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■少女たちの予定は未定(3)

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ある記憶ではこのようであった。
 
高熱でうなされていたら、医師が来て言った。
 
「君の病気の正体がやっと分かったよ」
「そうですか」
「君は男死病(だんしびょう)だ」
「だんしびょう?」
「男の子だけに発症して、死に至る病気だ」
「だったら私死ぬんですか?」
「男の子のままだと死ぬ。それで悪いけど、君、男の子をやめてもらう」
「はい?」
「手術して女の子にするから。女の子になれば死なずに済む。おちんちん切るけど、君の命を救うためだから、悪いけど、ちんちんは諦めて」
 
「ちんちんは無くていいです。切って下さい」
と言いつつ、私、女の子だから、ちんちんなんて無いはずなのにと思う。
 
「分かった。じゃ手術しようね。麻酔打つけど、目が覚めた時はもう君は女の子だよ」
 
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それで千里は麻酔を打たれた。その後記憶は少し途切れている。
 
やがて意識を取り戻した千里に医師は言った。
「手術は成功したよ。君は女の子になってしまったけど、これで君は助かったから。熱もすぐ下がるよ」
「ありがとうございます」
 
「手術した君の新しいお股見る?後にする?ちょっとショックかも知れないし」
「いえ大丈夫です」
「じゃ見ようね」
 
それで医師は千里の病院着のズボンとパンティを脱がせ、そこに巻かれている包帯を外した。
 
「え!?嘘!?」
 
15-16cmの立派なおちんちんがあって屹立しているし玉袋まで付いていた。
 
女の子になる手術を受けたはずなのに、どうしてこんなものがあるの〜〜!?と千里は頭の中が混乱した。
 
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別の記憶ではこのようであった。
 
母は千里の枕元に来て言った。
 
「あんたの熱がなかなか下がらないからさ、あんたがいつもお世話になってるP神社で訊いてみたら、宮司さんが、身代わりを作ればいいと言うのよ。それでこれもらってきたから、自分の名前と生年月日を書いて、息を吹きかけて、身体をさすって」
 
それで母が千里に手渡すのは、和紙で作った人型(ひとがた)である。
 
それで千里が人型にボールペンで「村山千里・平成3年3月3日生」と自書し、息を吹きかけて身体をさすると、その人型がベッドに入り、自分は外に出てしまった。
 
あれ〜と思うが、自分は病室の天井の隅で、紙の人型がベッドに寝ているのを見ている。
 
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そしてそこに、大鎌を持った黒い衣裳の人物が現れると、
「村山千里・平成3年3月3日生・男だな?」
と言う。すると人型は
「はい」
と返事をした。すると、黒い衣裳の人物はその人型の中から火の玉のようなものを取り出し、それを持って、どこかに消えて行った。
 

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別の記憶ではこのようであった。これは↑のバリエーションという気もするが、物凄く後味が悪かった。
 
千里が高熱にうなされて、ベッドに寝ていたら、小春が来て言った。
 
「千里、あんたもうすぐ死ぬから覚悟を決めてね」
「嘘〜!?私死んじゃうの?」
「もう寿命が尽きるんだよ。でもあんたを助ける方法を思いついた」
「どうやって?」
 
「千里、ここに入って」
と言って小春が持ち込んできたのは、巨大なカプセルのある機械である。
 
それで千里がカプセルに入ると、小春は機械のスイッチを入れた。光か千里を通過していく。まるでコピーでも取られている感じ。
 
と思ったら、機械が止まり小春が
「コピー終わったよ」
と言う。それでカプセルから出ようとすると、カプセルの中にもうひとり自分が居る。
 
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「どうなってんの?これ」
「千里が死ぬ予定は変えられないから、コピーを取った。それで片方はこのまま死んでもらうけど、片方は生き延びられる」
 
