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■襖の奥(2)

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小学4年生の時、私が夢の中で“迷宮”の中を歩いていたら、廊下の途中の障子が開いている部屋で、ケンザキ君が中にいるのを見た、
 
彼は女の子の服を着ていた!
 
彼は私に見られて恥ずかしがっていたけど、私は
「可愛いよ」
と言ってあげた。
「そうかな。ゴトウさんも可愛いと思うよ」
と彼は言った。
 
彼女(といった方がいいと思う)は、物心ついた頃から、自分は女の子でありたいと思っていたという。自分でちんちんを切っちゃおうとしたことも何度もあるけど、切り落とす勇気が足りなかったと言っていた。
 
私たちは最初は苗字で呼び合っていたものの、そのうち彼女は私をカズちゃん、私は彼女をミッちゃんと呼ぶようになった。
 
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スカートとか買ってもらえないから、バスタオルとかカーテンを腰に巻き付けたり、お母さんが捨てようとしていた傷んだ服をこっそり隠し持って部屋の中で着ていたりするらしい。
「それどこに隠しておくの?」
「本棚に立っている百科事典の箱の中とか、部屋の押し入れの段ボール箱の中とか、机の引き出しの下とか」
「お母さんにバレない?」
 
「私の気のせいかも知れないけど、お母さんは気付いているけど、気付かないふりをしてくれているんだと思う」
「かも知れないね。優しいお母さんだと思うよ」
 
「うん。私、お兄ちゃんいるから、私はうちの跡取りにならなくていいから、大目に見てくれているのかも」
とも彼女は言っていた。
 
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彼女は女の子パンティとかも買ってもらえないから、男の子用ブリーフを前後逆に穿いていると言った。結果的に男子用小便器は使えないから、いつも個室でしていると言っていた。
 
確かに学校でも彼女を見ていると、彼女はいつも個室を使用しているようだった。
 

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ミッちゃんと最後に会った日はお兄さんも一緒に居た。
 
「まあミチは、その内、性転換手術して女になってしまうんじゃないのかね。親父(おやじ)は嘆くかも知れないけど、俺としてはむしろ親父の跡継ぎの競争相手がいなくて、俺が確実に後を継げそうだから、こいつが女になるのは歓迎だけどね。こいつが性転換手術する時は、その手術代くらいは俺が出してやってもいいと思っている」
などとお兄さんは言っていた。
 
「性転換手術って?」
と私は尋ねた。
 
「男を女に変える手術だよ」
とお兄さんが簡単に説明する。
 
「そんなことができるんだ?」
「手術代は高いけどね。男を女に変えるのは100万円くらい、女を男に変えるのは300万円くらいする。健康保険も使えない」
 
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「高い!」
と私は驚いて言った。
 
「だから手術は受けたいけど、お金が無いんで受けられない人がたくさんいるよ」
「わぁ」
 

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しかし結局、ミッちゃんの女性指向は、お母さんに黙認され、お兄さんには認められているということになるのだろうか。
 
「でもどうやって、男を女に変えるんですか?」
「そりゃ、男にあって女には無いものを取っちゃって、女にはあって男にはないものを作るんだな」
 
とお兄さんは言った。
 
「男にあって女には無いものって・・・ちんちん?」
「もちろん、チンコは切っちゃう。金玉も取っちゃう」
「きゃー」
「男にはおっぱいが無いから、それは作っちゃう」
「へー!」
 
「男に余分なものが多いから、男を女に変える場合は取るものが多い。それに対して女を男にする場合、作らないといけないものが多い。特にチンコを作るのは凄く大変。だから女を男に変える方が手術は大変だし料金も高くなる」
 
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「わあ、ちんちん作るんだ?」
 
男を女にする場合、おっぱいだけでなく、もっと重要なものも作るわけで、この時、私はその話も聞いたのではないかと思うのだが、私の知識が無さすぎて、そのあたりの記憶は曖昧である。
 
お兄さんは高校生ということで、彼女とお兄さんの間に女の子が4人いて6人兄弟らしい。
 
「俺に何かあった時の予備で男の子が欲しくて子供をひたすら作ったものの、女ばかり生まれて、やっとこいつが生まれたんで親父はホッとしたみたいだね。でも結局こいつは女になってしまうみたいだから、親父のアテは外れたね」
などとお兄さんは笑っていた。
 

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ミッちゃんと夢の中で最後に会ってから1ヶ月ほどした時、私はテレビのニュースに釘付けになった。
 
