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■棹無き世界(3)

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「運転免許更新と同時に切る人もいたんでしょ?」
「そうそう。男性が運転免許を更新する場合は、断茎済みであることが確認されない限り、できないから、その場で無痛去勢機を渡されて、おちんちんを取ってから手続きというパターンになっていた。うちのじいさんとかも、それで切ったらしいから」
 
「公務員は率先して切ったんだよね?」
「うん。お手本にならないといけないから。最初に総理大臣以下、全男性閣僚が切って、皇帝陛下をはじめとして男性皇族方も全員切って、そのあと国会議員、全国の知事・市町村長まではセブンカット法の施行前にほぼ全員おちんちんを切っている。病院の先生たちに弁護士さん、学校の先生も切った」
 
「あの時期は、去勢機も特需だったみたいね」
「うん。だから去勢機を作っている会社は株価も高かったし、大学生たちに凄い人気があった。そこに男性が入社するには、そこの会社の去勢機の実験台になって、開発中の機械でおちんちんを切ることが条件」
 
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「本当は22歳は5年後まで切らなくても良かったんだけど、上場企業では切ることを入社条件にしたところが多かったらしいね」
 
「社内設備の問題もあるんだよ。全員ペニスを切ってくれたら、社内のトイレを男女別にする必要がなくなるから」
 
現代ではトイレが男女別になっているのは、幼稚園くらいであるが、移行時期には、ペニスを切断済みの男性は女子トイレを使ってもよいという暫定法が施行されたため、男子トイレを使う人がほとんどおらず女子トイレが今までの倍混むという現象も起きて、それもあり急速にトイレの男女統合は進んだのである。
 
「昔はトイレの行列って女性だけが強いられていたけど、ペニスカット以降、男女等しく行列に並ぶ文化になったんだよね」
 
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時間を50年近く戻して、これはそのセブンカット法施行間もない頃の物語である。
 
2133年2月20日(金)。
 
学校の帰りがけ、マナミと並んで歩きながらおしゃべりしていたカズヤはマナミが唐突に言ったことばを一瞬理解できなかった。
 
「セックスさせてあげようか?」
 
カズヤは迷ったものの、答える。
 
「高校生がセックスとかしたらいけないと思う」
 
「でもカズヤ、セブンカット法で4月になったら、おちんちん切らないといけないよ。セックスするなら今の内だよ」
 
「でも婚約もしてない男女がセックスしたのがばれたら死刑だよ」
「そんなの言わなきゃバレないって。実際にそれで死刑になる人なんて年間数組しか出ないじゃん」
 
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「まあネットに書けばバレるよな」
「お馬鹿さんすぎるよね」
「そもそもそういう個人的なことをネットに書くべきじゃないんだよ」
 
「ということで、しない?カズヤのおちんちんがある内に」
 
「おちんちん切った後でもセックスはできるよ」
「それはできるけど、気持ち良さは全然違うと思うよ。興味無い?」
 
とマナミは強く誘ってくる。それでカズヤも心が動いた。
 
「して・・・みようかな」
「うん」
 

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マナミのお父さんは弁護士、お母さんは市会議員で両親ともだいたい不在のことが多いらしい。それでカズヤはマナミのマンションを訪問した。ふたりが「お友達」関係にあることは、双方の両親も知っており、カズヤはマナミのマンションに来るのも、もう5回目くらいである。しかし今まではいつも両親のどちらかが在宅している時であった。親が居ない時の訪問は初めてだ。
 
マナミが鍵を開けて一緒に中に入る。
 
「シャワー浴びようよ」
「うん」
 
それで最初にマナミがシャワーを浴び、カズヤは居間で雑誌など見ている。やがてマナミが裸で出てくるので
 
「わっ、ちょっと何か着てよ」
と言うが、マナミは
「どうせ脱ぐんだからいいじゃん」
と答えた。
 
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慌ててカズヤはバスルームに飛び込む。
 
石鹸を借りて身体をよく洗う。特にあのあたりはきれいに洗う。この後のことを考えるとドキドキして、あそこが大きくなってしまった。
 
俺・・・うまくできるかなあ・・・
 
そんな不安もよぎるがあまり深く考えないことにする。
 

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あまり興奮しすぎないように自分を抑えてから、身体を拭いてバスルームを出る。服を持って裸のままマナミの部屋に行くと布団が敷いてあって、マナミが切ない顔でこちらを見ていた。
 
カズヤはどきっとした。
 
可愛い!
 
