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■襖の奥(4)

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「実は、レイコの両親がさ、連名で俺の親父が軽い罪で済むようにと嘆願書を書いてくれたんだよ。それで親父は執行猶予で済んだ」
 
「そうだったんだ?その件もみんな心配してたよ」
と私は2人に言った。
 
「うちのお父ちゃんは、うっかり失火させてしまうなんて、誰にでも起きえることで、もしかしたら自分が失火させてしまって、サトウ君の家族の誰かが死んでいたかも知れないと言って、あまり悩みすぎないようにして欲しいとサトウ君のお母さんには言ってた」
とレイコは語った。
 
「俺たちも最初はお互いぎこちない感じだったけど、俺の親父の判決が出て、執行猶予になって釈放されてきてから、あらためてレイコの両親の前で土下座して謝って、その後、お互いこれでわだかまりは無しにしましょうよとレイコの父ちゃんが言って。両家で一緒に食事会をしたんだよ」
 
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「へー!」
 
「お父ちゃん同士は飲めば仲良くなって、肩を抱き合ったりしてたね。双方のお母ちゃんは呆れてたけど」
とレイコ。
 

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「それでレイコのお祖母ちゃんの三回忌が終わった夜に、俺たちは恋人になった」
 
「つまり、やったんだ?」
 
「そういうダイレクトな表現はしないこと」
などとサトウ君は言っている。レイコは恥ずかしがって顔を赤くしている。
 
それ2人はまだ中学2年生だよね!?
 
結局2人は大学生時代に同棲するようになり、学生結婚してしまったらしい。そして大学卒業後サトウ君が2年間建設会社に勤めてから独立してこの会社を作ったということだった。その時点で既に子供が4人いたらしいが・・・どうも計算が分からない!?
 
しかし、それで今、青葉通りにオフィスを構えるまでになったというのは凄い、と私は言った。
 

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私はレイコに、お祖母ちゃんが作ってくれた焼きおにぎりの味を再現してみたことを話した。ぜひ食べたいというので、次回の打ち合わせの時に作って持っていったら、レイコもサトウ君も
 
「うんうん、この味だよ」
と喜んでいた。私はレイコに、この焼きおにぎりのレシピをプリントしたものも渡したが
 
「あれ?でもゴトウさん、うちのお祖母ちゃんと会ったことあったっけ?」
とレイコは不思議そうにしていた、
 

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その年の暮れ、私のアパートに1枚の往復葉書が届けられた。
 
見てみると、シノダ・マリ、シノダ・ノリの結婚式披露宴の案内である。私はまさか姉弟で結婚するわけはないだろうしと思い、結婚式披露宴には出席したいという旨を書いた上で
「誰と結婚するの?」
とメールをした。するとマリちゃんのほうから電話がかかってきて、うっかり結婚相手の名前を書き忘れた!と言っていた。かなりあちこちから問い合わせがあったらしい。
 
「私の相手は、アベ・ハルオ、ノリの相手はアベ・アキラというんだよ。向こうも双子でさ。だから双子と双子の結婚。それで結婚式も披露宴も一緒にやっちゃおうという魂胆」
「へー!」
 
彼女が口頭で伝えてくれた当日のスケジュールはこのようであった。
 
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10:00-10:30 マリとハルオの結婚式
11:00-11:30 ノリとアキラの結婚式
12:00-14:00 合同披露宴
 
「でも凄いね。双子と双子で結婚って。でも都合良く、向こうも男女の双子だったんだ?」
 
「違うよ。向こうはふたりとも男の子だよ」
「待って。だったら、ノリちゃん男の子と結婚するの?」
「ああ、言い忘れていた。ノリも女の子になったんだよ」
「性転換手術しちゃったの?」
「高校3年の夏休みに手術しちゃった。それで卒業式は女子制服を着たんだよ」
「へー!」
 

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彼女たちとは高校が別になってしまったので、そのあたりの消息は聞いていなかった。でも中学時代は、ノリちゃんは男子制服を着るのが凄く嫌そうだった。授業の間は仕方ないので学生服を着ていたけど、部活になるとマリとお揃いのセーラー服を着て一緒にコーラス部のソプラノで歌っていた。
 
ノリが声変わりしてないのは何かしたんだろうとは思っていたが、この時の電話でマリは、ノリが小学6年生の時に、密かに睾丸を除去したことを語った。その後女性ホルモンも飲んでいたので、実は高校に入る頃は既に普通の女子高生並みにおっぱいも膨らんでいたらしい。
 
「それでも男子制服着せられていたんだ?」
「物理的に男性である以上、男子制服を着てくれと言われていた。もちろん部活の時は女子制服を着てたけどね」
「ああ」
「コーラスの大会でも女子制服着てソプラノで歌って記念写真とかも撮ってるし」
「それいいね」
 
