広告:まりあ†ほりっく 第6巻 [DVD]
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■合唱隊物語(4)

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「うっそーーー!? じゃいつか王太子妃殿下が連れてきていた合唱隊も?」
「みんな男だけどね」
 
これは物凄いショックなことであった。目の前が180度ひっくり返ったかのような驚きであった。
 
「ただし国立合唱隊に入ると実は女の戸籍ももらえるんだ」
「え?」
「実際見た目が女だから、女ということにしておいた方が何かとスムーズに行く場合も多い。だから国立合唱隊や、それに準じる地方合唱隊のメンバーは本来の男の戸籍と、新たに与えられた女の戸籍の両方を持っているんだよね」
 
「へー!」
 
ケイジはこんなことをウテロが知らなかったことに少し驚いている感じもあった。
 
「だから地方合唱隊以上まで行って退団した場合、お嫁さんになることもできるんだよなあ」
「えーー!? 男と結婚するんですか?」
 
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「だって私たち、おちんちん無いから女の人とは結婚できないし」
「おちんちんないと結婚できないんですか?」
「そうだよ。お婿さんになるにはおちんちんが無いといけない」
「知らなかった!」
 
ケイジはそういうウテロの素朴な反応を見て楽しそうであった。
 

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2年後、ウテロは優秀な成績で合唱高等学校を卒業した。その年、バジロ郡の合唱隊に欠員が2名生じていたので募集があり、入隊試験を受けて合格したのでウテロは15歳でバジロ郡合唱隊のメンバーになった。この時この合唱隊の最年少メンバーであった。
 
ケイジも一緒に受けたのだが不合格だった。彼は研究生として高等学校に残ると言っていた。クレオは前年ここの合唱隊に入隊していたのだが、ウテロと入れ替わる形で、ファム地方合唱隊に昇格していたので、すれ違いになった。(欠員2つの内の1つが、このクレオの昇格に伴うもの)
 

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ウテロは新しい郡合唱隊の宿舎で暮らすようになるが、お風呂に入って驚く。
 
「なんで皆さん、おっぱいあるんですか? 女の人なんですか?」
「まさか」
「おっぱいを大きくするお薬を飲んでいるんだよ」
「へー」
「ウテロちゃん、君も飲むといいよ。君可愛いから、おっぱいがあるの似合うと思うよ」
 
男におっぱいがあるのって変じゃない?とは思ったものの、ウテロはうまくみんなに乗せられて、勧められた《おっぱいの大きくなる薬》を毎日3錠飲むようになった。すると1ヶ月もしない内に乳首が立つようになり、3ヶ月もすると胸がかすかに膨らみ始めた。
 
「このくらい膨らむと、もう君の裸を見た人はみんな女だと思うだろうね」
「いいんでしょうか?」
「まあどっちみち、おちんちんが無ければ男には見えないし」
「あ、そうでした!」
 
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郡合唱隊は結構忙しかった。あちこちの施設の訪問、アマチュアの合唱団の指導などもあれば、週に1度は郡のどこかの大教会で称賛歌を奉納する。そういった行事が無い日はひたすら練習である。
 
国立合唱隊や地方合唱隊が巡回してくる時に、協力メンバーとして参加する場合もあった。国立合唱隊の定員は20人、地方合唱隊の定員は16人だが、実際に公演などをする場合、音響効果を考えて30人くらいにするので、郡の合唱隊のメンバーが応援参加するのである。
 
ウテロは入隊して半年もすると、この手の応援参加のメンバーに選ばれるようになった。
 
そうやって外周りをしている時、ウテロは確かに自分たちは「女」ということにしておいた方が便利かもと思った。遠征で宿舎に泊まる場合、お風呂は男湯に入ろうとすると多分パニックだ。
 
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ウテロたちはおちんちんは無いし、おっぱいは少し膨らんでいるので、むしろ女湯に入った方が問題が少ない。トイレに関してはもっとそうである。ウテロたちは、おちんちんがないので男子トイレの小便器を使えない。個室に入る必要があるが男子トイレの個室はふさがっている場合、なかなか空かない。
 
そもそもピンクのブラウスに赤いスカートを穿き、髪の長い合唱隊のメンバーが男子トイレに入って来たら、みんな「お姉ちゃん、こっち違う」と言うであろう。
 
なお郡合唱隊のユニフォームは、高等学校の生徒が校外活動する時の服と配色は同じであるが、胸の所にフリルが付いているので区別できる。スカートも高等学校の生徒のものにはポケットが付いていないが、郡合唱隊のものにはポケットがある。もっともポケットはほぼ飾りであって、そこに物を入れたりすることは無い。
 
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そして1年後、ウテロは16歳でファム地方合唱隊に昇格した。入れ替わりでクレオは国立合唱隊に昇格していた。
 
