その時』という曲だよ。曲を提供したのは上島雷太」
「へー。また上島ファミリーが増えたのかな」
「あ、そういう訳じゃないらしい。単に楽曲提供しただけでプロデュースには関わってないって。でもこのメインボーカルのケイちゃんって凄く歌唱力あるよね。きれいな声してるし」
 
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「うん。歌うまいし、男の子でここまできれいな高音出せるって凄いね。アルト音域まで出せる人は時々いるけど、ソプラノ音域まで出せる人はレアだよ」
 
「へ?何言ってるの。ケイちゃん、女の子だよ。一緒に歌ってるマリちゃんも」
「え?そうなの?」
 
「このケイちゃんの声をどう聞いたら男の子の声に聞こえるのさ」
「うーん。そう言われると、そうかも知れないけど、この声、やはり男の子の声に聞こえるけどなあ」
「和実、耳を掃除した方がいいよ」と梓。
「まあ、和実の声もどう聞いたって男の子の声には聞こえないけどね」
 

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そんな話をしていた時、立て続けに来客があった。最初の客に亜美が応対し、その次の客に梓が対応していた時、更に来客がある。和実は本来は料理専任で接客はしない予定だったのだか人がいないので仕方ない。出て行って挨拶する。
 
「お帰りなさいませ」と言ったが続けて「悠子!」と笑顔で叫ぶ。
「なんだ、あんただったのか!」
と向こうも笑っている。来客してきたのは、和実が勤めるメイド喫茶のチーフ・メイド、悠子だった。
 
「お帰りなさいませ、お嬢様、どうぞこちらのお席へ」
と言って席に案内する。
 
「何かさ、高校の文化祭の模擬店でメイド喫茶やってて、メイドの対応が凄くよく出来ていた上に、美味しいオムレツだったというから偵察に来たんだけど、まさかプロがやってたとはね」
「まあ、余興だから」
と和実は笑って答えた。
 
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注文を取って調理場の方へ戻って行ったら、また来客である。そろそろ誰か戻ってきて欲しいなと思う。
「お帰りなさいませ、ご主人様・・・って、先生!どうぞ、どうぞ」
と席に案内する。
 
今度の来客は和実たち2年3組の担任の小比類巻先生だった。
「繁盛してる?」
「お昼時は凄く忙しかったです。今一息付いたところです」
「君は・・・・4組の子だったっけ?」
「あ、私、工藤ですよ」
「え・・・・え〜!?」
「お食事は何になさいますか?」
「あ、えっと。カフェオレとオムレツ」
「ありがとうございます」と言ってメモする。
 
「信じられない。君、そんな衣装が似合うんだね。声も女の子の声だし」
「声は私、これが普通の声です。授業中の声が実は作ってる声です」
「え?そうだったんだ」
 
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そんなやりとりをしていたら梓が寄ってきて、和実の肩を抱いて言う。
「先生、和実はほんとは女の子なんですよ。授業中は男装してるんです」
「え?そうなの?」
「そのくらいにしとこうよ、梓。先生信じちゃうよ」と和実は笑って言う。
「え?でも本当のことなのに。和実、最近、ふだんも結構女子制服で校内を歩いてるよね」
「あはは、女子制服のまま授業も受けちゃおうかな」
 
先生はこのやりとりを冗談として受け取ったようであった。
 
おかげで和実はその後けっこう先生の見ている所でも女子制服を着て、放課後に校内を歩いたりしていたが、先生は笑っているだけで、特に何も言われなかった。
 

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その年のクリスマスイブは水曜日という最悪の巡り合わせであった。前日火曜日が、天皇誕生日で休日なので、この日にクリスマス会をしたり、クリスマスデートするカップルなども多かったようである。和実たちの学校の終業式は24日に行われた。クリスマスの時期はメイド喫茶は稼ぎ時なので、20日から25日までは大忙しであった。26日の金曜日が臨時休業になったので、デートの予定の無いスタッフで集まって、少し遅めのクリスマス会をした。
 
20歳以上の子がお酒を安心して飲めるように、というので悠子のアパートに集まった。和実はお店のオーブンを借りてケーキを作り持って行った。揚げ物の得意な和奏と聡子が前日に材料を買って仕込んでおき、みんなが集まる30分前に悠子のアパートに行き、フライドチキンを揚げた。悠子もローストビーフを作った。お酒は自称酒豪という利夏が、ワイン好きの恵里香と2人で買い出しに行ってきた。菜々美と紀香は食器を並べたり料理を運んだりしていた。
 
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悠子がシャンパン、和実がシャンメリーを「ポン!」という音と共に開けて、みんなのグラスにそそぎ、「メリークリスマス!」といって乾杯する。20歳以上でお酒が飲める子がシャンパン、車で来た子、20歳未満の子、元々飲まない子はシャンメリーである。
 
