広告:まりあ†ほりっく 第4巻 [DVD]
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■襖の奥(3)

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私はその後、中学生、高校生となり、大学に進学した。大学で私が選んだのは数学科で、学校の先生になることを考えて教諭の資格に必要な科目も取得した。大学4年の時は出身高校で教育実習もさせてもらった。
 
しかし大学4年の時の指導教官は、
「君は教員採用試験には通らないと思う」
と私に通告し、プログラマーになることを勧めた。
 
それで結局私はソフト会社に就職した。1年目からSEになり、10人程度のプロジェクトを統括して、システム設計とメンバーの管理をする仕事をすることになる。忙しい日々が続いたが、私が3年目に担当した建築部材の見積りに関するシステムが、1000万円(30人月)もの費用を掛けて開発したのに、向こうの担当者が辞職してしまったのなどもあって検収を拒否されてしまう。担当者は上司などには確認せず勝手に仕様を決めていたようだった。
 
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私は責任を問われて、ゲーム制作会社への出向を命じられた。
 
ところが私はここでゲーム開発・ウェブ制作にまつわる様々な技術、特にPhotoshopやフラッシュなどの操作を覚え、またHTMLコーディングのテクを覚えて、その後の自分のキャリアの強い武器になるのであった。
 

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ゲーム制作会社で1年ほど仕事をしていた時、本社で社員間の深刻な対立があり、社員の3割ほどが辞職するという重大な事件が起きる。私は辞めた人たちが担当していたシステムの制作のため、本社に呼び戻された。
 
その時、私は倒産した大型スーパーの系列会社で連鎖倒産したソフト制作会社から社員ほぼまるごと採用したSEのひとりとしてうちの会社に入っていた“ケンザキ・ミチヨ”に再会したのである。
 
「ミッちゃん!」
「カズちゃん!」
と言って、私たちは手を取り合って再会を喜んだ。
 
「あれ?君たち知り合い?」
「小学校の同級生なんですよ」
「へー」
と社長は感心していた。
 

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社内ではいろいろヤバい話もあるので、私たちは夕方、会社を出てから料理店の個室で話をした。
 
「でもミッちゃん、女の子になっちゃったんだ?」
「えへへ。20歳になったらすぐタイに行って性転換手術受けちゃった」
「すごーい!」
「もう戸籍上でも女になっているんだよ。だから大学の卒業証書も、情報処理技術者試験も .com Master も全部ミチヨ名義なんだ」
「それは素晴らしい」
 
そんな感じで、私は彼女とは再度親友になったのである。
 
「実はさぁ、私、兄貴が死んだ後、全寮制の男子校に入れられたじゃん」
「うん。あれ、ミッちゃん、そんな環境に耐えられるかと心配した」
 
「お父ちゃんとしては全然男らしくない私を男として鍛えようと思ったんだろうけど、男子校なんて、みんな女の子に飢えてるじゃん」
 
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「へ?」
 
「だから、私、男子生徒たちのアイドルになっちゃった」
「なるほどー!」
 

「男子たちからバレンタインとかもたくさんもらった」
「バレンタインって女の子が男の子に贈るものでは?」
「もちろんホワイトデーもたくさんもらった」
「ああ」
 
「可愛い服とか買ってプレゼントしてくれる子もいて、私女の子の服には困らなかったよ。実際、寮内ではほとんどスカート穿いて過ごしてたし」
「それは凄い」
 
「学校の公式行事には仕方ないから男子制服で出てたけど、部活の応援とかには結構、女子高生の制服っぽい服を着て応援に行ってた」
「へー」
「みんなきっと系列の女子高か共学校から友情応援に来ているのだろうと思ってたみたい」
「ああ、そういうのあるよね」
 
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「で、高校時代に去勢しちゃったから、お父ちゃんもとうとう私のこと諦めてくれたみたいで」
 
「完璧に既成事実作りか」
 
「学割で10万円で去勢手術してもらった」
「学割があるんだ!」
 
でも高校生の去勢っていいの!??
 