入隊試験に合格して隊長から地方合唱隊のユニフォームであるヴァイオレットのブラウスと黒いスカートを受領するが、一緒に一枚の紙をもらった。
 
「これは・・・」
「君の女の戸籍」
「わぁ・・・」
 
「ウテロという名前は男名前なので、新しい戸籍ではウテラになっている。だから、この合唱隊では君のことはウテラと呼ぶから」
「分かりました!」
 
「ウテロの戸籍はそのまま残しておく? それとも消去する?」
「みなさん、どうなさるんですか?」
 
「半々だね。男の戸籍を捨てて完全に法的には女として暮らす者もいるが、男の戸籍も残しておいて、除隊後は男に戻ると言う人もいる」
 
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「私と入れ替わりになったクレオ先輩はどうしたのでしょう?」
 
「クレア君なら男の戸籍は抹消したよ。だからもうクレオという男は法的には存在していなくて、クレアという女だけが存在している」
 
クレオ、いやクレアになったのか。彼、いや彼女がそうしたのなら自分も同じ道だと思った。
 
「では男の戸籍は消してください」
「分かった。まあ多分君はその道を選ぶだろうと思ったけどね」
と隊長は笑って言っていた。
 

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郡合唱隊に居た時も結構多忙だと思ったが、地方合唱隊に居ると忙しさは凄まじかった。ほとんど休みの日が無い。区域内のあちこちの郡のあちこちの町に出かけて、慰問や実演で演奏活動をする。しかしその合間に歌や楽器の練習もしっかりやらなければならない。
 
基本的には地方合唱隊のメンバーには、クラヴィ、ヴィール、フラウトは一般の学校の音楽教師レベルのスキルが求められるので練習を怠れない。楽器や歌唱の練習はしばしば深夜に及び、お風呂に入った後、半ば朦朧とした状態で自分の部屋に戻って、死んだように眠るなどという日が続いた。
 
そしてこの地方合唱隊に居る間にウテラのおっぱいは日に日に大きくなっていった。
 
「最近、胸が揺れて邪魔に思うことがあるんですが」
「君、今ブラジャーは何付けてるの?」
「ブラジャー付けるんですか?」
「なんだ付けてないの?」
「ブラジャーって女の人が付けるものと思ってました」
「だって君、戸籍の上では女になったんでしょ?」
「そうでした!!」
 
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ブラジャーなんてものは触ったこともないので(まだ実家にいたころ一度ジューン姉のブラジャーが干してあったのを取り入れようと触ったら、酷く叱られたことがあった)そんなものを自分が使うというのは面はゆい感覚だ。
 
それで先輩と一緒に町の衣料品店に行ってブラを選んだ。郡合唱隊までは服装規定が厳しく下着も支給品以外のものは身につけてはいけなかったのだが、地方合唱隊になると支給された下着を着てもいいし、自分で町で自由に買ってきてもいいことになっている。ただ仕事の時はユニフォームをきちんと着ていればよいだけである。
 
「これなんか可愛いよ」
「えー?これを私がつけるんですか?」
「君、自分が女の子であることを忘れないこと」
 
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更にはパンツも買おうと言われる。
 
「ウテラって、いつも支給品の色気のないパンティ穿いてるでしょ。ほら、これバックプリントだよ」
「バックプリント・・・・」
「これなんかイチゴ柄だし」
「イチゴ柄・・・・」
 
ウテラは何だか自分の脳みそが破壊されるような気分だった。
 

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しかし先輩にうまく乗せられて、結局可愛いブラやショーツをたくさん買った。
 
その可愛い下着を着けているのをお風呂で見た同僚が
「おお、ウテラもやっと、おしゃれに目覚めたか」
などと言われた。
 
「ウテラって歌はうまいけど、ウブすぎるからね」
「そうそう。もっと大人にならなくちゃ」
「ウテラさ、オナニーもしてないでしょ?」
「オナニーって何ですか?」
「えっと何と言ったらいいのかな。自慰と言ったほうがいい?」
 
「え?でも自慰ができなくなるようにと、おちんちん取られたのに」
「男の子の自慰はできないけど、女の子と同じ器官が作られているから、女の子の自慰はできる」
「そんなのできるんですか?」
「よし教えてやるよ」
 
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それでお風呂から上がった後、先輩が3人でウテラの部屋に来て、ウテラに横になるように言い、股間を露出させた上で、指をお股の割れ目の上の方にある少しコリコリした所に当てるように言った。
 
「なんかここ触ると気持ちいいです」
「そこは女の子が気持ち良くなれる場所だから」
「そこ、サネって言うんだよ」
「へー!」
「医学用語では陰核だね」
「そこに指を当てたまま、ぐりぐりと指を回転させてごらん」
 
それでやってみると・・・・気持ちいい!
 