「え〜〜!?」
 
「だからどちらでもいいから、ベッドに戻って」
「戻ったらどうなるの?」
「ベッドに戻った方の千里が死ぬ。戻らなかった方は生き延びる」
 
「私戻りたくない」
「私戻りたくない」
と2人の千里は言い争う。
 
「どちらも同じ千里なんだから、どちらでもいいんだけど」
と小春は言っている。
 
「でも死にたくないよう」
「でも死にたくないよう」
 
と言っていたら、小春は片方を殴って!気絶させてしまった。そして気絶した千里をベッドに寝かせる。
 
もうひとりの千里は「わぁ」と思いながら、それを見ている。
 
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「千里、隠れよう」
「うん」
 
それで千里と小春は部屋の天井の隅に隠れた。それで見ていたら、黒い服を来て、大鎌を持った人物がどこからともなくやってきた。そしてベッドに寝ている千里の身体の中に手を入れると、何か炎のようなものを取り出した。
 
そして去って行った。
 
小春と千里は下に降りた。
 
小春がベッドに寝ている千里を見る。
「うん。死んでる。ご愁傷様」
「きゃー」
「でもこちらの千里は助かったんだから、いいじゃん」
「小春、どうやって気絶させる方を決めたの?」
「適当」
「ひぇー」
「だってどちらも同じ千里なんだから、どっちでもいいじゃん」
 
つまり、私の方が、小春に殴られて、ベッドに横たえられ、死神(?)に炎のようなものを奪われて死亡したかも知れないわけだ。
 
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「あの黒い人が持っていったものは?」
「生命(いのち)の火だよ。人間はみんな身体の中で、生命の火が燃えている。それが何かの間違いで消えたり、あるいは奪われたら死ぬ」
 
「この死んでる私はどうするの?」
「ああ。火葬してお墓作ってあげるね」
 
その後、少し記憶が飛んでいるが、千里は「村山千里・享年十三」と書かれたお墓の前で合掌していた。
 

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別の記憶ではこのようであった。
 
千里がベッドで高熱にうなされて寝ていたら、そこに黒い衣裳を着て大鎌を持った人物がやってきた。
 
「村山千里、平成3年3月3日生まれだな」
「はい、そうです」
「お前は今から死ぬから」
「えぇ!?」
 
死神(?)は千里の身体の中に手を入れて、炎のようなものを取り出した。
 
「これはお前の生命(いのち)の火だ。今から地獄に案内してやるから、楽しみにな」
と言って、死神(?)は、その火を持ってどこかに行ってしまった。
 
私・・・死んだんだっけ?
 
胸に手を当ててみると、心臓は動いているようだ。
 
あれ〜!?生きているみたいな気がするけど。
 
小春が枕元に近づいて来て言った。
 
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「これで千里は死んだけど、千里は生きてるからOKね」
「どういうこと?」
「千里、小さい頃に、神聖な火を取りに行ったでしょ?」
「うん。よく覚えてないけど、硫黄の臭いが凄い所だった」
 
「千里は聖なる火を取ってきたから、身体の中に生命の火が3つ燃えているんだよ」
 
「へー。じゃ3回までは死ねるの?」
「違う違う。普通の人は生命の火は1つだけだから、それを消されると死ぬ。でも千里の場合は、生命の火が3つあるから、どれか1つ消えても、残りの2つから火を移して復活できるんだよ。フェイルセーフなトリプルシステム」
 
「わあ」
 
「だから千里は3つの火が全部一度に消えるような事故が起きない限り死なない」
「それってもしかして凄く長生きできるとか?」
「千里の寿命は850歳ということになってる」
「そんなに長いの〜!?」
 
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別の記憶ではこのようであった。
 
千里がベッドに寝ていると、突然光が射し込んできた。見ると、向こうの方に美しいお花畑が広がっている。千里はそちらに行ってみたくなり、起き上がってベッドから出ると歩いて行く。
 