ケンザキ薬品の社長の息子で、高校生の***さんがバイクに乗っていて、急カーブを曲がりきれずに防護壁に衝突して死亡したというニュースだった。
 
私は、ミッちゃんがどんなに悲しんでいるだろうと同情するのと同時に、彼女自身の将来を心配した。会社の跡継ぎになるはずだったお兄さんが亡くなってしまった。ミッちゃんは女の子になりたいと言っていたのに、それを親から認めてもらえなくなるのではないかと心配したのであった。
 
ミッちゃんはその後、全寮制の男子校!に転校してしまったので、その後彼女がどうなったのかは私は16年後まで知ることが無かった。
 
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小学5年生の時、私が夢の中で“迷宮”の中を歩いていたら、廊下の途中の障子が開いている部屋で、クラスメイトのマリちゃんが中にいるのを見た、
 
マリちゃんも可愛いピンクの小振袖を着ていた。
 
「マリちゃん、その振袖可愛い」
「カズちゃんも、その振袖可愛い」
 
彼女はレゴをしていた。
 
「ブロックはたくさんあるから、カズちゃんも適当に何か作るといいよ」
というので、私も借りて、お城を組み立て始めた。マリちゃんは客船みたいなお船を作っているようだった。
 
私は彼女とブロックを組み立てながら色々おしゃべりしていたのだが、何か違和感を感じて尋ねた。
 
「ほんとにマリちゃんだっけ?」
「えへへ。バレたか。実は私はノリちゃんでーす」
「嘘!?なんでノリちゃんが振袖着てるの?」
「別に男の子が振袖着てもいいと思うけど」
「ああ、そうだよね」
 
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ノリちゃんとマリちゃんは双子の姉弟である。マリちゃんが姉でノリちゃんが弟ではあるが、ふたりは顔がそっくりなので、同じ服を着て並んでいると、区別がつかない。学校では男の子のノリちゃんがズボンを穿いているから、女の子のマリちゃんもそれに合わせてズボンを穿いている。
 
「マリちゃんがスカート穿いたらどうするの?」
と一度訊いたら
「その時はノリちゃんもスカート穿けばいいね」
とマリちゃんが言っていたけど、私は冗談だと思っていた。
 
でもノリちゃんが振袖(小振袖)着るんだ!
 
最初にノリちゃんに会った時は振袖姿のノリちゃんだけだったのだが、2度目以降はマリちゃんも居ることが多かった。でもふたりはいつも同じ服を着ていた。片方がズボンの時はズボンだし、スカートの時はほんとにノリちゃんまでスカートを穿いていた。
 
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「ボクもスカートで学校に行くって言ったらお母ちゃんにダメって言われた」
「ノリが悲しそうにしてたから、私もスカートで行くのやめた」
「ごめんねー」
「でも家の中では一緒にスカート穿いてることもあるよねー」
 
結局2人はいつも同じ格好をしていないと気が済まないようである。ふたりとも小振袖の時もあった。本当に2人は仲が良いようだ。ノリちゃんはパンツまで女の子パンツを穿いていると言っていた。マリちゃんと同じものを穿きたいようである。お母さんも呆れて、まあパンツくらいならいいかと言って穿くのを許してくれているらしい。
 
「でもどちらのパンツか分からなくなるよね」
「まあ私たち、お互いに相手の服を着るのは平気だから」
「お母ちゃんも分からなくなって、適当にタンスにしまってる感じだし」
 
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「でも女の子パンツ穿いてて、おしっこする時困らない?」
「上から出してできるよ」
「へー。そうなんだ!」
「個室に入ってすることもあるけどね」
 
「ノリ、個室で座ってする方が好きみたい」
「うん。実はそうなんたけどね。マリはおちんちん無いから、ボクもおちんちん無くてもいいと思うんだけど」
 
「ノリ、いっそのこと、おちんちん取って、女の子になっちゃう?」
「それもいいなあ。男の子のままなら、中学になったら同じ制服着られないし」
 
「おちんちん取るって、性転換手術?」
と私は訊いた。
 
「そうそう。性転換手術受けて女の子になれば、中学に入る時にマリと一緒にセーラー服着れるし」
とノリは言っている。
 
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「ノリ、何度かちんちん切ろうとしたね」
「でもお母ちゃんに見つかって、包丁とか取り上げられた」
「それお医者さんに切ってもらった方がいいと思うよ。でも性転換手術ってお金かかるみたいだけど」
 
