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■少女たちの予定は未定(2)

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4月3日(木).
 
千里はS中学・剣道部の武智さんから呼ばれ“公開練習”に出て行った。実は同じ日に、ソフト部の先輩・楓さんからも声を掛けられていて、面倒だなと思っていたのだが、剣道部とソフト部がうまい具合に同じ日になったので
 
「すみません。剣道部にも呼ばれているので」
と言って、ソフト部の話は断り、剣道部のほうの練習に出て行った。
 
この時、もし千里がソフト部の方に出て行っていたら、後の日本女子バスケット代表のスーパーシューター・村山千里は誕生していない。
 
千里は自宅からまず神社に行き、そこで竹刀と防具を取ってからバスでS中に向かった。
 

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中学に出て行くと、玖美子もやはり先輩に呼ばれて出て来ており、2人は中学の先輩たちと、軽く手合わせした。
 
「君たち、強〜い」
「今月下旬の大会で、団体戦の代表に決定ね」
などと言われる。
 
まだ入部もしてないのに!?
 

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4月4日(金).
 
夕方、父の船が帰港してくる。どうも不漁だったようで、父の機嫌が悪い。
 
千里も不本意ながら父と数回口喧嘩した。
 
千里も自宅に居ると父と衝突するので5日も6日も日中は神社の方に行っていた。玲羅も友だちの家に遊びに行ったり、図書館とかに行っていたようである。
 

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4月6日の夜、千里は明日の入学式で提出する書類、持ち物などを確認して、22時前には寝ようとしたものの、何か急に不安が押し寄せて来た。
 
私、ちゃんと女子中学生できるかなあ。これまでは、半分男の子・半分女の子みたいな感じで、女として少々不備?があっても、許されてきた面もある。でも、完全な女の子として生きていこうとした場合、そのあたりが結構厳しく見られる面もある。私、女の子としての教育が不十分な所もあるから
 
「やはりあんた男だね」
とか言われないだろうか。
 
考えていたら、どんどん鬱になってくる。
 
晋治が自分以外の女の子とも付き合うようになったのは、やはり自分は女として不完全だから、自分に無いものを、生まれながらの女の子に求めたのではなかろうか。これからも自分は何度か恋愛するかも知れないけど、自分は天然女子に勝てないのでは?幸せな結婚とか望むべくもないのでは・・・。
 
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千里は不安の渦に巻き込まれ、めまいがする気がした。
 

時計が12時を告げる。
 
きゃー。もう寝なきゃ。明日は入学式なのに。寝不足の顔で出席する訳にはいかない。
 
それで千里はトイレに行って寝ようと思った。
 
6畳の部屋を出て、両親が寝ている4畳半の部屋を通過し、玄関のある板張りの部分に出る。
 
(↓村山家の間取り:再掲)

 
千里の記憶はそこで途切れている。
 
遠くで母が自分の名前を呼んでいるような気がした。
 
2003.04.07 0:10
 
千里の命が尽きる予定時刻まで、あと2日と23時間41分であった。
 

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千里はどこか知らない家に居た。
 
よく見たら30代の女性が何か辛そうな顔をしているが、その女性の顔には見覚えがあった。
 
「沙苗(さなえ)ちゃんのお母さん?」
「あら、千里ちゃん、こんな遅くにどうしたの?」
「それより、お母さんこそ、どうしたんですか?」
 
「沙苗(さなえ)が家出してしまって」
「え〜〜〜!?」
 
「こんな書き置きがあったの」
と言って、お母さんが見せてくれた手紙には、このように沙苗の“可愛い方の”字で書かれていた。
 
《私は、男子中学生にはなりたくない。学生服とかで通学したくない。髪を切って男の子みたいな姿で学生服とか着ないといけないなら、明日の入学式にも出たくない。私を探さないで》
 
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「でもこんな寒空に家出したら、無事では済みませんよ」
と千里は言う。今気温は多分(プラス)4-5℃まで下がっている。冷蔵庫並みの寒さである。
 
「あの子が仲良くしていた子何人かのおうちに電話してみたんだけど、誰の所にも行ってないみたいで」
 
千里は言った。
「沙苗(さなえ)ちゃんの居場所は私、見付けられると思います。お母さん、車を出してください」
「ほんと?」
「私、小学2-3年生の頃、隠れん坊の名人だったんですよ」
「そういえば、そんなこと沙苗(さなえ)が言ってた。どこに隠れても千里ちゃん、すぐ見付けちゃうんだって」
「波動を感じるから、それで分かるんですよ」
「へー」
 

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沙苗の母は家の傍に駐めているビスタのエンジンを掛け暖機するが、千里は言った。
 
「タイヤにチェーンを着けて下さい」
「チェーンが必要なのね!?」
 
お母さんが頑張ってチェーンの装着をしている間、千里は車内で静かに沙苗の波動を探した。
 
留萌の上空 500m くらいの所に自分の“感点”を置く。そして市街地をずっとスキャンする。
 
沙苗の波動は見当たらない。
 
もう少し上空にしないとダメかな?
 