やがて川が流れていたが、川の向こうから呼ばれている気がして、千里はその川の中に足を踏み入れた。ところがその時、千里の手を掴むものがある。振り返ると小春だった。
 
「千里、そちらに行ってはダメ」
と言うと、それで千里の手を引いた。しかし千里は
 
「ちょっと待って」
と言ってまた川の向こうを向き直る。
 
「行っちゃダメだって」
と小春の声。
「うん。もう大丈夫」
と千里は言うと、数歩川の中心に向けて歩き、そこに居た、沙苗の手を掴んだ。彼女が振り返る。
 
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「沙苗(さなえ)、帰るよ」
「あっ」
 
「さあ、戻ろう、戻ろう」
 
それで千里は沙苗の手を引いて、小春の居る所まで戻る。そして左手に小春の右手、自分の右手に沙苗の左手を持ち、川岸まで戻った。
 
「沙苗(さなえ)、ほら、向こうの方でお母さんが呼んでるよ」
「ほんとだ」
「ひとりで行ける?」
「うん」
と明るく答えて、沙苗は彼女が戻るべき場所に向かった。
 
「私たちも帰ろう」
と小春。
 
「うん」
と千里。
 
それで千里は小春と一緒に手をつないで歩いて行った。お花畑が途切れた所に母が居た。母は千里を抱きしめて
「よく戻って来た」
と言って、泣いて喜んでいた。
 
小春はいつの間にか居なくなっていた。
 
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千里は“起き上がる”。そこは病院のベッドの上である。自分のおでこに手を当ててみると、熱はもう下がってしまったようであった。
 
『小春』
とおそるおそる呼びかけてみた。彼女が途中で消えてしまったのが気に掛かったのである。
 
『私はここにいるよ』
という声が、“自分の内部”から聞こえた。
 
『私たち、ずっとずっと一緒だよ』
と小春は言った。
 

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そしてまた別の記憶ではこのようであった。
 
千里が高熱でうなされていると、ベッドの傍に小春が来た。
 
「千里、このままではあんた死んでしまう?」
「私、死んじゃうの?」
 
「私が死なせない。千里、私とひとつになろう」
「どういうこと?」
「並列回路って習ったでしょ?」
「うん」
 
「私ももう残りの寿命がほとんど残ってない。でも私と千里がひとつになれば、片方が死んでる時はもう片方で生き続けることができる。だからずっと死ににくくなるんだよ。千里が死ぬ確率を仮に1億分の1、私が死ぬ確率を1兆分の1とすると、ふたりとも同時に死ぬ確率は、1垓(がい)分の1になる」
 
「単位が分からない」
「でも確率が凄く小さくなるのは分かるでしょ?」
 
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「うん。でもそれって私たちキツネ人間になるの?」
「私が人間体の状態で合体すれば、ちゃんと人間になるよ。姿形は千里のままだよ」
「だったら小春が消えてしまうの?」
 
「私は元々精霊だし。本当は肉体とか無いんだよ。この姿はエイリアスにすぎない」
「そういえば、そんなこと言ってたね」
 
「それに私、千里の卵巣や子宮を私の身体の中で育てている。千里に合体すればその卵巣や子宮を千里の身体に移植することもできる」
 
「今まで入ってた卵巣や子宮は?」
「あれはお母ちゃんに返したよ。癌の治療が終わったから」
「そうか。癌の治療が終わるまでという約束だったもんね」
「だから、代わりに千里自身の遺伝子を持つ卵巣や子宮を受け取って」
 
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それで小春は禁断の法を使用して、千里の身体に合体した。
 
「あれ?何か調子いい」
『卵巣が入ったからね。6日の夜に急に精神的なバランスが崩れたのは、卵巣を千里の身体から取り出して、お母さんに戻したからだよ。ホルモンバランスの崩れが、倒れた直接の原因』
 
「そうだったのか」
『今は千里自身の卵巣を移植したばかりだから、まだ充分な働きしてないけど、1時間もしたらかなりしっかりと女性ホルモンを分泌するよ。そしたら、もっと体調は戻るよ』
 