しかし彼女は女声で話しているし、メラニー法でもないようだ。肩も撫で肩である。きっと小学生のうちから、女性ホルモンを調達して飲んで、声変わりを始めとする男子の二次性徴が出るのを抑えていたのだろう。
 
だったらきっと、去勢手術以前に、もう男を辞めてる!
 

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「一応こちらの会社の社長さんには性別を変更していること話したけど、それは気にする必要はないし、他の社員には言う必要もないと言われた」
 
「それでいいと思うよ。ミっちゃん、女の子にしか見えないもん」
 
彼女が女にしか見えないのは、やはり高校時代に去勢したからだろうなと私は思った。この世界では早く女性化を始めた人ほど完璧である。
 
「元々SEを目指したのは、ソフト業界って、ソフトさえ組めたら、性別は問わないし、仕事時間にしても業務上の権限も男女に差の無い会社が多いと聞いたからさ。それに服装もわりと自由な所が多いと聞いたし。そしたら、私みたいなのも受け入れてくれるかもと思ったんだよ」
 
「うん。それは私も感じている。うちの会社も実際、背広着て仕事してるのは営業の人だけだし、女子でスカート穿いてる子なんていないし」
と私は言った。
 
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「まあ私はスカート穿きたかったけどね」
「ああ、それは残念だったね」
「前の会社ではスカート派のSEもいたんだけど、ここは居ないね」
 
うちの会社では、女子社員でスカートで勤務しているのは事務の子だけである。SEもCEも全員ズボンである。CEなど女子が7割だけど、メンテのために、機械の下に潜り込んだりしての作業もあるから、スカートでは全く仕事にならない。社長の奥さん(役職は総務部長)からして、いつもツナギ姿である。お化粧などもせず、顔にしばしば機械の油汚れなどがついている。
 

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「ちなみにお父ちゃんの会社は、姉貴と結婚した将来有望な男性社員が継ぐ方向で。私そもそも経営的なセンスも無いしね」
 
「ああ、それはそういう気がする。ミッちゃん、あまり俯瞰力とか無いもん」
 
彼女はオセロも将棋や囲碁もすごく弱い。
 
「そうなんだよねぇ。私って目先のことにとらわれてしまう傾向があるもん。お金とかも目の前にあるお金は全部使っちゃう」
 
「それは何とか改めるようにした方がいいと思う」
 

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「だけど性別変更したいちばんのメリットは、縁談を持ち込まれなくて済むことだね。姉貴たち、まだ結婚してない3人は大変みたい」
 
「ああ。でもミッちゃんだって、凄く可愛いし、子供くらい産めなくてもお嫁さんに欲しいって人はきっといるよ」
 
「面倒くさいから、いいや」
「セックスは可能なんだっけ?」
「私とセックスしてる男は、気持ち良いと言ってるよ」
「ああ、ボーイフレンドがいるんだ?」
「一応、お互いセフレのつもりだけど」
 
「結婚すればいいのに」
「妊娠でもしないと結婚してくれないかも」
「そこを何とか、なしくずし的に長期間関係を維持すれば、事実上妻のようなものになっちゃうよ」
 
「まあそういう線を狙う手はあるね。向こうはこちらが妊娠しないのをいいことにいつも生でやってるから、付けてやるのとは大違いだとか言って、割と私にハマってる気はするし」
 
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「まあ後は、餌で釣る一手だね」
「うん。私、料理はわりと得意。彼の舌にも合ってるみたいだし。お弁当も毎日作ってあげてるし」
 
つまり同棲か、それに近い状態にあるのだろう。
 
「あと一押しだな」
「そうかもね」
 
彼女は結局彼氏と5年付き合った。そして彼が「他に女作るのも面倒くさいし」などと言って指輪を贈ってくれた。それで2人は正式に結婚するに至った。私は彼女たちの結婚式で新婦の友人代表としてスピーチをした。
 