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「でも物理的に女性になりましたからと言ったら、学校側も女子制服の着用を正式に認めてくれた」
「よかったね」
「戸籍は20歳になるまで法律上変更できないけど、性転換手術までしたのならいいでしょう、と理事長さんが折れてくれた。先生たちの中には異論はあったみたいだけど」
 
「理解のある理事長さんで良かった」
 

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「それは結婚する相手のアキラさんは承知なのね?」
 
「実はさ」
「うん」
「私たちは2人と2人で結婚するんだよ」
「だから、マリちゃんがハルオさんと結婚して、ノリちゃんがアキラさんと結婚するんでしょ?」
 
「そうじゃなくて、私はハルオ・アキラの2人と結婚するし、ノリもハルオ・アキラの2人と結婚する」
 
「ごめん。意味が分からない」
「毎晩、どちらがどちらと寝るかは抽選」
 
「まさか重婚なの?」
 
「両方重婚だから重々婚だね。それで私がハルオの子供もアキラの子供も産む約束。私が産んだ子供を双方でシェアする。1人おきにノリとアキラの養子にする。ハルオとアキラは一卵性双生児だから、遺伝子的にどちらの子供かなんて、神様にしか分からないし」
 
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「うっそー!?」
 
「家も4人で一緒に住む」
 
「私、頭がクラクラしてきた」
 
「まあ、各々相手を見間違えるくらい、各々似てるしね。デートでもしばしばお互い相手が誰なのか分からなくなること、よくあった」
 
「はぁ」
 
まあ色々な愛の形があってもいいのだろう。
 

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私は彼女たちの披露宴でも“新婦たち”の友人としてスピーチをした。
 
マリとノリはふたりとも同じデザインのウェディングドレスを着ていた。エンゲージリングまで、ほぼ同じものを作ってもらったらしい!
 

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マリとノリの結婚式の夜、確保してもらったホテルの部屋で、私は急に昔のことを思い出した。ホテル近くのコンビニに行くとトランプがあったので、買って帰る。それで開封すると、本当に久しぶりに“キング&クイーン”をした。
 
すると全てのカードが取り払われてハートのクイーンとキングがくっついた。
 
すごーい!と思う。
 
やはり結婚式に出席したせいで、そういう方面の回路が活性化しているのかなと私は思った。
 
これで恋が叶うということになるけど、困ったことに彼氏が存在しない!
 

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28歳の誕生日の夜、私は16年ぶりに“襖の奥”の夢を見た。
 
私は大学に入る時に仙台に出てきたので、時々しか実家には帰っていない。特にここ7-8年は仕事が忙しいこともあって、全く帰っていなかった。この夢を見たのも仙台のアパートでであった。
 
私は実家にいて、ひとりで留守番をしていた。居間を出て階段を登り、2階の廊下を歩いて奥の部屋のドアを開ける。するとそこにいたのは、小学生当時に私に小振袖を着せてくれていた、お祖母ちゃんではなく、従姉のメグミであった。
 
私は泣いてメグミとハグしあった。
 
「久しぶり、カズちゃん。美人になったね」
「うん。大学卒業する直前、大学4年の夏休みにやっと性転換手術を受けることかできた。おかげで、女子として就職できたし」
 
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「良かった良かった。声変わりもしなかったんだね」
「うん。なぜかしなかったんだよ。病院の受診を勧められたけど、私はこの方が都合いいから、そのままにしてた」
 
私はひょっとして、夢の中でヒロヒコ君のお祖父さんがくれた薬のお陰かも、などと考えていた。
 
「良かった良かった。でもまだ未婚でしょ?だったら振袖着れるね?」
「うん」
 
それで私は服を全部脱ぐ。小学生の時は、上着とズボンを脱ぎ、シャツとブリーフを脱いでいたけど、今の私は、ブラウスとスカートを脱ぎ、キャミソールを脱いでブラジャーを外し、ショーツも脱ぐ。
 
「ちんちん無くなって、ちゃんと女の子の形になってる」
などと言って、メグミは私のあそこに触る。
「触るのは勘弁してぇ」
「いいじゃん、女の子同士なんだから」
とメグミは言った。
 
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うん。やっとメグミと同性になれた。
 
メグミは私に湯文字を穿かせ、木綿の肌襦袢・ポリエステルの長襦袢を着せた上で、赤い振袖を着せてくれた。
 
「この振袖、袖が長い」
「大振袖だからね」
「それ結婚式の衣装では?」
「どうせ来年には着ることになるよ」
「・・・・・」
 
私はメグミと再度ハグしあってから、白い足袋に赤い草履を履き、彼女が開けてくれた奥の襖から先にある階段を降りていった。
 
小学生の頃は、いつもこの階段を降りた後、右手に続く廊下を歩いて行っていた。ところがこの日はその階段を降りた所から左側に行く小さな廊下があることに気付いた。
 
どうして今までここの廊下に気付かなかったんだろう?と思い私はそちらに行ってみたがすぐ行き止まりになる。あっそうか。行き止まりだから、こちらには来なかったのか、と思った。でもよく見ると、少し先の方にも廊下があり、こちらの廊下と向こうの廊下の間に1mくらいの空隙がある。
 