「へー」
 
『ただ、今まで入っていたのは35歳のお母さんの卵巣で、新しく入れたのは千里自身の卵巣でまだ若いから女性ホルモンの産出量が少ないんだよ。だから高校卒業するくらいまでは、女性ホルモンの製剤で補って欲しい』
 
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「分かった。それは何とかできると思う」
 

自分の内部にいる小春とそんな会話をしていたら、病室に黒い服を着て大鎌を持った人物が現れた。目の端で見た病室のデジタル時計が23:51だったのを覚えている。
 
「村山千里、平成3年3月3日生れだな?」
と死神(?)は訊いたが、千里は返事をしなかった。
 
「返事しないのか?まあいい。俺の仕事はお前の生命の火を地獄に持っていくことだ」
それで死神(?)が千里の身体に手を入れようとしたが、千里はその手を遮った。
 
「何だ?死にたくないのか?人はみんないつか死ぬんだぞ」
「死ぬ前に1つしたいことがある」
「何だ。口は聞けるのか。何がしたい?」
「歌を歌いたい。私、歌が大好きだから、1曲だけでいいから」
「歌か。まあ1曲くらいは、いいだろう。俺は今日中にお前の生命を地獄に持っていけばいいから。まだ9分あるし、1曲くらい歌わせてやるよ」
 
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それで千里は歌い始めた。
 
「汽笛一声、新橋を。はや我が汽車は離れたり」
「愛宕の山に入り残る、月を旅路の友として」
「右は高輪泉岳寺、四十七士の墓どころ」
 

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沙苗が寝ていたら、素敵な王子様が来て
「君を素敵な国に連れて行ってあげるよ」
と言うので、ふらふらと付いて行った。
 
「そこは苦しみも悩みも痛みも無いんだよ」
と王子様は言っている。
 
「へー」
と感心しながら。王子様と一緒に甘い香りのするお花畑を通り、やがて川の前に出た。
 
「この川を渡れば向こうにあるよ」
と言われて一緒に川を渡り始める。
 
ところが誰かが沙苗の手を握った。振り向くと千里だ。
 
「沙苗、帰ろう」
と千里が言う。
 
王子はよく見ると牛のような魔神に姿を変えていた。
 
「帰ってしまうのか?だったら、せめてお前の睾丸だけでも地獄に連れていく」
と言うと、沙苗のお股にある玉を掴み、もぎ取って向こうに行ってしまった。
 
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「沙苗」
と千里が再度声を掛ける。
 
「うん。帰る」
と沙苗は答えて、千里と一緒に川岸まで戻った。
 

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死神(?)はイライラしていた。千里の歌がなかなか終わらないのである。
 
「恩み熱田(めぐみあつた)の御社(みやしろ)は、三種の神器のひとつなる」
「その草薙の神剣(かみつるぎ)、仰げや同胞四千萬」
「名高き金の鯱(しゃちほこ)は、名古屋の城の光なり」
 
「まだか?」
「もう少し」
と言って千里は歌い続けていた。
 

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沙苗は、雪道で凍えていたのを6日夜捜索していた母に発見され、病院に連れて来られたものの、意識がハッキリせず、危険な状態が続いていた。しかし9日深夜になって、沙苗が目をパチリと開けた。
 
「さっちゃん?」
と母が呼びかける。
「お母さん」
 
「目を覚ました?」
「お母さん、ごめんなさい、ごめんなさい」
 
「いいんだよ。あんた、髪切るのは辞めようよ。そしてセーラー服買ってあげるから、それで通学しようよ。お父ちゃん、出張から戻って来たらそれで学校と頑張って交渉すると言ってるから」
 
「ほんとに?」
 
「だから何とか元気を取り戻して。退院したらセーラー服の採寸に行こうね」
「うん」
と沙苗は明るく返事をした。
 
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少女たちの予定は未定(3)

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