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■女たちのベビーラッシュ(3)

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病院側は詳細を告げないまま、検査のためと称して貴司と美映の口腔内から粘膜を取らせてもらい、それで病院の費用でDNA鑑定を行った。その結果、貴司と緩菜の父子鑑定は99.99%以上の確率で「親子である」と出て、美映と緩菜の母子鑑定は「親子である可能性は0%。親子ではない」という結果が出た。なお赤ちゃんの血液型はこの鑑定ではA型と出た。また性別も男の子であるという鑑定だった。
 
それで医師は貴司に「お話があります」と言って呼んで尋ねた。
 
「失礼ですが、そちらではお子様を作られる時に体外受精とかなさいましたでしょうか?」
 
すると貴司は京平のことを訊かれたのかと勘違いし
 
「ええ。妻の卵子がどうしても育ってくれなかったので卵子を友人から借りたんですよ」
 
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と答えた。
 
それで医師はホッとしたのであった。
 
体外受精なのだったら言っておいて欲しい!と思いはしたものの、自分たちのミスとかではなかったことから病院側は安堵した。
 
ここで医師たちは貴司と前妻の間に、別の子供がいたことを知らなかったのでその「体外受精」で緩菜が生まれたものと勘違いしたのである。
 
それで病院側は何事も無かったかのように、美映と緩菜を退院させた。なお、停留睾丸については、大きな病院を受診した方がいいと言って、紹介状を書いた。
 

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ところで千里は、2015年6月に京平を産んでからずっとお乳が出ていたのが、2017年11月に緩菜を妊娠した所でお乳は出なくなった。しかし2018年8月に緩菜を出産すると、またお乳が出るようになった。
 
このお乳の処理に関しては、羽衣が千里(千里1)に付けてくれている眷属・ヤマゴの指示で搾乳しておくと、それがいつの間にか無くなっていた。実際はヤマゴと連携した《いんちゃん》か《たいちゃん》がそれを貴司の家に運び、それを“実は出産していないのでお乳が出ない”美映が緩菜に哺乳瓶であげていた。
 
美映は初期の頃搾乳を試みたもののどうやっても出なかったのが、搾乳中に眠ってしまっていると、いつのまにか搾乳ボトルが満杯になっているので、私って眠っていると、その最中にお乳が出るのかも、と解釈して、あとは特に疑問を持たないまま、そういう生活を続けていた。
 
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美映はわりと、アバウトな性格である。
 
なお、千里がお乳が出るようになったので、千里は由美にもお乳をあげることができるようになった。早月もたまにお乳を欲しがるので、早月にも飲ませていたが、早月は千里のお乳より桃香のお乳の味の方が好みのようである。
 
「でも千里しばらくお乳出なかったのにまた出るようになったのは、体調が回復してきたんだね」
 
などと桃香は言っていた。この時期、桃香のお乳はさすがに出産から1年以上たち、出が悪くなってきていたので、千里のお乳が出るようになったのは、桃香としては大いに助かった。
 

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2018年9月12日(水).
 
月山淳がとうとう性転換手術を受けた。
 
若い年齢で性転換した人が多いクロスロードのメンツの中で最後まで男の身体のままであったのが、淳とあきらであったが、ちょうどソフトハウスの方の仕事が一段落し、また和実が仙台で開いているメイド喫茶クレールの経営も安定していたのでここで手術に踏み切った。
 
淳は1981年6月17日20:21、今治市の生まれで、性転換の時点で37歳であった。性転換手術は費用も掛かるし、周囲との関係の問題、仕事の問題などでどうしてもこのくらいの年齢になってやっと手術できるようになる人も多い。淳の場合は、資金的には足りていたのだが、やはり仕事がなかなか休めないということから、この時期の手術になった。淳は手術後1月末まで仙台で和実と一緒に過ごして療養し2月から東京のソフトハウスに復帰する予定である。
 
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淳のパートナー和実(1991年11月16日15:03酒田市生)は2012年7月25日に20歳で性転換手術を受けている。彼女はすぐに戸籍を女性に変更し、ふたりは2015年6月17日に婚姻届を出したが、淳はこの婚姻を維持するため、戸籍上の性別は変更しないことにしている。戸籍の性別と実態上の性別が一致していないと色々不都合もあるのだが、同性婚が認められていない以上やむを得ない所である。
 
