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「足のスネ毛とかも無くなってるね」
千早が私の身体を点検しながら言う。
「髪の長さは変わってないね」
「うん」
「顔つきも変わってないけど、おヒゲは無くなってる。喉仏も無いね」
「あ、うん」
「身長、少し低くなってる感じ。今165cmくらい?」
「あ、なんか視点が違う気がしてた。元々は173cmあったよ」
「体重とかも変わってる?」
「なんだか凄く軽くなった気がする」
「この身体つきだと・・・・たぶん47-48kgくらいかな」
「こないだ計った時は70kgだった」
「20kgも減れば軽く感じるだろうね」
「だよね」
「ヴァギナ・・・あるの?」
「あるみたい。怖くて、あまり中まで指入れきれなかったけど」
「私の指、入れていい?」
「うん」
千早は私に横になるよう言って、それから私の割れ目ちゃんを開くと、ヴァギナに指を入れてきた。きゃー。何?この感触!?気持ちいいじゃん!
「中指、全部入っちゃった。これかなり深い。たぶん、男の子のおちんちん入っちゃうよ。私もおちんちん無いから試してみられないけど」
「あ・・・」
「どうしたの?」
「その・・・トイレに行きたいような気がする」
「行っといでよ」
「うん」
「座ってするのよ」
「頑張ってみる」
私はちょっと戸惑いながらも部屋付属のトイレに入り、洋式O型の便座に腰掛けた。O型ってしばしばおちんちんがぶつかりそうな気がしていたのだけど、今はおちんちんが無いから、ぶつかることもない。でも・・・えーっと、どうすれば、おしっこ出るんだろう・・・・あれ?あれれ?今までどうやって、おしっこしてたのかな。考えたことなかったし。でも放出口の形が違いすぎるからなあ。。。水道みたいに栓でも付いてれば分かりやすいのに。。。
私はおしっこを出すまで、かなり悪戦苦闘・試行錯誤をした。あ、出た!ちゃんと出て来た時は、ちょっと感動してしまった。そうか、この感覚で出るのか!私は「栓の開け方」が分かったので、何だか嬉しくなってしまった。それにしても。。。。おしっこを出している時の感触がこんなに違うなんて。男の子のおしっこは放水する感じだけど、女の子のおしっこは排出する感じだ!!
手を洗ってトイレから出る。
「できた?」
「うん。何とか」
「おしっこした後、ちゃんと拭いた?」
「拭いた!それは知識として知ってた」
「ふふ」
「女の子としての初おしっこの感想は?」
「悪くないね、これも」
「そう!私は男の子になったことないから比較できないけど」
私はちょっとため息を付いて布団の上に座った。まだ裸のままだ。
「でもボク、これからどうすればいいんだろう・・・」
「この身体が嫌だと思ったら、性転換手術受けて男の身体になっちゃう手もあるよ」
「手術か・・・・」
「たしか費用は300万くらい掛かったはずだけど」
「きゃー、そんなお金無いや」
「あるいは、もういっそ女の子として生きるか」
「女の子・・・・何かスカートとか穿いてみたい気もするなあ」
「私の服、貸してあげようか?」
千早が少し面白がるような感じで、自分の服を貸してくれた。
パンティを穿く。何だかドキドキする。
前の開いてないパンティがピタリと自分の股間に納まると何だか不思議な感じだ。こんなの見て、ふだんの自分なら、おちんちんが大きくなっちゃう所だろうけど、今はそのおちんちんが存在していない。
ブラジャーをつける。千早のブラはD70だ。そのブラを付けてみたが、サイズが足りないみたいでホックを留めることができなかった。でも何だろう?この感触って、胸のところにこんなものを付けてると、不思議な安心感がある。
「朔弥、この感じからするとたぶんE75くらい必要だね。無理すればホック留められないこともないけど、それだと胸が苦しいと思う」
「うん。これはホック填めないままでもいいかな。でもなんか付けてるだけで安心感があるよ」
「これだけバストが大きかったら、ノーブラじゃきついもん」
そしていよいよスカートを穿く。これも初体験だ。幸いにも千早のスカートはきれいに私のウェストに入った。ホックを留めてファスナーを上げることができる。
「なんかこれって・・・単に腰を覆ってるだけって感じ」
「開放感があるよね、スカートって。ズボンに比べて」
「なんか、物凄い無防備な感じがする」
「だから女にスカート穿かせるのは男の陰謀だって言う人もいるよ」
「言えてる。それって」
更に私はポロシャツとパーカーも貸してもらった。彼女ももう服を着ている。
「ちょっと夜中、散歩でもしてこない?」
「この格好で?」
「誰も見てないよ。それにもし女の子として生きるんなら、そういう服で外を歩けなきゃ」
「うん、そうだね」
ちょっと怖い気がしたけど、彼女に手をつないでもらったので、ちょっとだけ勇気が出て、ふたりで旅館を出た。深夜の温泉街を歩く。もちろん人など歩いていない。
小川に沿った道を、僕たちはゆったりしたペースで歩いて行った。今夜は月も出ていない。一面の星空だ。夜空に一際明るい星があった。「あれは木星だよ」
と千早が言う。オリオン座も目立っている。私が分かるのは他にはカシオペア座くらいだ。
「でもきれいな空だね」