でも・・・もらっちゃっていいのかな?
 
いいよね?
 
本人があげると言っているんだから。
 
それでカズヤはマナミの布団に潜り込んだ。
 
「あ、しまった。避妊具の用意が無い」
「大丈夫だよ。お母ちゃんの机の引き出しからちょろまかしておいた」
と言って、マナミは1枚くれた。
 
「ちょっと待ってね。これ付けたことがないから」
と言ってカズヤは焦りながらも何とか装着に成功する。
 
「もうお母ちゃんたちは使わないしね」
「そうか。お父さん、弁護士だから、切っちゃったんだよね」
「うん。法律の施行前に切ってた。切った後しばらくは何だかボーっとしてた。やはり切ったのが辛かったんじゃないかな」
 
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「男はみんな辛いと思う」
「カズヤ、切った後は舐めてあげるね」
「舐めるって、あんな所を舐めるの?」
「そういうの知らないの?」
「舐めるもんなの?」
 

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お互い初めてなので、どんな感じですればいいのか良くはわからなかったもののカズヤは半分勘で、半分は本能でマナミの身体を愛していった。カズヤは実際問題としてあっという間に逝ってしまった。
 
「早かったね」
「ごめーん。これもっと維持しないといけないんだよね」
「いいんじゃない?逝けないよりいいと思う」
「かもね」
「あ、外してあげる」
 
と言ってマナミが避妊具を外してビニール袋に入れる。
 
「コンビニのゴミ箱に捨てちゃおう」
「なるほど」
 

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ふたりはその後、裸で並んで寝たまま、いろんなことをおしゃべりした。その話題はありきたりのものだったが、カズヤはマナミとこういうことをした後、マナミのことが物凄く愛おしく、彼女のためなら何をしてもいい気分であった。
 
これが恋ってやつなのかなあとカズヤはあらためて思った。
 

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「そろそろお父ちゃん帰ってくるかも」
「じゃ服を着なくちゃ!」
「その前にもう一度抱き合おうよ」
「うん」
 
それでカズヤはマナミを抱きしめたが、もう手放したくない気分になり、ついマナミのあの付近を触ってしまった。
 
「ごめん。触って」
「私はもうカズヤのものなんだから、好きにしていいんだよ」
 
ドキッとする。そんなこと言われたら・・・・
 
カズヤは再度マナミを抱きしめると、あのあたりを指で刺激する。マナミが気持ち良さそうにしている。マナミのそういう表情を見ると、ますますマナミが愛おしくなる。
 

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ガチャッという音がした。
 
ふたりはびっくりして飛び起きる。
 
「服、服着なきゃ」
 
慌ててふたりは服を着た。マナミはもうブラをつける時間が無いので、ブラは机の引き出しに放り込んで、なんとか裸の上にトレーナーを着た。下も急いでパンティを穿き、スカートを穿く。カズヤも慌てて服を着る。
 
ズボンを穿き終わった直後に部屋のドアが開く。
 
「あ、帰ってたんだ。カズヤ君もいらっしゃい」
とスカートスーツ姿のお父さんが笑顔で言う。
 
「お父ちゃん、お帰り」
「こんにちは。お邪魔しております」
 
とふたりも笑顔で答えた。
 
でも布団を敷いているのはしっかり見られたよな?とカズヤは思った。
 

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学校の1学期の授業は10月に始まり、12月25日から1月7日までの半月の冬休みを経て、3月上旬まで続く。その年は3月13日(金)が終業式であった。
 
これから4月12(日)まで約1ヶ月の春休みに突入する。
 
しかし多くの男子生徒たちが暗い顔をしていた。
 
「休み明けにはちょん切られちゃうんだよなあ」
「あれ何とか逃げる方法は無いのかね」
「自主的に病院に行って性転換手術とか受けてしまえば去勢機で切られることはない」
「それもっといやだ」
 
