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■神様のお陰・お受験編(2)

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連休明けからは図書館での勉強会に、最初「あ、その問題集、私たちも買ったけど手に負えなくて挫折してた」などと言って寄ってきた愛花と杏夏が加わり、6月には更に橋本君が
「その問題集、面白そう。僕一応男だけど一緒に勉強させてもらっていい?」
などと遠慮がちに参加を打診してきた。
 
春代が「橋本君って命(めい)と同類だよね?」と訊く。
 
「えー? 僕、斎藤ほどは女装しないけど」
「命(めい)ほどしないってことは、ほどほどに女装するのね。じゃ女の子に準じていいんじゃない?」
 
などと言われて、彼はすっかり女子たちからは女の子扱いされ、下の名前で「正美」と呼ばれて、このグループに入った。
 
愛花や春代は、橋本君に機会あるごとに女装を唆し、息抜きにみんなで遊びに出かけるような時に、わざわざ橋本君のサイズのスカートや下着を用意して、「ほらほら着てみようよ」などと言って着せて遊んでいた。
 
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橋本君はこのグループに入るまでは時々家の中でスカートを穿いたりする程度で、マジで女装外出の経験が少なかったようだった。最初の頃はほんとに恥ずかしそうにしており、杏夏から「はにかんでる様が可愛い」などと言われていた。
 
このグループに更に7月には愛花と中学時代に成績の上でのライバルだったという小枝、それに小枝の親友の百合も加わって、勉強会のメンツは8人に膨れあがった。
 
図書館で勉強しているグループには、他に玖美たちのグループもあった。最初玖美が仲の良い博江とふたりで一緒に勉強していたものに、春代たちと同様、自然に友人が加わっていったものである。はじめふたりに、浩香・綾が加わり、浩香と親しい河合君が最初荷物持ちに徴用されていたのが、いつの間にか勉強会自体にも入るようになり、更には宿題で分からない所があってたまたま博江に聞きに来た紀子も、なしくずし的にメンバーに加えられて6名になっていった。
 
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このふたつのグループは別の問題集をしていたので、お互いに分からないところを教え合ったりしていたし、1年の頃は両者の学力差もあまり無かったので、時々問題集を交換してやってみたりもしていた。また図書館担当のH先生がよく「君たち頑張ってるね」と声を掛けてくれて、分からない所を教えてくれたり、模試などの情報も持って来てくれたりしたし、学校経由でないと買えない教材を取り次いでくれたりもした。
 
この女子たちの動きに刺激されて、1年生の2学期からは松浦君と高宮君が中心になり男子の勉強会グループもできた。こちらも少しずつ人数が増えていき、8人の勉強会になった。こちらも、春代たちや玖美たちのグループと、情報交換していた。
 
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1年生の普通科は2クラス70人であったが、この勉強会に参加している子たちの学力が非常に向上していて、高校入試の時は答案に名前だけ書いて合格したなんて言っていた綾でさえ、11月の実力テストで16位の成績だった。元々中学まであまり勉強していなかった子たちがほとんどなので、伸び代が物凄くあったのである。
 

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この「自主勉強会」はその後多少メンバーの増減があったものの続いていき、2年生になってからは、彼らを応援してくれていた図書館担当のH先生の口利きで、図書館ではなく、もっと集中してやりやすく、声を出しても他の子に迷惑でない、視聴覚教室に舞台を移すことになった。
 
H先生はそこでNHKの高校講座を録画したものを見せてくれたり、英語のリスニング教材をやらせてくれたり勉強会のメンツからの質問にも分かる範囲で答えてくれた。H先生は専門は理科だが、数学・英語も教えたことがあるということで、けっこう色々教えてくれたし、自分でも分からない所は分かりそうな先生(しばしば他校の先生)に確認して教えてくれた。
 
理彩たちの学年の勉強会に刺激されて、ひとつ上の学年にも勉強会グループが生まれた。普通科第1期生(3年生)たちの中で大学への進学を希望する子が12人いたので、H先生がその子たちに声を掛けて、理彩たちと同様に視聴覚教室で放課後勉強をさせた。彼らは分からない所があると、しばしば理彩たちのグループに質問に来た。実際問題として理彩たちのグループのレベルがひじょうに高かったのである。
 
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「君達のグループ、ほんとによく勉強してるね。志望校はどこ?」
「私たち、全員、奈良女子大です」
「斎藤や橋本も?」
「はい、そうです」
「でも、入れてくれるの?」
「試験前に僕も正美も切っちゃうから大丈夫です」
などと命(めい)はよく言っていたが、本気かも知れんと思われていた節もある。
 

