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■女の子たちのボイストレーニング(3)

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千里は自宅で敏美さんから借りてきた松田聖子全集・カーペンターのベスト版、の音源、そして自分自身が歌ったDRKの音源を繰り返しヘッドホンで聴きながらセンター試験の過去の問題をずっと解いていた。過去問題というのは、こういう直前にやるのが最も効果的である。
 
合間合間には首の運動をしたり、喉をゴロゴロ言わせながらうがいしたり、また裏声の練習をしたりする。そして喉を痛めないようにのど飴をなめる。また、過去問題を1教科分解く度に、風船を1個膨らませ、またフルートで短い曲を1曲吹くようにした(龍笛だとボリュームがあるので近所迷惑)。
 
夕方、雨宮先生から電話が掛かってくる。無視していたのだが、するとメールが入り「あと5分以内に出なかったら、あんたのヌード写真をネットに曝す」とある。嘘!? 私のヌード写真なんていつ撮ったのよ?
 
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それで仕方なく電話を取る。
 
「おはようございます、雨宮先生」
「あんた誰?」
「村山千里ですが」
「あんたいつの間に男になったのよ?」
「私は最初から男ですけど」
「そういう無意味な嘘つく奴は嫌いだな」
「声変わりがきちゃったんですよ」
「へー。それはめでたい」
「めでたくないです。こんな声じゃ学校にも出て行けないから今週いっぱい休みです。どっちみちセンター試験の直前だし」
 
「私と寝てみない?女の声の出し方しっかり指導してあげるから」
「誰か他の女の子か男の娘を誘って下さい」
「ところで明日までに1曲書いてくれないかな」
「センター試験の後にしてください!」
 
「うーん。やはり無理か」
「来週だったら2曲書いてもいいですから」
「よしよし。じゃ、仕方ない。これはケイに押しつけるか」
「ああ、可哀想に」
 
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「だけど女声の出し方も人様々だよわね」
「ああ、そうなんでしょうね」
「ケイなんかはあの子、民謡の名取りだからさ。お囃子とかで鍛えて高い声が出るようになっていたんだよ」
「へー。あの子、民謡やるんですか?」
 
「民謡の一派代表の孫娘なんだよ、あの子は」
「それは知らなかった」
 
「いわゆる《ささやき法》を使う子は多いね」
「私もささやき声でなら、性別をごまかせる程度の声は出るんですけど、それでは日常生活をするのに不足なので。特に学校やスポーツの場では『もっとしっかり声を出せ』と言われちゃうんですよ」
 
「フィッシュアイ話法は知ってるよね?」
「昨日先輩のMTFさんから習いました」
「声自体は諦めて、開き直って男声音域を使った上で、イントネーションなどの《話し方》を女の話し方にすると、ちゃんと女が話しているように聞こえるんだな。石田彰がセーラームーンのフィッシュアイの声を当てた時に使って当時日本中のオカマさんに衝撃を与えたんだよ」
 
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「その録画を聞きましたけど、びっくりしました。声としては男の声なのに本当に女が話しているようにしか聞こえないんですよね。凄いですね」
 
「あんたの現在の話し方は、そもそもフィッシュアイ話法に近い」
「そうかも!」
「あんたは女としてずっと生きて来たからね。だから確かにあんた声変わりしたかも知れないけど、あんたの声を聞いてて誰も男だとは思わないよ。少し声の低い女だと思うだろうね」
 
「勇気付けてくれてありがとうございます」
 
「それからメラニー法とかが知られる前はハスキーボイスで話すオカマさんが多かった」
「むしろハスキーボイスが、オカマさんのシンボルみたいだったらしいですね」
「そうそう。そういう時代もあったのよ」
「でも今更もう使えない手法です」
「私もそう思う」
 
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「先生の場合はどうやって、そういう美しい声を獲得なさったんですか?」
「ふむふむ。少しは人に物を訊く時の言葉遣いが分かってるね」
「先生の教育がいいので」
「ハミングだよ」
 
