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目が覚めてもその夢は鮮明に覚えていた。昨日会ったばかりなのに好きになってしまったのだろうか・・・・起き上がると彼女はもう起きていて明るい笑顔で「お早う」と言った。
私達は朝の弁天島を少し散歩した。紅葉もきれいだ。
「きれいな所ね」
「うん。秋の紅葉は初めて見た。以前来た時は5月で、新緑がきれいだったよ」
「へー。あれ?あそこに大きな岩があるね」
弁天島のすぐそばの海面に、海から突き出るように、高さ10mくらいの岩が飛び出しているのだ。
「天狗岩というんだけど、別名おちんちん岩」と私は解説する。
「確かに似てる!」
「弁天島の伝説は昨日話したでしょ。それに続きがあってさ、首を切られて、怒った雌岳の神様が対抗して雄岳の神様のおちんちんを切っちゃったんだって」
「きゃー」
「そのおちんちんが落ちてできたのが、その岩」
「なるほどー。でも首を切られても相手のおちんちんを切り落とす余力があるって凄いね」
「しめ縄が掛けてあるでしょ。男性の精力増強の祈願とかする人いるんだよ」
「へー。でも逆におちんちんが切られちゃったりして」
「あはは」
彼女がわりと平気で『おちんちん』なんて言葉を口にするので、ひょっとしてこの子、男性経験があるのかな?などとも思った。
朝食の席で私たちが一緒に楽しく会話しながら朝御飯を食べていたら、添乗員さんが「あ!」と言って、私たちのそばで足を留めた。
「申し訳ありません、お客様、女性の方でしたね?」
「ええ、そうですが」と千早。
昨日は中性的な格好をしていたが、今日の千早はピンクのカーディガンに下は膝丈のスカートを穿いている。お化粧もしている。
「大変失礼しました。お部屋を・・・・」
「ああ、いいんですよ。今夜も彼と一緒の部屋でいいですから」
「そうですか?」と言いながら添乗員さんはこちらの顔も伺う。
私が頷くと添乗員さんは「かしこまりました」と言って立ち去った。
「これで今夜も一緒だね」と笑顔で千早。
「うん。でも、いいの?」
「昨夜と同じ方式で」
「うん」
「でも、私たち、昨夜やっちゃったと思われたかなあ」
「もしそういう疑惑を持たれたりした時はボクが宣誓して証言するから」
「あはは、私別にバージンでも無いから大丈夫だよ」
「そ、そう?」
その日また列車に乗って出発してからも、私たちは楽しく会話しながら外の風景を楽しんだ。列車は大糸線をそのまま北上し、糸魚川から北陸本線を西に向かった。親不知子不知で列車から降りてマイクロバスで景色の良い所まで行き、お昼の休憩となった。
「わあ・・・凄くきれい」
「昔は交通の難所だったんだよね。親子といえども互いのことまで構っていられない。自分のことだけに集中しないと越えられないという難所」
「昔の旅は厳しかったんだね」
「旅をするということは死につながるものだった」
「死と再生の旅だよね」
「うん。新しい自分に生まれ変わるんだよね。お遍路なんか、まさにそれ」
「あ、虹!」
「あれ?」
「三重の虹だね。私も初めて見た」
「ボクも初めて!」
「虹って、いろいろ伝説あるよね」
「虹の端には金の壺が埋まっているとか」
「虹の向こうまで行くと性別が変わっちゃうとか」
「へー。ね、虹の向こうまで行っちゃわない?」
「えー?性転換したいの?千早さん」
「うーん。男になっちゃってもいいかな」などと言って千早は虹に向かって走り出す。「あ、待って」私も一緒に走りかけたが、その時、突然昨夜の夢で聞いた言葉を思い出した。
『歩いていって初めて越えることができる』
私は虹に向かって歩いて行った。何だか虹に近づいていくような感覚があった。千早はもう随分先の方まで走って行っていた。波打ち際を過ぎて、海の中まで、靴のまま入ってしまっている。あんなに濡れちゃったら困るだろうにと思いながらそちらへ歩いて行った時、ちょうど海と砂浜の境界線の所で、ふと何か不思議な感覚がして、私は立ち止まった。その瞬間、周囲に物凄く美しい色彩を感じた。え?何これ?