なおふたりの間には2016年7月7日に長女・希望美(のぞみ)が生まれている。実際には代理母さんに産んでもらい、1年後に特別養子縁組が認められて、ふたりの実子になっている。
 

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「やっと女の子になれたね」
と集まったクロスロードのメンツが祝福して言う。
 
「まあ『女の子』というほどの年齢ではないけどね」
「女の身体になれた感想は?」
「まだ凄く痛くて、感想どころじゃないけど、やっと解放されたって気分」
「そうそう。中身は女なのに男の身体に拘束されていたんだよね」
「やっと自由になれたって感じだったね」
 
「あとはあきらだけか」
「あきらさん、いつ性転換するの?」
「12月にすることにしている」
「とうとうか」
「これでクロスロードのメンツからおちんちんが全て消滅するのかな」
「おちんちん完全消滅祝いのパーティーしようよ」
「じゃ、あきらさんの身体が落ち着いたあたりで」
 
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「でも淳さん、いつ頃までおちんちんは立っていた?」
とあきらが訊く。あきらはもう4年ほど前からちんちんが立たなくなっている。
 
「手術直前まで立ったよ」
「え?」
「嘘!」
「だから性転換手術前夜に和実と男女型のセックスしちゃった」
「すごーい」
「あれやったの、5年ぶりくらいだったね」
と和実。
「うん。和実が女の身体になった記念に男女型でやったもんね」
「なるほど、なるほど」
 
「だけど松井先生って悪趣味でさ。私はもう役立たずになったちんちんを切るより、現役バリバリのおちんちんを切る方が楽しい、なんて言ってた」
と淳。
 
「私のはもう役立たずだけど」
とあきら。
 
「できたら、嫌だ!切らないで!女になりたくない!と泣き叫んでいる患者を強引に手術室に運び込んで、強制的に性転換してしまうのが好きだとも言ってた」
 
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「それ犯罪だと思う」
「でもアメリカでそれ数回やってるみたい。日本でもやったことがあるみたい」
 
「よく訴えられなかったね」
「自分では踏ん切りが付かなかったから、女になれて嬉しいと患者はみんな言ったらしいよ」
「まあ最後の最後で迷ってる人たちって多いからね〜」
 

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2018年10月11日(木).
 
2月に冬子の精液を人工授精して勝手に妊娠した!若葉が自身3人目の子供となる女の子・政葉(ゆきは)を出産した。
 
冬子は自分の子供が産まれているとは全然知らず、政子は妊娠を発表したばかり、和実も体調不良(実は妊娠していた)で、この出産に立ち会ったのは、若葉の母以外では、メイド時代の同僚の麻衣、古い友人で若葉の最初の子供・冬葉の父である野村治孝と貞子の夫妻、2番目の子・若竹の父である紺野吉博らであった。
 

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その翌日10月12日(金).
 
冬子・政子の高校時代の友人・仁恵が最初の子供を出産した。
 
彼女は昨年6月に結婚した。彼女は同じく高校時代の友人・琴絵といっしょに、ローズ+リリーが“なんちゃって休業”していた時代、ふたりの実際の活動情報をホームページで広報する《千葉情報》というサイトを運用していた。ローズ+リリーには長いことファンクラブが無かったのだが、それができた後は、そちらの作業を実質担当するようになっていた。
 

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明けて2019年。
 
1月4日。“千里と信次の娘”由美が、仙台の産婦人科で生まれた。代理母さんは一週間後に病院から姿を消した。その結果この子は「捨て子」ということになり、病院の院長が職権で出生届を出した。
 
出生証明書には、母:不明、父:川島信次、と記載されたが、その信次は死亡している。それで、この子は信次の妻である川島千里に引き渡され、千里は養子縁組の申請を出した。申請はすぐ認められ、1月29日付けで千里は由美の法的な母親になった。
 
