広告:國崎出雲の事情 3 (少年サンデーコミックス)
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■ドキドキ新入社員(2)

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それで淳平は、面接も受けないまま、システムの復旧作業に投入されてしまったのである。淳平に指示を出したのは専務さんで、熊田さんという人だった。社長の猿田さんという人と2人で作った会社なので、BearとMonkeyでBMシステムらしい。猿田社長にも後で会ったがどちらも30歳前後で若い会社のようである。主として猿田社長が経営面、熊田専務が実務面を担当しているが、ふたりは同等の権限を持っていると聞いた。
 
淳平はパンチ速度も速く、しかも正確に入力することができたし、内容を理解できるので、疑問を感じた所はリーダー格っぽい24-25歳くらいの佐伯さんという女性に尋ねて確認して入力した。それで結果的に元のプログラムにあったバグまで直しながら入力することになった。
 
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結局その日も、翌日の土曜日、その次の日曜日も短い仮眠をしながらみんな作業を続ける。食事もその猿田社長がたくさんお弁当やパン、カップ麺などを買ってきてくれて食べつつ作業する。
 
そして日曜日の夜遅く、何とか全ての入力が終わり、システムのテストを始める。こういう状態で入力しただけに、みんな気合いが入っていたせいか、間違いは意外に少ない。
 
月曜日の朝1番にメーカーの人が来て、ホストマシンからハードディスクを取り出し、持ち出した。工場に持っていき、データのサルベージをしてもらうことにする。
 
社内では、午前10時頃になって、これで完成だろうという所まで到達したが、念のためシステムのセットアップを夕方に延期させてもらい、その日はずっとコンピュータによる自動テストを掛けた。
 
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膨大な量のテストデータが自動生成され、それがシステムに掛けられる。結果を自動で照合する。
 
しかし修正を要するような問題には全く当たらなかった。
 
幾つか「好みの問題」あるいは「宗教的問題」ともいえるものがあり、それを専務と佐伯さんが話し合って、方針を決め、多少の修正をする。そして夕方までには充分リリースしてよい状態になったので、佐伯さんがシステムを持って客先に向かうことにする。
 

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「みんなお疲れ様。青木君と高山君、平原君の3人は何かあった時のために待機してくれる?他の人はこれで解散」
と専務は疲れ切った中にも満足げな表情で言った。
 
淳平はおそるおそる訊いた。
 
「あのぉ、私の面接は?」
 
「あ、そうだったね!」
と言ってから、佐伯さんに訊く。
 
「この子、どう思う?」
「凄い戦力になりました。頼もしかったです」
と佐伯さんが言う。
 
「では、月山君は採用ということで」
「はい、ありがとうございます!」
 
「じゃ明日から勤務でいいかな?」
「はい!ただ、3月19日が卒業式なので、その日だけは休ませて下さい」
「3月19日・金曜日ね。OKOK」
 
それで淳平はこの会社に入ることになったのであった。
 
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淳平は通勤の服装についても尋ねたが、仕事中は制服(青系統の、ファスナー式上衣とズボン)を着るので、通勤はどんな服でもいいと言われた。
 
「みんな、好きな格好で通勤してきてるよ。スカートなんて穿いてくる子は少ないし。営業部隊はさすがに男女ともスーツだけどね。中津係長とか佐伯主任とかは客先を訪問すること多いから、訪問の時だけスーツを着るけど、社内ではやはり制服だもんね」
 
と竹田さんという女性が言う。彼女は
 
「月山さんの制服も渡すね。ちょっとおいで」
と言って、淳平を更衣室のような所に連れ込む。
 
「このロッカーが空いてるから、月山さん用にするよ。後で名札を貼っておくから」
「ありがとうございます」
 
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「ここにタイムカードもあるから出退勤の時に押してね。月山さんのカードも明日までには作っておくから」
「よろしくお願いします」
 
「あんた割と背が高いよね。Lかなあ」
などと言いながらロッカーの上に乗っている段ボール箱をおろす。
 
「これ、ちょっと着てみて」
と言って、制服の上下を渡される。
 
ところが彼女は「着てみて」と言ったまま、こちらを見てる。
 
ちょっと・・・女性が見ている前で着換えるのは・・・
 
と思って、淳平がためらっていると
 
「あ、見られるの恥ずかしい?じゃ後ろ向くね」
と言って、後ろを向いてくれた。
 
それで淳平は着ているポロシャツとズボンを脱ぎ、制服の上衣とズボンを穿いた。
 
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「問題無いみたいです」
と淳平が言うと、竹田さんはこちらを振り返り、淳平のウェストやお尻!?に触って
 
「うん。問題ないみたいね。じゃ、その制服使って」
と言った。
 
淳平はいきなり女性からお尻に触られたのでドキッとしたものの、
 
「ありがとうございます」
と言った。
 
脱ぐ時も彼女は向こうを見ていてくれたので、それで元の服に着替えた。
 

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淳平は社会人になったら、スーツとか買わないといけないかなあとは思ったものの、通勤は普段着でいいよと言われていたのでだったらそれでもいいかと思い、結局ポロシャツとジーンズ(さすがに穴の空いたのは避けた)で翌日会社に行った。そして昨日入った更衣室に入ると、自分の名前のロッカーがあったので、私物のバッグはそこに置き、制服に着替えて私服もそのロッカーに入れた。
 
その日は早めに出社したので、来ていたのは女性3人だけだった。
 
「おはようございます」
 
「おはよう。今日から入る子だっけ?」
「はい」
「じゃ、お茶を入れるの手伝って」
「はい」
 
それで給湯室に行き、ヤカンでお湯を沸かす。その間に茶碗を用意する。
「これどれが誰のとかあるんですか?」
と淳平は尋ねた。
 
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「無い無い。どれが誰に行ってもいい」
「だったら良かった」
「これだけ様々な種類の湯飲みがあって、使用者が決まっていても覚えきれないよね」
と光岡さんという18-19歳に見える女性が言っている。
 
(でも実は21歳だった!)
 
