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■少女たちの七五三(2)

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それで一度虫干ししてから、七五三に間に合うように送ってくれるということだった。それでその送ってもらったものを玲羅には着せればいいなと津気子は思った。しかし千里はどうしよう?と思う。
 
実は適当な男の子の従兄が居ないのである。津気子の兄・清彦の所には息子が3人いて、一番上の秀彦は千里より2つ上だが、その下に千里と同い年(学年は1つ下)の邦春、千里より2つ下の浩之が控えているので、こちらに洋服は回ってこないのである。
 
武矢の親戚は、武矢の弟の弾児の所には昨年男の子が1人(顕士郎)生まれたばかりである。どうしようかと思っていたら、武矢と同じ船に乗っている漁労長の岸本さんから服がもらえるという話が飛び込んで来た。
 
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実は武矢と岸本さんは必ずしも相性が良くない!しかし相性がよくないからといって喧嘩するほどお互い若くもない。それに実はもう60歳を越えている船長の鳥山さん(船主でもある)がひじょうに好人物で、漁労長と機関長が対立しないように、うまく調整している。
 
(多くの漁船では船主が自ら漁労長になるのだが鳥山さんは岸本さんが優秀なのを知っていたので彼を漁労長として雇った。機関長としては武矢が優秀なのを知っていたので同様に雇ったものの、ふたりの相性がよくないのは計算外であった)
 
また武矢と岸本さんは微妙な関係ではあるものの、岸本さんの奥さんと津気子には対立関係は無い。夫同士が衝突しないようにという配慮もあり、毎年お中元・お歳暮を贈りあっているし、旅行に行ったりした場合のお土産もこまめに届けているので、お互い「ツキちゃん」「ヒロちゃん」と呼び合う程度の仲である。
 
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それで津気子としては岸本さんからなら着物をもらってもいいかなと思った。岸本さんの所も小学3年生の女の子と小学1年生の男の子がいる。その弟君が3歳の時に使った服をもらえるのだろうと津気子は思ったのである。津気子は岸本さんの奥さんと電話で話したが
 
「誰かにあげられるかもしれないから、といって取っておいたからツキちゃんとこの千里ちゃんが着てくれるなら良かったわぁ」
などと奥さんは話していた。
 
「でも玲羅ちゃんも一緒にやるのなら、玲羅ちゃんの方の服は?」
「それはうまい具合に親戚からもらえることになったのよ」
「ああ、それなら良いね」
 

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その年、1994年10月は15日が土曜だったので、この日に七五三をする家が多かったようである。近所のアメリカ人(国籍は日本)のタマラちゃんも七五三をするということで(彼女の一家は一応クェーカーであるが、タマラのお父さんは仏像マニアである!)、可愛い和服を着ていた。
 
村山家では、玲羅用の着物(吉子と愛子が3歳の時に使用したもの)は既に郵送されてきていたのだが、津気子はこれをまだ開封していなかった。そして岸本さんの奥さんは10月14日(金)の午後に
「ついでがあったから持って来たよ」
といって、こちらまで持って来てくれた。しかし金曜日は船が戻って来る日で忙しかったので中を見ていなかった。
 
なお肌襦袢と足袋は先日旭川に出た時にイオンで2人分買っておいた。
 
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そして土曜日は「漁協の会合があるから」と言って、武矢は朝から出かけていってしまった。
 

武矢が出て行ってしまった後で、津気子は取り敢えず玲羅に服を着せようと思った。それで姉の優芽子が送って来てくれていた箱を開封する。
 
「あれ?なんで2着あるんだろう?」
と津気子は思った。
 
中には女の子用の着物が2枚入っているのである。被布も2枚、草履も2足入っている。
 
津気子は考えた。先日姉と電話した時に姉は
「吉子と愛子が着た着物を送ってあげるよ」
と言った。津気子はそれを
 
《吉子が着て愛子が着た着物を送ってあげる》
という意味にとったのだが、おそらく愛子は吉子のおさがりを着たのではなく別途新調したのではなかろうか。それで吉子の着た服と、愛子の着た服とがあったので、両方送ってくれたのか!
 
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でも2着あっても困るんだけど!?
 
