広告:ここはグリーン・ウッド (第4巻) (白泉社文庫)
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■続・赤と青(3)

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「男の子とセックスするより女の子とセックスする方が気持ちいいんだね」
などとエミリーは言った。
 
「・・・小4の時に、ヘルム君としてたよね」
「うん。彼も未体験だったから、お互いの好奇心を満足させるだけって合意できちんと避妊して、やった」
 
「私、あの時、かなり嫉妬した」
「そういう視線感じた」
「でも当時私は男の子としてはエミとセックスできなかったろうね」
「そんな気もしたから、ふつうの男の子を誘った」
 
「小6の時にマイク君ともしたよね?」
「あー、あれもバレてたか!あれは勢い」
「私はエミのことは何でも分かるもん。でもエミが私のことも愛してくれてる確信があったから、あの時は嫉妬しなかった」
「嫉妬って愛の喪失の不安だからね」
 
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「私まだ男の子との経験が無いや。元赤クラスの子の半分くらいはもう経験してるみたいだけど」
「彼女のいない男の子誘えば高確率でできるよ。セックスだけなら」
 
「うーん・・・でも女の子同士のほうが気持ちいいんだったら、もし彼氏ができてからも、私、エミとしたくなっちゃうかも」
「お互い彼氏がいても、お互い結婚してても、私たちはしていい気がする。わがままかなあ・・・」
 
「結婚か・・・・私とエミの愛って、結婚にもつながる愛?」
「私もそれはよく分からない。男女の恋愛と似たようなものなのか別物なのか。でも、もし28歳までにお互い結婚してなくて、決まった彼氏もできてなかったら、同性婚しない?」
「28歳か・・・分かった。約束」
私たちは指切りをした。
 
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「でもほんとにきれいに女の子の身体になったんだね、フェリー」
といって、エミリーはあらためて私のバストやお股に触った。
「うん。エミと同じ形だ」
といって、私もエミリーの身体に触る。
 
「私もう自分の身体におちんちんが付いていた頃のこと忘れかけてる」
「フェリーはきっと小学1年のころから、おちんちんは無かったんだよ」
「うん。そんな気までしちゃう」
「女の子として暮らしてたら、実際使わないでしょ?」
 
「うん。立っておしっこしたのって、小2で赤クラスに入れられる前日が最後。男子クラスに入れられてた時も、おしっこは座ってしていた。おちんちんでオナニーしたこともないのよね」
 
「女の子になってからクリちゃんでオナニーした?」
「時々してる」
「ふふふ」
 
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「最初2年生で初めて赤クラスに行く時、お父さんから訊かれたの。お前、ちんちん取るつもりかって。あの頃は単純に女の子の服着てみたいなってだけだったけど、そうか、女の子になるってことは、おちんちん取るってことなのか、ってあらためて自覚した」
「女の子にはおちんちん無いからね」
 
「私、おちんちん無くなるってどういうことかなって思って、自分でおちんちんを股にはさんで隠してみたりとかしてたし。男子クラスに戻されちゃった時とか、もう男の子でいるのが嫌で嫌で、自分で切り落としちゃおうかとも思ってカミソリを根本に当てて切ろうとしたこともある」
「切っちゃえばよかったのに」
「その勇気が無かったんだもん」
 

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私はその時のことを思い起こしていた。
 
もう我慢できない気分だった。学校の帰りにお小遣いでカミソリを買ってきた。両親はまだ帰宅していなかった。
 
血が床を汚さないように、下にビニールシートを敷いた。台所からまな板を持ってきて、汚れないようにビニール袋で包んだ。
 
足を開いて、おちんちんをまな板の上に置く。そして上からカミソリを当てた。このカミソリを動かせば、おちんちんとサヨナラできる。
 
刃を当てて押さえてみたけど、動かす勇気が無い。おちんちんが見えてたら勇気が出ないかもと思い、おちんちんをボール紙で包んでみた。するとカミソリを動かすことができた。ボール紙が切れていく。でも刃がおちんちんの所に到達して軽い痛みを感じた所で、私はカミソリを動かすのをやめてしまった。
 
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私はため息を付くと冷蔵庫からフランクフルトソーセージを出して来た。おちんちんを股にはさんで隠し、代りにフランクフルト・ソーセージの端をお股に挟んで立てた。ほんとにこれおちんちんみたい。根本付近にカミソリを当てる。カミソリを動かす。フランクフルトがどんどん切れていく。
 
やがてカミソリの刃がまな板に当たり、「おちんちん」は切れて、身体から分離した。ほら簡単じゃん。おちんちん切れちゃった。切り離された「おちんちん」を撫でてあげる。ごめんね。私、あなたが身体に付いてること我慢できなかったの。
 
そんな気持ちになった所で、ソーセージを片付け、股にはさんでいたおちんちんを取り出してまな板に乗せる。フランクフルトより少し柔らかいし小さい。きっともっと簡単に切れちゃうよ。カミソリの刃を当てる。ドキドキする。さっきと同じ要領で行こう。
 