そして“千里”は1月いっぱいでJソフトを退職した。
 
「子育てが大変でSEと両立できないので」
と“千里”は言ったが、実際には千里1本人は、自分が10月から1月までJソフトに復帰していたなんて、全く知らない。
 
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この時期、千里1はまだプロレベルの楽曲を書くまでの力は戻っていなかったもの、編曲作業ならできるので、そういう作業を雨宮先生から回してもらい、これが結構な収入になっていた。
 

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2月3日。政子の最初の子供である、あやめが生まれた。結局政子はこの子の父親について、若葉・冬子と鱒渕マネージャー以外には誰にも明かさなかった。(政子の母でさえ知らない)
 

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3月11日。和実は“奇跡の子”明香里(あかり)を帝王切開で出産した。
 
淳は最初は2月から会社に復帰する予定だったのだが、和実のお世話をするためと、その間メイド喫茶の経営のため、3月いっぱいまで休職期間を延長させてもらっていた。実際にはメイド喫茶は和実の親友の梓と、チーフのマキコが何とか運用していた。
 
今回の出産でも、フェイの時と同様、最後の付近は青葉と千里2がほとんど付きっきりで和実の体調をコントロールしていた。
 
むろん青葉も千里もふたりだけでこの監視をやるのは体力的に不可能である。実際には大半の時間、各々の眷属をそばにつけておいて、自分は1日1回くらいチェックするようにしていた。
 

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3月29日。上島雷太と茉莉花(春風アルト)の最初の子供・美音良(びおら)が生まれた。ふたりは2008年10月12日に結婚したが、結婚して10年半経過しての初めての子供であった。上島雷太40歳・茉莉花32歳である。
 
「不妊治療なさいました?」
と記者から訊かれた上島は
「いえ、自然妊娠なんですよ」
と笑顔で答えた。
 
そして同日、作曲家協会の会長は上島雷太の謹慎を解除すると発表した。
 

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2019年4月1日(月)。
 
水鳥波留が信次の忘れ形見・幸祐を出産した。
 
波留は信次が死亡するわずか3日前にしたセックスでこの子を妊娠した。信次死亡のショックで会社を辞め、埼玉県久喜市に住む姉の家に転がり込んだ。そこでしばらく傷心を癒やしていたのだが、その時、妊娠に気付く。産むべきか中絶すべきか、かなり悩んだものの、自分が子供を産む機会は今回だけかも知れないという気がして、出産に踏み切った。
 
精神的にも経済的にもかなり姉夫婦に負担を掛けてしまったが。
 
幸祐の存在を千里たちが知るのは、少し先のことになる。由美と幸祐は同学年の姉弟(しかも3ヶ月違い)ということになる。
 
そして、これでベビーラッシュも一段落することになる。
 
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4月8日(月).
 
青葉の姉弟子で事実上の師匠でもある菊枝が、千里(千里1)を岡山に呼び出し、ふたりは会って話をした。
 
菊枝は2017年夏のクロガーとの対決で重傷を負い、あれから1年ほど入院していた。クロガーと羽衣の対決で羽衣がかろうじて勝利できたのは、その直前に彼が菊枝とやりあっていたのもひとつの要因である。また菊枝がトドメを刺されなかったのは、そこに羽衣や千里が現れたからでもある。
 
菊枝は昨年春に退院したものの、ここ1年ほどはリハビリをしながら少しずつ霊的な能力を研ぎ澄ませてきていた。しかし困っていたことがある。それは「エネルギータンク」たる千里の不調である。
 
青葉・天津子・菊枝の3人は千里の莫大な霊的エネルギーを霊能者としての活動のエネルギー源にしている。その千里が2017年7月のクロガーとの対決で霊的な能力を失ってしまったため、この3人はここ2年ほどお互いにパワーを融通しあってはいたものの、絶対的なパワー不足に悩んでいた。
 
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基本的には本人が少しずつパワーを回復させてくるのを待ち、見守っていたのだが、菊枝はとうとう我慢できなくなって、千里を呼び出したのである。本当は東京まで来たかったのだが、岡山くらいまで来るのが限界だったのである。
 
