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■チョコが好き!(4)

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「一緒に外出してみようよ」などと言われる。僕はそれはちょっと恥ずかしい、と思ったのだけど、うまく乗せられて、一緒に町に出た。
 
女物の服を少し買いそろえるといいよ、などとうまくおだてられて、婦人服売場に行った。きゃー。何だかここ、目のやり場に困る。女性仕様のポロシャツ、セーター、それにスカートをとりあえず1着ずつ買った。それから下着売場に行く。ブラジャーを付けたマネキンとかを見て「ひぇー」と思ってしまう。何だかじろじろ見るのも・・・と思っていたが、宏海はそのマネキンが付けているブラに触り「ほら、触ってごらんよ。これ凄く肌触りいいよ」などと言ってる。
 
「宏海、場慣れしてるね」
「だって、私ふだんは女物の下着ばかりだから。会社行く時だけだよ。男物使うのは」
「あ、そうか」
「信生もハマっちゃったら、きっとそうなるよ」
「ああ、何だか自分が不安になってくる」
 
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服を少し買った後、フレッシュネスバーガーに入り、軽食を取った。
「洋服代、かなり使わせたし、ここは私がおごってあげるね」と宏海。
「ありがとう」
 
「でも、まずは自宅にいる時に女物の服を着て、少し慣れるといいよ。それに慣れたら、自販機にジュース買いに行くのとか、そのまま出ちゃったりするとだんだん平気になっていくよ」
「ああ、なるほど」
 
「でも本当はこうやって、町中を歩くのがいちばん慣れるのにはいいんだけどね。都会って、みんな他人のことあまり見てないから、わりと溶け込みやすいんだよ」
「ああ、それはあるかも」
 
そんなことを話していた時、宏海の携帯が鳴った。
「はい。。え? わあ、それは! 分かりました。えっと、私、今私服なんですけど、構いませんか? あ、はい。私は構いません。じゃ、すぐ行きます」
と言って電話を切る。
「お仕事?」
「うん。銀行のATMのシステムが落ちたらしい。緊急に各支店の窓口を開けて払い出しに対応することになった。行かないと」
「その服で行くの?」
 
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「うん。自宅まで帰ってる時間が惜しいから。どっちみち窓口の人数が足りないから、この際、女子行員の制服を着て、窓口の対応してよって言われた」
「あらら。ふだん女装していることは言ってるんだ」
「うん。同僚の女子とは、女装で休日に会ったり、女子会に出たりしてるからね」
「すごい」
「ごめん。ひとりでも大丈夫かな?」と宏海は僕を心配そうに見る。
「何とかなると思う」
「じゃ、服は今度返してもらえばいいから。じゃ、行くね」
「うん。お疲れ様」
 
宏海は急いで店を出ていった。
 

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僕はひとりになると、急に不安になったが、こうなったら開き直るしかない。とりあえず、携帯サイトなど見ながら、ゆっくりとハンバーガーとポテトを食べ、ドリンクを飲んだ。
 
今日はこのまま帰るかなと思い、店を出て、駅の方へ向かう。専門店街から駅ビルに通じる通路を歩きながら、壁に貼ってあるポスターを何気なく見ていたら、前から来た女性と衝突してしまった。
 
「あ、ごめんなさい」
「いえ、こちらこそ」
 
などと声を交わしたものの、こちらが男声なので向こうはあれ?という表情をしている。ああ、これはやむを得ないなあ。宏海みたいに女の声が出せるようになったらいいのに、などと思ったのだが、次の瞬間、そのぶつかった女性に見覚えがあることに気付いた。
 
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「あれ?」
「あ!山村さん?」と彼女。
「こんにちは、沢口さん」と僕はもう半ばどうにでもなれ、という気持ちになりながら笑顔で言った。それは、行きつけのコンビニのレジ係、沢口さんだった。
 
「わあ、びっくりした。でも可愛い!」
「そうかな?」
「そうそう。こないだ、テレビに女装で出てたよね」
「何だか、みんなに見られてるなあ」
「だって、あれ凄いインパクトあったもん。完璧に女の子してたから」
「ちょっと恥ずかしい」
「でも、ふだんから、こんな格好するんだ?」
「いや、しないんだけど、これ友だちにうまく乗せられちゃって。僕を乗せて女装させた本人は急用が出来て、帰っちゃったんだよね」
 
「へー。あ、今どこ行くとこ?」
「女装させられて、ひとりで放置されて心細いから、もう帰ろうと思ってたとこ」
 
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沢口さんは少し考えている風だったが、やがてこう言った。
「ね。私、ヴァレンタインのチョコを££デパートに買いに行く所だったんだけど、一緒に来ない? 山村君も、特設コーナー行きたいんじゃなかった?」
「あ、行きたい!」
「じゃ、一緒に行こうよ。誰かと一緒なら、そんなに不安じゃないでしょ?」
「うん」
 