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このくらいの距離なら向こうに渡れそうと思った。でも小学生の私には無理だったろうなとも思う。私は念のため振袖の裾をめくりあげると、足を慎重に伸ばして片足を向こうの廊下の端に置く。そして柱組に捉まりながら、そちらに体重を移す。
 
乗り移れた!
 
それで私はそちらの廊下を歩いて行く。こちらも私がいつも歩いていた“迷宮”と同様に、廊下と階段がたくさん繋がっている。でも初めて歩く場所だ。
 
適当に歩いている内に、引き戸があったので開けてみたら、まるで小学校の教室のようであった。中には誰もいなかったが、私はここは小学2年生の時の教室だと思った。
 
誰もいないので引き戸を閉め、廊下を先に行く。階段があったので降りる。
 
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するとバッタリと思わぬ人と出会った。母と妹である。
 
「あれ、お姉ちゃんここで何してんの?}
と妹が言う。
 
「私は家の中を歩いていたつもりなんだけど」
「あんたも一緒に“赤階段”に行く?」
「赤階段?」
「この階段迷宮の中にあるレストランだよ。迷宮を歩いて辿り着けないと食べることができない」
 
「面白いことしてるね!}
「実際はガイドマップがあるから、それを見ればちゃんと辿り着ける」
「へー」
 
それで私は母・妹と一緒に、そのレストランに行き、フレンチのコースを一緒に食べたのであった。
 
「お父ちゃんはあんたが女の子になったこと、許す気になっているよ。一度実家に帰っておいで」
と食事をしながら母は言った。
 
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「分かった。一度帰る」
と私は(夢の中だけど)母に返事した。
 

料理を食べてから(代金は私が払うと言ったが母が払ってくれた)、母たちと一緒に迷宮の“入口”に出る。そこから私はこの迷宮の全貌を初めて見た。
 
「ここに出るんだったのか!」
と私は驚いた。
 
それは実家の近くにあったバイパスの沿線であった。この道路側から見ると、大きな廃工場の跡のように見える。そこには複雑に入り組んだ階段や廊下が走っていた。左手の方は白い区画、中央には赤い区画、右手には青い区画があった。
 
私が小学校の時に何度も歩き回っていたのは左手の白い区画、レストランや古い教室があり、母・妹と出会って食事をしたのが中央の赤い区画、右手の青い区画はその迷宮を歩いたことがないが、私は思い当たった。これは実家の近くにあるペンキ屋さんの倉庫の中から始まる迷宮だ。そこにも迷宮が存在することを、私はメグミから聞いたことがあった。その迷宮はこちらの迷宮とつながっているはずだけど、自分にも行き方は分からないとメグミも言っていた。
 
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私はこの迷宮の全貌の写真を撮りたいと思い、道路の端ギリギリまで行った、後ろは海なのでこれ以上は後退できない。でもそこでスマホを向けても、どうしても全貌をフレームの中に収めることはできなかった。
 
そこで目が覚めた。
 

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私は居ても立ってもいられなくなり、会社に「実家に用事ができたので」と電話を入れ、自分の車・赤いミラージュに飛び乗ると、東北道を走り、国道を走って実家近くのバイパスまで行ってみた。
 
しかしどんなに探しても、夢の中で出て来たような廃工場を見つけることはできなかった。
 

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私は近くにあるバイパス上のポケットパークに車を駐め、少し歩き回ってみたものの成果は無かった。
 
仕方ないので、このまま実家に顔を出そうかなと思って車に戻ろうとしていた時、私は
「もしかしてカズちゃん?」
という声を聞いた。
 
振り返って見ると、背広スーツを着た28-29歳の男性がいる。
 
「もしかして、ヒロヒコ君?」
「やはりカズちゃんだ!」
 
私は突然涙が出て来た。彼はびっくりしたようで、そばに寄り、私の手を握ってくれた。彼の手は温かくて力強い。20年前の記憶が蘇る。
 
「懐かしい。でもカズちゃん、やはり女の子になっちゃったんだ」
「うん。それで仙台でSEしてる」
「へー。仙台にいるのか。僕も医師免許取って、仙台の病院に勤めているんだよ。まだ研修医だけどね」
「へー」
 
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「立ち話もなんだし、どこかで一緒に食事でもしながら少し話さない?」
「うん」
 
と私は笑顔で頷いた。
 
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