(彼の親には性別変更の件は言ってないらしいが、彼は『バレないバレない』と言っていたという。でも結婚5年目に彼の精液とミッちゃんのお姉さんの卵子を使用した人工授精・代理母で子供を作って特別養子にした(つまり実子と同等)。養子であることも親には内緒と言っていた。子供の見た目も彼・ミッちゃんの双方に似ていたので祖父母にも可愛がられた)
 
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私が27歳の時、私はニュースを見てびっくりした。小2の時まで同級生だった、大森サチコちゃんが、NASDA(後のJAXA)に宇宙飛行士として採用されたというニュースだった。ロシアのソユーズ・ロケットに乗って、国際宇宙ステーションにも行くらしい。
 
私は彼女のツイッター・アカウントに「おめでとう。頑張ってね」というメッセージを送ったのだが、彼女はこれに気付いて、忙しいだろうに、わざわざ私に返信してくれた。
 
その後数回のメッセージのやりとりの末、結局1度電話でお互いの近況報告もすることになった。
 
彼女はあの後、親戚の住んでいた盛岡に移住し、盛岡市内の進学校から東北大学に進学。理学博士号(物理学)を取得したらしいが、一方では高校時代はバレーでインターハイや春高バレーにも出場したらしい。スポーツやりながら旧帝大に合格したって凄い!と私は言った。
 
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「まあ補欠のベンチウォーマーだったから、出番はあまり無かったけどね」
「いや、インターハイに行くようなチームなら、ベンチ枠に入るのも凄いハイレベルの争いのはず」
 
「大学院を出た後は、日立の研究所にいたんだけど、私が運動能力も学術知識もあるというのに目を付けたNASDAの人からスカウトされて、アメリカのNASAに派遣されて1年間宇宙飛行士の訓練を受けていたんだよ」
 
「なんか大変そう」
「うん。大変だった!」
と彼女は言っていた。
 
ちなみに当時中学生で家出騒ぎを起こしたお兄さんだが、今は普通に会社勤めをしていて、詩の同人雑誌を数人で一緒に編集しているらしい。一時期はWWWサイトも立ち上げていたが、運営が大変で、特にスパム投稿に悩まされ、結局ギブアップしてしまったらしい。
 
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「でも兄貴の家出騒ぎのおかげで私は都会の中学高校に通って勉強も鍛えられたからね。結果的には兄貴の家出が、今の私を作ったんだよ」
と彼女は明るく話していた。
 
彼女は最後に
「予言する。カズちゃんは30歳までには結婚して子供もできる」
と言っていた。
 
「宇宙飛行士までやるサイエンティストが予言なんてするんだ?」
 
「神秘的なものを全否定する人は、トップ・サイエンティストにはなれないよ。トップの人たちは神がかり的な領域で仕事をしている」
とサチコは言っていた。
 
本当にそうかも知れない気がした。
 
彼女はその1ヶ月後にソユーズに乗って宇宙に行った。半年間にわたって国際宇宙ステーションに滞在して任務を遂行。むろん無事帰還した。彼女は5年後にも再度国際宇宙ステーションに行ってきた。
 
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サチコちゃんが宇宙に行っていた時期、私は新しい案件があって、青葉通りにオフィスを構える、建築設計会社を訪問した。応接室で待っていたら、見た目26-27歳くらいの社長さんが入ってくる。
 
「サトウ君?」
「あれ?もしかしてゴトウさん?」
「うん」
「それはまた美人さんになっちゃって」
と彼は懐かしそうに言った。
 
「サトウ君も元気そうで何より」
と私が言うと、彼は応接室のドアの所まで行き
 
「おーい、専務ちょっと来て」
と声を掛ける。それで入ってきたのはレイコちゃんだ!
 
「もしかして結婚したの?」
「5年前に結婚した」
「ほんと!?良かった」
 
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