「あ、気持ちよくなってるね」
「気持ちいいです。でもこんなことしていいのかしら」
「高等学校生まではダメだけど、合唱隊に入ったら、むしろ覚えた方がいい」
「そうそう。将来、お嫁さんになる場合、ちゃんと気持ち良くなることができなかったら、男の人を受け入れられないから」
「私、そのあたりのことがよく分からないんですけど」
 
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先輩たちが顔を見合わせている。
 
「ウテラさ、あんた赤ちゃんができる仕組みとか、結婚って何することかとか知ってる?」
「赤ちゃんって、結婚したら、コウノトリが運んできてくれるんでしょ?」
 
どうもウテラがマジで言っているようだと感じも先輩たちは言った。
 
「あんた知識が無さ過ぎ! 私たちが教えてあげるから」
 
それで先輩たちによるウテラへの「性教育」は半年ほどにわたって続けられ、ウテラは、合唱隊が実は男性で構成されていることを知った時以上の激しいショックを受けたのであった。
 

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ウテラは結局3年間ファム地方合唱隊に所属し、最後の1年は副隊長に任じられて、若い隊員の指導や様々な相談事を受けたりもした。もっともウテラは常識というものが無いので、人生相談ではしばしば先輩に頼ることになり、新入隊員と一緒に「えー!?そうなんですか?」と驚いていた。
 
地方合唱隊のメンバーは毎年3−4人辞めていき、その度に配下の郡合唱隊の中から推薦を受けてメンバーを昇格させる。その辞める理由の大半が
 
「結婚するため」
 
であった。合唱隊のメンバーは裁縫や料理なども厳しく仕込まれているし礼儀作法もしっかり躾られているので、大商店主や貴族などに奥方として望まれることが多い。実際、合唱隊のイベントを主に主宰しているのが、そういう人たちなので、その時に見初められるのである。
 
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もっとも合唱隊のメンバーは戸籍は女であっても元をただすと男なので赤ちゃんを産む能力はない。しかしそういう大商店主や貴族は妾も作るので、子供は妾に産んでもらえばよい。そしてむしろ何人かいる妾さんたちのリーダーになってもらうことを期待されていた。本人が子供を産めないので、よけいな利害感に迷わされることなく、公平に妾たちを管理できるのである。
 

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そして19歳になった年、ウテラは国立合唱隊に昇格した。
 
スカイブルーのブラウスに濃紺のスカートというユニフォームを受け取り、それを身につけて、認証式に臨む。国立合唱隊の主宰者である王太子妃殿下に拝謁して忠誠を誓い、
 
「頑張るように」
というお言葉をいただいた。
 
隊員の控え室に行くと、クレアが寄ってきてハグしてくれた。
 
「やはりウテロはここまで上がってきたね」
「ありがとうございます。クレアさん。私もウテラになりました」
「ああ、男の戸籍は捨てた?」
「捨てました。女の戸籍しかありません」
 
「じゃ、まさか私のライバルになるつもりじゃないよね?」
 
ウテラは目をぱちくりさせる。
 
「私は歌でもヴィールでもクレアさんの足下にも及びません」
「いや、歌じゃ無くてさ」
「へ?」
 
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「あんた、どちら狙っているのよ? 第二王子?第三王子?」
「何のことですか?」
 
「あんた、王子様の奥さんになりたくて国立合唱隊に入ったんじゃないの?」
「へ?王子様の奥さんって、私たち男なのに」
 
「王子の正妃は伝統的に合唱隊から選ばれることになっている」
「そんな馬鹿な。私たち子供産めないから、世継ぎを作れないじゃないですか」
 
「正妃の仕事はたくさんの儀式や交流をこなすことだよ。子供を産むのは側室の仕事。生理があって妊娠もする天然女性には正妃はつとまらないから、私たちのような者から選ぶ。そもそも国立合唱隊の最大の目的は、王子の結婚相手を供給すること」
 
「うっそー!?」
 
突然、ウテラの脳裏にさきほど認証式で自分に声を掛けてくれた王太子妃殿下の顔が浮かんだ。
 
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「まさか、王太子妃殿下も男なの?」
「そうだけど」
 
嘘だ〜〜!? ウテラは自分の価値観ががらがらと音を立てて崩れるのを感じた。
 
「で、どちら狙い?」
とクレアが訊くので、ウテラはニコっと微笑んで言った。
 
「第三王子」
「なぜ?」
「いい男じゃないですか」
「私もそう思う」
「つまりクレアさんと私はライバルですね」
「上等だね」
 
と言ってクレアはウテラと硬い握手をした。
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