「東京じゃ、こんな空見られないよね。星の数が全然違う」
「なんかさ・・・あまり突飛なことが起きてしまって、全然焦る気持ちが無くて」
「今まで通り、ふつうに生活すればいいんじゃない?普通に学校に行って」
「そうだね。そんな気もする」
「とりあえず男の子の服着て生活しててもいいだろうし、せっかく女の子のボディ獲得したんだから、女の子の服着てお散歩するのもいいよ。お化粧とか教えてあげるよ」
「なんだか、そんなこと言われてると、別にこの身体のまま普通に生きていける気もしてきた」
「・・・もし良かったら・・・一緒に暮らさない?女の子同士の共同生活」
「あはは・・・それもいいかもね。ボク、女の子になりたてだから、いろいろ教えてもらわないと、あれこれ困ったことになりそうで」
「私、今いるアパート出ようかなって思ってたの。2年も一緒に暮らしてたから彼との思い出がありすぎて。もし、朔弥のアパートに同居させてもらえたら、家賃半分出すし」
「それもいいかもね。何か、千早に会えたの、ひとつの運命みたいな気がして。何だか、千早とは、ずっと前からの知り合いみたいな気もしてしまう」
「実は私もなの!」
私はあたりに人影がないのを確認して、千早にキスをした。千早が私を抱きしめる。私もしっかり千早を抱きしめた。
しばらく散歩していたらコンビニがあったので一緒に入る。女の子の格好で人前に出るのは怖い気もしたけど、千早が手を引いてくれたから、恐る恐る入ってみた。おやつを少しと、千早がワインを買った。
「まだ飲むの?」
「朔弥も飲みなよ。ひょっとして飲んで寝たら、性別がまた変わってたりして」
「あはは。そうだと面白いね」
私たちは宿に戻ると、ワインを注ぎ分けて飲んで、なんだか普通の話をしていた。私の性別が変わってしまったことは、わりとどうでもいい話題になってしまっていた。たぶんショックが大きすぎて、今はそれを自分で感じられないんだろうな、と私は自分で思っていた。
そもそも夜11時くらいまでビールを飲んでいて寝て、それから3時頃にワインを飲んでから一眠りしたから、朝起きた時はけっこう頭が痛かった。
「二日酔いの感じ・・・」などと千早が言ったが、私もだった。
果たして朝起きても私の身体は女の子のままだった。でも、何だかそれでも構わないような気がした。私は千早から誘われて一緒にお風呂に行った。
「女の子になったら、女湯に入りたいって言ってたよね。嬉しい?」
「いや、それは・・・なんか少し恥ずかしい」
「でもこの身体じゃ、もう男湯には入れないもんね」
「ははは」
今夜泊まっている部屋は2階である。その2階の中央にある渡り廊下を渡って、別棟になっている浴場に入る。階段を下りて、手前が女湯、奥が男湯であった。私は昨夜は奥の男湯に入ったのだが、今朝は千早と一緒に女湯のほうに行く。ちょっとドキドキ。
脱衣場で服を脱ぐ。どこからどう見ても女の子の裸だ。千早が微笑んで私のバストを撫でた。乳首に触られた時ちょっと「感じた」。一緒に浴室に入る。早朝なので、誰もいない。
「ちゃんとお股を洗ってからだよ、浴槽に入るのは」
「えっと・・・中まで洗うの?」
「もちろん。デリケートな部分だから優しくね」
「うん・・・その・・・ヴァギナの中までは洗わなくていいよね」
「そこまではさすがにしないよ」
「そっか」
一緒に浴槽に入る。
「なんか、さっきからずっと心臓がドキドキしっぱなしだよ」
「ドキドキってHな気分?」
「まさか。なんか自分が居るべきでない所にいる感じで」
「でもここに居るしかないのよ、朔弥は」
「だよね。おちんちん無くなっちゃったし。でも、なんかこうしてると、別におちんちんって無くてもいいんだなという気になってきた」
「私、おちんちん無い状態で23年間生きてきたけど、別に困ったことないよ」
「なるほどー」
結局その朝は私達が上がるまで女湯には誰も入ってこなかった。部屋に戻り、少し身体のほてりを覚ましてから、また千早から借りた女の子の服に着替える。お茶など飲みながらしばらく会話などしているうちに8時になったので食堂に行く。
おしゃべりしながら朝御飯を食べていたら、添乗員さんが私達のそばを通りかかる。「あれ?」といって足を留めた。「えーっと・・済みません、お客様、女性でしたでしょうか?」
「あ、女装してみただけだから大丈夫」
「あ・・・はい」
添乗員さんが頭を掻きながら立ち去る。私たちは見つめ合って笑った。
部屋に戻って出発準備をしながらまた会話する。
「でも、性別が変わったなんて、とんでもない一大事の筈なのに、ボクって、こんなに落ち着いてていいのかなあ」
「明日くらいになったら、もっと悩んでたりして」
せっかく女の子になったんだからといって、千早は私にお化粧をしてくれた。何か不思議な感覚だ!これって。
「口紅が凄く気になって、唇をつい舐めてしまいそう」
「我慢しようね、それは」
千早はスカートを穿いた状態での歩き方とか、座り方などを指導してくれた。
「膝頭をしっかりくっつけてね。絶対離しちゃダメよ」
「うん」
しかし実際に列車に乗ってから、私の膝頭は何度も何度も離れようとした。「膝!」とその度に千早に注意される。
「女の子って大変だ」
「多分、男の子より大変なことが多いと思うよ」
と千早は笑っている。