2つの着物は片方が赤で牡丹柄、片方がピンクで桜柄である。玲羅にちょっと羽織らせてみると、どうも赤の牡丹の方が似合いそうだ。そこで赤い着物を着せてあげることにした。
 
津気子は自分では和服を着ないので、他人に着せてあげるのも経験が無いのだが、子供の服だし何とかなるだろうと考え、図書館で借りてきた『こどもの和服の着せかた』という本を見ながら頑張って着せる。
 
何とか1時間ほど掛けて着せることができた。
 

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「さて、次は千里だ」
と自分に声を掛けてから、岸本さんからもらった袋の中身を取り出す。
 
「え!?」
 
津気子は大いに困惑した。その袋の中に入っていたのは、黒地に赤い手鞠やピンクの桜、白い雪輪などが描かれ、金糸で金糸雀だろうか?鳥の刺繍まで入った、豪華な着物である。袋の中に見えていたのが黒い生地だったので、津気子はてっきり男の子用の着物だと思い込んでいたのだが、これはどうも女の子用の着物っぽいのである。被布と草履、髪飾りと巾着まで入っているが、被布と草履はピンクで、どう考えても女の子用だ。被布は最近男の子にも着せる人たちがいるが男の子にピンクの被布は無いだろう。そして男の子には髪飾りはつけないであろう。
 
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私・・・間違って玲羅用のと言っちゃったっけ?千里用って言わなかったっけ?と津気子は焦って考える。岸本さんの所にはお姉ちゃんと弟君がいる。津気子は千里に着せる着物が欲しかったので、弟君が着た着物を借りられないかと言ったつもりだったのだが、どこかで間違ってお姉ちゃんの着物と思われてしまったのだろうか? どうしよう?と思う。
 

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その時、訪問者があった。千里のお友だち・タマラとそのお母さんのヤヨイである。
 
「ツキコさん、およういできました?」
 
タマラは割としっかりした日本語(3歳並みの)を話すが、ヤヨイさんの日本語は、かなーり怪しい(彼女はハワイ生まれの日系3世である)。
 
「あ、えっと、玲羅に着物を着せたところで・・・」
「ああ、じゃ、後が、チサトちゃんにきせるのね。待ってますから、一緒神社に行こう」
「そ、そうね」
 
と言いつつ、津気子はどうしたらいいんだろう?と悩む。いっそ千里はこのまま普段着で連れて行くか?
 
と思っていた時、津気子の携帯が鳴る。武矢である。
 
「おい、すまんが、俺の鞄の中に入っている給油記録簿を持って来てくれ」
「えっと、私、子供たちを七五三に連れて行こうと思っていたんだけど」
「あ、そうか。でもこれも急ぐんだ。七五三は他のお母さんに頼めない?」
「えっと、そんな頼むと言っても・・・」
 
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と津気子が口ごもった時、ヤヨイが言った。
 
「ツキコさん、用事だったら、私がチサトちゃんとレイラちゃんも連れていこうか?」
「ほんと?」
「すぐそばだし、だいじょーぶよ」
 
それで津気子は武矢にお友だちのお母さんに頼むことにしたから、そちらに持っていくと伝えた。それで電話を切ってからヤヨイに頼む。
 
「そしたら済みません、お願いします。玲羅はこの服で、千里は今着ている普段着のままでいいですから。こちらお布施です」
と言って、3000円入れている封筒をヤヨイに渡す。
 
「いいよー」
とヤヨイが言うので、津気子は武矢の鞄の中から言われたノートを探し出し、ヤヨイに後事を託してミニカ・パセリに乗ると漁協へと車を走らせた。
 
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一方ヤヨイは、ふたりともそのままでいいと言われたので、玲羅と千里を連れて神社に行こうとしたものの、玲羅は可愛い赤い着物を着ているが、千里は普通のセーターとズボンであることに気付く。
 
「おお、チサトちゃん、お着替えしなきゃ!」
 
と言って、部屋の中を見ると、女の子用の和服が2つある。
 
「これどっち着るの?チサト、どちらが好き?」
 
千里は何だかキラキラした刺繍のある黒地の着物のほうが好みという気がしたので「こっち」と指さした。
 
「いいよー。じゃこれ着せてあげるね」
 
元々自分でも和服をよく着ているヤヨイは手際が良い。この日も色留袖を着ている。それでほんの10分ほどで、千里にその黒地に手鞠や桜の模様がある着物を着せてあげた。
 
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そしてヤヨイはタマラと千里・玲羅の3人を連れてすぐ近くのP神社につれていったのである。
 