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理彩たちの高校は、それまでほとんどの生徒が就職するか卒業後専門学校などに進んでいたので職業訓練を目的にした各種資格の取得が推奨されていた。男女とも実用英語検定・漢字検定・情報処理検定などは受けさせられたし、女子には更に秘書検定や硬筆書写検定など、男子には危険物取扱者やフォークリフトの講習も受けさせていた。
 
命(めい)は男子だったはずが、なぜか秘書検定も受けていた。試験日に行ってみると、男子で受けているのが命(めい)ひとりである。
 
「あれ、命(めい)も受けるんだ?」
「何か申込用紙配られたから申込書を出したんだけど」
「先生は、女子だけに配っていたはず」
「きっと命(めい)が将来性転換した場合にOLとしてやっていけるための先生の配慮だね」
 
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「OLか・・・何か素敵な言葉」
などと命(めい)が言っているので、周囲は少し呆れた様子。
 
そんな感じで命(めい)は秘書検定の3級を取得した。
 
しかし勉強会に参加しているメンツに関して、学校側は2年生以降、このような実務向きの検定の受検を勧めなくなった。そのようなものの勉強をするより、大学受験に向けての勉強をしていたほうが良い、という方針を打ち出し、このグループには代わりに、予備校などが主催する模試を積極的に受けさせるようになった。他の生徒にもその手の試験は年1回受けさせていたが、このグループには2年生の時には年6回、各社の模試を受けさせた。
 

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理彩たちの高校は、とっても田舎にあるので、都会の高校生と違って遊ぶような場所が無い。マクドナルドやミスタードーナツも無ければ、ゲームセンターや遊園地も無いし、動物園や植物園も無い。TSUTAYAやダイソーも無いし、ファミレスやコンビニでさえ無い。ショッピングセンターは車で30分くらい走ったところにあるのみであり、村にはバスも通ってないので、そこに行くには親の車で送ってもらうしかない。
 
そういう訳で、することがないので、恋愛をする生徒も多い。もちろん恋愛をしてもデートするような場所もないのだが、校内やその近くの遊歩道などを一緒に歩くだけでも結構楽しいのである。学校のそばにある川の河川敷には、いつも大量の高校生カップルが並んで座っていた。
 
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そういう訳で理彩たちの高校では工業科にしても普通科にしても、カップルの成立率が異様に高く、うっかり妊娠してしまう生徒も(学校側が把握したケースだけでも)年に1度くらいは発生していた。以前は、妊娠したら本人も妊娠させた側も速攻で退学だったのだが、処分を恐れて対処できないうちに妊娠週数が進んだりするケースがあるということで、現在は何も処分しないから、妊娠したら保健室の先生に相談しなさいと指導している。相談を受けたら本人たちを厳重注意はするが、すみやかに産婦人科を受診させて、中絶を勧めるという方針になっていた。
 
それでも実際には学校に知られないうちに、生徒間で中絶費用をカンパしたりして処理するケースは理彩たちの学年の子だけでも3年間に5件発生していた。なお、保健室には避妊具が置かれていて、使いたい子、使うことになるかも知れない子は、保健室の先生に声を掛ければ自由に持っていってよいことになっていた。
 
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しかし・・・・・
 
そういう「浮いた」話や「生臭い」話は、勉強会をしていたメンツには無縁のことだったのである。そもそも勉強会が一部の例外をのぞいて男女別に形成されていったのも「恋愛問題の発生を避ける」という目的があった。誰と誰がくっついて別れて、などという話から友情が壊れるのを恐れていたし、そんなことしていたら、勉強が手に付かなくなるという懸念もあった。
 
春代たちのグループに「もしかしたら男子かも?」という命(めい)と橋本君が入っていたが、命(めい)は周囲から「ほぼ女の子」とみなされていたし、橋本君も「半分くらい女の子」と思われていたので、恋愛発生の可能性は低かった。そもそも命(めい)と理彩は「成立済みの安定カップル」でもあったし、ふたりも高校卒業までは「友だち」でいるという約束をしていて、校内でふたりきりで散歩したりすることはなかった。スクールバスにはいつも並んで座っていたが勉強の話ばかりしていたので、周囲の子も遠慮無く分からない所を聞いたりしていた。
 
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玖美たちのグループにも河合君が居たが、河合君は元々浩香と仲がよく、本人たちは否定していたが、周囲からは「成立済み安定カップル」とみなされていたのであまり問題はなかった。このふたりは少なくとも高1の段階では「まだキスもしてない」という本人たちの弁だったし、高校在学中はお互いの関係を進展させるつもりは無いと話していた。メール全盛の今の時代に、このふたりは交換日記でお互いの思いをゆっくり育てていたのである。
 