「それが問題なのよねー。そのうち私がお医者さんになって、ノリのおちんちん切ってあげてもいいけど」
「それ中学になるのには間に合わないし」
 
私はマリ・ノリとレゴもしたし、トランプやジェンカ、黒ヒゲ危機一髪、ビーズ、折り紙、旅行ゲームなどでも遊んだ。黒ヒゲ危機一髪は、なぜかいつもノリが負けていた。
 
「悪い意味で勘がいいよね」
などとマリちゃんから言われていた。
 

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小学6年生の時、私が夢の中で“迷宮”の中を歩いていたら、廊下の途中の障子が開いている部屋で、クラスメイトのサトウ君とレイコちゃんが遊んでいる所に遭遇した。サトウ君とレイコちゃんは学級委員長を2人ともしているのだが、個人的にも仲よかったことはこの時初めて知った。
 
ふたりはコヌシラ町に住んでいるのだが、家が隣同士で小さい頃から仲が良かったらしい。
 
今にして思えば私は2人のデートの邪魔をしていたのかも知れないけど、当時はそういうことは全然分からなかった。彼女たちとは、すごろくやトランプをしたり、1人が審判役になって“軍人将棋”をしたりして、よく遊んだ。たぶん全部で7-8回遊んでいると思う。
 
ある時はレイコちゃんのお祖母ちゃんもいて、火鉢に置いた焼き網で焼きおにぎりを作ってくれた。凄く美味しかった。このおにぎり、うちのお母ちゃんはうまく作れないんだよね、などとレイコちゃんは言っていた。
 
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そのレイコちゃんのお祖母ちゃんが出て来た夢を見てから少し経った時、私は(リアル世界で)多数の消防車が走っていくサイレンを聞いた。私の母が消防署の電話サービスで火事の詳細を知ろうとしていたものの、なかなか電話が繋がらないようであった。
 
何とか繋がった時、母は
「コヌシラ町で民家火災だって」
と言った。
 
私はふーんと思って聞いていたのだが、翌日学校で衝撃的な話を聞く。
 
「え?サトウ君の家から火が出て、レイコちゃんの家に燃え移ったの?」
「それでレイコちゃんのお祖母ちゃんが亡くなったんだよ」
「うっそー!?」
「サトウ君のお父さん、失火罪で警察に逮捕されたって」
「え〜〜!?」
 
夢の中に出て来た人がその後亡くなったのは、タクヤ君、ヒロヒコのおじいちゃん、ミッちゃんのお兄さん、の他にも実は数人いたのだけど、今回がいちばんショックだった。隣同士で子供たちが仲良くしていれば、親同士も結構な付き合いがあったのではないかと思う。それが、一方の家から出た火事で、他方の家の家族に犠牲者が出るなんて・・・。
 
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サトウ君もレイコちゃんもその後、(多分別々の町に)転校してしまったので、2人がその後、どうなったかは分からない。
 
委員長が2人ともいなくなってしまったのでクラス会で急遽後任の委員長選びが行われ、私は後任のひとりに任命されて、その学期いっぱい委員長の仕事をした。
 
しかしあれは私の性格には合っていなかった。クラスメイトたちも私の仕事ぶりには不満だったようで、次の学期には別の人に交代した。そしてその後2度と私が委員長に任命されることは無かった(掲示委員とか美化委員などは何度も務めたのだが)。
 

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なお、最後の夢の中でおばあちゃんが作ってくれたのを食べた焼きおにぎりだが、本当に美味しかった記憶があったので、私は中学生時代にあの味を再現しようと色々試行錯誤を重ね、ついに高校に入った頃に、かなりいい感じのものができるようになった。
 
レイコちゃんと仲の良かった女子数人に声を掛けてみたら、スミカちゃんが一度食べたことがあるということだった。それで彼女に試食してもらったら
 
「うんうん、こんな味だった」
と言っていた。
 
レイコちゃんの行方は分からないけど、いつか彼女と再会することがあったらこれを作ってあげたいと私は思った。
 
あのサトウ君、レイコちゃん、そしてレイコちゃんのお祖母ちゃんに会ったのが、私が小学生時代に見た“襖の奥”に行く最後の夢であった。
 
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ひょっとしたら、あまりにも衝撃的な事件があったので、私の中の探究心のようなものが封印されて、あの夢を見なくなったのかもという気もした。
 

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