「じゃ、今日は女の子同士だし、名前で呼び合おうよ。リサって呼んで」
「じゃ、僕はノブくらいで」
「うん。そうしよう、ノブ」
「OK、リサ」
 

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そういう訳で、僕は駅の近くからUターンして、リサと一緒に££デパートに行き、地下のヴァレンタイン特設会場に行った。
 
会場が若い女の子で一杯である。わーと思うが、自分も女の子の格好をしていると、不思議に、男の格好で来た時と違って、あまり場違いな気分にならずに済んだ。リサと一緒に様々なチョコが並んでいるのを見てまわる。試食できるところでは少し試食したりして、「あ。これも行けるね」などと言ったりして楽しむことが出来た。
 
「でもさ、ノブ、こういう所にひょっとして場慣れしてない?」
「うーん。お菓子売場には慣れてるけど」
「女の子の集団の中にいるのは緊張したりしない?」
「あ、それは全然。でもふだん、男の格好していると自分が浮いてるんじゃないかって思っちゃうけど、この格好なら、そういうこと考えなくて済むからいいって感じ。女装外出なんて、初めての体験だけど、いいね、これ」
「ふーん。ハマっちゃったのかな?」
「これ、絶対癖になりそう」
「ああ、なっちゃうだろうね」
 
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リサと一緒に会場内を一通り見て回った後で、本命チョコ選びに協力した。
 
「**屋の生チョコ・トリュフと、&&&のワインチョコ、あたりがいいかな、って思うんだけど、どうかな?」
「彼氏はお酒強いの?」
「ふだん、あんまり飲んでる所見ない。居酒屋行っても、最初ちょっとビール飲むだけだもんね」
「じゃ、お酒入りはやめといた方がいいかもね」
「だよねー。じゃ、トリュフにしようかなあ」
 
一緒に**屋のコーナーに行く。少し列ができていたが、それに並んで無事、リサの本命チョコを確保した。
 
「後は少し友チョコを仕入れていくかな」
「僕は自分で食べたいのを仕入れよう」
 
一緒にまた会場を見てまわりながら、めぼしいものを適当にゲットしていく。リサは4種類のチョコを確保、僕も6種類の、なかなか普段は見ないチョコをゲットした。
 
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「でも今日は、リサのお陰で、珍しいチョコをたくさんゲットできて幸せ」
「良かったね、ノブ。でも、その格好でなら、またここに来れるんじゃない?ヴァレンタインまで時間があるし」
「やっぱりまだ1人で出かけられる自信無いよ」
「私でも良かったら、付き合うよ。その格好でなら」
「そう?」
「だって、女の子の友だちと一緒に出歩くのは全然問題無いから」
「そうだよね!」
 
その後、少し疲れたね、などと言って、デパートの中の喫茶コーナーに入り、甘いミルクティーなど飲んだが、彼女とは何だか話が盛り上がった。内容はお菓子の話や、芸能人の話、また最近ネットで話題になっていることなどであったが、意外に話が合うことに驚いた。僕は彼女とも携帯の番号とアドレスを交換した。
 
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「なんか時々こんな感じで会いたいね。他の友だちにも引き合わせちゃっていい?」
「えーっと、この格好で?」
「もちろん」
「ま、いっかな。たまに女装するのも楽しい気がするし」
「『たまに』か・・・・それが『時々』になって、『頻繁』になって、その内『いつも』になっちゃうかもね」
「僕ね・・・・それがちょっと怖い気がしてる」
 
「女装は癖になるって言うもんねー。でもさ、今日は自分で食べるチョコばかり買ってたみたいだけど、『本命チョコ』は要らないの?」
「え?僕、別に好きな男の子とかいないし」
「・・・・やはり、ノブ、恋愛対象は男の子?」
「え、そんなこと無いと思うけど。だって、チョコって好きな男の子に贈るんじゃないの?」
「ノブは別に好きな女の子に贈ってもいいんじゃない?」
「うーん。。。。特にそういう人いないしなあ。あ、でもこないだ、指導教官からお嫁さんにしてあげる、なんて言われたけどね」
 
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「ふーん。お嫁さんになりたいの?」
「えー?そんなつもり無いけど」
「でも、そんなこと言ってくれた人にチョコでもあげる?」
「そうだなあ。あげてもいい気がしてきた。恋愛とか関係無く、お世話になってるし」
「ふふふ」
 
結局、僕たちはその後、また特設売場に引き返し、僕の「本命チョコ」と何個か「友チョコ」を仕入れた。リサもまた少しチョコを追加していた。
 
「じゃ、リサ、これ友チョコ」と僕はデパートを出て駅の方に向かいながら、リサにチョコを1個渡した。
「わあ、ありがとう。じゃ、私もこれノブに友チョコ」と彼女もひとつ渡してくれた。
「なんか友だち同士でこういうの交換するのも楽しい気がしてきた」
「でしょ?」
 