「ああ!」
「ハミングではわりと性別の境界を越えた声域の声が出やすいんだ。だから私は最初ハミングでアルト領域の音が出るようになったんだよ。それをやがてボカリーズやスキャットに変えて、やがてふつうの言葉でも出るようになった。ハミングは鼻声だから、喉の振動が破綻しにくいんだ」
 
「ありがとうございます。それやってみます!」
 
「あんたの女声が復活したら、どこかのメジャーレーベルから女の子歌手としてCD出させてあげようか?」
「それは取り敢えず遠慮しておきます」
「あら。私がCD出してあげるなんてオファーすることはめったにないのに。可愛い服も着せてあげるわよ」
「それは面白そうですけど、そんなことしてもらったら後が怖いですから」
「信用無いな」
 
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先生は最後に大事なことを言った。
 
「高い女声の練習は1日最大でも30分にすること」
「え〜〜〜!?」
「無理して声帯潰して、まともな声が出なくなってしまったオカマさん何人も知ってるよ」
「それは怖いですね」
 
「じゃお大事にね」
 

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「詩津紅ちゃん、ごめんねー。お使いみたいなことまでしてもらって」
と政子は言った。
 
「気にしないで、何か用事があったらどんどん呼び出してよ。友だちじゃん」
と詩津紅は笑顔で答えながら、買って来たキーボードを箱から出し、電源をつないだ。
 
発声練習に使うキーボードを最初母に買って来てもらおうとしたものの、母はどんなのがいいか全然分からないと言う。それで同じクラスの子でピアノも上手い詩津紅に電話して頼んでみたのである。詩津紅が買って来たのはヤマハ製でミニ鍵盤56鍵のものである。
 
「まず政子ちゃんの音域を確認しておこうよ」
と言って詩津紅はキーボードを弾きながら政子に声を出させた。
 
「F3からA4まで出てるね」
「私、冬みたいな高音が出ないのよね〜」
「まあ冬の声は異常だから。あんなに広く出る子はめったに居ないよ」
「あ、やはりそうなのね」
「でも政子ちゃんも練習してればもっと出るようになるよ」
「うん」
「低い声は練習してもそんなに出るようにならないんだけど高い方は練習でかなり出るようになるんだよ」
「へー」
「だから歌の練習をする時に、最初に毎回このキーボードで最初はF-Majorでドレミファソファミレドという所から始めて半音あげてF#-Majorでまたドレミファソファミレド、とこれを声が出る限界まで一通り上がっていっては下がっていって練習すればいいんだよ」
 
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「なるほどー」
「昔ピアノやってたんなら、半音ずつ上げていきながら音階弾くのはできるよね?」
「うん。それはできると思う」
 

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詩津紅は政子に音階練習をさせた後で、ローズ+リリーの持ち歌を歌わせてみた。詩津紅がケイのパートを歌う。
 
「なるほどねー」
「ごめんねー。プロ歌手を名乗れないほど下手で」
「そう下手でも無いよ」
「そう?」
 
「アイドル歌手とかには本格的に音外してる人多いじゃん。あれって耳が悪いんだよね。正しい音が取れていない。でも政子ちゃんの場合は、音は取れているんだよ。ただ、その音を出すことができないだけ」
 
「あ、冬からもそんなこと言われた」
 
「だから長い音符では最初の出だしは間違っていてもすぐ正しい音になる。4分音符以上のところは、ちゃんと正しい音になってるよ。でも八分音符以下ではその音の到達が間に合わなくて、外れたままの音で次に行く」
 
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「そうそう。間に合わないんだよ」
「やはりそれをたくさん練習して、最初から正しい音を出せるようになれば、政子ちゃん、ものすごく上手くなると思う」
「ほんとに?」
 
「政子ちゃん、音楽の時間とかにあまり歌ってなかったでしょ?」
「小学校の頃は、あんたが歌うと音がおかしくなるから歌わなくていいと先生から言われてた」
「それは酷いなあ」
「だから私、ブラスバンド部に入ったんだけどね。フルートは正しい指使いさえすれば正しい音を出してくれるもん」
 