「でもこのお店も1年半弱。よく続いたなあ。私、すぐ潰れるんじゃないかと思ってたんだけどね」と悠子。
「最初からいるの、私と悠子だけになっちゃったよね」と和実。
「結局、ふつうの喫茶店としてしっかりやってるのが良かったんじゃないの?ショコラって、メイドは半ばおまけみたいなもんだもん」
と和実の次に古株の和奏。
「演出だよね。ビクトリア朝風のインテリアにホワイトブリム付けたメイドって」
と悠子。
「一般的なメイド喫茶には内装が適当で学校の教室にあるようなテーブル並べただけなんてとこもあるからね。ここは凝ってるもん。内装に凄いお金掛けてるし調理器具もビストロ並みだし」
 
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「店長のお友達が東京でやってるエヴォンって店もそういう感じだったのよ。喫茶店として本格的なんだ。今はシアトル系カフェ全盛だからね。逆に本格的なコーヒーの味を求める人がこういう所に来てくれるんだろうね」
 
「悠子、そこに以前勤めてたんだよね」
「うん。とっても短期間だったけどね」
「開店当初はオムレツきれいに焼けるの悠子だけだったもん」
「すぐに和実が戦力になってくれたから助かった。私もエヴォンで鍛えられたからなあ。オムレツもコーヒーも紅茶も」
「私たちも鍛えられたね」と恵里香。
「ちゃらちゃらした子はすぐ辞めちゃうもんね。たまに風俗と間違えたような客も来るけど、スタッフ応募の方もたまにそういう子が来るね」
 
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「それでさ・・・私3月くらいで辞める予定」と悠子。
「えー!?」
「実家の旅館が厳しくてね。母ちゃんが体調悪いみたいだし。私が若女将になって、実質経営しないとやばいかな、という雰囲気になってきてるのよね」
「ほんと、そちらも大変そうだよね」
「うちの父ちゃんも母ちゃんも経営センスが無さすぎるんだもん。ここ1年くらいは企画とか全部私が立てて、旅行代理店なんかへの売り込みも私が実質的にやってたんだけどね。どんどん私がやることが増えて行って」
「わあ」
 
「それで、私が辞めたら、次のチーフは和実、お願いね」
「えー?」
と和実は叫んだが、他の子たちはパチパチと拍手をしている。
「店長にはそのあたりもう言ってるから」
「でも私まだ高校生なのに」
「年齢とか関係無いよね。料理もいちばんうまいもん」と和奏。
 
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「でも悠子が田舎に帰っちゃって、ここが無くなると不便だなあ。私ここにかなり着替えを置いてるし」と恵里香。
「恵里香にしても和実や聡子にしても、ここにかなり服を置いているよね。和実はここがないと女の子と男の子をチェンジする着替え場所に困るだろうし、利夏は完璧にここを宿泊所にしてるしね」と笑いながら悠子。
「だって、酔いつぶれた時、自宅まで帰るとタクシー代5000円かかるもん」
と利夏。
 
「ね、悠子、その場合、私がここ引き継げない?借りてる名義は悠子のままにしておいて、家賃は私が払うの」と和実。
「ああ、それは構わないよ。そうしようか」
 
そういうわけで、このアパートは翌年は和実、その翌年以降は利夏が家賃を払って実質、ショコラの女子寮?のような存在として続いていくのであった。悠子本人も震災後に東京に出てくるまでは、旅館の仕事で盛岡に出て来た時、泊まる場所として活用していた。
 
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ショコラは年末は12月31日のランチタイムで営業終了となり、簡単な打ち上げをして解散。その場で、悠子が3月まででこの店を辞め、その後のチーフは和実が引き継ぐことも発表された。実際には悠子は年明けからは出勤率が低くなり年明けから和実が実質的にチーフのような働きをしていた。
 
ただ和実も新しい年は大学受験の年にもなるので、稼働できるのは夏くらいが限界だと思いますということは、店長や他のみんなにも言っておいた。和実は東京の某大学を志望校にしていたので、東京に行ったら、ショコラの店長・神田の友人である永井が経営しているエヴォンという店に行かないかというのも言われていた。永井は何度かショコラに来たことがあったので、和実もあれこれ話して感じのいい人だなと思っていたし、向こうも和実には(性別は承知の上で)好印象を持っているようだということを神田から聞いていた。
 
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年末は仙台から姉の胡桃も帰ってきていたので、家族4人でのんびりとした年末を過ごした。ただし姉は美容師の国家試験を控えているので、問題集を必死にやっていたし「冬休み中ならいいよね」と言って、和実を練習台にしてパーマを掛けたりもした。
 
年明けには、和実は「着付けの練習」などと言われて振袖を着せられた。
「美容師の国家試験に着付けの科目もあったんだっけ?」
「ううん。カットとパーマだけ。着付けには国家試験は無いのよねー。作るという話はあるけど。そうだ。私も別の振袖着るから、一緒に初詣に行こうよ」
「僕はいいけど」
と笑って、母の方を見る。
 
「あら、可愛くなるもんだなと思って見てた。せっかくだから行ってらっしゃいよ。振袖なんて着る経験はなかなかできないだろうしね」
などと母も笑って言っていた。
 
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