「千里さんが物凄い霊的なエネルギーを持っていたことを思い出して欲しい」
 
菊枝は千里1が自分の能力に気付きやすいように、千里1が体内に持っている勾玉を刺激してみた。千里1もその感触に記憶があったので、少し考えてみると言った。
 
この勾玉は千里が高校2年の時に、唐津で松浦佐用姫(まつらさよひめ)から頂いたものである。
 

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さて、上島雷太は4月から作曲家活動に復帰したのだが、この1年間彼の代わりにケイが大量の楽曲を書いてくれていたと思い込んでいる町添専務はケイをねぎらいに来た(町添はしばらく業務の中核から外されていたので、真実を知らない)。ところがそこでケイが大量に曲を書いた反動で絶不調に陥っていると聞いて驚く。
 
それで町添は、今度はケイの楽曲の肩代わりが必要と思い込み、千里や鮎川ゆまなどケイに近い作曲家たちを集めて代理を依頼した。この会議の参加メンバーで本当のことを知らなかったのは、町添と千里(千里1)の2人だけである。しかし他の参加者はこの話は千里1に奮起を促すことになると思い、何も言わなかった。
 
千里は会合からの帰り、マリと一緒にタクシーに乗ったのだが、マリの極めていい加減な道案内にタクシーの運転手さんが
 
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「お客さん、目的地はどこですか?」
などと言い出す。
 
千里はボーっとしていたのでタクシーが迷走していることに気付かなかったのだが、ふと外を見ると東京体育館なので、千里は「ここで降ろして下さい」と言って、マリと一緒にタクシーを降りた。
 
そしてその付近を散歩している内に、お人形さんの持ち物のような感じの小さな手鏡を拾った。
 
高校時代にここでウィンターカップを戦った時の記憶が蘇る。それとともに、自分が「何か思い出さなければならないことがある」ということに気付いた。
 

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更に高3のインターハイで使用した埼玉県の本庄市総合公園体育館で千里は“剣”を拾う。
 
千里は“鍵”を開けなければならないと思った。
 
それから一週間にわたり、千里1は信次の遺品のムラーノを駆って、西は佐賀県の唐津から、北は宮城県の鮎川まで走り回り、ついに2年前にコネクションが切れていた12人の眷属とのつながりを回復したのである。
 
千里1は次いで自分の車であるアテンザに乗り換えて、出羽の八乙女のひとりひとりと会う。最後に4月30日の朝8時、羽黒山で美鳳と再会し、千里1は一昨年の7月に失った霊的な能力をほぼ回復することができた。
 
そして12人の眷属たちはあらためて美鳳から千里の守護を命じられた。
 

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千里が美鳳との再会を果たしてから帰ろうとしたら、アテンザがバッテリー切れ、燃料切れになっていることに気付く。
 
ちょうどそこに「出羽山にお参りするとバスケットが強くなる」という噂に惹かれてやってきた貴司・美映・緩菜の親子と遭遇する。貴司は千里がバッテリーと燃料が切れているというのを聞くと、燃料を少し分けてくれた上で、ブースターケーブルを繋いでアテンザのエンジンを始動してくれた。
 
この時、美映は女の勘で「こいつは自分のライバルだ」と感じ取ったが、千里も実質的な「貴司奪回宣言」を視線に込めていたのである。
 

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5月1日(水)、東京に戻った千里(千里1)は美容室に行き、長い髪をバッサリ切ってしまった。
 
髪を切った千里を最初見た時、桃香は
「どなたでしょう?」
と言った。
 
「私、千里だよ」
 
「嘘!?千里なの?髪どうしたの?」
と桃香が悲鳴のような声をあげる。
 
「自分がなまっていることに気付いたから鍛え治す。この髪が元の長さに戻る頃までひたすら頑張ってレベルアップする」
 
「はぁ・・・まあいいけど・・・。千里、女の子だよね?」
「そうだと思うけど」
「確かめていい?」
「一周忌までは待って」
「分かった!」
 
それで千里は毎日10kmのジョギングと腕立伏300回・腹筋300回・背筋/側筋、28mダッシュなどの基礎トレーニングを自分に課した。
 
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女たちのベビーラッシュ(3)

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