「うん。わりとフルートってそういう楽器だよね。政子ちゃん自身の声でも毎日ちゃんと歌い込んでいれば、3−4年後にはかなり上手くなると思う」
 
「3−4年掛かる!?」
「そりゃ3−4日で上手くなる訳無い」
「だよねー。まあ頑張るか」
 
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「無理しない程度に頑張ればいいよ。毎日12時間練習するぞ、とか思っても3日坊主になっちゃう。まあ1日30分は練習しよう、くらいに思っていた方が長続きする。声って、日々の継続の努力が如実に反映されるから」
 
「うーん。努力するのは苦手だ」
「30分練習したらおやつ食べようとかいうのも良い」
「あ、その方式で行こうかな」
 

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「よし」
 
雨宮先生との電話を終えた後、千里は声を出して立ち上がった。旅支度をする。
 
ちょうど叔母が帰ってきたので
「叔母ちゃん、ちょっと外泊してくる」
「いいけど、どこに行くの?」
「ちょっと山形まで」
「遠いね!」
 
叔母が車で旭川駅まで送ってくれた。それで
 
1/14 旭川1800-1920札幌1929-2243五稜郭
 
という連絡で函館まで行く。この列車の中では千里はひたすら寝ていた。タクシーでフェリー乗り場まで行き、23:20-3:05のフェリーで青森に渡る。千里はこのフェリーの中でもずっと寝ていた。
 
フェリーターミナルの出口に車が停まっている。
 
「きーちゃんありがとう」
 
と言って千里は運転席に乗り込んだ。
 
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《きーちゃん》に予めレンタカーを借りておいてもらったのである。車はある程度パワーの出る車ということで1800ccのプリウスである。《きーちゃん》も助手席に座ってくれて、車をスタートさせる。
 
「しかし千里、堂々と無免許運転するね」
と《きーちゃん》は半ば呆れている。
「見逃してー。ついでに警察に見付からないようにお願い」
「はいはい」
 
千里は運転中、敏美さんからもらった参考音源を、眠気防止もかねてmp3プレイヤーからカーラジオにFMで飛ばして(設定は《きーちゃん》にしてもらった)、ひたすら流した。松田聖子などの歌に合わせてハミングや時にはラララで歌ってみたりした。さすがに一朝一夕には、まだその高さに合わせることはできない。でも高い音を出す感覚を模索するのにはハミングやスキャットはいいかもという気がした。
 
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「千里、高い声出す時に声が裏返るでしょ?」
「うん」
「あそこをギリギリ裏返らないように我慢しなよ。そうしたら実声のまま高い音が出るはず」
「そうか。そこで我慢するのか」
「喉の筋肉無茶苦茶使うけどね」
「だから筋肉を鍛えないといけないのね」
 
車は青森環状道路から東北道に入り、ひたすら東北道を南下してから北上JCTで分岐して秋田自動車道に入る。横手JCTから湯沢横手道路に入って南下する。この高速を走る部分が280.5kmあるが、この区間を千里は3時間ほどで走り抜けた。ここから出羽三山神社までは約100kmであるがここを2時間で走り抜ける。音源はずっと同じ繰り返しでは飽きるので、時々《きーちゃん》に頼んで設定を変えてもらい、松田聖子をずっと聴いたり、さだまさしをひたすら聴いたりなどしていた。また歌わない時はずっとあめ玉を舐めて喉のメンテをした。
 
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千里は函館までの列車の中とフェリーの中でぐっすり寝ておいたので、青森から出羽までの車で移動する時間帯はずっと起きていて後ろの子たちの力を借りずに自分で運転しきった。5時間の連続運転に耐えられるのはやはりバスケで身体を鍛えているからかなと千里は思った。
 
千里が三神合祭殿の前に立ったのは朝の8時すぎである。お参りしていたら、いきなり左手にガチャリと手錠を掛けられる。
 
「無免許運転の現行犯で逮捕する」
と女性警官の制服を着た美鳳さんが笑顔で言う。
 
「じゃ取り調べして欲しいんですけど」
「んじゃ、あんたの車の中で調書を作ろうか。ついでに検察官と裁判官も兼務で」
「それを兼ねちゃうのは江戸町奉行所って感じですね」
 
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女の子たちのボイストレーニング(3)

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