「チンコ切られるのはしかたないけど、女にはなりたくないぜ」
などと大半の声。
 
「そう?僕はむしろ女の子になりたいけど」
と言っている男子が若干1名いる。
 
「まあおまえは女の子になってもいいんじゃない?」
と数人の男子が言う。
 
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「ハナちゃん、女の子になって女子制服着ればいいよ」
と女子からも言われている。
 

「チンコ切ってしまうと、オナニーの仕方も全然変わるらしいな」
とひとりの男子が言う。
 
「ちょっとそういう話を女子の前でするな」
と言う女子もいるが
 
「おまえらが聞かなければいい」
と男子たちは言っている。
 
「でも実際、チンコ無くなってしまったら、女と同じようなオナニーしないといけないらしい」
 
「なるほどー」
 
「サオが無くなっちゃうから握って上下とかできないじゃん。だから身体の表面にくっついている柔らかい部分を指で押さえて回転運動らしい」
とひとりの男子。
 
「ああ、じゃクリちゃんをいじるのと同じになるんだ?」
とアケミが大胆にも話に乗ってくる。
 
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「まあ少し大きなクリトリスかもね」
「でもそれ割れ目ちゃんを作って中に収納する訳じゃないんでしょ?」
「割れ目は作らない。男だから」
 
「だったらそれ下着ですれて、いつも感じたりしないの?」
とアケミが訊く。
 
「それ防止するのに、男子用のショーツは、その柔らかい部分が当たる箇所がソフトな素材でできているんだよ」
 
「ああ、男子用のショーツというのも謎の多い存在だ」
 
「玉まで取っちゃう奴は微妙に布が余ったのがあそこを刺激してしまうらしいね。だから玉まで取っちゃった奴は女子用のショーツを穿かないといけないらしい」
 
「玉まで取る子、どのくらいいるの?」
「アケチは取ると言ってたな?」
 
「うん。僕は性欲に煩わされたくないから、玉も取ってもらうことにした」
 
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「実際チンコ切って玉はそのままだと、今までよりオナニーの回数が増える奴が多いらしい」
「チンコ切った後の方が今までより気持ちよく逝けるという説もある」
 
「ほんとかなあ」
 

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そんな話を友人たちとしたせいか、その日の帰り、カズヤは悶々とした気分になっていた。
 
「あ、セックスしたそうな顔してる」
とマナミから指摘される。
 
「してもいい?」
「もちろんですよ。私の旦那様」
 
それでその日もカズヤはマナミの家に行き、ちゃんと避妊具を付けた上でセックスをした。セックスした後の避妊具はマナミが取り外して処分してくれる。そしてふたりは裸のまま抱き合ったりしながら、たくさんおしゃべりをした。
 
「これだけセックスしてると、おちんちん切るのが惜しくなってきたでしょ?」
とマナミが言うが
「そもそも切りたくない。世界的な法律だから、この世界の外にでも逃げ出さない限り、避けられないけどさ」
 
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「世界の外ね」
と言って、マナミは考えるように窓の外を眺めていた。
 

ふたりは春休みの間、何度も会っては、マナミの部屋で快楽の時を過ごしていた。
 
そしてそれはもう週明けから学校が始まるという4月10日(金)のことだった。
 
その日もふたりはマナミの両親が不在なのをいいことにマナミの部屋で愛をむさぼった。
 
「あと2日になっちゃった」
「カズヤのおちんちんも後2日の命なのね」
 
と言って、マナミはカズヤのおちんちんをもてあそぶ。
 
「おちんちん切っちゃった後もセックスさせてくれる?」
「もちろんいいよ。切っちゃった後のセックスも凄く気持ちいいらしいよ」
「うーん・・・」
 
そのセックスってどうやるんだろう?と疑問はあるものの、多分何とかなるのだろう。どうもマナミはやり方を知っているようだ。
 
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「おちんちんを中に入れないから、凄く妊娠しにくいんだよね。だから避妊具つけずにする人たちも多いみたい」
 
「妊娠したい時はどうするんだっけ?」
「精液を採取して、注射器で子宮内に入れてもらうんだよ」
「そうか。自分のおちんちんでは届けられないから」
「まあ無くなっちゃったら仕方ないね」
 

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