広告:オトコの娘コミックアンソロジー-奈落編-ミリオンコミックス-OTONYAN-SERIES9
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■男の娘とブーツを履いた猫(3)

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リルが国王に毎日贈り物をするようになってから半年ほど経ったある日。リルは国王が王太后と一緒に隣の国の国王に会うためお出かけするという話を聞きます。どうも国王に縁談があるようなのです。
 
リルはいよいよ時が来たなと思いました。
 
リルは朝からクロードに母の遺した服の中にあったいちばん上等な女物の下着を着けさせ、その上に適当な男物の服を着せた上で連れ出します。そして大きな川のほとりまで来ました。
 
「ここで何するの?」
「まあもう少し待っていよう」
 
やがて国王の馬車が1kmくらいの距離まで来たのを見て、リルはクロードに
 
「下着だけになって、川の中に入って」
と言いました。
 
「何のために?」
「いいから」
 
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それでクロードは上着とズボンを脱ぎ、女物の下着だけをつけた状態で川の中に入ります。リルはクロードが着ていた男物の服は近くの茂みに隠してしまいました。
 
「真ん中付近まで行って」
「真ん中付近は流れが速くてうっかり足でもすべらせたら溺れそうだよ」
「だからいいんだよ」
 
そして国王の馬車がかなり近づいて来た時
 
「溺れてる振りして」
と言います。
 
「え〜〜!?」
と言いつつも、クロードが溺れる振りをし始めたのを見て、リルは国王の馬車の前に走り出ました。
 

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「どなたか存じませんがお助け下さい!」
と大きな声で言います。
 
すると馬車の前を乗馬で進んでいたマルサン中尉がリルに気付きます。
 
「おお、リル殿ではないか?どうなされた?」
 
するとリルは彼を認めて言った。
 
「中尉様でしたか!実はカラバ女侯爵が溺れているのでございます。どうかお助け下さい」
 
「それはいけない」
 
中尉は馬車の中の国王に一声掛けると川の岸まで降りて行きます。そして
 
「失礼する」
と言って服を脱ぎ裸になると川に飛び込み、真ん中付近まで泳いでいって、クロードを助けて岸まで連れて行きました。
 
「ありがとうございます。助かりました」
 
その時は、カラバ女侯爵が溺れているという話を聞き、驚いた国王と王太后も馬車から降りて駆け寄っていました。
 
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「朕は国王じゃ。クロード姫、災難であったな」
と国王がクロードに声を掛けると
 
「え!?国王陛下!?このような格好で申し訳ありません」
と言ってずぶ濡れの女物の下着姿のクロードは地面に手を突いて頭を下げます。
 
「よいよい。頭を上げい。リル殿、姫の着替えは?」
「それが盗賊に襲われまして。姫は着ぐるみ剥がれた上で川に投げ込まれたのでございます」
 
「お供はあなたひとりだったの?」
と王太后が訊きます。
 
「はい、不覚を取りまして面目ありません」
とリル。
 
「いや、雌猫一匹では盗賊には対抗できんよ。怪我が無くて良かった」
と国王は言っています。
 
「あなた、下着もずぶ濡れね。私の着替えで良かったら着て」
と言って王太后は自分の着替えの下着とドレス、それにタオルを出すと、リルに渡します。
 
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「ありがとうございます。そちらで着替えさせます」
 
と言ってリルはクロードを木の陰に連れて行くと、すばやく下着を脱がせ、タオルで身体を拭いた上で、王太后が貸してくれた立派な女物の下着、そしてドレスを着せました。
 
「え〜ドレスなの?」
「貸してくれたんだから文句言わない」
 
「ね。クロード“姫”(Princess Claude)って何?」
とクロードは小さな声でリルに訊きます。
「気にしない。気にしない。でもお姫様と思われているから、女の子のふりしててね」
「え〜〜!?」
 

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リルはクロードの髪に国王からもらった銀の髪留め、腕には金のブレスレットを付けさせ、耳には国王からもらったサンゴのピアスを付けてあげました。それでドレスを着たクロードをリルが国王の前に連れて行きますと、
 
「おぉ!やはりすばらしい美人じゃ」
と言って国王は喜んでいます。
 
「その髪留めやブレスレットにピアスは気に入ってくれたか?」
 
「はい、素敵な物を頂きありがとうございます」
 
と答えながらクロードは『うっそ〜!?この髪留めとかブレスレットとかピアスって、王様からの贈り物だったの?』と内心驚いています。
 
「でもほんと可愛い人ね」
と王太后まで笑顔です。
 
何?何?これどうなってんの?とクロードは訳が分からない状態でした。
 
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「一緒に少しドライブしましょう」
と国王は言って、馬車の中の自分の隣の席にクロードを座らせます。王太后は遠慮して後ろの席に移動しました。
 