そういう訳で、勉強会のメンツは、同級生たちがデートしたり、校内の芝生やバスの座席にカップルで並んで座って楽しそうにおしゃべりしたりしているのを横目に見ながら、図書館でも通学のバスの中でも、ひたすら勉強をしていたのである。
 
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「ああ、私も彼氏欲しいよぉ」と百合が言ったりする。
「ねぇ、理彩、命(めい)を一晩貸してくれない? 100円払うから」
「僕、100円なの?」
「貸してもいいけど、命(めい)はおちんちん付いてないよ」
「付いてないのか! じゃ借りても仕方ないなあ」
 
「おちんちん、もう取っちゃったんだっけ?」と小枝。
「うん。こないだ問題が解けなかったおしおきで、私が切り取って、冷蔵庫に保管してる」と理彩。
「きゃー、冷凍保存!?」
実際は強制タックされた上で剥がし液を取り上げられているのである。
 
「問題が解けなかったら、切られちゃうんだ!!」
「今度の試験で数学100点取ったら返してあげる約束」
「わあ、厳しい!」
 
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橋本君が思わずお股に手をやっているが、命(めい)本人は笑っていた。
 

H先生は3年生の担任の先生、進路指導の先生などとも連携しながら、3年生の進学希望グループを休日奈良市まで連れて行って塾の集中講座を受けさせたり毎週土曜日に実力テストを受けさせたりしていた。この実力テストは毎週金曜に各生徒に渡しておき、土曜日に各自の家で解かせ、土曜日の夕方先生が自分の車で生徒の家を巡回して答案を回収。採点して月曜の朝返すという方法で8月上旬から始め、11月まで4ヶ月間続けた。
 
土曜の夕方生徒の家で生徒とH先生が顔を合わせることで、生徒側も気合いが入ったし、保護者も「先生がこんなにして下さってるんだからお前も頑張れ」
と生徒を励ますようになったし、また聞きたいことがあるような場合もその時にいろいろ聞いてあげていた。女子の場合は、進学に消極的な親もいたので、先生が親を説得するケースもあった。
 
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このようなH先生の熱心な指導で、3年生たちは物凄く実力を付けていった。
 
そして3年生グループは、国立2名(奈良女子2)、公立2名(県立1,県立医/看 1)、奈良県内の私立8名と全員が現役で4年制大学に合格した。理彩たちの高校から、四年制大学の合格者が出たこと自体が5年ぶり、国立大学への合格者が出たのは実に12年ぶりのことだったらしい。普通科1期生としてはまずまずの成績であった。
 

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このひとつ上の学年の生徒の頑張りのお陰で、学校側も、もっとしっかりした受験対策をという気運が出て来た。
 
理彩たちが3年生になった4月、3年生普通科65人を「短大・専門学校進学コース(略称短専)」と四年制大学を目指す「特別進学コース(略称特進)」に分割する案が急浮上した。どちらに入るかは、基本的には自由ということにしたのだが、実際には3つの勉強会グループ22人(男子9 女子11 性別不詳2)は全員特進コースに入り、それ以外に2年生までは部活をしていて勉強会に参加していなかった西川君たち4人の男子が特進コースを希望して組み込まれた。このクラス再編成は5月の連休明けに行われた。
 
そして、もうひとり、特進に入ってきた子がいた。それが2年生までは工業科にいた香川君だった。彼は職業訓練が中心の工業科にいながら、1年生の2学期以降、中間・期末の成績がいつも学年トップ、実力テストでも理彩・命(めい)に次いで3位か4位(いつも春代と3位争いしていた)だったので、本人自身は大学進学の意志はあまり無かったものの、先生たちに特進コースに来てみんなのお手本になって、などと口説かれて、こちらに来た。(香川君の志望校が無茶苦茶だったのは、それまで本人が何も考えていなかったため)
 
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そういう訳で、3年生の5月からは、特進コース27名、短専コース39名という体制になった。これまで勉強会のお世話をしてきたH先生が特進クラスの担任をすることになった。また、6月には更に4人が短専クラスから特進クラスへの移動を希望し、特進コースは最終的に31人(男16 女13 性別不詳2)になった。
 
香川君は小学生の頃、けっこう命(めい)と親しかったし、高校に入ってからはいつも成績のトップ争いをしている春代とクラスを越えて話す機会が多かったので、自然と命(めい)たちの勉強会に参加し、この勉強会の唯一?の男子メンバーになった。ちょっと見た感じには、命(めい)・橋本君に自分と男子3人のような気がするのに「唯一の男子」と言われて、最初香川君はキョトンとしていた。
 
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