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僕は翌日の夕方、例のホテルのラウンジに行き、洗濯した着替えを宏海に返すと共に、友チョコをひとつ渡した。「わあ、ありがとう」と言って宏海は受け取ると、バッグの中に入れていたチョコをひとつ「じゃ、私からも友チョコ」
といって渡してくれた。
 
「でも、信生、今日はひとりで女装で来れたのね」
「ちょっと、勇気出して試してみた」
「ハマり掛けてるね」
「そんな気がする!」
 

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翌日は大学に行き、篠原準教授の研究室に行って、精液の採取と睾丸の組織検査をされた。
 
「うーん。相変わらず精液の中に精子は無いね。でも生殖細胞は確実に数が増えてるよ。もう少し様子を見るかなあ」
「生殖細胞が増えているんなら大丈夫だと思います」と僕は言う。
 
「じゃ、次は2週間後に検査するから、ふつうに毎日オナニーしててくれる?」
「えっと、僕、ふだんそんなにオナニーしないんですけど」
「あ、そうだった。じゃ、ふだんのペースでいいよ」
「はい」
「あ、そしたらオナニーした日を記録してくれないかな。出した量も計ってもらうと、もっといいのだけど」
「あ、計ります。学校の器具借りていきますね」
「うん、頼む」
 
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院生室の方に戻ろうとした時、僕は「あれ」を思い出した。
 
「あ、そうだ。先生、これヴァレンタインのチョコです。先生にあげます」
「へ?」
「お嫁さんにしてあげるなんて言われたし」
「えっと」
「あ、あまり本気にしないでくださいね」と僕は笑って言う。
「うん」と先生は頭を掻きながらチョコを受け取った。
 

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院生室に行くと、いつものメンバーがいた。
 
「こんにちは〜。これみんなに友チョコ」と言って、中原君、真崎君、篭原さんにチョコを1つずつ渡す。
 
「わあ、ありがとう。じゃ、私もみんなに友チョコ配っちゃおう」
と言って、篭原さんもバッグの中から、小さなチョコを出すと、みんなに1個ずつ配った。
 
「あれ、これ##堂のだね」と僕は篭原さんに言った。
「山村君のは§§屋さんね。どこで買ったの?」と篭原さん。
「££デパートの特設売場」
「わあ、あそこ行ったんだ?私もあそこで買ったのよ」
「僕もこれ割といいなと思ったんだけどね。重ならなくて良かった」
 
「でも、山村君、ひとりで男の格好であそこ行ったの?」
「へへへ。女装して、女の子の友だちと一緒に買いに行った」
「おお、やはりそうなっちゃったんだ」
「でも女装外出はまだ2度しかしてないよ」
 
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「何?何?山村って女装するの?」と中原君。
「中原君、こないだの『金リロ』見なかった?」
「あ、あれ見てない」
「もしかして、山村あれに出たの?」と真崎君。
 
「そうそう。凄く可愛い女の子になってたんだよ」
「へー、見たかった、それ」
 
「でも、山村君、というかノブちゃんって呼んじゃおうかな。女の子の格好するんなら、ヴァレンタインの翌日に医学部の院生女子で集まって女子会するんだけど、それに出ない?」
「あ、面白そう。でも、僕、まだお化粧に自信がなくて」
「そしたら、手伝ってあげるよ」
 
「あ、いいな。女子会」と真崎君。
「真崎君も女装して出席する?」
「うーん。ハマりそうで怖いからやめとく」
「山村はハマっちゃったのか」
「そうかも」
 
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「だったら、大学にも女装で出てこない?」
「なんか、それやりたくなっちゃうかも」
 
「今、ノブちゃん、生殖細胞の回復中で、無精子状態になってるらしいけど、女の子になっちゃうんだったら、そのまま無精子でも構わないよね」
「えー?そうなってるの? やっぱり超音波怖いな」
「次は真崎君が生け贄って話」
「ちょっ。俺、聞いてないよ、それ」と真崎君。
 
「でも、睾丸取っちゃえば、精子あるなしなんて関係無いよね」と篭原さん。
「確かにペニスも取って、ヴァギナに改造しちゃうんなら、もっと関係無いね」
と中原君。
 
「でも、どうせ取っちゃう睾丸なら、その前にやはり限界試験に協力してあげるといいよ」と真崎君。
 
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「なんかいつの間にか変な道筋が作られつつある気がするんですけど」
と僕は困ったように言った。
 
「取り敢えず、山村が性転換するというのは既定路線で」
「可愛い女の子になりそうだなあ」
 
僕はどう答えていいのか分からないまま、性転換か・・・と考えて、そんなこと本当にしたくなったら、どうしよう、などと考えていた。
 
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