「今はひとりで暮らしておられるのか?」
と国王が訊きます。
 
「あ。はい。それで針仕事などして日々を送っています」
 
むろんクロードは「針仕事を生活の糧にしている」という意味で言ったものの、国王は「女のたしなみとして針仕事をしている」という意味に解釈しました。
 
「ご両親は亡いのか?」
「母は7年前に、父は2年前に亡くなりました」
「おお、なるほど。それは寂しかったろう」
 
「あなた、お料理もお裁縫も、笛も得意なのね」
と後ろから王太后が訊く。
 
「料理や裁縫は母から習いました。笛は祖母から習ったのですが」
 
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そんな会話をしながら、クロードは『なんでぼく、王様と並んで座ることになっちゃったの〜?』と内心焦っていました。リルを探しますが、近くには居ないようです。
 

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その頃、リルは馬車に先行して走って行っていました。
 
やがて広い牧場(まきば)があり、牧人たちが牛の世話をしていました。
 
「あんたたち、もう少ししたらここに国王陛下の馬車が来るからさ、この牧場は誰のものだと訊かれたら、カラバ女侯爵のものだと言うんだよ」
 
すると牧人たちは「どうして?」と訊きます。
 
「オグル様が、カラバ女侯爵と結婚するんだよ。だからそう言わないと、あんたたち、オグル様に食べられちゃうよ」
「それは困る。分かった。カラバ女侯爵のものだと言うよ」
 
リルが更に先に走っていくと、広いブドウ畑があり、多数の娘たちがブドウを狩っていました。
 
「あんたたち、もう少ししたらここに国王陛下の馬車が来るからさ、このブドウ畑は誰のものだと訊かれたら、カラバ女侯爵のものだと言うんだよ」
 
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すると娘たちは「なんでよ?」と訊きます。
 
「オグル様が、カラバ女侯爵と結婚するんだよ。だからそう言わないと、あんたたち、オグル様に食べられちゃうよ」
「それは困る。分かった。カラバ女侯爵のものだと言うよ」
 
リルが更に先に走っていくと、広い麦畑があり、お百姓さんたちが麦の刈り入れをしていました。
 
「あんたたち、もう少ししたらここに国王陛下の馬車が来るからさ、この麦畑は誰のものだと訊かれたら、カラバ女侯爵のものだと言うんだよ」
 
するとお百姓さんたちは「なぜだ?」と訊きます。
 
「オグル様が、カラバ女侯爵と結婚するんだよ。だからそう言わないと、あんたたち、オグル様に食べられちゃうよ」
「それは困る。分かった。カラバ女侯爵のものだと言うよ」
 
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リルは更に走っていきました。そこには立派なお屋敷がありました。これは人食い鬼のオグルが住んでいる屋敷で、実はさきほどの牧場(まきば)も、ブドウ畑も、麦畑も、このオグルのものだったのです。
 
「近くを通りかかりましたが、あなた様のご機嫌を伺わずに素通りするのもよくないと思いまして、顔を見せました。これはあなた様への贈り物でございます」
 
と言ってあらかじめ捕まえておいたウサギを進呈しました。
 
「おお、これはこれは。俺は人間も食うが、ウサギも好きだよ」
と言って、オグルはリルを歓迎しました。
 

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その頃、国王の馬車は広い牧場(まきば)にさしかかっていました。
 
「これは広い牧場があるなあ。これは誰のものだろう。マルサン、ちょっと尋ねてみなさい」
と国王がおっしゃるので、マルサン中尉は近くの牧人に尋ねてみました。
 
「この牧場は誰のものですか?」
すると牧人は答えました。
「この牧場はカラバ女侯爵のものです」
 
すると国王は驚き
「おやおや、クロード姫、そなたのものであったか。それをすぐに言わないあなたは奥ゆかしい」
と言ってクロードに微笑みかけました。
 
クロードは驚いたものの
「そうですね」
などと適当な相槌を打っておきました。
 
少しすると、国王の馬車は広いブドウ畑にさしかかっていました。
 
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「これは広いブドウ畑があるなあ。これは誰のものだろう。マルサン、ちょっと尋ねてみなさい」
と国王がおっしゃるので、マルサン中尉は近くでブドウを狩っていた娘に尋ねてみました。
 
「このブドウ畑は誰のものですか?」
すると娘は答えました。
「このブドウ畑はカラバ女侯爵のものです」
 
すると国王は驚き
「おやおや、クロード姫、そなたのものであったか。それをすぐに言わないあなたは慎ましやかじゃ」
と言ってクロードに微笑みかけました。
 
クロードは驚いたものの
「いえ私は大した者では無いので」
などと適当な相槌を打っておきました。
 
そしてやがて国王の馬車は広い麦畑にさしかかっていました。
 
「これは広い麦畑があるなあ。これは誰のものだろう。マルサン、ちょっと尋ねてみなさい」
と国王がおっしゃるので、マルサン中尉は近くのお百姓さんに尋ねてみました。
 
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「この麦畑は誰のものですか?」
するとお百姓さんは答えました。
「この麦畑はカラバ女侯爵のものです」
 
すると国王は驚き
「おやおや、クロード姫、そなたのものであったか。それをすぐに言わないあなたは本当に気取らない方だ」
と言ってクロードに微笑みかけました。
 
クロードは一体何がどうなっているのか分からないまま
「私には身に余るものです」
などと適当な相槌を打っておきました。
 

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