そう思って“感点”を上空2kmほどまであげる。
 

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沙苗が家を出てから10時間くらい。すると結構町から離れている可能性がある。千里は町の周辺部を螺旋状にスキャンして行った。
 
沙苗の母は何とかチェーン装着を終えたが、千里が目を瞑って何かを感じ取っているようなので声を掛けずにそっとしておいてくれる。
 
微かな反応を感じた。高度を下げて、その付近を再度スキャンする。
 
「居た!」
と千里は声をあげた。
 

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「ほんとに?」
「取り敢えず国道231号を増毛(ましけ)方面に向かって下さい。曲がるべき場所に来たら言います」
 
「分かった」
 
それで、沙苗の母はビスタを海岸の国道沿いに南下させていった。
10km近く走った所で千里が言った。
 
「1kmほど先に左への分岐があると思うんです。そこを曲がって下さい」
「うん」
 
夜間なので見落としそうだったが、千里が「もうすぐです」と言ったので、何とかその分岐を見付けることができた。車は山中に入っていく。
 
「300mほど先を右に」
 
お母さんは分岐を見落とさないように、時速20kmくらいまで落として慎重に走る。
 
「分岐あった」
 
道は積雪しているが、この車は四輪駆動だし、チェーンも巻いているので、何とか進む。
 
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「50mほど先を右に」
「うん」
 
それで車は下り坂になっている所を慎重に進む。
 
「停めて下さい」
「うん」
 
千里と沙苗の母が懐中電灯を持って降りる。千里の懐中電灯が1点を指す。
 
沙苗は、そこの地蔵堂の中に居た。
 
寝てる?気を失ってる?この気温の中で覚醒していないのは危険である。
 
「沙苗(さなえ)!」
「さっちゃん」
と呼びかけるが反応は無い。
 
「お母さん、2人で運びましょう」
「うん」
 
それで沙苗の母が車を転回させて地蔵堂の近くに寄せ、母と千里が頑張って沙苗の身体をビスタの後部座席に載せた。
 
コートが濡れているので脱がせる。車に積んでいる毛布を掛ける。
 
「沙苗(さなえ)!」と呼びかけながら、千里は彼女の頬を数回平手打ちした。微かな反応がある。少しは意識があるようだ。
 
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「さっちゃん、さっちゃん」
と母が彼女の身体を揺すりながら呼びかける。
 
すると、沙苗はやっと目を開けた。
 
「お母さん・・・ごめんなさい」
と彼女は力なく微かな声を出した。
 
「すぐ病院に連れて行った方がいいです」
「そうする」
 
それで沙苗の母は車を発進させ元来た道を戻った。千里は病院に着くまで彼女の手を握り、少しでも温めてあげた。
 

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千里(沙苗ではない)は気が付いたら、見覚えの無い場所に寝ていた。
 
点滴の針が刺さっている。
 
「あ、気がついたかい?」
と寝不足っぽい顔の母が言った。
 
「ここは病院?」
 
「あんたが板の間で倒れたから、父ちゃんに抱きかかえて車まで運んでもらって、それで私がここまで運んで来た。**医院に問い合わせたら、今日の当番医は&&病院だからと言われて」
 
あれ〜〜〜!?だったら、沙苗が行方不明になって、それを探すってのは夢だったのかな??
 