それはほんの一瞬だった。でもその瞬間、私は自分が虹の真下にいる感覚、つまり自分が虹のゲートを通りすぎたような感覚を覚えた。
千早は海の中で立ち止まっている。私は靴と靴下を脱ぎ、荷物を置き、ズボンを少しめくると、「千早さん!」と叫び彼女の元に歩み寄る。
「大丈夫?」と声を掛けた。彼女が泣いていた。
「もしかして・・・千早さん、失恋とかした?」
彼女が頷く。
「私・・・・どこかに行ってしまいたかった」
私は彼女の手をぎゅっと握りしめた。
「戻ろ」
「うん、ありがとう」
私は千早の手を取って砂浜まで戻った。
「ストッキング脱いじゃおうか」「うん」
私は荷物の中からタオルを出して彼女の足を拭いてあげた。
「あ、ごめん。後は自分で拭く」
「靴はダメかもね」
「ごめんねー。後先考えないことしちゃって」
「ボクもスリッパとか持ってきていたらよかったんだけど」
「列車の中で靴脱いでおくよ」
「壁に立てかけておけば少し乾くかもね」
列車は更に西行した。今日はたぶん富山か石川付近にたくさんある温泉のどれかで泊まりになるのだろう。幸いにも列車が走る音が大きくて会話は外に漏れにくいし、私たちは端の方の席なので、それをいいこと小声で彼女とは色々話をした。というより、その日の午後はひたすら彼女が話していて、私は聞き役に徹していた。
「でもなんか色々話してて、少しだけ気が晴れた感じ」
「そう。それは良かった」
「なんか私、彼にただ弄ばれてただけなんじゃという気がして。だって2年間同棲していたのに、その2年間ずっと他にも実は彼女いたなんて、ひどすぎる」
「それは結果的にそうなってしまったのかも。でももう忘れよう」
「そうだね・・・・」
「朔弥さん、お酒飲める?」
「うん、まあ」
「今夜飲みあかしたい気分」
「いいよ。一緒に飲みあかそう」
「えへへ・・・」
その晩は結局石川県内の某温泉郷に宿泊した。添乗員さんから、ミステリアスツアー参加認定証なるものと記念品の携帯ストラップが配られる。虹色に光る加工がされた可愛いタヌキのストラップである。
「なんか可愛いね、これ」
などといって、私も千早も自分の携帯に取り付けた。
「でも、なんでタヌキなのかなあ」
「色々なものに化けてて、正体は謎ってこと?」
「微妙によく分からない所だね」
「虹色がきれい」
「昼間の虹もきれいだったね」
「うん。三重の虹なんて多分一生に一度見れるか見れないかって気がする」
「うんうん」
私たちは夕食のあと、お風呂に入ってきてから、旅館の自販機で缶ビールをたくさん買ってきて、飲みながら話していた。
「そういえば虹を越えたら性別が変わるなんて話をしてたんだった」
「うん。私、いっそ男になっちゃってもいい気がしちゃって」
「でもあそこで、ボク、なんか虹を越えちゃった気がしたんだよね、波打ち際で」
「へー。朔弥さん、女の子になっちゃったりして」
「あはは。それも面白いかな。女湯に入れるし」
「わあ、Hなこと考えてる!」
私たちはその夜とってもたくさん話が弾んだ。そしてとっても仲良くなることができた。だから、とっても自然にひとつの布団に入った。
「いいの?」
「うん」
彼女にキスして、浴衣の紐を外す。私も自分の浴衣の紐を外し、やがて裸で私たちは抱き合った。たくさん愛撫した。
「ここまでするんなら、コンちゃんの装備があれば最後までできたんだけど、まさかこういうこと起きるとは思ってなかったから、準備がないや。今日はここまでかな・・・できたら東京に帰ってから、またデートしてくれない?」
「そのまま入れていいよ」
「だって・・・」
「妊娠したら結婚してよ」
「分かった」
私たちは更にたくさんお互いに愛撫しあい、やがてその気持ちの高まりの中で、ひとつになった。実は私はこんなことするのって初めての経験だったから、ちゃんとできるかなと不安だったけど、何とか最後まで行くことができた。彼女が私をぎゅっと抱きしめる。私も彼女をぎゅっと抱きしめた。私たちはしばらくそのまま抱き合っていた。
そしてそのまま眠ってしまった。
夜中、ふと目が覚めた。何か変な感じがした。あれ?何だろう・・・・
彼女もちょうど目が覚めたみたいだった。彼女の手が私のあの付近に伸びてくる。2回戦目行く?いや行けるのかな??ところが彼女の手で触られる自分のあのあたりの感触が変だ。え?
「あれ?隠してるの?」と甘えた声で彼女が言う。
「いや、そんなことしてないのだけど。あれ?」と自分で言った声が変。「え?」
「やだ。朔弥って、そんな女の子みたいな声も出せるんだ!」
「いや、ちょっと待って。これ何だか変」
私は起き上がると電気を付けてみた。
「え?」と千早が驚きの声をあげる。
「朔弥って女の子だったの?」
千早に先に驚かれてしまったので、自分で驚きの声を上げることができなかった。私は全身女の子になってしまっていた。
部屋にある鏡に映してみた。バストはEカップくらいありそうだ。かなり大きい。ウェストがきゅっとくびれていて、お股のところには何も無い。触ってみると、繁みの中に割れ目があって中に、ちょっとこりこりするものがあり、奥の方には何やら穴がある。指が少し入ったけど、あまり奥まで入れてみる勇気は無かった。
「何かボク、女の子になっちゃったみたい・・・・」
「うそ!元々は男の子だった?」
「だって、さっき千早としたじゃん。それにボク、今夜も昨夜も男湯に入ってきたよ」
「そうだよね・・・これって何が起きたの?」
私はハッとした。
「もしかして虹を越えたから?」
「虹を越えると性別が変わる・・・か・・・」
「どうしよう?ボク女の子になっちゃったら、千早と恋人になれない」
「恋人には・・・・なってあげる。だって、凄く仲良くなれたもん」
「千早・・・・」
千早が私に深いキスをしてくれた。それで私は少し落ち着くことができた。