ヤヨイはそれで3人を連れて神社に行き、神社の社務所で
 
「シチゴサン、おいのり、よろしくー」
と言った。
「はい、いいですよ」
と老齢の翻田宮司は言う。
 
「あ、そうそう。これムラヤマさんからの寄付」
と言って、封筒ごと渡す。
「うちのタマラの寄付はいくら出すといい?」
「お気持ちでいいですよ」
「オキモチって?」
とヤヨイが訊くと、さすがに外人さんには分からないよなと宮司も思い
「じゃ千円以上で」
と言ったので
「じゃ1500円くらい出すね」
とヤヨイは言う。
 
「はいはい」
と宮司は笑顔なので、ヤヨイは財布から1000円札と五百円玉を出して渡した。
 
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それで巫女の装束を着け、今日は女子高生くらいの感じの年齢になっている小春がタマラ、千里、玲羅と、引率者のヤヨイまで含めて4人の前で大幣を振り簡単なお清めをする。
 
その上で昇殿し、宮司自身が太鼓を叩き、小春が鈴祓いをし、龍笛を吹いて七五三の祈祷をした。千里は小春の龍笛の音を聴き「格好いい笛だなあ」と幼心に思った。
 
祈祷が終わった後、小春が写真を撮ってあげた。ヤヨイとタマラ、千里と玲羅の姉妹、そして4人並んだところをヤヨイのカメラ(カルディアミニ)と、写ルンですで撮影した。写ルンですは、後で丸ごと津気子に渡すことにする。
 
(この当時はまだ普及価格帯のデジカメは無い。デジカメ時代を到来させたQV-10の発売は1995年3月10日)
 
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「その時の記念写真がこれ」
と言って千里が見せると
 
「可愛い!」
という声があがった。
 
「ねえ、これカラーコピー取らせて」
と蓮菜。
「いいけど」
 

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「でもその話には疑問がある」
と恵香は言った。
 
「なんで岸本さんは女の子の服をくれた訳?千里の服ではなく、玲羅ちゃんの服を頼まれたと思ったの?」
 
と、恵香は今年の七五三の記念品“藁造りの三尾の狐”を作りながら尋ねる。この狐は、小春が千里たちのグループに作り方を教えてくれたもので、なかなか珍しいものである。小春はこの神社に来る前、前任の神社(千歳市の近くらしい)でも子供たちに教えたらしいが、そちらの伝承は途切れてしまっているらしく、現在これを出しているのはここだけかもと言っていた。
 
「ううん。岸本さんはうちは2人とも女の子だと思い込んでいたんだよ。実際、私は男の子の格好で岸本さんの奥さんの前に出たことなかったと思うよ」
 
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「なるほどね〜。千里の小さい頃の実態がよく分かる話だ。でもお父さんの仕事仲間の奥さんなら千里の性別を知らなかったかも知れないけど、いくら何でも伯母さんは知っているよね?それなのになぜ2枚、女の子の和服を送って来たわけ?」
 
と恵香は疑問を呈する。
 
「それはよく分からないんだけど、愛子の推理ではこういうことなんだよ」
と千里は愛子が考えたことを話す。
 
「優芽子伯母ちゃんはうちのお母ちゃんから私と玲羅の2人の七五三をまとめてやっちゃうという話を聞いた。2人七五三するなら着物は2枚必要。偶然にも吉子ちゃんの着物と愛子ちゃんの着物と2枚ある。だからそれを2枚とも送ればいいだろうと」
 
「男の子に女の子の服を着せるわけ?」
「優芽子おばちゃんって、のんびりした所があって、わりと何も考えてない」
「なるほどねー」
 
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「この写真は誰に見せたの?」
と玖美子が訊く。
 
「岸本さん夫婦に見せただけで、お父ちゃんには見せてない」
「ああ、見せられないだろうね」
「普段着で連れて行っていたら、せっかく着物をくれた岸本さんに悪かったから、これでいいのかも、とお母ちゃんは言っていた」
 
「ふむふむ」
 
「更に開き直って、ピンクの着物も私に着せて、私と玲羅が並んでいる所を写真に撮って、優芽子伯母さんに送ってあげたらしい」
「ああ、完全な開き直り」
 

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少女たちの七五三(2)

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