沙苗の立場は自分の立場かも知れない気がした。私だって、学生服で中学に通うのは嫌だ。そんなの強要されたら、ほんとにどこかに消えてしまいたい。
 

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部屋のアナログ時計が6時半を指している。母はずっと付いててくれたのだろうか。
 
「お父ちゃんは?」
「船出さないといけないから、タクシーで港に行ったよ。あんたを抱きかかえた時に『まるで女みたいな身体だ』って言ってたけど」
 
「私、なんか凄く熱があるみたい」
「さっき看護婦さんが計った時、39度5分だった。インフルエンザの菌は出てないし、中国で流行ってるなんか恐い病気の菌も出てないというから、単純な風邪じゃないかって。取り敢えず熱冷ましを処方してもらった」
 
と母は言っている。
 
インフルエンザやSARSは菌じゃなくてウィルスだけどな、と千里は思ったが、それより身体がきつい。身体のバランスがメチャクチャになってる。気合を入れたら回復できそうな気がするけど、そのパワーが出ない感じだ。少し寝てパワーを回復させた方がいいかもと千里は思った。
 
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「私、もう少し寝ている」
「うん。入学式はお休みしよう」
「そうだね。学校に連絡だけしといて」
「うん。8時半くらいになってら電話するよ」
 
それで千里は少し寝ることにした。
 

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しかし千里の熱は7日夕方になっても、8日になっても下がらなかった。医師は風邪だけでここまでの高熱が出ることは考えられないので、レントゲン、を取ったり、採血・採尿して旭川の検査センターに送り、急いで分析をしてもらったりもした。
 
ここから先の千里の記憶は混乱していて、自分でもどれが本当だったのか、よく分からない。お互いに内容が矛盾しているので、おそらくはどれかが真実で、他は夢か、あるいは高熱で見た幻覚の類いなのだろうと千里は思った。
 

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ある記憶では、こんな感じであった。
 
9日になっても熱が下がらないので、医師は再度千里を診察した。千里は高熱で歩くこともままならないので、医師が病室まで来てくれて、そこで診察しているのだが、その時、医師は“そのこと”に気付いた。
 
「君何年生だっけ?」
「中学1年です」
「君、性的な発達が遅いとか言われたことない?」
 
へ?
 
「いえ、特に」
「でも君、バストが未発達だよね。中学1年生なら遅い子でも微かな膨らみがあるんだけど」
 
え〜!?なんで私、おっぱいが無いの??
 
「それに検査値で見ると、君のエストロゲン・プロゲステロンの値が、凄く小さい。この年齢の女の子ならあるはずの量の10分の1くらいしか無いんだよ。ひょっとしたら、卵巣にトラブルが起きてて、女性ホルモンの分泌が落ちているのかも知れない」
 
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なぜだろう?こないだまで女性ホルモンの量が多すぎるくらいと言われてたのに。
 
「何かのトラブルで女性ホルモンの量が急低下したとしたら、それで身体のバランスが崩れて、こういう状態になっているかも知れないんだよ」
 
「どうしたらいいんでしょう?」
「取り敢えずエストロゲンの注射してみようか」
「はい。お願いします。自分でもこのくらい自分で気合入れたら回復しそうなのに、エンジンがかからない感じなんですよ。エストロゲンが身体に入るとすごく頑張れるから、その逆の状態かも」
 
「じゃちょっと注射するね」
 
それで医師はエストロゲンの注射をしてくれた。そしてその注射から10分もしない内に、千里は体調が急速に回復してくるのを感じた。
 
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うん。これこれ。このパワーが足りなかったんだよ。でも私の卵巣ちゃん、どうしたんだろう?調子悪いのかなあ。
 
そしてエストロゲンの注射をしてもらってから30分もすると、6日夜に唐突に感じていた不安が急速に消えて行くのを感じた。
 
私が半分男の子、半分女の子だったなんて、みんな知ってることじゃん。それで「やはり男みたいな所ある」と言われても、何も気にすることない。不完全な所は少しずつ修正していけばいい。後ろ指さされるくらい小さい頃からのことだし、今更じゃん。何を不安がる必要があるだろう。
 
晋治とのことにしても、彼の浮気に疲れた部分が大きい。彼がまだ留萌に居た頃も、晋治の周囲にはいつも多数の女の子が群がっていて私は随分嫉妬した。彼が旭川に行ってからも、何度か浮気の兆候を感じ取って牽制したりしたこともあった。あんな浮気男、振って正解だよ。世の中にはもっとまともな男もいるはず。
 
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そんなことを考えていたら、どんどん元気になってくる。それで千里は23時半頃までには枕元の体温計で自分で計ったのでは、熱が37度台まで低下していたのである。これなら、一眠りしたら平熱になっているなと思い、千里はパワー回復した状態で、目を瞑って身体を休めた。
 

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少女たちの予定は未定(2)

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