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でも切れなかった。ちょっと痛いだろうけど、それを我慢すれば済んじゃうのに。
 
こんなものが身体に付いているおかげで、どれだけ悩んだんだろう。どれだけ苦しい思いをしたんだろう。もう嫌だ。ボクはもう女の子になりたい。
 
思い切ってカミソリを動かそうとして・・・・やはりできなかった。
 

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「当時全国で毎年20〜30人は自分でおちんちん切り落としちゃう子いたらしいね。やはり赤クラスから男子クラスに戻されちゃった子が多かったって噂。完全に切り落としたのが発見されたら、すぐ病院に運ばれて、たいていの場合、そのまま性転換手術してあげてたらしい」とエミリー。
「発見されなかったら怖いね」
「報道規制されてたけど、死んじゃう子も何人かはいたらしいよ」
 
「手当てしなかったら死ぬだろうね。ヴィクトリアは小学2年生の時、半分くらいまで切っちゃったんだよ。血がどんどん噴き出してくるし凄まじい痛みにひるんで、その先まで切るのをためらっていた所にちょうどお兄さんが入ってきて見つかって。すぐ病院に運ばれたけど、まだ2年生だったし、完全には切り落としてなかったから、つながると判断されてそのまま縫合されてしまった」と私。
「あ、ちょっと可哀想」
 
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「もう少しだけ勇気があったらなあ、なんて言ってた。そこまで切ったので、さすがにもう立たなくなったから、次回の検査で不合格になって、赤クラスに入ることができたんだけどね」
 
「でも、おちんちんって、どの辺から生えてたの?このあたり?」
「それが私もよく覚えてないんだよねー。自分でも極力触ってなかったし」
 
「なるほど。じゃ、おちんちん無い同士でまたしよ」
「うん。長時間できるのが女の子同士のいいとこ、とかも言ってたね」
「でも夜1時くらいまでには寝ようか」
「でないと、明日がきついよね」
 
そんなこと言いながら、私たちはまた抱き合った。その晩は実際には2時過ぎまで、たくさん愛し合った。それはほんとうに気持ち良かった。男の子は出しちゃったら終わりらしいから、女の子になれたからこそ、こんな気持ちいいこといっぱいできるのかなと思うと、また幸せな気分になっていた。
 
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私たちはその頃から、進学する高校について、どこに行きたいかだいたい決めるように、などと言われていた。
 
私とエミリーは共に普通科がメインの公立女子高校にしようかと言っていた。普通科で3年間勉強して、女子大を狙うコースである。戦争が終わって小学校・中学校は共学になったが、高校・大学はまだ女子校・男子校が別れていて、共学は高校で少し出て来ていたが、共学の大学はまだ無い。
 
普通科を希望する女子で、私とエミリーを含む7人がしばしば集まって勉強会をするようになった。その日私たちはカロラインの家に集まって勉強会をしていた。
 
「オリアーナがやっと性転換する日取りを決めたみたいね」
「わあ、それはめでたい」
「12月末にしちゃうらしいよ」
「これで赤クラスも消滅か・・・」
 
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「私たちの1つ下の学年はまだ10人くらいいるみたいね」
「私たちは小学校卒業する時点で4人まで減ったのにね」
 
「下の方の学年には単純に女装を楽しみたいだけの子もいるみたい」
「そうそう。私たちの学年までは6年生でホルモン強制投与だったけど、1つ下からはその縛りが無くなったから、女装だけって出来るようになったもんね」
 
「でもヘンリーはまだ時々女装してるんでしょ?」
「時々というか、デートの時はいつも女の子の格好してるよ。だから私たち女の子の友だち2人で歩いてるようにしか見えないと思う。女子限定の場所で遊んだりもするし。トイレは一緒に女子トイレに入るし。プールに行った時も一緒に女子更衣室で着換えたし」とサマンサ。
「ちょっと待って。それなら何のためにヘンリーは男の子に戻ったのよ?」
 
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「最近、髪もまた伸ばしちゃおうかなって言ってる。それに彼、私が可愛いって褒めると照れるし、おっぱい揉んであげると気持ち良さそうにしてるし。ブラとかスカートとか、よく一緒に買いに行く。私たちサイズが近いから服の共用もできるし。お化粧も一緒に練習してるよ」
「もしかして赤クラス時代より女の子してない?」
 
「ヘティー、今家庭科のグレン先生の所で暮らしてるからさ。先生からたくさんお料理とかお裁縫、習ってるのよね」
「わあ」
「こないだ一緒にピクニック行った時も作ってくれたお弁当、凄く美味しかったし、実は今私が着ている服も、ヘティーが縫ってくれたんだ」
「えー!?それ可愛いから、どこかのブランド物かと思ってた」
「かなり、女の子度、上がってるじゃん」
「もう女性ホルモン飲ませちゃえば?」
 