「いや、私が前勤めていた会社はそれだったのよ。覚えるの大変だった。間違うと『こんなのも覚えられないのか?』って叱られるしさ」
「だったら名前書いておいてほしいね」
「全く全く」
 

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それで淳平を含む社員5人で手分けしてお茶を配った。淳平以外の4人は女性である。この会社では早く来た人がお茶配りをしていると言っていた。ローテーションを決めてもいいのだが、しばしば徹夜作業が入り、ダウンしている子がいるので、元気な人がやるというルールにしているらしい。
 
「結果的には特定の人が毎日やる感じもあるんだけどね」
と光岡さんが言うが
「私、お茶入れるの好きだから問題無い」
と中川さんは言っていた。彼女は事務の人なので、遅くまで残業することはめったにないという。それでもこの週末の作業にはフル動員されていた。
 
その中川さんからは「通勤手当を計算するから」と言われて、住所と通勤経路を書いて提出した。
 
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やがて9時になり朝礼が行われる。専務が
「今日から入ることになった、つきやまじゅんこさん」
と紹介された。じゅんこ??なぜ淳平の字をそう読む?とは思ったものの、あまり細かいことにこだわる性格でもないので、気にしないことにした。
 
朝礼が終わった後、専務から呼ばれる。
 
「君、Javaもできる?」
「はい。JavaとAWT, Swing 勉強しました」
 
「だったら、マイヤー社のプロジェクトに入ってもらおうかな。立石君!」
 
専務に呼ばれて27-28歳くらいの感じの男性がやってくる。
 
「この子、そちらのプロジェクトで使ってくれない?」
「いいですよ。こちらは今詳細設計が進行中なので、わりと易しいプログラムも発生するから、まずはそのあたりからやってもらいましょう」
 
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「うん、よろしく」
「よろしくお願いします」
 
それで淳平は取り敢えずその立石さんが担当しているマイヤー社というアパレル関係の会社のシステムの開発プロジェクトに参加することになった。
 

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淳平は最初に渡された報告書を作成するプログラムは半日で完成させ、立石さんが
 
「ごめん。次のプログラムは少し待って。マシンとか言語とかのマニュアルとかを読んでてくれる?」
と言って慌てているようであった。
 
その後、少し難しいデータ更新のプログラムを渡されるがこれも1日で書き上げる。
 
「君、かなりプログラム能力あるね」
と言われて、どんどん難しいプログラムを渡されていった。
 
「これだけプログラム書けるなら、君仕様書も書ける?」
と言われ、プログラムの内容を説明した上で、他の人に渡す仕様書を書くよう言われた。ところが
 
「読めん」
と言われる。
 
「すみません。私、悪筆で」
「それが君の欠点か!」
「すみませーん」
 
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「いや、いいよ。だったら君は仕様書はワープロで書いて。Kingsoft Writer使える?」
「はい、自分のパソコンにも入れています。英語のフリー版ですが」
「うん。実はうちもその英語のフリー版を使っている」
 
ということで、淳平は仕様書はワープロで書いてプログラマーに渡すようにしたものの、タイプが速いので、けっこう高速に仕様書を書き上げることができ、
「君は仕様書を書くのに貴重な戦力になるな」
などと言われた。
 

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BMシステムは社長と専務が
「安い所を探した」
と言うだけあって、足立区内でもかなり不便な場所にある。淳平も初期の頃はいちばん近い駅から歩いていたのだが、実は駅から歩いて30分掛かる!それで車やバイクで通勤している人も多いようだ。
 
200平米の土地に2階建てのオフィスが建てられているが、駐車場もたっぷりあるので、結構車での通勤を推奨しているようである。実は車で通ってきていると、緊急事態が発生した場合に、顧客の所に急行するのにも便利というのもあるようである。
 
自社ビル(「ビル」と呼ぶのは若干の抵抗がある)なので、色々気楽な面もあるが、メンテなども自分たちでしなければならないのは大変っぽい。社長がしばしば作業服を着て、ケーブル類の張り直しをしたり、外壁のペンキ塗りなどをしているのを目にすることになる。室内の掃除も、もっぱら社長がしていた!
 
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給湯室はかなり広く、シンクやIHも本格的で、マナ板・鍋なども多数置いてあるがこれは徹夜作業になった時に夜食を作るためだと言っていた。実際冷蔵庫の中にある食材は、夜勤の時は自由に使ってよいと言われた。
 
トイレは「男女分けると結果的に個室が不足する」という理由で男女共用になっている。小便器が4つと個室が6つあるが、淳平は基本的に個室を使っていた。
 
それは。。。支給されている制服のズボンに前開きが無いからである。
 
正確には一見あるように見えるが、ただの飾りであって開いていない。
 
前開きが無いズボンでも上端を下げれば小便器を使って立っておしっこすることはできる。実際、専務や立石さんなどは小便器を使っているようである。
 
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しかし淳平は元々女性志向があるので座ってする方が好きだ。それで前開きが無いんだから仕方ないよね〜、などと半分言い訳のように自分に言いながら、個室を使用していた。
 
もっとも女性社員の中には「トイレは男女分けて欲しい」という意見が多いようではあった。
 

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