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「女性ホルモンは飲んでないし、男性ホルモンをまだ飲んでるんだけど、なぜかバストが成長してるんだよね。『僕Bじゃなくて今度からCカップ買うことにした』なんて嬉しそうに話してた。おちんちんの機能は間違いなく少しずつ強くなってるから、ホルモンの飲み間違いはあり得ないんだけど」
「でもまあ、サムもそれでよければ、いいんじゃない?」
 
「ヘンリーって男の子に戻るのもったいないくらい可愛かったもん。性格も優しいしさ。料理やお裁縫は昔から得意だったね」とカロライン。
「私のほうがむしろ男性的だよね。私家事全般苦手だから、彼、私と結婚したら、料理・裁縫は任せてなんて言ってくれてる」とサマンサ。
「どっちが奥さんかよく分からないね」とメアリー。
 
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「小2の時、私が女装して川のそばで遊んでて、足を滑らせて川に落ちちゃったことがあって。その時、偶然近くを通りかかった男装のヘンリーが『今助ける』
といって駆けて来て川に飛び込んだんだけど」
「わっ」
「彼、泳げなかったのよね」
「何なんだ!?」
「私は泳げるから、結局私が彼を助けて」
「おいおい」
 
「彼落ち込んでたなあ。でも水泳なんて練習すればいいんだよと言ったの」
「はあ」
「でも彼、自分は泣き虫だし運動も苦手だし、自分みたいなのは女の子になっちゃった方がいいかな、なんて言うんだけど、別に泣き虫の男の子がいたっていいじゃん。ヘンリーは優しくていいと思うよ。私、その内ほんとの女の子になりたいと思ってるから、ヘンリーの彼女にしてよって言ったんだ」
「おお、ダイレクト・アタック!」
 
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「それで彼も男の子としての自分に少し自信を取り戻した感じだった。そして危ないことがあったら、きっと私が守ってあげるから、とかも言ったんだけど、本当に何度か助けることになった。でも性転換手術の時は危機一髪だったな」
「間に合って良かったよね、あれ」とエミリー。
「でもふたりって、面白い関係だね」とアレクサンドラ。
「色々な恋人の形があっていいと思うよ」とカロライン。
 
「私、女の子になりたい気持ちは小さい頃からあったけど、女の子らしさでは、ヘンリーに負けるって昔から思ってた。一応、ふたりの関係では、その時以来ずっとヘンリーが彼で私が彼女だったんだけどね。念のため彼が男性機能を回復させて間違いなく男の子として生きて行くの確信できたところで、私は手術して女の子の身体になった。もっとも私も女性ホルモンずっと飲んでたから男の子にはなれなかったけど」とサマンサ。
 
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「ホルモンやってれば男性化は進まないから、1つ下の赤クラスの子たちって焦ってない子が多いね。18歳くらいまでに手術すればいいかな、とか言ってた子もいたし」
「だけど、性転換手術しないと、男の子とセックスできないよね」
「それはあるよね」
 
「れれれ?もしかして今ここにいる中で男の子とのセックス経験あるのはサマンサだけ?」
「私、まだへティーとセックスはしてない」とサマンサ。
「えー?もうしてるとばかり思ってた」
「私はエミリーが怪しいと思うんだけどね」とサマンサは矛先を変える。「うーん。経験はあるよ」とエミリーはあっさり答える。
 
「おお、やはり男の子時代のフェリシアとしたの?」
「してないよね」と私とエミリーは言った。
「えー、もったいない。女の子になっちゃう前に男の子としてのセックスも経験しておけば良かったのに。したいと言ったらエミリーさせてあげたんじゃないの?」
とグローリア。
 
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「言われたらしてたと思うけど、言われなかった」
「私、男の子の機能使う気無かったもん」
「ああ、その気持ち分かるなあ」とカロライン。
「私も男の子的なことは一切したくなかった。ほら性転換手術の前日に男の子として最後の立小便とオナニーをしなさいなんて言われるじゃん」
「うんうん」
「みんなは、それやった?」
「しなかった」と私もサマンサもアレクサンドラも言った。
 
「だよねー。私もしなかった。私は女の子だから、そんなことしませんって答えた」とカロライン。
「実際、あれする子いるの?」とアレクサンドラ。
「ふつうしないよね。だって性転換手術受ける子って、もうおちんちん以外は、身も心も社会生活も人間関係も完全に女の子になってしまっているもん」
「手術は最後の仕上げだもんね」
 
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「でもフェリシアとしたんじゃなかったら、エミリーが誰としたのか気になる」
とグローリア。
「そのあたりは企業秘密ということで」とエミリーは笑いながら言った。
「フェリシアはその相手知ってるの?」
「もちろん。私はエミのことは何でも知ってるよ」と私。
「私もフェリーのことは何でも知ってる」とエミリー。
 
「やはりフェリシアとエミリーって・・・友だち以上の関係だよね」
「うふふ。想像に任せる」と私。
 

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